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ロンドン グレンフェル タワー 高層住宅 火災で死者 70人以上 原因は?

Grenfell Tower

Grenfell Tower Fire (The Telegraph)

2017年6月14日未明、ロンドン西部ノース・ケンジントン(North Kensington) にある公営住宅のグレンフェル・タワー(Grenfell Tower) 高層住宅 で火災が発生し、短時間で燃え広がった火事は鎮火まで2日間かかりました。この火災での死者は70人以上になると推定されており、イギリスでは戦後最大となった火事の原因は何だったのでしょうか。

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グレンフェル・タワーの場所や住民

グレンフェル・タワーはロンドン西部ケンジントン・アンド・チェルシー (Kensington and Chelsea)区にある公営住宅です。ロンドンでも富裕層が多く住む「ポッシュな」地域で、ウィリアム王子やキャサリン妃が住むケンジントン宮殿から2kmほどの距離にあります。

けれども、ロンドンのそういう高級住宅街にも低所得者層は点在しています。この地域にある通常のマンションの家賃には手が届かない人たちがほとんどで、低所得者向けの公営住宅に住んでいます。グレンフェル・タワーはそういう公営住宅の一つで、ケンジントン・アンド・チェルシー区が管理する、いわゆる「カウンシル・ブロック」です。

ちなみに、日本で高層住宅というと東京などの高級マンションを思い浮かべるようですが、イギリスでは高層住宅というのは一般的に「貧しい人たちが住むアパート」というイメージです。低所得者、失業者など、カウンシルから経済援助を受けている住民も多く、グレンフェル・タワーでも公営住宅家賃援助を受けている住民が多かったのではと思います。そうでもないと、家賃が高騰しているロンドン中心部に低所得者層は到底住めないでしょう。ロンドンのほかの公営住宅同様、グレンフェル・タワーには多様な国籍の移民が多かったと言われています。

グレンフェル・タワーは1974年に建てられた24階建ての高層アパートで、127戸からなり、住民は約600人。かなり古い建物で、現行の建築基準とは異なる工法で建てられてはいるものの、2015年〜2016年にかけて予算860万ポンドの大規模な改修工事が行われたばかりでした。改修工事が行われたばかりの建物でどうしてこのような大惨事が起こったのでしょうか。

火事の直接の原因

ロンドン警視庁の発表によると、火元は米国大手家電メーカー、ワールプール社のホットポイント冷蔵庫であることが判明しました。4階(日本の5階にあたる)のアパートの一室にあった冷蔵庫から火が出たということです。冷蔵庫などの電気機器から火が出て火事になることは珍しいことではありませんが、この場合、それがどうして短時間に建物全体に燃え広がり、このような大規模火災になったのかということが問題となっています。

火災延焼の原因は外壁だった可能性

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グレンフェル・タワーの火災では、出火から約15分という短い時間で火が建物全体に燃え広がり、逃げ遅れた住民が多かったとされています。火の回りがはやかった原因として、2015〜16年に行われた改修工事の際に取り付けられた外壁 (cladding)が理由だとする可能性が指摘されています。

この外壁は断熱材とその外側にある金属製のパネルからなっていましたが、この断熱材に燃えやすい素材が使われておりそれが焼け、また断熱材とパネルの間にある空気の層の影響で延焼が早まったのではないかと言われています。

詳しい原因は当局の調べを待たなければなりませんが、この火災の特徴として外壁が一気に燃え上がったことを考えると、この説が現在の一般的な見解となっています。

イギリスでは建物の新築や改築をする時、Building Regulations と呼ばれる建築規制申請をする必要があり、グレンフェル・タワーの改修工事もこの規制を受けて行われました。しかし、グレンフェル・タワーの改修時に使われた外装材の使用は現行の建築規制に違反するものではありませんでした。

住民の避難方法

イギリスの大規模集合住宅では、一般的に、自宅以外で火災が発生し、自室に影響がない場合は、自宅内にとどまるように指示されています。通常このような集合住宅は防火壁などによって延焼を防ぎ、簡単に建物全体に火が回らないように設計されているので、その方が安全だという理由です。

グレンフェル・タワー火災の場合も火災発生後、室内にとどまるようにという指示にしたがって自宅内にいたため、逃げ遅れた住人がもいたとされています。

また、この建物にはバルコニーがなく、避難方法も建物中央にあるエレベーターホールを囲むエリアにある階段だけであったため、避難も難しかったようです。

火災後イギリスでの反応

イギリスではこの悲惨な火災は当初のショックから、人々の同情、追悼、ひいては抗議といった反応を引き起こしました。初の非白人ロンドン市長となったサディク・カーンは「グレンフェル・タワー火災は防ぐことができたはずだ。この地域の住民はこれまでの政府の長年の無策や火災後の対応に怒りを覚えている」と述べました。

この大惨事に心を痛めたイギリス国民は全国から大量の寄付を送り、地元ボランティアが対応しきれないほどになりました。地元では、教会、モスク、コミュニティーグループをはじめとする団体や個人ボランティアが力を合わせて避難民のサポートにあたりました。

「ロイヤル」が頭についたケンジントン・チェルシーという王室特別区でおこった災害であるだけに、日頃「王室関係者やセレブ、富豪が住む地域」と広く認識されているイメージと、死亡者はもちろん、命からがら逃げ延びた犠牲者の現状との格差が、イギリス人には歴然と見えてきます。犠牲者の多くは移民、低所得者層で持つべきものをあまり持っていない人たち、そのような人たちが家をはじめすべてを失った状況に怒りの声が上げられています。

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