イギリスの新聞:一般紙/大衆紙、階級によって購読者層が違う

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Last Updated on 2021-01-06 by ラヴリー

イギリスの新聞はさまざま、同じニュースでも読む新聞によって扱われ方が全く違います。確固とした事実だけを伝えるものもあれば、ゴシップ中心のものもあり、どこまで信頼していいのかということもその背景を知らないとわかりません。また、読む新聞によってその人の階級や思想も大体わかってしまうので、知らないで選んだ新聞を見て変に格付けされたりもするので注意が必要です。


Contents

イギリスの新聞の大まかな種類

イギリスの新聞には地方紙もありますがここでは全国紙だけ紹介します。全国紙は大まかに分けて一般紙(高級紙とかクォリティー・ペーパーとも呼ばれる)と大衆紙(タブロイド・ペーパーとも呼ばれる)に分かれます。日本でいうと朝日・毎日・読売の3大紙とスポーツ新聞の違いというようなものでしょうか。

日本でも新聞によって思想傾向がそれぞれ異なりますが、イギリスの場合はそれよりもっと顕著に現れます。記事の内容や書き方も新聞によってかなり異なり、読む新聞によってその人の思想傾向が大体わかります。特に一般紙と大衆紙の違いはそのまま読者の階級や学歴の違いを表していると言ってもいいでしょう。

下記にそれぞれの新聞の説明をしますが、読者数はNews of the Worldをのぞき2018年7月のものです。

一般紙

日本でいうと朝日、毎日、読売などにあたるのが一般紙とかブロードシートと呼ばれる大きい紙面の新聞です。政治、経済、社会、スポーツ、アート、ファッションなど様々な分野を網羅して扱います。

その記事内容は基本的に事実に基いていて、信頼に値するとされています。それぞれ編集方針や政治信条などが少しずつ違っていますが、それは時代によって違ってくることもあります。

日本だと一般庶民からトップエリートまでが同じような新聞を読むのが普通ですが、イギリスでは一般紙を読むのはミドルクラス以上のエリートや大学以上の学歴がある人だけといった感じです。なので、購読者数もそんなに多くはありません。

The Daily Telegraph デイリー・テレグラフ

374,535部 保守(中産階級から上流階級)

1855年発刊以来、保守党路線を貫き通している新聞。右寄り、愛国心のある生粋のイギリス人が読む新聞で読者は裕福な人が多い。

The Times タイムズ

430,660部 やや保守(中産階級)

1785年という長い歴史を持ち、イギリスで一番有名かも。

ずっと保守党路線でやってきたが、最近になってやや中立的になってきました。真面目でおかたい新聞だったのですが、メディア王のマードックに買収されてからは、大衆的になったという印象です。

なお、日曜日には姉妹紙の「サンデー・タイムズ」を発行しています。

The Guardian ガーディアン

137,839部 左寄りリベラル(中産階級:アカデミック関係、公務員など)

1821年に「マンチェスター・ガーディアン」としてイングランド北部マンチェスターで発刊された老舗新聞。ずっと労働党支持の左路線を貫いており、保守党政権を批判する記事やスクープなどは見ものです。とはいえ、労働党のブレア政権のときアフガニスタン、イラク戦争には反対し、独自の姿勢を主張していました。

教育、環境保護、人権問題などに力を入れています。若者、特に大学生や教育関係の職についている人たちに人気。

日曜日には姉妹紙の「オブザーバー」を発行しています。

The Independent インディペンデント

243,960部 中立~左(中産階級:リベラル層)

1986年に発刊された比較的若い新聞。

新聞業界が買収とか経営難でごたごたしているとき、既存の新聞社の記者たちが独自の新聞を作ろうと集まってできた新聞。「独立した」という名前が示すように中立性が高く自社のメッセージを強く訴える編集方針。どちらかと言うと左(というかリベラル)路線で環境保護などに力を入れています。

最近紙面サイズをタブロイド判にしました。

Financial Times ファイナンシャル・タイムズ

179,010部 中立~右(中産階級~上流階級:ビジネスマン)

1888年発刊、ピンクの経済紙。

イギリスではビジネスマンを中心に読まれていて、イギリス以外の外国でも多く読まれている新聞。経済、ビジネスに関するニュースが多く、政治、社会などほかの記事も簡単だがいちおう網羅されています。

大衆紙(タブロイド)

ゴシップ記事満載の大衆紙はタブロイド判と呼ばれる小さいサイズの紙面に印刷されているので「タブロイド紙」と呼ばれます。おかたいニュースも大きなタイトルと写真で読みやすく工夫され、芸能人の特ダネ、スポーツなどを多く掲載しています。

記事の信憑性については、一般紙と違って眉唾物のこともあるので注意が必要。これらの新聞は真面目な記事や学術論文が情報のソースとして引用されることはまずありません。時にはあまりに偏向すぎる報道をしたり、読者を引き付けるために虚無の情報を載せたりして批判されることもあります。とはいえ読むほうもその辺はわかっていて、おもしろがって娯楽のために読むという側面もあります。

中産階級以上の人達だとタブロイド紙を読んでいるというのはちょっと恥ずかしいと感じる傾向にあります。例えばちゃんとしたオフィスなどに持ってきておおっぴらに読むような新聞ではないです。とはいえ購読者数はかなり多いので隠れて読んでいる人は少なくないのかもしれません。

The Sun サン

1,432,5423部 中立~右(労働者~下層中流)

イギリスの日刊紙としては最大部数を誇るのがこの新聞。一面に大きなタイトルと写真をでかでか掲げ、読者の興味をそそるような見出しが並びます。スクープ記事も多く、その内容は邪推に満ちたものも多いのが特徴。

新聞の3ページ目に「ページ・スリー・ガール」と呼ばれる女性のヌードやセミヌード写真をでかでかと掲載するのを抗議する声がありますが、一向にやめる気配がないのはこれを目当てに購読する読者が多い証拠でしょうか。

Daily Mail デイリー・メール

1,265,693部 右(労働者~中産階級)

1896年発刊、中産階級のためのタブロイドを目指していると言われます。サン紙に比べて、女性読者が多いのが特徴です。

右寄りで、反移民、反EUの国粋主義傾向があります。

Daily Mirror デイリー・ミラー

554,761部 左(労働者階級)

1903年発刊当時は女性のための新聞と言うのが売りでしたが、その後労働者階級のための新聞へと編集方針を変更。

Daily Express デイリー・エクスプレス

339,303部 右~中立(労働者~中産階級)

1900年に創刊された新聞で創刊当時から世界一売れている新聞として知られていましたが、今はほかのタブロイド紙と争っています。

どちらかと言うと右寄りですが、時々労働党を支持することも。

News of the World ニュース・オブ・ザ・ワールド

2,,606,397部 中立(労働者~下層中流)読者数は2011年4月のもの。

ザ・サンの日曜版の位置づけだった新聞ですが、2011年に廃刊となりました。

有名人のゴシップなどを多く報道していたのですが、物議をかもす取材方法や虚偽の記事でよく問題をおこしていました。2011年には有名人や事件の被害者や遺族、ウィリアム王子などの携帯電話に不正アクセスして情報を得ていた疑いが浮上したのです。このことについて批判があいついて企業が広告を停止するようになりました。これが直接的な原因でこのタブロイド紙は廃刊に追い込まれたのです。

右より左より?

イギリスの各新聞を政治的に右寄りか左寄りかイギリス人に聞いた印象をグラフにしたものが下記になります。

その新聞が右か左かが「知らない・わからない」と答えた人(39%から49%)をのぞいた数字です。

(Source:YouGov.com)

まとめ

日本ではイギリスの新聞についてあまり知られていないのか、時々大衆紙の情報を取り上げて信頼できる話として扱っているようなものがあります。その中には、いわゆるネトウヨとか愛国主義的な傾向のある記事がデイリー・メールなどの大衆紙の眉唾物の情報を取り上げていかにも事実であるかのように取り扱っていたりします。

このような場合、書く方はデイリー・メールがどのような新聞か知っていてわざと使っているのかもしれません。そんな時、読者がそれをそのまま事実として信じてしまう可能性があるのではと心配になります。

そのような記事を読んだ場合、ソースとして使われている情報が信頼に値するものなのかを確認することが大事です。もし、同じような情報がほかの一般紙でも報道されていたら事実と考えてもほぼまちがいないでしょう。でも、そうでないのなら眉に唾をつけて読むべきだし、イギリス人ならそれがわかっています。

外国の新聞などの情報を引用する際は、そのソースが信頼に値するかどうか調べるのは書く者の責任だと言っていいでしょう。

それを怠っている人が書くものを私は100%信頼できません。

イギリス階級社会は差別ではなく文化の違い:英語も職業も趣味も住むところも

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