「国会議員の報酬が高すぎる、消費税は上がるし庶民の生活は苦しくなるのだから、減らすべき」という声を聞くことがあります。日本の国会議員っていくら給料をもらっているのでしょうか。また、日本の国会議員の報酬を国際的に比較した場合はどうなのでしょうか。調べてみた結果を紹介します。さらに、立憲君主で議員内閣制をとっている点で政治形態が似ているイギリスとも比較検討してみました。
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日本の国会議員報酬
歳費
日本の国会議員の月給は「歳費」として法律で定められており、その額は一般議員の場合、月額で約129万円です。
これに635万円の期末手当(ボーナス)が加算されるので、年収で言うと約2188万円になります。
各種手当
国会議員には給料の他にも「文書通信交通滞在費」という名目で、交通費、通信費、滞在費などが目的の手当てが支給されます。
これらは月額100万円が非課税で支給され、報告や公開の義務もありません。
他にも立法事務費が月65万円(非課税)、議会雑費などが支払われます。
このような手当を含めた総額は年間約4,500万円程度と言われています。
さらに、国会議員は秘書3人を雇用することができ、これにかかる費用も国から支給されます。3人分の秘書の給与は年額にすると2000~3000万円程度かかります。
これらをトータルすると国会議員一人当たりにかかる税金への負担は年間約7,000万円となります。
ちなみにこの額は基本的に衆議院も参議院も同じです。
この金額は初めて選ばれた新米議員も同様で、議長、首相、閣僚など役職がつくとそれに見合った報酬が支給されます。
国会議員の特権
さらに国会議員の特権として新幹線のグリーン車を含めたJR線はすべて無料になり、航空券も月に4往復分が無料になります。
議員会館は無料であり、議員宿舎には低額な家賃で居住することができます。これは地方から選出された議員にとっては必要なコストといってもいいでしょう。
国会議員報酬国際比較
2019年3月に31ヶ国を対象になされた国会議員報酬国際比較調査の結果のトップ20は下記のとおりです。
順位 | 国 | 年収(USドル) |
1 | シンガポール | $888,428 |
2 | ナイジェリア | $480,000 |
3 | 日本 | $274,000 |
4 | ニュージーランド | $196,300 |
5 | 米国 | $174,000 |
6 | オーストラリア | $141,300 |
7 | イタリア | $143,352 |
8 | ドイツ | $133,279 |
9 | カナダ | $130,710 |
10 | オーストリア | $117,903 |
11 | ノルウェー | $108,907 |
12 | アイルランド | $106,389 |
13 | オランダ | $104,076 |
14 | イギリス | $102,364 |
15 | デンマーク | $100,587 |
16 | フランス | $98,647 |
17 | ベルギー | $97,549 |
18 | ロシア | $93,330 |
19 | フィンランド | $89,317 |
20 | スウェーデン | $86,556 |
この比較に使用されている数字は日本でいうと274,000ドル=約2,947万円になります。ということは、国会議員の基本給(日本でいうと歳費)に各種手当を加えた数字をもとにしているのです。基本給だけを比較しても実際の収入はわからないからです。
たとえば、2位のナイジェリアは議員の月給は2,000ドルくらいしかないのに、それ以外の議員手当が多額なのでこのようなとてつもない結果になるとのことです。
これを見ると、シンガポールやナイジェリアには及ばないにせよ、日本の議員もかなりの額の報酬を得ているということができます。
イギリスと日本の比較
日本の政治形態はイギリスをお手本にしたことから、大体同じような制度になっています。
議員内閣制、すなわち国民が国会議員を選挙で選び、その議員が国会(イギリスの議院)を構成、そしてその多数派が内閣を組閣。
さらに、国会(議会)が2院制であり、衆議院(イギリスのHouse of Commons=下院)と参議院(イギリスのHouse of Lords=上院)からなるというところも同じです。
英上院(貴族院)議員は無報酬
イギリスの上院は「貴族院」(House of Lords)と呼ばれるように、歴史的に貴族が世襲で構成していました。1999年労働党ブレア政権の改革により世襲貴族の議席が大幅に削除され今では一代貴族を中心とする任命制になっています。
けれども昔からの伝統で、今でも無報酬制を踏襲しています。一代貴族であれ、ほとんどの議員は資産があるため、議員は名誉職と言っていいのです。
英下院議員の報酬
イギリス下院(House of Commons)の議員報酬は2019年度、年収にして79,468ポンド(約1,060万円)で、これに各種手当が加わります。この手当分は各議員が実費を請求するようになっているため、人によって異なります。
議員の手当に関しては専用のインターネットサイトに詳しく公開されています。スタッフ人件費、住居費などの上限が定められている他、一人ひとりの議員が経費をいくら使ったのかがすべてわかるようになっています。平均すると、国会議員一人につき、年間166,000ポンド(約2,200万円)かかっています。
となると、イギリスの下院議員の報酬と手当を合計すると一人あたり約3,260万円と、日本の議員の平均約7,000万円の半分くらいになります。
英地方議員
ちなみに、イギリスでは地方議員も名誉職といった位置づけになっていて、報酬がありません。議員手当はありますが、それほどの額ではありません。
イギリス及びヨーロッパ諸国では概ね、地方議員はボランティア性格が強く、他に職業や地位を持っている人たちが地域のためにやっているという建前です。イギリスでは昼間フルタイムで働いている地方議員も多いため、委員会や地方議会も夕方から夜にかけて行われることが多いのです。
日本では、地方議員もボーナス込で年収1000万円くらいもらえるそうなので、かなり待遇がいいのではないでしょうか。
日英議員の比較
こうして比較してみると、日本の国会議員一人あたりのコストは、イギリスの数倍はかかっています。
かといってすべての国会議員がこのような収入を個人的に使っているわけではなく、秘書などのスタッフ費や事務所経費、選挙対策費などに使われているようです。たとえば、次の選挙に備えて支援者とのつながりを大事にし、地元住民の冠婚葬祭へ出席したり、陳情を聞いたりするのにかかる費用です。その出費先が不透明なので、どこでどんな費用が使われているのかわからないのです。
イギリスでも以前、国会議員がどこでどんな出費をしているのかが不透明だった時代に、スキャンダルまがいの浪費をしていた少数の議員がいることが暴露され、それから国会議員がどのように税金を使っているのかを詳しく追求し、すべて公開することを義務付けるようになったということです。今では国民の誰もがどの国会議員がいくら手当をもらっているのか、カテゴリー別に一目瞭然なので、変な不正や浪費はできないようになっています。
まとめ
国会議員は一国の政治という、大事な役割を務めるわけなので、それ相応の報酬があって然りです。ただ、それが税金によって賄われている以上、公のために必要な費用にだけ使われるべきなのは当然です。
また、国民の税金が使われている以上、一人ひとりの国会議員がその報酬に見合う働きをして成果を出しているのかどうかは国民一人ひとりが吟味して判断すべきでしょう。