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「令和」新元号は日本の右傾化を象徴している?海外の反応(英米メディア)

Reita

4月1日に日本の新元号が「令和」に決まったと発表されました。日本にしか関係のないことのように思っていましたが、これについては英米など海外メディアも続々と報道しています。海外の反応には「日本の右傾化」とか「安倍政権の国粋的な傾向を示唆」とかいうようなものが見られますが、どうしてそういう反応になるのでしょうか。


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新元号の「令和」

新しい元号の「令和」は日本最古の歌集「万葉集」にある梅の花の歌の序文から引用したものなのだそうですね。日本の元号は645年の「大化」以来、これまでは確認できる限りはすべて「四書五経」などの中国の古典から引用されていたのだということは知りませんでした。まあ、元号じたいが中国から来たものであるのだし、日本文化は昔から大陸文明の影響を深く受けているので当然と言えば当然ですね。

安倍首相は元号発表後の会見で元号について説明し「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められている」と語りました。

なんちゃって知ったかぶりをしていますが、私は元号にはあまり興味がないばかりか無知の極致。昭和育ちなので、たまに日本に帰って事務手続きをするときに「今年は平成何年か」ということがわからず困ってしまうという浦島太郎です。新元号についても日本のメディアではなくイギリスの報道から知ったのです。日本の元号なんて、日本人にしか関心のない話題だと思っていたのにイギリスメディアでもすぐに報道されていてちょっと驚きました。そしてその記事内容を読んであまりに深読みしているのにもさらに驚きました。

英メディアの報道

イギリスの一般紙デイリー・テレグラフは「日本は新しい元号として『令和』を初めて中国ではなく日本古典から選ぶ」という4月1日付記事で日本の新元号について取り上げています。

過去1000年以上の歴史の中、日本が中国語を使わず日本語から元号を取ったのは初めてであると説明しています。そして、それが現政権の国粋的な(ナショナリズム)傾向を示唆していると言及。その背景として安倍保守党政権の右傾化、領土問題における中国との度重なる衝突と緊張、さらに安倍首相が平和憲法を2020年までに改正すると繰り返し述べていることも伝えています。

その後、日本の元号システムはもともと中国から取り入れたものだが、この制度を使っているのは今では世界中で日本だけとなっていると説明。現代日本社会では元号は西暦と併用されていること、毎日新聞の調査では日本人の34%が主に元号を使い、34%が西暦と併用、25%が西暦を使っていると述べています。日本で元号は硬貨、新聞、運転免許証などの公式書類に広く使われているため、新元号の発表が待たれており、通常は新天皇が即位してから元号が発表されるのが伝統だが、今回はビジネスやITシステムへの弊害を最小化するために早めに発表されたと説明。

平成時代についてはバブル経済の崩壊や2011年の東日本大震災とそれによる津波や原発危機によって記憶されるであろうとしています。

英インディペンデントは「『令和』:日本は新天皇即位にあたって新しい元号を発表」という記事で日本の新元号について紹介しました。グローバル化した日本で西暦が広く使われるようになっているにもかかわらず、元号は公式の書式に使われていると説明。日本の元号は中国古典から引用されるのがこれまでのならわしだったが、1300年の伝統を破り、今回は日本の7世紀の詞華集である「万葉集」からとられたことを紹介しています。

同紙も安倍首相の右傾化した政権が中国古典からの引用を避けたのではないかと憶測されていると述べています。

BBCは「日本は新しい元号を『令和』と発表」いう記事で「令和」という言葉の意味や由来について説明。「令和」は秩序(order)と調和(harmony)を意味しているとしています。この記事では「令」と「和」の意味についての詳しい説明や引用元の万葉集について、またこれまでの元号である「平成」「昭和」「大正」「明治」の意味も紹介。さらに元号が日本でどのように使用されているかを説明しています。

同記事では新しい元号と日本の現政権の関係については特に言及していません。

米国メディアの報道

米国でも各メディアが日本の新元号発表後すぐにこのニュースについて続々と伝えていました。米ウォール・ストリート・ジャーナルは「新天皇の元号」という記事で新天皇が即位する5月1日から新しい令和時代が始まると伝えています。

CNNは「『令和』:日本は新しい時代の幕開けを発表」というタイトルで新元号について紹介。安倍首相が元号発表後の記者会見で元号について「日本の豊かな文化と長い伝統を象徴する『万葉集』から引用された」と説明したことを伝えています。

同記事では東京のテンプル大学アジア研究所のキングストン所長の言葉を引用し、新元号の選択は日本の政権の右傾化を映す鏡ではないかという考えを紹介しています。新元号の『和』は『昭和』に使われたものと同じ字であることを指摘。昭和時代の戦時の歴史についてもっと肯定的な史観を推進するために、安倍首相がさまざまな機会で行っている働きかけと一致するとしています。

さらに元号には政治的な一面があるとも述べています。『昭和』は「明るい日本の時代」という意味であるが、この時代に日本のナショナリズム、ファシズムが台頭したとし、日本軍がアジアの近隣諸国を侵略した過去がしばしば「昭和ナショナリズム」と呼ばれると紹介しています。

米TIMEでも「日本の天皇即位で令和時代が始まる」という記事で、新しい元号が中国古典ではなく日本古典からとられたことを紹介。元号が日本の文書から引用されたのは1300年以上なかったことだと説明しています。同記事では元号の決定について、安倍首相が有識者による元号決定パネルを指名して候補案複数の中から選んだプロセスについても詳しく紹介していました。

さらに、安倍首相率いるタカ派の保守政権が安倍首相の苗字からとった「安久」という元号を選ぶことを考えているといううわさが広まったことについても言及。

TIMEは「平和を達成する」という意味がある『平成』時代は、日本近代史において戦争がなかった初めての時代であったが、日本は経済的な衰退と自然災害に苦しんだとしています。さらに『平成』は戦後の日本憲法において天皇の政治的権力がなくなってから日本政府が初めて決定した元号であると説明しています。

新元号が日本の右傾化を示唆?

日本の元号について関心がないとばかり思っていた英米諸国のメディアが日本の新元号についていちはやく報道しているのは少し意外でした。もっと意外だったのはいくつかの英語メディアが新元号の決定について政治的な意味があると記述している点です。とはいえ、中国の古典ではなく国書の「万葉集」から引用したから国粋主義とか右傾化とかいうのはいささか考えすぎではないかと私などは思います。確かに安倍政権の支持基盤である保守派の間には国書に由来した元号を期待する声があったとも聞きますが、元号を「万葉集」からとったから右傾化とかナショナリズムとか言うのは飛躍し過ぎと感じます。

けれども元号などという日本にしか現存しない制度について知識がない欧米人にとっては、誰かにそうだと説明されたらそういうものなのかと思うかも。日本人でそこまで深読みする人は少ないのではないかと思いますが。誰かが書いた「新元号は日本の国粋主義説」を聞いて複数の記者がその線で記事を書いた結果がこうなったのかなという気がしました。

だいたい、元号じたいが中国から来た制度です。中国は1911年、清朝最後の時代の『宣統』を最期に元号を廃止しているので今は使っていないのですが。これは清朝最後の皇帝であり、後に満州国皇帝となった愛新覚羅溥儀の時代ですね。『ラストエンペラー』という映画にもなったのでご存知の方も多いのでは。

それに中国の古典からではなく国書である万葉集から引用したと言っても、そもそも日本の古典文化は大陸文明に強く影響を受けてきたのですから、分けて考えるのにも無理があります。日本語だってもともとは中国からのものであることを考えれば「やまと言葉」でなく漢字を使った言葉であるかぎり「令和」という言葉も中国語から由来しているわけです。

日本の状況を危惧する背景

それよりも気になるのは、こういった新元号にかこつけての日本右傾化説を聞いて「さもありなん」とあることないこと書かれる日本の状況です。言い換えれば、現代の日本の状況が欧米メディアや彼の地の人々にどのように見られているかということが気になるのです。

もし日本が欧米諸国から見て政治的、社会的にバランスが取れた「大人の」国に見えたとしたら欧米メディアが新元号にかこつけてナショナリズムだの、右傾化などということはないでしょう。そんなことを書いても読者が納得しないでしょうから。けれどもイギリスのタブロイド紙ならいざ知らず(実際タブロイドの英デイリー・メールも新元号について安倍政権の保守的アジェンダと結びつけた記事を掲載している)知識層が読む一般紙までそのような記事を掲載するということは、今の日本の状況について欧米メディアが全く安心しているとは言い切れない様子がうかがえるのです。

日本政府や一部の日本人の韓国、中国、北朝鮮など近隣諸国に対する姿勢、特に慰安婦、徴用工、領土問題、拉致問題などを通しての軋轢は海外メディアもよく知るところです。日本の英語紙であるジャパンタイムズが最近安倍政権の圧力で編集方針を変更したことも知られています。さらに、慰安婦などの問題や外国人に対するヘイトスピーチを含む人権問題について日本は国連人種差別撤廃委員会に指摘されてもいます。

日本の保守政治家が自虐史観は愛国心を損ねるので「正しい」歴史を教えようと言っても戦時中に日本軍がアジア諸国を侵略した歴史についての欧米諸国の歴史認識は変わりません。そんな状況で日本にとって「正しい」歴史を教えようとすることは歴史修正主義であり右傾化であると認識される結果となるのです。

もし日本以外の国で信じられている戦時の歴史が本当に間違いであるのなら、日本は史実としての科学的根拠をもってそれを説明すべきです。けれども、現代においても汚職や問題沙汰になると証拠を破棄、隠滅してしまうような政治家や官僚、国民のことを外国が信頼してくれるでしょうか。

元号と西暦

私は昭和生まれ昭和育ちの上、昭和の時代からずっとイギリス暮らしなので、日本の元号がちょっと苦手です。いつも西暦で生活しているため、たまに日本に帰ると銀行や市役所で事務手続きをするたびに「今年は平成何年だったっけ?」と考えざるを得ないありさまです。そのたびにこういう事務手続きに元号を使わなければならない理由があるのだろうかといつも考えます。元号が変わったらそういう書式を印刷しなおさないといけないのですよね、実に無駄ではないですか。カレンダーやダイアリーを作るときも困るだろうし、どうして西暦を使わないのかと不思議です。何か理由があるのでしょうか。あるのならどうか教えてください。

おりしも、外務省が省内の公式文書で元号表記を取りやめ原則として西暦に統一することを検討しようとしたところ、首相官邸幹部などから猛反対にあっていると聞きました。外国との交渉の際は西暦を使用するしかないわけなので、西暦と和暦が混ざると混乱や間違いにつながるおそれがあるからという外務省の考えは正しく、和暦を併記する必要はないでしょう。どうしてそれがいけないのか私には理解できません。

私は元号じたいに反対するわけではないし、元号に対する政治的な思想ももっていません。元号は歴史上の時代を分ける区分としては便利なこともあるでしょう。けれども仕事や事務手続きに元号を使わなくてもいいのではないかと思うのです。これから「平成」だけでなく「令和」何年かということまで考えなくてはならないのかと思うと今からゆううつです。

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