ビットコインをはじめとする仮想通貨 (cryptocurrency) の急落を受け、ヨーロッパの投資家や富裕層は仮想通貨を売って安全な金を買っていると報告されています。
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ビットコイン下落後の売却
1ヶ月でビットコインが40%以上下落したことから、投資家がビットコインを売却してデジタル・ゴールド、また金現物を買っているというパターンが見てとれるということです。
ヨーロッパ大手の貴金属商 Sharps Pixley社によると金の取引がここ最近100万ポンド(約1.5億円)単位で増えているそうです。
また、フランクフルトのCoininvest 社によるとビットコインが2017年に14倍に上昇したあと急落したため、金貨の売上が5倍に増えました。同社の社長は「仮想通貨を金に変えてくれ。」というメールや電話が立て続けに来ていると報告。1月26日にビットコインが23%下落した時に30キロ近い金を120万ドルの相場で売りました。ビットコイン1枚で1オンスのブリタニア金貨が8枚買えたそうです。
仮想通貨の英訳は?「cryptocurrency」
ここで少し脱線しますが、日本で使われる「仮想通貨」の英訳はウィキペディアなどでは「virtual currency」ということになっていますが、欧米では通常「cryptocurrency」(クリプトカレンシー)が使われます。
「crypto currency」という2語でなく、「cryptocurrency」で1語として綴られることが多いです。
「crypto」と言うのは暗号という意味なので、「cryptocurrency」は「暗号通貨」ということになりますが、「仮想通貨」も「暗号通貨」も同じことを指していると私は理解しています、厳密には違うのかもしれませんが。(このあたりに詳しい方、ご教示いただけると幸いです。)
「virtual Currency」と言ってもイギリスでは「それ何?」って言われるのが落ちですので、覚えておきましょう。
この記事では「cryptocurrency」= 「仮想通貨」として書いていますのでご了承ください。
仮想通貨は安全な投資なのかという懸念
ビットコインをはじめとする仮想通貨のあまりに大きな価格の変化によって、ここ最近ささやかれている「そもそも仮想通貨というものは本当に安全な投資なのか。」という懸念が広がり始めているようだと言われています。
ロンドンの上層階級を多く顧客に持つ金ディーラー、ロス・ノーマンは3ヶ月前からビットコインを仲買人を通じて金に換えていました。従来の顧客からの取引が低調な中、100万ポンド以上の取引をする新参客が定期的にあらわれるそうです。
「彼らの多くは25歳といった若者でラップトップパソコン持参でやってきて、1ドル以下だった頃に買ったビットコインが貯まっているのを、ちょと恥ずかしそうに見せてくれるんです。」
1000ビットコインを金現物に変えたいという客にノーマン氏の会社はビットコインの取引をしないので仲買人を使う必要があると教えたそうです。
ノーマン氏によると「ビットコインはロブスター・ポットのようなものだ。入るのは簡単だけど、出るのが難しい。」
「金は4,000年の歴史があるから、このような状況の中では投資対象として魅力的にうつるようですね。」と語っています。
GoldCore社でも同様なことがおきています。顧客が仮想通貨から金や金貨にリスク分散していると同社のマーク・オブライエン氏は言っています。
氏は「仮想通貨の価値があまりに変動するので人々は不安になってきているようです。従来の安全な資産に比べるとデジタル資産はリスクが大きいと気づき始めたのでしょう。」と語っています。
ビットコインと金の共通点と違い
意外にも、保守的な従来の投資家や富裕層だけでなく、新参の若いビットコイン投資家にとっても金現物は人気があるそうです。
その理由は、両者には共通している点があるから。
「どちらも数量が限られていて、取引が容易で分散して保管できるという点です。」
「それでも金が仮想通貨に比べて有利な点があります。パスワードがいらない、価格変動が少なく緩やかに値上がりする、それにやっぱり実物を自分の手で触ることができるということでしょうね。」
どうやら、ヨーロッパのお金持ちもビットコインで一儲けした若者も、バーチャルな「コイン」よりじかに手で触れることができる「金」が魅力的にうつるようです。
参照記事:Cryptocurrency Crash Sparks Bitcoin’s Nouveau Riche to Run to Gold
ダボス会議でメイ首相が仮想通貨について警鐘
毎年スイスアルプスで開催されるダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)は今年1月22日から26日まで行われ、トランプ大統領をはじめ世界各国の首脳が世界経済について意見を交わしました。
ダボスでブルームバーグとのインタビューに答え、イギリスのメイ首相は仮想通貨が犯罪に悪用される可能性があると懸念を述べました。
「ビットコインのような仮想通貨については、さらなる調査が必要だ。」
「仮想通貨の流通経路については犯罪者に利用される可能性があるため、何らかの対処が必要になるかもしれない。」と述べました。
イギリスのフィリップ・ハモンド財務大臣はこう述べています。
「ビットコインについては注意する必要があり、世界経済に大きな影響を及ぼすようになる前に何らかの規制を導入することを検討することになるかもしれない。」
Bitcoin draws calls for more regulation at Davos
コインチェックからのNEM不正流出
2018年1月、仮想通貨の大手取引所である日本の会社コインチェックから580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が不正流出しました。
原因は海外からの不正アクセスによるものだったと言われています。外部のネットワークに接続したまま多額のネムを保管するなど、不正アクセスに対する安全対策が疎かになっていたそうです。
コインチェックは流出したネムを預けていた顧客26万人に日本円で返金する方針であると発表しました。返金総額は約460億円になります。
この事件は、仮想通貨が不正利用される可能性を示すものとして、業界に警鐘をならしました。
まとめ
これまでは比較的少数の人にしか知られていなかった仮想通貨ですが、2017年にビットコインが急激な高騰を記録したこともあり、今ではその存在が一般の人に浸透しつつあります。
先見のある個人投資家はすでに仮想通貨に投資をしていて、従来の投資家や富裕層も最近になって仮想通貨を購入し始める人が増えてきました。
けれども、相場の乱高下があまりに激しいので、安全性を求める投資家は昔ながらの「ハードゴールド」に戻りつつあるようです。
日本では一般個人の貯蓄高が大きく、投資先を探していた人が飛びついているのが現状だと思いますが、仮想通貨はまだまだ将来が不透明です。個人投資家は急落や不正利用のリスク、また将来、自国または他国政府による何らかの規制の導入の可能性がることなどを見すえた上で注意深くとらえる必要があるでしょう。