熊本市議会 緒方夕佳市議 子連れ出勤 : イギリスでも報道

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Kumamoto City Assembly

Last Updated on 2020-08-31 by ラヴリー

熊本市の市議会で緒方夕佳市議が生後7ヶ月の長男を連れて出席しようとしたニュースはイギリスでもBBCや各紙で取り上げられました。どのメディアも日本の働く親が抱えている問題や「時代錯誤」的な男女格差の現状を批判的に報道しています。

Contents

熊本市議での出来事

熊本市の緒方夕佳市議は11月22日に市議会に生後7ヶ月の長男を連れて出席しようとしましたが、市議会規則で議員以外の入場が認められていないということで、議長や議会事務局と話し合った結果、子供をおいて出席することになりました。この対応のため、開会が40分遅れたことで、議会の進行を妨げたとして、緒方市議は文書で厳重注意を受けました。

緒方市議は子供同伴で市議会に出席しようとしたことで、子育てと仕事の両立に困っている人たちの苦悩について、社会の関心を集めたかったと言っています。彼女は出産前から市に対し、自分と同様の立場にあるものが、議員活動と子育てを両立できるように対応を検討してほしいと何度も要請したとのことです。議場に託児所を設けたり、ベビーシッターをつけたりしてほしいといった、具体的な提案もしてきたといいます。それにも関わらず市からは前向きな返答を得られなかったため、子供を連れて市議会場に現れることを決めたということです。

緒方市議は「自分個人のためならやっていません。子育て世代の悲痛な声があって、この声を代表として伝えたかっのです。」と語っています。

緒方市議が子供を連れて市議会の席についたとたん、他の議員やスタッフ、議長に退出を命じられました。その後話し合いの結果、「議員活動と子育てを両立できるような仕組みづくりをこれから話し合って行きましょう」との答えをもらったので、その日はいったん子供を友人に預けて議会に出ることに同意したそうです。しかし、そのあと、市議会は緒方市議に文書で厳重注意をすると決めました。

この出来事については、イギリスでも様々なメディアで報道されていました。

イギリスでの報道

BBC

BBCの見出しは「日本の政治家が議会に赤ちゃんを連れて来て議論に」

この記事では、緒方氏が子育てとキャリアを両立させることが女性にとってどんなに難しいかを見せたかったと報告しています。熊本市議会は議場に傍聴人が入場することが許可されていないため、彼女は市議会の規則を破ったとされたこと。この件について長い議論があったあと、40分後に緒方氏は子供を友人に預けて議会に参加したこと。市では、彼女の主張について検討し、また、小さい子供を持つ議員をサポートする方策も検討すると言っています。毎日新聞によると、市の代表者が子供を持つ市議会議員が議会に参加できるサポート体制の導入を検討すると報道していることを伝えています。

これは緒方氏が7ヶ月前に長男を出産してから初めて出席する議会で起こった出来事で、それまで彼女は、議会に子供を連れて行くのを許可するか、または託児サービスを提供するか、何度も市に要請しました。彼女が語ったところによると、市議会が子育てをする女性にとっていい仕事をする場所であって欲しかったからと理由を説明。けれども、肯定的な返事をもらえなかったため、市議会に子供を連れて行くことに決めたと報道しています。

朝日新聞の取材で、市は「緒方市議からは『子供から長く離れることについて心配している』と伝えられただけで、市議会に子供を連れてくることを要請したことはなかった」と報告。市議会の規則に子供を連れて来てはいけないという規則があるわけではないが、会議進行中は訪問者や傍聴人が入場することは禁止されていると伝えています。

そして、日本は男女の役割分担についてとても保守的な国であり、多くの女性が結婚や出産を機にキャリアを諦めると言っています。安倍首相率いる政府はここ最近何年か女性が出産後も仕事を続けることが容易になるように努力をしているが、男女間の格差は大きいままであると伝えています。

また、2017年世界経済フォーラムの男女格差指数で、日本は144カ国のうち114位だったと指摘しています。

デイリー・テレグラフ Daily Telegraph

デイリー・テレグラフ紙の見出しは「日本の政治家が職場に子供を連れて行ったことで懲戒処分」

緒方氏が7ヶ月の赤ちゃんを市議会に連れて行くことで、子育てとキャリアを両立させようとする女性に立ちはだかる問題に関心を集めようとしたと書かれています。そして、「緒方氏はそれがどんなに困難なことだったかを身をもって知ることになったのです、会議の進行を妨げたとして公式に書面で注意を受け、それに対して謝罪することを余儀なくされたということで」と皮肉たっぷりのコメント。

緒方氏が子供を議場に連れてきた途端、彼女は何人もの市議や議長に取り囲まれ議場から退出するように言われ、結局子供を議場の外にいた友人に預けて市議会に戻りました。彼女が去年第2子を妊娠してからこれまで何度も市議会に対して議会に子供を連れてきていいかどうか聞いていたのに、肯定的な返事をもらえなかったことから、働く女性の問題について関心を集めるために、子供を市議会に連れて行くことにしたとしています。そして、その間ずっと赤ちゃんは泣きもせず何も問題はなかったことも。

記者は働く母親が直面する規則にがんじがらめになっている日本社会の寛容性のなさについて語ります。その後、市議会は緒方市議に書面で公式に注意をした反面、働く女性が職場に子供を連れて行かざるを得ない状況を改善するための対策を検討する何の兆候もないとしています。

また、オーストラリアのラリッサ・ウォーターズ国会議員の例を引き合いに出し、ウォーターズ議員はオーストラリア国会の新しい規則に基づき、赤ちゃんを議会に連れていき、議場で授乳したことを伝えています。そういう事例と、日本の母親が出産後にキャリアを続けるためにさらされている厳しい現実を比較して対照的であると指摘。

また、安倍首相が高齢化による日本の労働力の縮小に対応するため女性の雇用を促進する、「ウーマノミクス」を提唱していることにも言及し、これを実現するための障壁がどんなに大きいかということを述べています。

日本の働く母親に立ちはだかる課題のリストは長く、公共の託児設備の不備、男性中心社会における、はたらく女性に対する時代錯誤的な差別、日本人男性のうちたった2%しか育児休暇をとらない現状などをあげています。

そして、BBCと同じく2017年世界経済フォーラムの男女格差指数で日本は144カ国中114位だったことを指摘しています。

ザ・ガーディアン The Guardian

ザ・ガーディアン紙のタイトルは「私が日本で職場に子供を連れて行ったら放り出されました」と、緒方市議の意見を一人称で掲載しています。

「私は市議会に7ヶ月の赤ちゃんを連れて行くことに決めました。なぜなら、働く母親としての私の前に立ちはだかる障壁を乗り越えるためには、それしか方法がなかったからです。」と続きます。

2年前に市議に選ばれてから、私は日本の労働環境をファミリーにやさしいように変えたい、保育設備を充実させたいと努力してきましたが、その提案のどれも受け入れられませんでした。妊娠がわかってからは、市議会に出産後も子供を育てながら市議として仕事をしたい、そのために議場で授乳することを許可してほしい、また、議員や市議会スタッフ、議会出席者が利用できる託児施設をつくってほしいと訴えました。けれども、この要望は受け入れられず、そのような問題は自分で解決するようにと言われました。

外国の人には日本で女性が子供を育てることがどんなに大変か、わかっていただけないかもしれません。

日本では、保育所や託児所が足りないため、多くの女性が退職を余儀なくされます。運良く子供を預けることができた親にも様々な障害がたちはだかります。たとえば、おむつ一つ一つにまで子供の名前を記入する、子供が風邪をひいたら、全快したという証拠を医者にもらって提出しなければならないなど。また、子供が病気になったとき、親が仕事を休むのは並大抵のことではありません。

最後の手段として親が子供を職場に連れて行くと、同僚や上司から文句を言われます。女性は妊娠すると、自分から仕事を辞めるようにプレッシャーをかけられたり、出産育児休暇をとったら代わりに仕事を押し付けられた同僚からバッシングを受けたりします。親が家庭と仕事を両立できるように配慮してくれる職場は、日本では例外中の例外です。

こういう状況で、私と同じように悩みを抱えているすべての働く母親、父親の苦悩を代弁するつもりで、私は市議会の議場に子供を連れ込んだのです。その日の議会は15分くらいしかかからない予定でしたし、息子はいつも大体おとなしいので、私の膝の上で何の問題もなく座っているだろうと自信を持っていました。なので、市議会の同僚やスタッフから、あんなに手荒な扱いを受けるとは思っていませんでした。自分の席にすわったとたん、スタッフや議長が飛んで来て「子供を連れてすぐに議場から出ていってください。」と言われたのです。私はその対応に驚きましたが、「私は子供を持つ議員ですから、子供と一緒にここにいます。どうぞ会議をはじめてください。」と言いました。私と同じような状況にいる市民の代表である以上、退場させられることには同意できませんでした。

私があの日に受けた対応は、日本では仕事のために人生でもっと大事なこと、子育てや老齢の親の世話をすること、を忘れろと言っているということの証だと思います。

とはいえ、多くの女性の状況は私よりもっとひどいものでしょう。パートや非正規労働で、収入は低いし福利厚生もないところで働いている女性がたくさんいるのです。

そろそろ、日本の職場が働く親のニーズに対応するべきでしょう、家庭でのケアも含めて。働く親にとって、日本がワークライフバランスを享受できるような国になるように、私はこれからも努力を続けていくつもりです。

Independent

インデペンデントのタイトルは「働く女性が市議会から赤ちゃんの退去を命じられる」となっています。

この記事は議員である母親が市議会に赤ちゃんを連れて入ったところ、規則違反だと言う理由で退出を命じられたとして、日本で働く女性が直面する障壁を表す事例だと説明しています。そして、緒方氏が、子育てとキャリアを両立させようとする女性の問題に注目を与えたかったと述べたと言っています。

この記事では日本の高齢化により、女性が職場進出するのが非常に重要であること、安倍首相も女性の労働環境を整えるために保育をはじめとする政策に取り組むと言っていることに言及。安倍首相が2013年に国連で「女性が輝く社会」を作り上げると言ったにもかかわらず、それから何も進展を見せていないと報告しています。

前述の2017年世界経済フォーラムの男女格差指数で日本は144カ国中114位だったことを述べたあと、その順位は安倍首相が政権を握ってから13も下がったことを指摘しています。

また、8月の内閣改造で安倍首相が女性閣僚を2人しか選出しなかったことにも言及。その前、また前々回では3人、5人女性閣僚がいたのと比較しています。そして、日本では国会議員のうち、女性が14%しかいないという点にも言及。

日本の労働法には、政治家が出産や育児休暇を取る制度がないと書かれています。2000年、自民党国会議員に出産のために3日休んだ議員がいて、その時はじめて出産育児休暇制度を導入することになったと報道。その後、12人の議員が最長で3ヶ月の育児休暇制度を利用していることを伝えています。

まとめ

イギリスでも働く女性の状況はまだまだ厳しいと言われています。法律上や建前では男女差別はありませんが、小さい子供を持つ母親は仕事を続ける上で様々な問題を抱えているといえるでしょう。けれども、日本の女性が職場で困難な状態に直面している、このような状況が報道されると、イギリスがいかに働く女性にとって、いい国かということを思い知らされます。

イギリスのメディアが今回のような出来事を伝える時、日本がいかにも「時代錯誤」的な「二流国」であるかのような批判的な論調が目立ち、正直言ってちょっとむかつくところもあります。けれども、日本でこういう論争がなされている現状を改めて見てみると、私が日本を離れてから何十年もたっているのに女性を取り巻く環境はあまり変わっていないようだということがわかり、驚くやらあきれるやら。

安倍首相は「女性が輝く社会を」と言っていますが、少子化で若い人が減るのは困るし、高齢化で労働者数が減るのも困るから、女性にもっと子供を産んでもらいたいし、職場に進出してもらいたいという計算がみえみえで、それを隠そうともしないのが不思議です。それで、これまで抑圧されてきた女性が「はい、はい」と言うことを聞くと思っているんでしょうか。多くの先輩女性が苦労しているのを見て、キャリアや子供より自分の幸せのほうが大事と思うに至る若い女性を誰が非難することができるでしょう。

女性が自ら子供を産みたい、仕事をしたいと思えるような社会にしていかない限りは、日本は少子化、労働力の減少路線から抜け出せないでしょう。そして、そういう社会は男性をも幸せにする要素を含んでいます。何より大切なのは、女性も男性も同様に、自分がしたいと思える仕事をしたいと思える条件ででき、希望するライフスタイルや家庭のあり方を選択する自由がある社会だと思います。

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