フェイスブックの5000万人以上の個人データがデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカに流出。イギリスEU離脱国民投票や米大統領選キャンペーンにも利用されていたという報道があり、イギリス政府や欧州議会は厳重に調査をする方針を発表しました。このニュースを受けてフェイスブックの株は急落しています。
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フェイスブック性格分析アプリ
性格分析テストってありますよね。
したことがある人もいるのではないでしょうか。
簡単な質問に答えたらその人の性格タイプがわかるというものです。
冒険心があるか、社交性があるか、神経質か、感情的か、几帳面かなど。
フェイスブックにもこういう性格分析アプリがありますが、それを使うことであなたの個人情報が第3者に漏れていたとしたらどう思いますか。
そして、その情報をもとに分析されたあなたの性格や政治的傾向を切り口に、巧妙にターゲット化されたキャンペーン広告や情報があなたが見ているウェブページに現れるとしたら?
あなたがフェイスブックでシェアしたり「いいね」をしたりすることで分かるあなたの情報も筒抜けで、あなたの知らない誰かがあなたのことを友達よりも詳しく知っているとしたら?
もしかしたら、そんなことが起きているのかもしれないという話なんです。
ケンブリッジ・アナリティカとは?
ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)は2013年に設立されたイギリスのデータ分析会社。
SCLというイギリスの会社が選挙コンサルティングの仕事をするために作った子会社ですが、この親会社はその首脳部にイギリスEU離脱派のロバート・マーサー(Robert Mercer)、米大統領選でトランプの選挙参謀を務めたスティーブ・バノン(Steve Bannon)といった人物がいます。
ケンブリッジ・アナリティカは2014年以降アメリカの数々の選挙キャンペーンの仕事を受け持ち、2016年6月に行われたイギリスのEU離脱国民投票において離脱派のコンサルティングを担当しました。
また、2016年11月に実施されたアメリカ大統領選挙においてはトランプ陣営がこの会社を選挙コンサルタントとして利用しました。
ケンブリッジ・アナリティカのデータ分析手法はサイコグラフィックス(Psychographics)と呼ばれ、ケンブリッジ大学のコジンスキ博士(Dr Kosinski)の理論を応用したもの。
アプリを使って性格診断をすることで個人のパーソナリティーを識別する方法です。
性格分析以外でも、性別や年齢などの基礎的な情報に加え、フェイスブックで「いいね」をしたりシェアしたりするデータを加えていくと非常に正確なプロファイリングが可能になります。
友人も知らないような詳細な性格までわかってしまうそうです。
そして、プロファイリングをデータ・セットに分けることによってそれぞれのグループに効果的な情報をピンポイントで提供し、それによって個人の行動に影響を与えることもできるということがわかってきたのです。
フェイスブックからのデータ流出
ケンブリッジ・アナリティカのEU離脱キャンペーン及びトランプの米大統領選との関係について、英オブザーバーとガーディアン紙は1年以上取材を続けていましたが、確固とした証拠をつかむことはできないままでした。
けれども、3月17日にケンブリッジ・アナリティカの元社員で、データ分析を担当してたクリストファー・ワイリー(Christopher Wylie)が証言を発表し、これまでの疑惑が明るみに出ました。
ワイリーは同社で働いていた2014年はじめ、アメリカの選挙民のプロファイリングをするために許可なしにフェイスブックのデータを利用したと告白しています。
「我々は何百万人ものフェイスブック利用者のプロファイルを集めて、そのデータに基づいてモデルを作り、ターゲットマーケティングをした。あの会社はそのために作られたんだ。」と語っています。
フェイスブック会員本人の情報だけでなく、その友達のデータまで集め、その数は5,000万人以上に上りました。
どうやってデータを集めたのでしょうか。
ケンブリッジ・アナリティカは320,000人の米国有権者に2~5ドルずつ払って「性格分析テスト」をさせました。このテストを受けるためにはフェイスブックアカウントにログインしてからする必要がありました。
そのテストを受けた人々の個人情報をフェイスブックアカウントから集め、同時にその人たちの「友達」のデータも許可なく収集したのです。
性格分析テスト結果はテスト受験者の「いいね」の情報などと共に分析されました。
これによって、細かくプロファイリングされた有権者たちに、それぞれをターゲットにした広告を表示させたのです。
この手法は「マイクロ・ターゲティング」と呼ばれ、個人の思考や行動に影響を及ぼすのに効果的だとされています。
ニューヨーク・タイムズによるとケンブリッジ・アナリティカによって集められたデータはまだオンライン上に残っています。
ワイリーはケンブリッジ・アナリティカは単なるデータ分析会社ではなく「プロパガンダ・マシーン」だと言います。
集めた個人情報に基づいて的確な情報を提供することでその人の行動に影響を与えることができるのです。
「政治を変えたければ文化を変えればいい、そしてそれは個人データを利用することで可能になる。」と彼は語ります。
フェイスブックの対応
フェイスブックは大学教授がフェイスブック性格分析アプリへの登録を促し、そのデータを無断でケンブリッジ・アナリティカに渡したと説明しています。
ケンブリッジ・アナリティカにユーザー情報を破棄するように要請したということですが、データ情報は破棄されないままで、ケンブリッジ・アナリティカはフェイスブックを利用し続けていました。
今年3月16日になって初めてフェイスブックはケンブリッジ・アナリティカのアカウントを削除しましたが、これはオブザーバーがフェイスブックにコメントを求めた4日後だったということです。
データ漏洩が発覚してから2年以上経つのに、どうしてそれまで何も対応をしなかったのかが問われています。
ケンブリッジ・アナリティカがフェイスブックの情報をどうやって入手したのかについてマークザッカーバーグCEOに説明を求める声がイギリスやEU首脳から出ていて、フェイスブックに対する規制が強化されるのではないかと思われます。
米大統領選に先立ちロシアがフェイスブックを利用した件についても米議会で証言を求められていましたが、今回も民主党の議員らがザッカーバーグが議会で証言するべきだと求めています。
3月19日の米株式市場ではフェイスブックの株価が急落し、これからの展開が待たれます。
巨大デジタル会社の個人データ保持について
フェイスブックなどの巨大なデジタルプラットフォーム会社は膨大な個人データを保持しています。
私たちは日頃自分がオンラインに残す情報についてあまり真剣に考えたことがないかもしれませんが、自分が知らない間に個人データが悪用されることもあるかもしれないということを肝に銘じておかないとならないでしょう。
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