英国エリザベス女王の公式誕生日にちなんで恒例の叙勲リストが発表されました。去年ノーベル文学賞を受賞した日本出身作家カズオ・イシグロがナイトの爵位を与えられたほか、女優のエマ・トンプソンがデイムとなりました。ほかにも様々な人に爵位が授与されますが、これってどういう制度なんでしょうか。そしてどういう人に「サー」をつけて呼ぶのでしょうか。
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カズオ・イシグロ
カズオ・イシグロはイギリスの文学に貢献したという理由で、爵位の中でも高い位のナイトの称号を得ました。
ナイト爵位授与にあたってカズオ・イシグロはこのように語りました。
「外国人であった少年の私を受け入れ、教育し、育ててくれた国から、このような名誉ある称号を受けることに深く感謝しています。
この不安定な世界で、イギリスとイギリスのオープンで民主的な伝統、そして私がその一員となることができている素晴らしい英国文学の文化を誇りに思っています。」
ちなみに「ナイト爵」(Knight)という称号は外国人にも与えられますが、英国籍を有していないと「サー」「デイム」の敬称を使うことはできません。
なので、カズオ・イシグロが日本国籍をあきらめイギリス国籍をとった選択は結果的にはよかったのではないでしょうか。2重国籍が認められていればもっとよかったかもしれませんが。
それに、彼がコメントでも語っているように、かつてのイギリスは外国人や移民に寛容で、様々な法律や制度をイギリス生まれのイギリス人と同じように提供してくれる包括的な国でした。
最近になってEUからの移民が大量に増えたことやそれに関してのメディアや極右派のプロパガンダ的な煽りで庶民の反移民意識が蔓延してきたことは残念なことですが、それでもイギリスに貢献する移民や外国人の労を差別なく称える姿勢は立派です。
エマ・トンプソン
今年、ナイトの女性版であるデイムの爵位を授与された著名人はエマ・トンプソン。
エマ・トンプソンは数々の映画や舞台に出演しているイギリス映画界のベテラン人気女優ですが、カズオ・イシグロの名作「日の名残り」を映画化した作品の主演女優も演じています。
その他にも数々の映画に出演し、アカデミー賞には何度もノミネートされ、『ハワーズ・エンド』でアカデミー主演女優賞を『いつか晴れた日に』でアカデミー脚色賞を受賞しました。
ケニー・ダルグリッシュ
今年ナイトの爵位を授与された著名人にはもとサッカー選手のケニー・ダルグリッシュ(Kenneth Dalglish)も。
スコットランド出身ですが、1970年代から1980年代にかけてセルティックとリバプールで活躍した名選手です。
イングランドとスコットランドの両リーグで100ゴールを挙げた最初の選手となっています。
スコットランド代表としても活躍し、その後、監督として指導しました。
叙勲とは?
今年の叙勲リストには他にもアンソニー・ジョシュア、キーラ・ナイトレイ、トム・ハーディなど著名人が見られ、他にも様々な分野で業績を上げた人、イギリス社会に貢献した人が選ばれています。
全部で1,057人のリストのうち71%はコミュニティに貢献したという理由で選ばれており、全体の49%が女性となっています。
女王の公式誕生日に授与される叙勲は1860年にヴィクトリア女王が開始したものです。このほかにも、毎年はじめに「新年の叙勲」(New Year Honours List)が授与されます。
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