Last Updated on 2018-03-29 by ラヴリー
ケンブリッジ・アナリティカがフェイスブックの個人情報を収集して利用していたことについて、元社員クリストファー・ワイリーが告発した記事を書いた後、事実が次々に明るみに出ました。最初はみずからの過ちを否定していたFacebookですが、株価の急落、個人メンバーの退会、アカウント削除、#deletefacebookボイコット運動などを経て、落ち度があったことを認めています。
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ケンブリッジ・アナリティカのフェイスブックデータ流出
詳しくはこちらを読んでいただければいいのですが、ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica:CA)とはイギリスのデータ分析コンサルタント会社です。同会社の元データサイエンティストのクリストファー・ワイリーのインタビュー記事が3月17日に英オブザーバーで発表されました。
それによると、ケンブリッジ・アナリティカがフェイスブックメンバーのデータを入手し、2006年米大統領選やイギリスのEU離脱国民投票キャンペーンなどに利用。Facebookメンバー5,000万人の個人情報が第三者の手に渡り、2016年の米大統領選ではトランプ共和党が有利になるように利用されたというのです。
このあともオブザーバー、ガーディアン、ニューヨーク・タイムズなど英米のメディアで次々に事実が明るみに出て、ケンブリッジ・アナリティカがどのようにしてフェイスブックの個人情報を利用していたかがわかってきました。
メディアの取材は実際に報道されるしばらく前から行われていましたが、オブザーバー紙によると、フェイスブックは発表されたら法的措置に訴えるとメディアを脅していたといわれています。
ワイリー告発後のフェイスブックへの影響
クリストファー・ワイリー告発の報道のあと10日間で、フェイスブックの資産価値は時価総額ベースで700億ドル(約7兆4千億円)急落するという事態となっています。
Facebookの株価は一時は150ドルを割り込む水準に落ち込みました。3月16日の185.09ドルから1週間で159.39ドルと-13.9%の急落となりました。Facebookの株価は依然として復調する気配はありません。
一般にもフェイスブックアカウントを削除しようという#deletefacebook運動が世界中に広がっています。世界中で使用されているメッセンジャーアプリケーション(日本ではLINEが主流ですが)「WhatsApp」の共同創業者であるブライアン・アクトンがTwitterで「It’s Time」(今がやめ時だ)とつぶやいたことで、さらに拍車がかかったようです。
フェイスブックに広告を出している企業や団体も広告をやめたり、Facebookページを削除したりし始めました。たとえば、アメリカの電気自動車メーカーのテスラや宇宙ベンチャーのスペースXのCEOであるイーロン・マスクは両社のFacebookページを削除しています。また、自動車部品を販売する小売店Pep Boysがすべての広告を中止したほか、ドイツ金融大手コメルツ銀行やMozilla、プレイボーイ社などもフェイスブック広告出稿を見合わせているそうです。
最初、マーク・ザッカーバーグCEOはFacebookはケンブリッジ・アナリティカなど外部に利用された被害者だとの見解を示していました。けれども事態がここまで大きくなったあとで、方向転換をして、みずからの過ちを認めるようになりました。
ザッカーバーグCEOは「Facebookデータ流出問題が起きたことについて申し訳なく思っています。」と謝罪。
2004年、まだハーバード大学の大学生だった19歳の時にフェイスブックを興したザッカーバーグはこう語っています。
「僕がフェイスブックを始めたときはまだ若かったし人生経験もなかった。技術面でもビジネスでもたくさんの失敗をした。適切でない人を雇ったり、信頼すべきでない人を信じたりもした。」
「これからはこのような間違いを2度と犯さないようにデータ・セキュリティーのための人員を今の2倍の20,000人に増やし、技術面でも改善をはかっていく」
そのほかにも、個人情報を集める仕組みになっているアプリは廃止すると発表しています。
Facebookは今回の騒動で、3月25日にはニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど英米の主要紙に一面謝罪広告を掲載しました。それにはこうあります。
「わが社は皆さんの情報を守る責任があります。情報が流出したことはその信頼に反することであり、それを防ぐために力が及ばなかったことについて謝罪します。」
米連邦取引委員会(Federal Trade Commission/FTC)はFacebookが個人情報を管理するにあたって適切な扱いをしていたか、法律違反がなかったかについて調査を始めると発表しました。米議会はザッカーバーグCEOに公聴会への出席を求めています。
英議会でもザッカーバーグにも証言を求めていますが、これには応じず、代わりにフェイスブック幹事を派遣するようです。
Facebookはザッカーバーグがまだハーバード大学の大学生だった時、学生同士がインターネット上で気軽に情報交換ができる場所として開設されました。それが今では世界で9億人が利用するSNSに育ったのです。米誌フォーブスの2013年の発表によるとザッカーバーグは若くして米資産家の長者番付で20位になっています。
フェイスブックはスマホ通話やテキストの情報も収集
以前からそういううわさは聞かれていたのですが、今回の騒動で取り上げられるようになったことにスマホ通話やテキストメッセージの情報をフェイスブックが利用しているということがあります。この話題が広く取りざたされるようになったことで、フェイスブックはアンドロイド・フォン利用者の通話やテキストメッセージの情報を「本人の許可を得て」収集していたと認める発表をしています。
フェイスブックは3月25日そのブログ上でこういっています。
「Facebookが本人の許可なしにスマホ通話やテキストメッセージの情報を収集しているというのはまちがいです。事前にオプトイン(個人情報収集や利用を承諾すること)しているユーザーからしかデータを集めていないので、本人の意向に反した行為ではないのです。」
しかし、オプトインしたのかどうかユーザーに分かりにくい設定になっているのが問題のようです。多くのユーザーは自分がそうと気づかないままに個人情報を収集されるがままになっているという結果になっています。
ニュージーランドのディラン・マッケイは自身のFacebookのデータをZip データとしてダウンロードしてみたところ、パートナーのお母さんとの通話記録が残っているのを見つけました。彼はこの通話記録の保存を認証してはいないと言っています。また、2016年11月から2017年7月の間のすべての通話、テキストメッセージ記録が保存されていてすでに削除しているコンタクト先のデータまで残っていると報告しています。
Downloaded my facebook data as a ZIP file
Somehow it has my entire call history with my partner’s mum pic.twitter.com/CIRUguf4vD
— Dylan McKay (@dylanmckaynz) 2018年3月21日
フェイスブックの自分のデータを確認してみよう
上記のディラン・マッケイがしたように、フェイスブックに自分のどんな情報が記録されているのかは確認することができます。その調べ方を紹介します。
フェイスブックの一般データ設定の画面を見てください。
「データをダウンロード」と書いてあり、その下に「Facebookで共有したコンテンツをダウンロード。」という表示があります。
この「アーカイブをダウンロード」をクリックしてください。
そうすると、あなたがFacebookに登録した時からの記録、画像、コミュニケーションなどが記録されているはずです。登録期間が長ければ長い人ほど、またフェイスブックを使う頻度が高い人ほど、莫大な量のデータが蓄積されていることになります。
たぶん、あなた自身が忘れているようなことまでフェイスブックは覚えているでしょう。
次に「他の人が使用しているアプリ」という設定画面も確認してみましょう。
「Facebookであなたの情報を見ることができる人は、アプリを利用する際にもその情報にアクセスできます。これにより、インターネットをさらにソーシャルな環境でりようできるようになります。下の設定を使って、アプリやゲーム、外部サイトで友達に公開する情報の種類を選択できます。」と書いてあります。
その下に、公開情報にチェックを入れるようになっているので、この機会にこの項目を調べてみて、必要のない項目のチェックを外すことを検討するのもいいでしょう。
絞り込むことができる情報には下記があります。
- 経歴
- 誕生日
- 家族と交際ステータス
- 恋愛対象
- 政治観と宗教・信仰
- 利用しているウエブサイト
- オンライン状況
- タイムラインの投稿
- 出身地
- 居住地
- 学歴・経歴
- 好きな活動、趣味・関心、好きなもの
- アプリでのアクティビティ
我々は知らない間に個人情報を収集されている
フェイスブックなどのSNSに限らず、あらゆる場面で私たちは「規約」に「同意」しています。同意しないことにはオンラインバンキングも、楽天やアマゾンでの買い物も、電話を使うことも、オンラインニュースを購読することも、空港などでインターネットを使うこともできません。
その際に、契約書を読んで「同意します。」とチェックしなければならないわけですが、その文章を一字一句確認している人がどれだけいるでしょうか。私はせっかちなので一字一句どころか、ほとんど読まずにさっさと「同意します。」にチェックを入れてしまいます。
イギリスの情報コンサルタントF-Secure が行った調査によると、契約書を読む人は一人もいないようだとBBCラジオで報道されていました。
その会社はロンドンのウエストミンスターでwifi スポットを無料で提供するというテスト調査をしました。そのwifiにアクセスするためには「使用規約」を読んで「同意します」にチェックを入れる必要があります。その「使用規約」は5ページあるのですが、その中ほどにこういう条項があったのです。
「使用するために、あなたの最初の子供をわが社に与える。もし子供がいない場合はペットを。」
そして、誰一人これに気づかずに「同意」したそうです。
フェイスブックの長く複雑な「使用規約」にもケンブリッジ・アナリティカのような第3者が個人情報を収集することを認めるという条項があったのですが、それを読んで自分の情報が選挙キャンペーンなどに使われる可能性があると思った人が何人いたでしょうか。
F-Secureはこのような問題を避けるために「TLDR Legal」 という方法を推奨しています。「TLDR」は「Too Lond Did not Read」(長すぎたので読まなかった)の略です。Youtubeのような人気サービスを使うにあたって、複雑で長い使用規約を誰でも30秒で読んで理解できるようにまとめて使うというものです。そうなったら便利ですが、今のところ私たちはTLDR規約に「同意」しなけければならないのです。
SNSへの一般の信頼度
この度の一連の騒動によって、フェイスブックに対する信頼度が一気に下がりました。
アメリカやドイツでのロイターの調べによると「フェイスブックを信頼していない」と答えた人の割合は過半数に上りました。
ドイツの調査では「FacebookなどのSNSが民主主義に悪影響を与えると思いますか。」という質問に「そう思う」と答えた人が約60%いたそうです。逆に「プラスの影響を与える」と答えた人は33%でした。
各SNSの個人情報保護についての信頼を調べる調査では「各ネットワークが個人情報保護法を遵守している。」と答えた人の割合は下記の通りでした。
- Facebook 41%
- Amazon 66%
- Google 62%
- Microsoft 60%
SNSとのつきあい
フェイスブックをはじめとするソーシャルネットワークは短期間のうちに広がっていきました。私たちはその利便さや「世界中とつながる」といった可能性に心を奪われているかげで、隠れている問題に気づくことなく使っていたのではないでしょうか。
個人情報収集とその不正利用といった問題だけではありません。このような事件が起こったからと言ってすぐ#deletefacebookに走る必要はないでしょうが、そういう行動をとった人はこれまでもSNSとの付き合い方に何となく居心地が悪い感情をもっていたのでしょう。
たとえば、友達や家族と会ってもスマホばかり見ていたり、旅行に行っても「インスタ映え」を意識して写真を撮ってばかりいたりして、これでいいのかと疑問に思っていたのかもしれません。
SNSは自分なりに上手に活用できるうちはいいのですが、もしそうでないのなら別になくてもいいものかもしれませんね。ちょっと前まではなかったのですから。
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