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山口真帆暴行事件でファンに謝罪:なぜ被害者が?と海外の反応

Maho Yamaguchi

NGTメンバーの山口真帆が2018年12月新潟市内の自宅マンションで2人の男性に暴行されたことを告発しました。山口は所属会社が適当な対応をしてくれると思っていたものの何もしてくれないことに失望し事件について公表し、その後に出演した講演でファンに心配をかけたとして謝罪しました。この件は日本でも反響を呼びましたが、海外メディアでも取り上げられました。海外では被害者であるはずの山口がどうして「謝罪」しなければならないのかを疑問に思う声が圧倒的に多く、その一部をここで紹介します。


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山口真帆の暴行事件

山口真帆が昨年12月、新潟市内の自宅マンションに帰宅した際、玄関前で2人の男に暴行された件について当初は明らかにされませんでした。山口によると所属する運営会社が対処すると約束したので黙っていたものの、1か月たっても何もしてもらえなかったため、思いあまって動画配信サービスを使って被害を告白するに至ったということです。

容疑者男性2人はNGTファンであるそうですが、この暴行事件では不起訴となっています。NGTメンバーがつながりのあるファンである犯人に山口の個人情報や帰宅時間を教え、家に行かせたと言われていますが、この男性2人が山口の住所を知った経緯やメンバーの部屋から出てきたとされる経緯など、明らかになっていないこともあります。運営会社は事件後、彼女の告発で事件が表沙汰になるまで、真相をつきとめ、適切に対処する事をしなかったということです。

山口はこう語っています。

「止められて何も(して)くれない。本当のこと言いたいけど、本当のこと言わないと何も解決しない。私と同じ目に遭う人いるのに結局1ヶ月待ったけど何にもしてくれない」

「何にも対処してくれなくて、クリーンなNGTにするって言ったのに。新しいNGTにするって。悪いことしてる奴ら解雇するって言ったのに。何も対処してくれなくて。皆の個人情報ばれてるし。真面目にやっている子達が私と同じ怖い目にするのはもう耐えられない。」

「今回、私は助かったから良かったけど。殺されてたらどうすんだろうって。取り返しつかないことになったらもう何も間に合わないのに。なぜ、他のグループで許されないことが、NGTで許されるのかわからない。生きている感じがしない」

運営側は「本人から公表する形になってしまったことは、本人やファンの皆様への説明や対応が不十分だった」と謝罪しています。また、「メンバーの1名が、男性から道で声をかけられ、山口真帆の自宅は知らないものの、推測出来るような帰宅時間を伝えてしまったことを確認しました」と報告。防犯ベル支給などの再発防止策を発表しましたが、それで解決するような問題でないことは明らかです。

本来ならメンバーを守るべき事務所や大人達が暴行事件という重大な事件を放置したばかりでなく、事件に対応すると被害者に嘘をつきうやむやにしようとした、裏切りとも思える姿勢を取り続けていることには驚きます。彼女が被害を受けたショックだけでなく、その後の事務所の対応にどれだけ苦しみ、耐えながら事件から告発までの1か月を過ごして来たかを考えるとあまりにひどい仕打ちだと言わざるを得ません。

山口真帆がファンに謝罪

山口真帆は暴行事件について告発した後に出演した公演でステージ上からファンに挨拶。事件を告発したことでファンに迷惑をかけたとして頭を深く下げて謝罪しました。

「たくさんお騒がせしてしまって誠に申し訳ありません。」
「先日もお伝えしたとおり、私にも守りたいものがあったから、このような形で皆様に伝えることを祈ってしまったことも、お世話になった方たちにも迷惑をかけることになってしまったことを申し訳なく思っています。
「これがきっかけとなってまたNGT48が新しい方向に迎えるように私も努力したいと思います。引き続きNGT48の応援をよろしくお願いします。」

海外メディアの反応

英デイリー・メールでは「日本のポップスターがファンに謝罪..彼女自身が2人の男性による性暴力の被害者となったことで」というタイトルで紹介。「SHE」を大文字で協調して、なぜ被害者である彼女が謝罪をしなければならないのか不可解であるという意図が明らかです。この記事で山口真帆の暴行事件について詳細に説明したあと、山口の事務所が適切に対処すると言ったことを彼女は信じて1か月待ったが何も進展はなかったこと、その後山口は事件について告発したが、犯人は起訴されなかったこと、山口はその後の公演でファンに迷惑をかけたことを謝罪したことを報じています。

この記事に対してのコメントには「どうして被害者が謝罪しなければならないのかわけがわからない」「加害者はなぜ起訴されなかったのか」「こんな無責任な事務所など辞めるべきだ、彼女の保護者はどうしてこんな事務所にまかせているんだ」「日本人はどうしてこんなに臆病なんだ、こんな事件に遭ったんだからもっと怒ってしかるべきだ」などどいうものが挙げられています。

同じくイギリスのガーディアンも「日本のポップスターがファンによる暴行の後謝罪し被害者非難だと抗議の声」という記事でこの件を取り上げました。日本の女性セレブの過酷な扱いが「また」問題になっているとして、これが数ある同様の事件の一例にしか過ぎないという扱いです。日本の女性アイドルは、男性ファンの関心を誘うため、ボーイフレンドを持つことを許されないとしています。同記事は峯岸みなみがボーイフレンドと一夜を共にした後謝罪の為に頭を剃ったことも例にあげています。

米TIMEでもこの事件について取り上げ、芸能事務所AKSに属するNGT48のメンバーである山口真帆が暴行事件に遭ったことについて公演でファンに謝罪したことを詳細に伝えています。また、ツイッターで#JusticeforMahohonというハッシュタグで彼女を応援する動きが広がっていることや、署名サイトChange.orgでNGT48の今村悦郎支配人の辞任を求める署名運動が起こっていることにも言及。

TIMEはNGT48 とAKSにこの件についてのコメントを求めたが、返事はなかったと報告しています。

CNNでも山口真帆の暴行事件や彼女の告発、謝罪について報道しました。その背景として、安倍首相の「ウーマノミクス」の公約にもかかわらず、日本がジェンダー平等指数において世界149ヶ国中110位であること、女性が「女らしく」あることが求められ、強い女性は尊敬を集めないことなどにも言及しています。

米ビルボードも「Jポップ・グループNGT48のメンバー、暴行について告発したことを謝罪」というタイトルでこの事件について報道。山口が事務局の対応を1か月待ったが何も進展がなかったため、自らと他のNGT48メンバーの身の安全の為に告発をしたこと、生命の危険を感じていたこと、NGT48のメンバーがこの事件に関与していることも報じています。

香港のSCMPは日本の「victim blaming」つまり被害者を悪いとする文化が、#justiceforMahohonというハッシュタグでSNS上で批判されていることを伝えています。元NGT48の北原里英が山口真帆は謝るべきではないと言ったことや支持者の署名活動についても言及。背景として日本には「gaman」の文化があるとして、女性は被害に遭ってもそれに耐えることがよしとされるという説明をのせています。合わせて伊藤詩織事件についても紹介し、日本ではレイプ被害者が警察に届ける率が4.3%に過ぎないと伝えています。

このほかにもこの事件は「AsianJunkie」や「Arama Japan」などの英語のブログからも関心を集めています。

女性の人権

男性による若い女性アイドルに対する暴行事件はその背景に日本社会で男性が女性を性の対象物として「物」扱いし、女性の人権を尊重しない風潮が構造的にあることを物語っています。そして被害者となった女性は回りから泣き寝入りをすることを期待されその声は多くかき消されてしまうのが常です。勇気をもって告発した女性でもその告発について周りに「謝罪」しなければならないとは、どういう世の中なのでしょうか。

被害を受けた女性は謝罪する必要はありません。謝罪しなければならないのは加害者であり、彼女を守るべき所属事務所であり、彼女の個人情報を加害者に教えた人たちです。

こんな当たり前のことが日本では声を大きくして言わないといけないなんて、海外の常識で考えると驚くべきことです。世界で広がる#MeToo運動が日本ではなかなか日の目をみないのも、伊藤詩織のレイプ疑惑山口達也女子高生わいせつ容疑「SPA!」の女子大学生ランキング東京医科大入試差別問題など女性蔑視、女性差別の問題が後を絶たないのもその背景には女性の人権を尊重しない日本社会の暗い闇が垣間見えます。

日本で若い女性だった私はイギリスに長く住んでいるため、今でも日本社会での女性の扱いが20~30年前と変わっていないことに驚いてます。イギリスで女性の地位が向上してきたように日本でもそうだと思っていたのに。だって男女雇用機会均等法とかあったじゃない?

このような問題があるのは男性が女性を人間として尊重しない風潮があるからですが、私たち女性にも非があるのではないでしょうか。私たちのような年長女性はこれまで日本社会で女性として差別を受けたり「二級市民」として扱われることに慣れてしまい、その扱いを受け止め、我慢し、内心は違和感があってもにっこり微笑んですましてきました。そのほうが世の中がスムーズに回るから。変に波風を立てて個人的に批判の的になりたくないから。けれども、私たちが声を挙げなかったから何十年たっても女性の地位が変わってこなかったのではないでしょうか。

今でも若い女性がこんな悔しい思いをする羽目におちいっているのは私たちがもっと怒ってもっと声を挙げてこなかったからかもしれない、謝罪すべきなのは私たち年配女性かもしれません。本当にごめんなさい。そして、私は今からでも声を挙げていきます。

(敬称略)

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