Last Updated on 2020-11-04 by ラヴリー
アイルランドで起きたレイプ事件で、被害者である17歳の女性が事件にあった時に着ていた下着を理由に加害者が無罪放免になりました。これについて大きな抗議の声が上がり、女性たちが自分の下着の写真をSNS上にあげたり下着を見せてデモをする様子に注目が集まっています。どういう成り行きでこうなったのでしょうか。女性が着ているものが性暴行被害の理由になり得るのか、性行為への同意ということについても掘り下げてみたいと思います。
Contents
アイルランドのレイプ事件
ことのおこりはアイルランドのコークで行われたレイプ事件の裁判です。この裁判では、17歳の女性が性行為に同意はなくレイプだったと主張したのに対し、被告の27歳の男性は被害者が性行為に同意しており、強制した性行為ではなかったと主張していました。
法廷で、加害者側のエリザベス・オコンネル弁護士は女性が事件に遭ったとき着用していた下着を理由に「彼女には男性と性行為をする意思があった」と主張しました。彼女は法廷で実際に被害者が身に着けていたレース付きのTバックを陪審員に見せながらこう言ったのです。
「この女性が何を身に着けていたかに注目してください。彼女は前の部分がレースになった thong(Tバック)を身に着けていたのです。」
この法廷での陪審員は男性が8人、女性が4人だったのですが、全員一致で被告が無罪だとの判決を下しました。
判決に対する抗議の声
この裁判の結果が明らかになると、「下着を理由に性行為に同意したということにするのはおかしい」という抗議の声が上がり、「I Believe Her」という女性団体らが中心になってデモやSNSでの拡散が行われました。
この運動は今年初めに起きたレイプ事件で同じように無罪判決になったことがきっかけに始まったもので今やアイルランドを超えて世界中に広まっています。一事件にとどまらず、すべての性暴行事件において被害者を非難する「ヴィクティム・ブレイミング」を終わらせたいという願いに賛同した人々が参加しているのです。
In Cork earlier today 😍 #ThisisNotConsent pic.twitter.com/q8WhhG9vxG
— I Believe Her – Ireland (@ibelieveher_ire) 2018年11月14日
ハッシュタグ #ThisIsNotConsent (これは同意ではない) #IBelieveHer (私は彼女を信じる)を掲げて、SNS上に様々なメッセージが集まっています。中には、自ら着用している下着の写真を載せている女性もたくさんいます。
Thongs DO NOT cause rape.
Short skirts DO NOT cause rape.
RAPISTS cause rape! #ThisIsNotConsent pic.twitter.com/4PbAR2hIDh— Cllr Sharon Tolan (@sharontolan) 2018年11月13日
15 pairs of lacey thongs…Try as I may I can’t condense this for twitter so read the screenshot below if you wish. Karen #ThisIsNotConsent #IBelieveHer pic.twitter.com/ccwAYcKhCX
— Wyvern Lingo (@WyvernLingo) 2018年11月16日
この問題はアイルランド国会でもとり上げられルース・コッピンガー下院議員は議会でTバックの下着を掲げて語りました。
「この場で下着を見せるのは恥ずかしいことかもしれません。けれども、自分がレイプされた時に身に着けていた下着を法廷で見せられるという不幸な状況におかれた女性の気持ちを想像できますか。」
WATCH: TD @RuthCoppingerTD held up a thong in the Dáil earlier protesting the use of the same tactics in a courtroom during a rape case in Cork pic.twitter.com/bfGAegWpkO
— Sean Defoe (@SeanDefoe) 2018年11月13日
バラッカー首相はコッピンガー議員の質問にこう答えています。
「レイプや性暴行を受けた被害者の誰にも罪はありません。被害者が何を着ていたとか、どこに行ったか、誰と行ったか、飲酒や薬物の影響下にあったなどは何の関係もありません。このようなことを犯罪の根拠にすることは批判すべきことです。」
性行為への同意
日頃他の女性がどんな下着を身に着けているか知る機会は少ないものですが、SNSに上がっている投稿を見ても「普通の」女性がレースのついたTバックなどを着るのは当たり前ということが分かります。レギンスやタイトなパンツをはくとき下着の線が出ないためにTバックを履く人は多いでしょう。この事件の裁判が起こったアイルランドのコークという保守的な地域の陪審員になるような人たちにとってはそれが理解できなかったのかもしれません。
けれども、そもそもそれも論点ではないのです。女性が何を身につけていたのかということで性行為の合意があったかどうかを論じるということ自体が間違っているのです。合意というものは双方のはっきりとした意思表示で初めて表現されるものだからです。
Well done to the protestors in Ireland #ThisIsNotConsent pic.twitter.com/Kj7iWDXBhl
— Lady Louisa (@IouisaLouisa) 2018年11月15日
性暴行を受けた被害者が何を着ていたのかということを詮索し、それが「挑発的」なものだったから仕方ないとか自業自得だとかいう人がいます。「もっと控えめな服装をしていたらそんな被害には遭わなかったのではないか」というわけです。または「夜一人で外出しなければ」とか「そんなにお酒を飲まなければ」という人もいるでしょう。
これはすべて性暴行の被害者を非難する「ヴィクティム・ブレイミング」で、加害者の罪(の一環)を被害者に負わせているものです。レイプや性暴行の原因は被害者が着ている衣服をはじめ被害者がしたことでは決してありません。すべて加害者のせいなのです。
性暴行の中でも頻繁に起こる痴漢にしてもそうです。女性がミニスカートをはいたり、体の線が露出する服装をすると痴漢に遭うからやめろと言われますが、どんな服装をしていても痴漢に遭うと言われるご時勢、痴漢に遭わないためには女性であることをやめなくてはならないのではと心配です。
女性の権利と着るものについて
少し話がずれるのですが、女性が着るものに関して見当違いの意見を散見するので言っておきたいことがあります。「フェミニストでもピンクを着る」ということ。
女性が何を着ようとそれはその人自身の勝手であり、単なる趣味の問題です。まあ、丸裸では捕まってしまうし機能的ではないでしょうが。男性と同じ権利が欲しい、女性としてではなく人間として扱われたいと思う女性でもいわゆる「フェミニン」な服装をしたりレースのついたTバックを身につけても他人にあれこれ言われる筋合いはありません。もちろん、男性がそういう格好をしたければすればいいのです。
多くの女性は自分が着るものを男性の性欲を刺激したり、誘惑するために選んでいるわけではないのです。女性は自分が身につけたいものを自分で選ぶ権利があり、レイプや痴漢に遭うからと言ってその権利を制限されるべきではありません。