テイラー・スウィフトがこのほどインスタグラムで米中間選挙で誰に投票するかを発表しました。これまで政治発言を避けてきた彼女が初めて自らの政治信念を語ったことで国内外で話題を呼んでいます。彼女の考えはどんなものなのでしょうか、またその反響は?テイラースウィフトのインスタグラムの全文の和訳付き。
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テイラー・スウィフト
テイラー・スウィフトと言えば米国の人気ミュージシャンで知らない人はいないのではないでしょうか。カントリーポップのシンガーソングライターとしてデビューしてからヒットを飛ばし「America’s Sweetheart」とも呼ばれる人気歌手です。ファン層も広く、世界中にファンがいます。
欧米のミュージシャンやセレブは政治的な活動をする人も多いのですが、テイラー・スウィフトはこれまで政治的発言を避けてきました。アメリカ大統領選挙の際、ビヨンセ、リアーナ、ケイティ・ペリーなど多くのセレブが自身の政治的なスタンスを表明していたのと対照的だったので、彼女はそのことについて非難もされていていたし、トランプを支持しているのではないかとうわさされていました。
そのテイラーが、10月7日(米国時間)自身のインスタグラムに長文を投稿して、自らの政治的な信念を語ったのです。11月の中間選挙で誰を支持するかも明言し、その理由も語っています。そして同時に、ファンにも投票するように呼びかけました。
このことは米国内外で反響を呼んでいます。
米国中間選挙とは
アメリカ合衆国では大統領選挙が4年ごとに行われますが、大統領選挙年度の中間に相当する時期に上下両院議員や州知事を選ぶ中間選挙というものが4年ごと11月に行われます。
これによって、現職大統領の就任以来の2年間の政局運営への世論の評価を図ることができるのです。今回はトランプ大統領が就任してから2年間、米国民がトランプ政権に対してどのような評価を下すのかが試されるというわけです。
テイラースウィフトのインスタ
こちらが話題になった10月7日付けのインスタグラム記事です。
テイラーが長文で選挙について述べています。全文をざっと訳してみました。
11月6日に行われる中間選挙について書きます。私はテネシー州で投票します。これまでは政治的な発言を公の場でするのは控えてきましたが、ここ2年間に世界中で起きたことや私自身に起こったことで、考えが変わりました。これまで私はいつも、この国の誰もに与えられるべき人権を保護しそのために闘う候補者が誰かということに重きを置いて票を投じてきたし、これからもそうするつもり。私はLGBTQの権利のための闘いを信じているし、性別や性的指向に基づくいかなる差別をも許さない。また、この国で未だに目にする非白人に対する組織的な人種差別の蔓延に恐怖を覚えるし、不快に思います。
肌の色や性別、またその人が誰を愛するかにかかわらず、すべてのアメリカ人の尊厳のために闘う気持ちのない人には私の一票を投じることはできません。テネシー州の候補者はマーシャ・ブラックバーンという女性です。私はこれまでもそうしてきたし、今回も女性に投票したい気持ちはやまやまですが、マーシャ・ブラックバーンを支持することはできません。彼女の議会での投票記録を見てぞっとしたのです。彼女は女性への同一賃金に反対する投票をしました。また女性を家庭内暴力、ストーカー行為、デート・レイプから守るための女性暴力法に反対する票を入れました。さらに彼女は企業がゲイ・カップルへのサービスを拒否することができるべきだとしています。また、ゲイ・カップルが結婚する権利を持つべきではないと信じています。これらは私が信じるテネシーの価値観ではありません。私は上院はフィル・ブレデスン、下院はジム・クーパーに投票します。あなたも自分が投票する州の候補者について調べて、あなた自身の価値観に一番近い人に投票してください。もちろん、すべての点において100%同意できる候補者を見つけることが難しいこともあるでしょう、でも私たちは投票しなければならないのです。過去2年間のあいだに知的で賢く冷静な、たくさんの人が18歳になり、自らの票を投じるという名誉を手に入れました。しかし、まずは選挙のための登録をしなければなりません。とても簡単ですぐにできます。登録の締め切りはテネシー州では10月9日です。vote.orgに行けばすべての情報があります。良い投票を!
どうしてテイラー・スウィフトは政治的発言を?
テイラーが投票すると公表した上下両院議員は共に民主党。今はトランプ率いる共和党が与党なので野党になります。民主党はリベラルで都市部に支持層が多く、共和党は主に地方に住む白人の保守層が支持しています。
テイラーはもともとカントリーミュージックで売れた人、そして彼女が投票するのはカントリーの本場、テネシー州です。ニューヨークなどリベラルなインテリやブラック、移民が多い都市部に比べ、白人至上主義、トランプ率いる共和党支持者が多い保守的な地域。
そしてテイラーのファンには地方の保守的な白人層が多かったのです。2016年の大統領選の時、彼女は明らかにしませんでしたが、トランプに票を入れたのではないかとうわさされていました。けれども、のちになって彼女はオバマ大統領を支持していることを告白しています。彼女にとって最初の選挙だったことをうれしく思うと言っていました。けれどもそういう政治的発言を公にすることはありませんでした。
これまでもカントリー界ではアーティストが政治的発言をすることで様々な軋轢を生んだ歴史があります。2013年にディキシー・チックスが共和党ブッシュ政権のイラク戦争に反対した時、たくさんのファンから抗議を受けました。2017年の銃乱射事件の時にはカントリーミュージック協会(CMA)が政治発言禁止令を出したのですが、そのことでミュージシャンやジャーナリストたちから批判を受けたこともありました。
そんな背景の中、テイラー・スウィフトが共和党を排し、民主党候補者を支持すると公表することは勇気ある発言と言っていいでしょう。どうして彼女はこの発表に踏みきったのでしょうか。
「過去2年間」と言っていることからすると、やはりトランプ政権の保守的路線が彼女の信条から真反対のところにあるのが理由なのでしょう。LGBTQや非白人、女性に対する差別など共和党の考えはテイラーのような若い女性が考えるリベラルな考えとは遠いところにあるようです。つい先日、米最高裁判判事に性暴行疑惑のあるカバノーが就任したことも関係しているのかもしれません。
テイラーは私生活についてもこの発表に関係があると匂わせていますが、DJのデヴィッド・ミューラーとのセクハラ訴訟の件も関係しているかもしれません。ファン交流会で彼がテイラーの体を触ったことでセクハラ訴訟をし2017年8月に勝訴しているのです。
また、長年にわたり仲が悪いことで有名なカニエ・ウエストとのことも関係しているのではないかと勘繰っている声も聞こえてきます。カニエ・ウエストはブラックであるにもかかわらず、トランプ支持を表明しているからです。
テイラー・スウィフトの政治的意見に対する反響
テイラー・スウィフトの政治的発言に対してはジョーク交じりの反響も多い中、総じて肯定的な意見が多くみられます。けれども保守の共和党支持者の中には裏切られたと思っている人が少なくないようです。
トランプ大統領もこの件に関して記者に質問され「テイラーのミュージックが25%くらい好きじゃなくなったかも」とジョーク交じりに答えています。トランプは「マーシャ・ブラックバーンはテネシーでよくやっている。テイラー・スウィフトは彼女のことを知らないんだろう。」と語りました。
トランプ大統領はテイラーファンとして有名で2012年に彼女がグラミー賞のホスト役に抜擢された時も「テイラー、すごい!」とツイートしていました。
Glad to hear that @taylorswift13 will be co-hosting the Grammy nominations special on 12.5. Taylor is terrific!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) October 30, 2012
下記にこの「事件」に関する米国民のコメントのいくつかを和訳付きで紹介します。
All jokes aside: What Taylor Swift just did is extremely important. Let’s not forget: 53% of white women voted for Donald Trump. Having someone like Swift — who has a MASSIVE fanbase — come out against a Trump darling candidate like Marsha Blackburn is monumental in many ways.
— Ashley Alese Edwards (@AshleyAlese) 2018年10月8日
テイラー・スウィフトがしたことはとっても重要。白人女性の53%はドナルド・トランプに投票したことを忘れないで。スウィフトのようなファン層の厚い人がトランプお気に入りのマーシャ・ブラックバーンのような候補者に反対すると発表したことはいろんな意味で記念すべきこと。
Huge congratulations to whoever finally convinced Taylor Swift to get on the right side of history.
— KB (@KaraRBrown) 2018年10月8日
誰か知らないけど、テイラー・スウィフトをやっと歴史の正しい側につくように説得してくれたことに祝福を送ります。
I have loved @taylorswift13 since I was 9 years old, I am now 21 and old enough to vote, so are millions of other fans, so expect an impact because there will be one https://t.co/fUHsDYtuP8
— Veronica(Gemini) Arlington(Never Met Tay) (@vgbz0703) 2018年10月8日
テイラー・スウィフトが政治的な意見を語るのはいいけど、13歳の子に投票権を与えない限りは何の影響もないね。やっぱりマーシャ・ブラックバーンだろう。
というおじさんのツイートの返事として:
私は9歳の時からテイラー・スウィフトのファンよ。そして私は今21歳でもう投票できる。他にも同じようなファンが何万人もいるわ、すごい影響があるはずよ。
まとめ
テイラー・スウィフトが16歳でデビューしたのはテネシーのカントリーミュージック界。裕福な家庭に生まれ、ブロンドの髪にスリムな長身の彼女は典型的な白人至上主義の共和党コミュニティーが好むアーティストだったのです。それでこれまではそういったファン基盤に遠慮して政治的発言を控えていたのだと思います。
けれども従来比較的高年齢の白人の保守的男性が好むととされてきたカントリーミュージック界もファン層が少しずつ広くなってきています。若者、女性、非白人(特にヒスパニック系)が増えてきているのです。
現在28歳のテイラー自身のファンも若者、特に若い女の子が増えてきています。彼女自身もそれを良くわかっていて、共和党を支持する保守的男性を敵に回すことになっても、コアなファンは彼女の政治的な発言を好意的に受け止めると思ったのでしょう。
実際、彼女をロール・モデルにして憧れる女の子がこのメッセージを読んで影響されることもあるに違いありません。
テイラーは自らの政治的信念をファンに強要するのではなく、それぞれの選挙区の候補者の政策を良く調べてから自分自身で誰に投票するか決めるようにすすめています。テイラーがインスタでファンに選挙登録をするようにすすめたあと急に選挙登録者が増え、24時間で65,000もの新しい選挙登録がなされたそうです。1億1200万人のフォロワーがいる彼女の影響はやはり大きかったということでしょう。これを機会に、若い人が政治に関心を持って選挙に投票に行くようになるのはいいことだと思います。
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