サイトアイコン 【英国発】news from nowhere

BTS原爆Tシャツの意味や和訳と画像、海外の反応と謝罪表明

BTSのメンバーが原爆投下画像がプリントされたTシャツを着たことについて批判され、テレビ朝日の音楽番組への出演が取りやめになったことがイギリスなど海外でも報道されています。どうしてこんな騒動に発展したのでしょうか。ジミンが着ていた原爆Tシャツは韓国ブランド製ですが、そのデザインの意味、和訳を画像と共にひもとき、BTSやブランド会社の説明も紹介します。両者に反日の意図があったのか、テレビ番組出演キャンセルの処置が適当だったのかを考えてみました。(2020年1月更新)


Contents

BTS(防弾少年団)

BTSは2013年にデビューした、国際的な人気を誇る韓国の7人組男性音楽グループです。昨年の世界ツアーは南北アメリカ、台湾など10ヶ国で約10万人を動員。米国ではK-POPとしてはじめて1位になりました。

イギリスをはじめとするヨーロッパでも人気があり知名度も高く、世界舞台でこんなに活躍する東アジアのグループは初めてで、これまで日本人ミュージシャンにはなし得なかった快挙と言えるでしょう。

BTSが活躍するのは音楽界だけでなく、今年9月には米ニューヨークの国連本部でユニセフの「Generation Unlimited」のイベントに出席し、世界の若者に向けて英語でスピーチしたことが話題になりました。

世界中の若者に「肌の色やジェンダーに関係なく、自分自身で自分を語って」と語りかけるメッセージは多くの若者に力強く響くものでした。アメリカのテレビドラマ番組を通して覚えたという、BTSリーダーのRMことキム・ナムジュンの英語も完璧で感心したものです。

テレビ朝日の音楽番組出演キャンセル

BTSは11月9日に放送予定だったテレビ朝日の音楽番組「ミュージックステーション」に出演をする予定でしたが、それがキャンセルになるという発表がありました。

テレ朝によるとBTSメンバーが着用したTシャツについて波紋を呼んでいるとの報道があったため、所属レコード会社と協議を続けてきたものの、結果として「ミュージックステーション」出演を取りやめることをテレ朝側から求めたものだそうです。

テレビ朝日は「当社として総合的に判断した結果、残念ながら今回は出演を見送ることとなった」と言っていて、BTS所属レコード会社との協議内容など詳しいいきさつは発表していないようです。

BTSが着用した原爆Tシャツ

問題となったとされるTシャツはバックに、PATRIOTISM(愛国)OURHISTORY(私たちの歴史)LIBERATION(解放)KOREA(韓国)と言った言葉が印刷され、それと共に右側に原爆投下後にキノコ雲が上がる様子が一見してわかる写真と左側に韓国の解放を喜んで万歳をしている人の写真がプリントされています。

これを見た人が「原爆投下を賞賛するようなTシャツを着るのは無礼だ」という批判が相次いだとのことです。

この報道を最初に聞いたとき、私はBTSが何らかの意図をもって最近のステージ上などでそういうTシャツを着用したのが問題になったのかと思ったのですが、よく調べてみるとそうではなかったようです。

BTSのメンバーの1人であるジミンがこのTシャツを着たのは2017年のワールドツアーの時だとのことなので去年のことになります。また公になるステージ上で着たわけではなく、オフで日常的に着ていた写真を見ての批判だったようです。

原爆Tシャツ販売ブランドは韓国の会社

このTシャツはourhistoryというブランドで売られており、韓国のJLカンパニーという会社が製作販売しています。くだんのTシャツもまだこの会社の通販サイトに掲載されていますが、今のところ売り切れになっています。

ourhistory

この騒動について取材されたJLカンパニーの代表は歴史に関心が深く「ファッションに歴史意識を取り入れ、若者に少しでも歴史に興味を持ってもらいたいと思った」と言っています。

Tシャツの原爆イメージについては「原爆が投下され、日本が無条件降伏し、韓国が解放されたという歴史の順序を表現するものだった」とし、反日感情や日本への報復とか日本をおとしめる意図はなかったとしています。韓国が日本統治から解放された8月15日の光復節を記念するものであり、それに至った歴史的な出来事の一つとして原爆投下を扱ったということでしょう。

歴史表に断片的に写真を載せる時、日本敗戦をわかりやすく示すものとして原爆の写真が使われ、そのあとで韓国が解放され万歳する様子の写真が載るというのは想像できますが、それをそのままTシャツにしたということなのでしょうか。

会社代表はテレビ朝日の音楽番組出演が取りやめになったことについてもBTSに対して申し訳ないと言っています。

この通販会社のサイトを見ると、通常の若者ファッションに交じって「独島」Tシャツや「1945」Tシャツも販売していますが、特に政治的な意図を全面に押し出さず、イメージとして使っているようです。

BTSの反応

テレ朝番組の出演が取りやめになった件について、BTSは11月8日ホームページで「楽しみにしていただいたファンの皆様には残念な結果となり、お詫びします。BTSはこれからもさらにいい音楽を提供しステージでファンの皆様とお会いできるように努めます。」とコメントしています。

番組が取りやめになった理由やそのいきさつ、原爆Tシャツについての釈明などはこれまで私が見た限りはしていないようです。


【追記】11月13日にBTSの所属事務所が過去にBTSメンバーが原爆投下の様子がプリントされたTシャツを着用したり、ナチス親衛隊のモチーフがついた帽子をかぶっていたことについて謝罪を表明しました。事務所のコメントではBTSは原爆被害者やナチス被害者を傷つける意図はなかったと説明し、ユダヤ系人権団体に対して謝罪の書簡を送ったとしています。

11月13日にBTS所属事務所の代表者は日本被団協を訪れ、状況の説明と謝罪をしました。

被団協は「こうした表現を巡る問題では、対決や分断を煽るのではなく、対話を通じてお互いの理解を深める方が望ましい。核兵器とはどういうものなのか、何が問題なのかといった点を巡り、話し合いをしていきたい。BTS側にもそう説明し、一致した」ということです。

また、BTSは13日東京ドームで日本ツアーをスタートさせましたが、ステージ上でジミンが「日本の皆さんだけでなく、全世界の皆さんに心配をおかけしました。」と涙ながらに思いを伝えたそうです。

11月16日にBTS事務所はさらに、韓国に住む被爆者にも謝罪しました。広島や長崎で被爆した韓国の被爆者が多く住む南部・慶尚南道陜川郡を訪れ、被爆者側に謝罪したとのことです。

海外の反応

BTSが世界的に有名なグループなのだと改めて感じたのは、この一見遠い東アジアの2か国間で起こった小さな事件に関してイギリスのニュースがいち早く取り上げたことです。

ガーディアン紙では11月9日にBTSの日本のテレビ番組出演がキャンセルされたことを報道しました。

広島原爆と韓国独立を祝うTシャツを着ていたことが理由で、BTSはファンに謝罪したと説明しています。 この記事ではBTSの爆弾Tシャツ問題に限らず、さらに、慰安婦、日韓合同演習、徴用工などの問題で日韓関係が悪化していることにも言及しています。

ガーディアンに続きBBCでも、BTSの原爆シャツについて報道しました。

このTシャツは今でも韓国のオンラインショップで販売しているとして、その通販サイトもリンク付きで紹介しています。BBCは日本と韓国の2国間では戦争の歴史がとてもセンシティブな問題であることを指摘し、日本人がBTSの原爆Tシャツ着用について批判しているツイッターメッセージを紹介しています。

このあとでBBCはBTSを擁護する日本人ファンのコメントも掲載していますが、そのあと韓国人が「韓国が自国の解放記念日を祝うことがどうしていけないのか」というコメントも紹介しています。

BTSは反日なのか

BTS といえば、今年9月に作詞家秋元康が作詞を手掛け日本で発売する予定だった新曲のコラボを取りやめた経緯があります。

これは韓国のBTSファンから「秋元氏は少女を商品のように扱う」「演出に旭日旗を使う右翼」と批判する声が上がったためだと言われています。

BTSは若いポップ・ミュージシャンとはいえ、ユニセフのイベントで世界に向けてスピーチをするなどの活動もしているグループです。社会的、政治的な関心も高く国際的に活躍し続ける彼らが隣国である日本に対してヘイト的な考えを持つような狭量な人たちだとは考えられません。

メンバーの一人ジミンが原爆Tシャツを着ていたことで不快感や悲しみ、憤りを覚える人がいるということは理解できますが、彼はそのことについて単に思いいたらなかったのであり、深い意味はなかったのではないかと私には思えます。

日本が原爆に抱くイメージと諸外国のそれとは違うということもあるでしょう。私たちがキノコ雲の写真を見るとその下に広がる惨状とその後も長く続く被害者の苦しみを思い浮かべますが、当時の歴史について深い知識がない人にとってはそうとは限りません。

これはかつて日本に統治された韓国のみならず、日本以外ではどこでも同じような印象といっていいかもしれません。

たとえば欧米諸国でもこの写真が他国を侵略し続けていた日本との戦争を終結に導いたシンボルのような意味で使われることがあるのです。

このことについて私が理解できるのは、真珠湾攻撃や神風特攻隊などについてのイメージが日本以外の国では日本国内で考えているようなものとは違うことに驚いた経験があるからです。原爆の被害を受けた日本人から考えるとびっくりすることかもしれませんが、いい悪いは別としても、それが外国の常識だということを理解する必要があるでしょう。

同様に、日本を含む各国でナチス風のファッションを深く考えることなく身につける人がいますが、ホロコーストにより被害を受けた人からみると全く許されないことでしょう。

もちろん若いとはいえ、BTSのような世界的に有名で社会的にも活動する人たちであるからこそ、原爆被害の悲惨さを認識しておいてほしいと思うのは当然の考えです。BTSメンバーには原爆がもたらした惨事やこのことが日本人の間でどのように受け止められているか、もっと勉強してもらいたいと思います。

原爆による被害者は日本人だけではなく在日朝鮮人にもたくさんいたのですから。広島の原爆記念館などを訪れて理解を深めてもらいたいものです。

けれども、それと同時に日本人もかつて日本が韓国その他の東アジア諸国にとった侵略その他の行為についても学習し事実を認識し反省すべきことは反省してその思いを他国に伝えるべきではないでしょうか。

反韓意識と反日意識

BTSメンバーが過去に深い意味もなく、原爆Tシャツを単なるファッションとして身につけていたことを批判する人がいる背後には、反韓意識のある人たちがBTSは反日だと煽っている感じもします。

原爆Tシャツを口実に使ってBTSを批判するのは、慰安婦問題、そのため大阪市がサンフランシスコ市と姉妹都市解消したことや、韓国徴用工、韓国が旭日旗に抗議したことにより取りやめになった日韓合同演習など一連の出来事に関連する一部の日本人の反韓意識が背後にあるのではないでしょうか。

もちろん憎悪感情は双方にあるわけで、このことは逆に言えば一部の韓国人の反日感情にも関わってくるでしょう。

戦時中日本統治下にあって辛苦をなめた韓国人に日本を憎む気持ちがあることは想像に値するし、そういう気持ちがない韓国人でも他国に支配されていた自国が解放され独立することができたことを祝う気持ちを素直に表現することがどうしていけないのかということでしょう。

この問題に対する日韓両国の歩み寄りはなかなかスムーズにはいかないようで、近年になって両国間の衝突がますます顕著になってきているように見えます。

このことについては二国間で政治的にも国民レベルでも話し合いを続け、地道に解決していく努力が必要だと思います。そのためには日本が過去に韓国において行った行動について正直に向き合い、反省しそれを韓国に伝えることが役立つでしょう。

音楽と政治

日本では紅白に出場するかどうかということまで取りざたされているBTSですが、国境を越えて国際的に活動する彼らにとっては日本は数多くある国の一つにしかすぎません。韓国でも世界的にも絶大な人気を誇るグループ、日本での一部の評判と自国や他の外国での人気を考えると日本の音楽番組に出演できないとか、一部の日本人から嫌われることはあまり重要でないということなのではないでしょうか。

日本では、政治に口を出すミュージシャンが批判され、音楽に政治を持ち込むなと言われます。沖縄の翁長元県知事が死亡した時に追悼の辞を述べただけで沖縄出身の安室奈美恵が批判されたりもしています。

これに対して、欧米諸国ではミュージシャンをはじめとする有名人が社会的、政治的な活動をするのが当たり前となっています。先の米国中間選挙ではこれまで政治的な発言をしなかったテイラースウィフトが自らの民主党指示の意思を明かし若いファンに「投票しよう」と呼び掛けたことで若者の投票率が大きく増えて大きな反響を呼びました。

日本ではこれとは逆に政治問題によって国際的なミュージシャンが音楽番組から排除されることになるとは皮肉なことで、鎖国からまだ目が覚めていない国民性が伺えます。これはとても残念なことだと思います。

音楽は国境を越えて交流できるものの一つであり、国際親善に大きく役立ちます。

今や世界中の若者にK-POPファンがいて、音楽を通して韓国に親しみを持っている若者は増えており、日本もその例外ではありません。

音楽などエンターテイメントを軽く見る大人もいますが、子どもや若者にとってはエンタメを通して世界を知ることはとても重要です。「国際親善」などと大それたことを考えない若者の間で自然に親近感を深め、交流をすることで他国と偏見のないつながりができることは将来にとってかけがえのない資産になるはずです。BTSが若者や子供を対象とするユニセフの活動に招聘されたのも偶然ではないでしょう。

これは逆に言えば日本のアニメ文化などが外国に浸透していき、それまで日本が遠い存在だと思っていた若者が日本に興味を持ってくれるのと同じことです。

BTSのユニセフでのスピーチを聞くと、彼らが国際的な視野を持った若者であることを感じます。

彼らは隣国に対するヘイトによって自らの音楽活動が制限されることをよしと思ってはいないでしょう。この一件にかかわらず、これからも日本を含む世界中の若者との交流を深める活動を続けてほしいと思うし、日本側も寛容さを持って彼らを迎えてほしいと願います。

まとめ

今回の原爆Tシャツの件で不思議に思ったのは、原爆を投下した当の米国や米国軍、そのような悲劇に至るような戦争を続けた自国の軍や政府などを批判する声が日本人から聞こえてこなかったことです。

原爆が落とされる経過に至った背景にはどのような歴史の流れがあったのか、それを阻止することはできなかったのか、これから同じようなことが起こらないために私たちは何をしたらいいのかということをこれをきっかけに考えてみたいものです。

歴史の流れというものはさまざまな見方ができます。私はキノコ雲のTシャツを韓国人が着たことが許されないと思う日本人の気持ちは理解できます。

けれども、他国の統治下であった自国が解放されたことを祝う韓国人の気持ちもよくわかるのです。お互いが過去の歴史を冷静に見て反省すべきことは反省し、議論すべきことは話しあっていくことが両国間の理解を深めるのに今こそ必要だと思います。

(敬称略)

関連記事

韓国の慰安婦問題とは国家間ではなく女性の人権の問題では?
慰安婦像問題でサンフランシスコと大阪姉妹都市解消【海外の反応】
翁長沖縄県知事死去すい臓がんで:追悼の辞「最も勇敢な男」
テイラー・スウィフト民主党支持をインスタで発表【日本語訳】

モバイルバージョンを終了