ツイッターでは「凍結祭り」といって、たまに多くのアカウントが一斉に凍結されることがあります。Twitter運営事務局は規約が更新されたときなど、定期的にアカウントをチェックして、不正アカウントを一斉凍結することがあるのです。Twitterアカウントが凍結される理由には様々なものがありますが、その中でも最近厳しくなってきているのが、児童に関する性的搾取のケースで、これに関連してイラストレーターなどのアカウントが多く凍結になったという話を聞いています。Twitterでは具体的にどういう行為が禁止されているのか、またTwitterアカウントが凍結された場合にはどのようにして解決できるのかを説明します。
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ツイッターアカウントの凍結(英語で ‘suspension’)
アカウントの凍結のことを英語で「suspension」と言います。「凍結する」という動詞は「suspend」です。アカウント・サスペンションについてはアカウントの凍結についてという日本語のヘルプぺージがりますが、ここでは通り一遍のことしか書いておらず、詳しくは「ツイッターのルール」に従うとあります。このルールによると下記の場合にアカウントが凍結されるとされています。
スパム
アカウントが凍結される理由のほとんどはスパム行為を行っていると判断されることです。たとえば、同一内容のツイートを何度も繰り返したり、不特定多数のユーザーにダイレクトメッセージを送ったりすることがスパム行為となります。短期間で手動またはツールを使って大量のフォロー・フォロワー操作をすることもルール違反です。
セキュリティが危険な状態にあるアカウント
アカウントが乗っ取られたりハッキングした疑いがある場合には乗っ取りによる悪質な行為のリスクを防ぐためにTwitterが一時的に該当アカウントを凍結する場合があります。この場合は、アカウントのセキュリティが確保されて所有者の管理に戻ればアカウントが再開されます。
攻撃的なツイートや行動
他のユーザーから嫌がらせや攻撃的な投稿をしているという報告があった場合、アカウントが一時的に凍結されることがあります。他人に対する脅迫、他のアカウントへのなりすましなどTwitterが悪質であると判断した場合はそのアカウントは恒久的に凍結されます。
Twitterアカウント凍結の種類
Twitterアカウントの凍結は、フォロワーが多かったり、長く運用されているアカウントでも容赦なく行われます。
凍結の種類としては警告 → 本凍結 → 永久凍結という段階があります。警告の段階であれば解除もそれほど困難ではありませんが、ルール違反を繰り返すと解除ができなくなったり、解除に時間がかかる可能性があります。また、違反行為の深刻度によっては事前の予告なくすぐにアカウントが永久凍結される場合もあります。
警告や凍結のきっかけとしては、第三者からの通報によって凍結される場合もあるし、Twitter側が独自で禁止行為を発見することもあります。通報の場合、不特定多数の第三者から5回連続で通報されると凍結されるという情報もありますが、詳しいことは明らかにされていません。
アカウントが凍結されたのちにTwitterユーザーが新しくアカウントを作成しようと試みても、Twitter側で個人やIPアドレスを特定されてしまうことにより、新たにアカウントを作ることができない場合もあります。新しいアカウントを作っても最初の投稿をする前にTwitter側で直ちに凍結されてしまうのです。
Twitterアカウント凍結の具体的な原因
それでは、具体的にはどんな原因でアカウントが凍結されるのでしょうか。Twitterでアカウント凍結につながる行為には下記の事例があります。
- 知的財産権(商標、著作権)に関する違反行為
- 暴力的な画像やアダルトコンテンツ
- 非合法な目的や違法な活動を促進する行為
- ハッキングされた素材の配布
- トレンドを操作しようとする行為
- 許可のない第三者の広告動画
- 暴力、自殺や自傷行為、児童の性的搾取に関する行為
- 攻撃的な行為、不適切な性的コンテンツや勧誘、ヘイト行為
- 個人情報や私的な画像・動画の投稿
このうち、最近特に問題になっている「児童の性的搾取」についてのポリシーを取り上げ、詳細を説明します。
児童の性的搾取ポリシー
最近日本で、児童ポルノに関連する画像の投稿によって漫画家やイラストレーターなどのTwitterアカウントが凍結されるというケースが増えています。Twitterには以前から’Child sexual exploitation policy’(児童の性的搾取ポリシー)というものがあり、児童の性的搾取に関する禁止行為を厳しく取り締まっていました。
このポリシーに関してTwitterで公開されていたルールは英語だったので、日本では気が付かなかった人もいるかもしれません。それが最近になって日本語に訳され「児童の性的搾取に関するポリシー」として公表されています。それをはじめてみた日本人の中にはツイッターに新しく厳しいルールができたと思う人もいるようですが、このルールは以前からずっとあったものです。
Twitterでは、児童の性的搾取にあたるコンテンツやそれを助長する行為を明確に禁止しています。これにはメディア、文章、イラスト、コンピューターグラフィックスが含まれます。児童の性的搾取を助長したり賛美したりして、子どもに被害を与える結果になり得るコンテンツも禁じられており、これには日本での「援助交際」も含まれます。なお「児童」とは18歳未満の者を指すので、中高生も含みます。
児童の性的搾取を助長する行為とは、具体的にどういうものに適用されるのでしょうか。
- 性的に露骨な、または性的な暗示を含む行為をしている児童の視覚的描写
- 性的に露骨な状況、または性的な行為をしている児童の画像、イラスト、コンピューターグラフィックイメージ
- 児童の性的搾取にあたるコンテンツがあるサイトへのリンク
さらにTwitterでは下記も禁じられています。
- 児童の性的搾取について妄想したり、そのような行為を助長する
- 児童の性的搾取に関するコンテンツを入手したいという願望を表現する
- 以下について募集・採用、宣伝、または興味があることを表現する:
①児童との商業的な性行為
②性的な目的で児童をかくまったり移動させる - 児童に性的に露骨な画像を送る
- 児童に性的な露骨な会話をする
- 脅しや褒美によって、児童から性的な画像を入手しようとしたり、児童に性的なサービスを強要する
- 児童の性的搾取被害者を名前や写真で特定する
これらのポリシーに違反する行為のほとんどは直ちに永久のアカウント凍結につながります。さらに、凍結されたユーザーは将来新しいアカウントを作ることも許可されません。限られたケースで悪意がないと認められた場合のみ一時的なロックアウトとなり、対象となるツイートを削除することでアカウントを再開する場合もあります。
Twitterは児童の性的搾取をなくす取り組みのため世界中のパートナーと協力しており、そのリストも挙げてあります。それには欧米諸国やシンガポール、インド、インドネシア、メキシコなどの児童保護機関などの名前が載っていますが、日本のものはありません。
Twitter本社がある米国の法律に準拠し、児童の性的削除案件で凍結したアカウントの情報は米国の ‘The National Center for Missing & Exploited Children=NCMEC’(全米行方不明/非搾取児童センター)に通報されます。NCMECは日本の法的機関を含め、全世界の該当する法的機関にレポートを提出することができます。これによって、世界中で児童の性的搾取問題に取り組む運動において重要な役割を果たしているのです。
Twitterでは「あなたにできること」として、児童の性的搾取に該当するコンテンツを公開したり、そういう行為を助長しているアカウントについて報告するフォームも用意しています。
児童の性的搾取についてのTwitterレポート
Twitterが2017年10月に発表した「日本における児童の性的搾取へのTwitterの取り組みの新しいご報告」では、児童の性的搾取を助長したために凍結したアカウントについて紹介しており、これには「援助交際を含む」と定義しています。
2017年上半期にTwitterが全世界を対象に行った児童の性的搾取に関するアカウント凍結のうち、38%が日本のユーザーによるものでした。このうち98%は第三者の通報ではなく、Twitterが発見したものです。
また、凍結されたユーザーが新たに別のアカウントを作ることを阻止する取り組みも進展していると報告しています。児童の性的搾取に関する投稿でアカウント凍結された日本のユーザーが新たに作ったアカウントの半分以上は最初のツイートが投稿される前に凍結されたのです。
Twitterではこの問題に関するレポートを定期的に発表しており、2018年4月にも「日本での継続的な児童の性的搾取への取り組み:2017年上半期」の報告がありました。これによると、児童の性的搾取に関連して凍結した全世界のアカウントのうちの32%が日本のユーザーであり、凍結後にユーザーが新たに作った新規アカウントの75%以上を直ちに凍結したといっています。
2017年上半期に児童の性的搾取理由で凍結した日本のアカウント約2800件についてTwitterはNCMECに通報しており、その報告書を日本の警察機関にも活用してもらい、捜査に役立ててもらいたいと希望しています。しかし、日本の警察機関にはこのような報告について十分な対応をするプロセスが存在していないと言うことも指摘しています。
2018年12月に発表された「Twitterの透明性に関するレポート」では、2018年1月から6月まで、児童の性的搾取に関連して487,363件のアカウントを凍結したと報告しています。
凍結されるとどうなるか
Twitterのアカウントが凍結されてしまうと、できることは基本的にログインのみとなります。ツイートの投稿や新たなフォローはできません。フォローやフォロワーもゼロになります。
凍結が解除されればすべて凍結前の状態に戻ります。
凍結解除の方法
アカウントが凍結になった場合、原因になったツイート、またどのような理由により違反とされるのかを具体的にメールで連絡してもらえます。凍結の原因が深刻でない場合は解除してもらえる場合もあります。
自分で解除できる場合
Twitter上で「アカウントがロックされている」というメッセ―ジが表示された場合、凍結またはロックされた理由によって対処方法は異なります。
凍結の原因が深刻でない場合には、基本的に最初の凍結の時点で、Twitterにログインした際に携帯電話番号の入力、またはメールアドレスの確認を求められます。画面の従うことでアカウントの凍結解除をすることができます。
Twitterに異議申し立てする場合
上記の手順で自分で凍結解除できない場合はどうなるのでしょうか。Twitterのルールに違反した覚えがなく、何かの手違いでアカウントが凍結またはロックされていると考えられる場合には、異議申し立てをすることができます。
その場合は凍結されているアカウントにログインしたのち、ブラウザで新しいタブを開き、異議申し立ての詳細を入力します。その後、Twitterがその説明に納得するとアカウント凍結を解除してもらえます。けれども、Twitter側がアカウントユーザーがTwitterルールに違反する行為をしていたと判断する場合は凍結は解除されません。
2017年8月にTwitterアカウント凍結が多発した時のケースでは、異議申し立てをしても解除されないという事例が多く報告されました。この時は警告の段階を超えていきなり本凍結になってしまい、そのまま解除されない結果になったアカウントが多かったようです。
児童ポルノ問題に対する日本の遅れ
Twitterアカウント凍結の理由として、特に日本で顕著にみられるのが上記の「児童の性的搾取のポリシー」に違反する行為です。ここで注意するべきなのは、この場合のTwitterポリシーと言うのはあくまで国際(主に米国)基準で判断されるということです。
日本では女性に対する性暴力やセクハラなどの対応に関しても同様ですが、児童ポルノ問題についての対応が欧米諸国に比べてはるかに遅れています。ハードコアなポルノについては別としても、外国から日本を見て異様なのが、日常的に目にする「カジュアルな」ポルノ/性的表現が社会に蔓延していて、それが市民権を得ていることです。特に、子どもの顔をしているのに胸ばかり大きかったり、露出が多い服装、または姿勢で描かれる、一見「かわいい」萌え絵など。そういうイラストが普通に使われていて、時には政府広報や自衛隊員の募集広告に登場したりするのは外国人から見るとかなり違和感があります。
そういう風潮について反対する意見には「これくらい何がいけないのだ」「表現の自由を規制するのか」「個人の好みであって、好きな人がいるのだから嫌いな人は見なければいい」という反論が出ます。日本での萌え絵や児童ポルノ、援助交際などについての問題はまた別記事に取り上げるべき問題で、ここではいったんその良しあしはおいておきます。
その上で指摘しておかなければならないと思うのは、今や国際的になったインターネットでの表現において、狭い日本社会だけで許容されるルールは通用しないということです。一部の人が犯しがちな間違いは、日本で一般社会に出回っていて感覚が麻痺しているため、何がいけないのかわからないままにルール違反の画像などを使用してしまうことです。それがTwitterが全世界で凍結した児童の性的搾取アカウントのうち4割近くが日本のものだったという結果になってしまっているのです。
Twitterなど世界的なルールに基づいて運営されるプラットフォームを使っている以上はTwitter本社の国際ルールに基づいてアカウントを運用する必要があります。こういう国際企業は国別に個々のルールなどなく、世界的に同一ポリシーに基づいて運営されています。いくら日本では許容されているからと言っても国際ルールに違反するものはアウトです。日本で日常的に目にすることで許容されていると思うコンテンツが国際的な基準で見るとどういうように見えるのかと言うことは気にしておいた方がいいでしょう。
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