イギリスEU離脱国民投票不正疑惑告発者シャミヤ・サンニ

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Vote Leave

米大統領選や英EU離脱国民投票の選挙キャンペーンでケンブリッジ・アナリティカや関連企業がフェイスブックの個人情報などを利用していた件で一連の記事を書きましたが、今回は英EU離脱キャンペーンの告発者シャミヤ・サンニについて書きます。

ケンブリッジ・アナリティカの件

詳しくはこちらを読んでいただければいいのですが、ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica:CA)とはイギリスのデータ分析コンサルタント会社です。同社がフェイスブックの個人情報を収集して米大統領選キャンペーンに利用したことが告発されました。一連のニュースにより、フェイスブックの株価が急落し、一般のアカウント削除や企業の広告停止などの影響がでています。フェイスブックへの影響はこちらをごらんください。

この問題はケンブリッジ・アナリティカの元社員であったカナダ人クリストファー・ワイリーによって告発され、ワイリーは英国会特別委員会で証言。

この委員会でワイリーは告発する理由の一つにもなった2人のイギリス人青年について話しました。2人ともイギリスのEU離脱キャンペーングループのひとつ、BeLeave (ビーリーブ)の学生ボランティアだった若者です。1人はダレン・グライムズ(Darren Grimes)、もう一人はシャミヤ・サンニ(Shahmir Sanni)で、後者がEU離脱キャンペーングループVoteLeaveの活動について告発しました。

告発者シャミヤ・サンニ

EU離脱派キャンペーングループであるVote Leaveの告発者シャミヤ・サンニはオブザーバー紙のインタビューに答え、警察と選挙管理委員会にVoteLeaveが不正を行った件について証言をしたと語っています。EU離脱国民投票の後、彼は離脱派グループVoteLeaveのリーダーが率いるTaxpayers’ Allianceというキャンペーングループの仕事をしています。

2016年のはじめ、22歳でイースト・アングリア大学の経済学部を卒業したばかりのシャミヤはVoteLeaveでボランティアとしての活動を始めました。ウエストミッドランド州のソリハルに住んでいた彼は、週に数回VoteLeaveのあるロンドンへ電車で出かけていたそうです。ボランティアなので報酬などはありませんでしたが、政治信条的にEU離脱を支持していたのです。VoteLeaveは保守党のボリス・ジョンソン(現外務大臣)やマイケル・ゴブが率いるEU離脱のメイングループです。

2016年3月ごろ、彼はVoteLeaveのスティーヴン・パーキンソンに、別の反EUキャンペーングループであるBeLeaveでの活動をすすめられました。こちらはダレン・グライムズが作ったグループで、若者を対象にしたキャンペーングループです。ダレンも23歳の大学生で、彼らのキャンペーンは一般のEU離脱派向けのものとは異なっていました。EU離脱派につきまとうナショナリズム、反移民、人種差別、保守的といったイメージをなくし、クールでリベラル、公平でオープンなイメージを前面に出して若者にアピールしようとしていました。

シャミヤはパキスタン系のイギリス人男性で、白人が多いEU離脱派にとって「好都合」な外見でした。彼が離脱派キャンペーンの中心となって活動することで、人種差別的なイメージを払拭できるからです。シャミヤはそのことについても問題はありませんでした。彼は純粋にイギリスはEUから離脱して主権を取り戻すべきだと信じていたからです。

BeLeaveのキャンペーンも反移民といったお定まりのものではなく、社会的な差別撤廃、EU以外からの移民の差別をなくす、EUの保護主義によって不利益を被っているアフリカの農民を助けるとかいうことに焦点をおいていて、その政治的信条はシャミヤ自身のものと一致していたということです。

下記の画像の左がシャミヤ・サンニ、右がダレン・グライムズ。国民投票の前にVoteLeaveのチラシ配りをしているところです。

シャミヤはパキスタンからの移民で、シングルマザーの母と姉妹と共にイギリスに移住してきました。

彼は「多くのイギリス生まれのイギリス人よりも、この国についての思い入れが強い。」と言います。

自分やその家族が安心して暮らせるイギリスという国を心から愛するために、イギリスはEUから離脱して主権を取り戻すべきだと思っているようです。

「この国では、わたしの母や姉妹が女性として自由で、幸せであり、その能力を思う存分発揮することができるのです。」

「民主主義のこの国では、みながイギリス人としての共通の信念を持ち、何があっても人々は礼儀正しく列を作り、自分だけの利益のために嘘をついたり不正を働いたりはしない。」

実は彼らに限らず、戦前戦後にイギリスに移住してきたインドやパキスタンといった旧植民地時代の国からの移民とその2世など、イギリスに長く居住している人たちの中にはEU離脱派が少なくないのです。彼らはイギリス共和国(Commonwealth)の一員ではあるが、ヨーロッパの一員とは感じることができないのかもしれません。

シャミヤの告発

EU離脱派グループはAIQ (AggregateIQ)というカナダの会社にオンラインマーケティングキャンペーンを依頼しました。この会社はクリストファー・ワイリーによるとケンブリッジ・アナリティカのフランチャイズみたいなもので、フェイスブックなどから得た個人情報も共有していたということです。

VoteLeaveはAIQに大々的なオンラインマーケティングを依頼し、選挙運動に使える上限近くまで資金を使いました。国民投票の数週間前にもっと資金をつぎ込んでさらなるキャンペーンをしたかったのですが、そうすると資金の上限を超えてしまいます。それで、VoteLeaveはBeLeaveに625,000ポンド寄付し、その金額でAIQにデジタルマーケティングを依頼しました。この資金を受け取るためにBeLeaveの代表者ダレン・グライムズは自身の名義で銀行口座を作るように依頼されたということです。とはいえ、その資金はそのまま全額AIQに支払われたのですが。

イギリスの選挙法では、異なるキャンペーングループが合同で選挙運動することを禁止しています。もし、合同でするのなら、一つのグループとして選挙資金の上限を守る必要があるのです。シャミヤによると、VoteLeaveとBeLeaveは明らかに合同で運動をしていたのだから、これは違反に当たるわけです。彼自身も両グループで運動していたし、文書や記録ファイルなどもグーグルドライブですべて共有していたそうです。

昨年、選挙管理委員会がこの関係について審査しようとした時、シャミヤは両キャンペーングループが共有していたグーグルドライブを見て驚きました。選挙管理委員会の審査があるとわかった後、2017年3月17日にVoteLeaveの首脳部がグーグルファイルから自分たちの名前を消していたからです。

イギリスがEU離脱するということは自分の思い通りの結果になったわけなのでうれしいけれども、民主主義の国、不正がないイギリスだから主権を取り戻してほしかったのであり、それは公正な方法によってなされるべきであるとシャミヤは考えました。また、BeLeaveの事実上の責任者であるダレン・グライムズの名義でVoteLeaveからの資金が入金されたことでダレンに疑いがかかり、ひどく心配していたこともあり、事実を語ることを決めました。

パーキンソンがシャミヤとの関係を暴露

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シャミヤが事実を告発してから、取材されたVoteLeaveのリーダー、スティーヴン・パーキンソン Stephen Parkinsonはそれまで公にされていなかった情報を暴露しました。

シャミヤとパーキンソンは共にゲイで18か月パートナーとしてつきあっていたという事実です。2人は2017年の9月に(シャミヤによると友好的に)別れたということです。パーキンソンはこの告発は過去の関係についてシャミヤがしこりを持っているのが理由だと説明したかったようです。パーキンソンはすでにゲイであることをカミングアウトしていましたが、シャミヤのほうはそうではありませんでした。

パキスタン系のシャミヤはゲイであることを公にはもちろん、母親をはじめとする家族にも内緒にしていました。突然公の場で公表されたことで彼は窮地に立たされ「一生で一番の打撃を受けた。」と言って涙さえ流しています。というのも、パキスタンでは同性愛が敵視されているため、そこに住むシャミヤの家族や親族は非難や危険にさらされる可能性があるからです。

イギリスでは選挙キャンペーンの不正はもちろんですが、パーキンソンが捜査に関係のない個人的な情報を突然公表してシャミヤに不必要な被害を与えたことで、パーキンソンに非難の声が上がっています。パーキンソンは現在メイ首相のアドバイザーの任についていますが、それを退くべきだとも言われています。

まとめ

ケンブリッジ・アナリティカ関連の一連の出来事はまだ不明点も多くあり、これからも成り行きを見守っていく必要がありそうです。

おりしも明日はグッド・フライデー。1998年のグッド・フライデー・アグリーメント(ベルファスト合意)から20年間、北アイルランドでは何とか平和が保たれてきました。イギリスのEU離脱まであと1年となるのに、いまだに北アイルランドの国境問題がどうなるのかは不明のまま。EUもベルファスト合意も何とか平和裏に事が進むように願うばかりです。

 

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