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生理の貧困対策:イギリスの学校でナプキンやタンポンを無料配布

Tampon Tax

あなたが女性なら、生理用品にお金をいくら使っていますか。多くの人は他の生活必需品と同じように特に意識もせずに買っているでしょうが、その費用さえ簡単に捻出できない人たちもいます。若い女子学生の場合、それが負担となって学校を休まなければならない人たちさえいるのです。そのため、イギリスでは2020年から学校で生理用品を無料支給するという取り組みがはじまりました。


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生理用品の生涯コスト

女性は初潮から始まり、閉経まで数十年間、妊娠や授乳期間をのぞいて生理があります。

仮に12歳から50歳までの間生理があったとすると、38年間、1か月に1回としても一生涯に456回も生理周期があるのです。

それでは、生理用品の生涯コストっていくらだと思いますか?

もちろん個人差もありますが、ある試算によると平均して、一人あたり4800ポンド(約69万円)と言われます。

かなりの額ですね。

生理の貧困とは

イギリスでは「Period Poverty」と呼ばれる生理の貧困が問題になっています。これは、経済的に貧しくて、生理用品を買うお金がない状況にあることを指します。

イギリスのチャリティ団体が2017年にイギリスの女性1000人を対象にした調査によると、回答者の10%が生理用品を買えないと答えたということです。

さらに、15%は生理用品代を捻出するのに無理をしているといい、14%はお金がないときに生理用品を友達から借りた事があるそうです。

そして生理用品を買うお金を節約するために、12%がティッシュ、キッチンタオル、ソックスなどで代用したことがあると答えました。

このような代用品を使って非衛生的な手当をすると、病気になることさえありますが、背に腹はかえられぬという人もいるのです。

生理で学校を休む女子生徒

若い女性は生理についても、自らの貧困についても、恥ずかしいという理由などから、生理用品が買えないことについて親や友人、教師にも相談できないという人が少なくありません。

食べるものにも窮している家庭では、親に気を使って生理用品を買ってくれなどと言い出せない子供もいます。

そのため、女子学生の中には、生理になってもナプキンやタンポンを買うことができず、学校を休まざるを得ないという人もいます。

毎月決まったように休む女子生徒に気がついて、学校の教師が自腹で生理用品を買い、そのような生徒にそっと渡すということもあるそうです。

17歳の運動家アミカ・ジョージ


2017年に17歳だったアミカ・ジョージはこのような「生理の貧困」問題を解決するために「Free Periods」という運動をはじめました。

生理用品は贅沢品ではなく生活必需品であり、学校のトイレにトイレットペーパーがあるのに生理用品がないのはおかしいと呼びかけたのです。

彼女が署名活動を開始すると、瞬く間に賛同者が集まり、20万人の署名を達成。

さらに政府に呼びかけるため、アミカ・ジョージは賛同者とともに首相官邸の外でデモを行いました。イギリスの法のもとで、子供たちを学校に行かせるのは政府の義務であり、それを遵守することは政府の義務だと訴えたのです。

彼女は、生理の問題は人前で話すのに抵抗があり、黙って悩んでいる女性が多いため、これまで取り上げられることが少なかったのが問題だといいます。

男性は生理のことを自分ごととして考えられないし、話題にするのを避ける事があります。けれども、これは女性だけの問題ではなく、社会全体の課題だと主張しました。

スコットランドがパイオニア

このような「生理の貧困」問題の解決に最初に動き出したのが、イギリスのスコットランドです。

スコットランドでは2018年から学校で生理用品の無料支給に踏み切りました。

さらに、ウエールズでも生理用品の無料支給が始まりました。

そして、NHSイギリス国民医療の病院などの医療機関でも、希望者に生理用品が無料で支給されるようになりました。

追記:スコットランド議会は2020年11月に、自治体や教育機関で生理用品を必要とする人すべてに無償提供することを義務付ける法案を全会一致で可決し、2022年8月に施行されました。

イギリス全国でも2020年から

これに続いて、生理用品の無料支給をイギリス全国に広げるようにとの運動が高まり、ようやく2020年からそれが実現することになりました。

2020年1月の新学期からイギリス中の小学校、中学校、カレッジ(高校)で生理用品が無料で提供されるようになったのです。

学校で生理用品を配布するメリットは、女子学生がお金の心配なく生理を迎えられるということだけにとどまりません。

生理について恥ずかしいとか否定的な感情を持つことなく、それが自然な現象であり、健康の証として認められることで、精神的な安定や誇りにもつながるということが政府にも認められたのです。

このための費用にイギリス政府は年間2000万ポンド(約29億円)をあてるとしています。

タンポン税論争

「生理用品が贅沢品ではなく生活必需品である」という問題は女子学生に限ったことではありません。

イギリスでは「タンポン税論争」と呼ばれる運動がずっと取り沙汰されてきました。

イギリスの消費税は20%ですが、これは贅沢税と言ってもいいもので、食料品や衣料品、子供の衣服などの生活必需品は対象外となっています。

軽減税率どころか、消費税が0%である物品サービスが、このほかにも幅広く規定されているのです。

日本の消費税10%軽減税率8%は高いのか?英国では20%だが生活必需品はゼロ%

このうち、生理用品も生活必需品として消費税をゼロにすべきだという論争がおきました。

けれども、税制についてはEU共通のルールがあり、消費税の軽減税率は最低でも5%でならなければいけないと決まっています。

EUのルールを変えて「タンポン税」をなくそうという運動が広がりましたが、それは実現できませんでした。

このため、自国の税制を自由に決めることができないのはけしからんということで、これを理由にEU離脱を希望するようになる人もあらわれました。

イギリスのスーパーマーケットチェーンのテスコでは、「タンポン論争」の趣旨に賛成して「生理用品にかかる消費税5%を店側で負担します」と申し出ました。なのでイギリスではテスコで生理用品を買う場合、消費者は消費税分の5%を払わなくてもいいのです。

【追記】イギリスのEU離脱が決まり、イギリスでは晴れてタンポン税がゼロになりました。ブレグジットに関しての数少ない、いいニュースといえます。けれども、本当はイギリスはEU内にとどまり、EU全体の制度を改善してほしかったと思います。

世界中の生理の貧困問題

生理の貧困問題は、もちろんイギリスに限ったことではありません。

先進国では単に経済的な問題ですが、発展途上国の多くの女性の中には、私達が普通に店で買っている生理用品を見たことがない人もいるのです。そのような国の子どもたちは衛生的な生理用品に手が届かないために学校に行けず、教育をまともに受けることができなかったりもします。

イギリス政府は自国だけでなく、世界中の「生理の貧困」問題を撲滅するために、生理用品を無料で提供するためのチャリティーに寄付をすると約束しています。

実は、メーガン・マークルもハリー王子との結婚前から「生理の貧困」問題を解決する運動に取り組んでいました。インドでこの問題に取り組むチャリティー団体のパトロンとなっているのです。

まとめ

生理についてはあまり公の場で議論することがはばかられるということもあり、最近までそれに関わる貧困問題についても声高に論争することがありませんでした。

けれどもイギリスでは、若い女性が勇気を持って「生理の貧困」撲滅のために運動し始めたことがきっかけで、政府をも動かすことができました。そして、その輪は今や世界中に広がっていっています。

イギリス政府は3月8日の国際女性デーを記念して、世界の「生理の貧困」問題を2030年までに撲滅するという目標を掲げました。

「生理の貧困」は人権の問題であり、女性だけでなく社会全体で解決していかなくてはならない課題であるということがようやく認められたのです。

3月8日国際女性デーは英語でInternational Women’s Dayミモザでお祝い

 

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