BBCが高額報酬出演者の賃金を発表したことで男女間の賃金格差の問題が明らかになりましたが、キャリー・グレイシー中国編集長はこれを理由に抗議辞任しました。また、男性記者やキャスターの男性6人は自主的に減給に同意しました。
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男女賃金格差
BBCが2017年に発表した報告書によって、同じような仕事をする男女の賃金の問題が浮き彫りになりました。これに伴い、女性スタッフはBBCに対し男女格差解消を求め働きかけていました。
中国編集長の抗議辞任
Such a bold and courageous move! #IStandWithCarrie https://t.co/2LFgQANFug
— Shivani Relia (@relia_shivani) 2018年1月11日
こうした背景の中、中国編集長を努めていたキャリー・グレイシーは男女賃金格差に抗議して1月7日に辞任しました。グレイシー氏はBBC記者歴30年以上のベテラン女性で中国語も話せる中国のスペシャリストです。
グレイシー氏は自身のブログにBBCに対する書簡を公表し「BBCの給与体系は違法でヴェールにつつまれている」といい、辞意を表明。また、男女平等の報酬が確保されるのであれば復帰するとしています。
彼女はブログで「BBC受信料を支払う人には私がこの不平等な給与体系を是正することを求めていることを知る権利がある」と言っています。彼女の説明によると、同僚で、同じようなポストについている男性の北米編集長や中東編集長は、自分や同じく女性の欧州編集長より少なくとも50%高い報酬を得ているそうです。
グレイシー氏は4人の海外担当編集長の賃金を同一にすべきだと求めましたが、BBCの対応は満足するものではありませんでした。このため、グレイシー氏は同職を辞任したのです。彼女はBBCニュース編集局の以前の職に戻り、男女賃金格差が解消される日が来ることを期待するとしています。
BBC内外では、彼女の行動を支持する声が上がっています。BBCラジオ4の女性問題を取り上げる人気ラジオ番組「Women’s Hour」のジェーン・ガービーも番組内でこれを取り上げ、Twitterでもハッシュタグ#IStandWithCarrie (私はキャリーを支持します)とツイートしています。
男性職員の自主減給
BBCの男女賃金格差については女性職員だけでなく男性職員の中にも支持を表明する人が多くいましたが、その中でも6人が自主的に報酬削減に同意しました。
6人は北米エディターのジョン・ソペル、BBCラジオ4のベテランキャスター、ジョン・ハンフリーズ、同じくニック・ロビンソン、またテレビニュース番組司会者のヒュー・エドワーズ、ラジオ番組司会者のジェレミー・バイン、同じくニッキー・キャンベル。
いずれも高水準の給与保持者で、ジェレミー・バインの年収はBBC記者として最高額の70万〜75万ポンド未満(およそ1億780万〜1億1550万円)。
賃金カットが具体的にいくらなのかは公表されていませんが、ジョン・ハンフリーズは「かなりの減給」だと認めた上で「男女賃金格差をなくすことを支持しているので自らの賃金カットに同意した」と言及しています。
BBCの男女賃金格差
BBCの広報は「BBCでは女性に対する体系的な差別はない」と言っています。
また、「BBCは他の多くの組織に比べるとかなり格差を解消しているし、男女賃金格差の全国平均を遥かに下回っている。」
2017年10月、男女賃金格差について発表された報告書によると、BBCの男女賃金格差は9.3%でイギリスの大規模な機関の格差の平均18.1%に比べると少ない方となっています。
昨年この問題が取り沙汰されたとき、BBC会長のトニー・ホールは2020年までに男女賃金格差を解消すると約束していました。
まとめ
BBCでは番組制作や記者、キャスターに女性がかなり進出しています。海外担当編集長といった重要な職で中国担当と欧州担当と2人女性が起用されていたこともそれを証明しています。ニュース番組などでも女性記者やキャスターが男性の補佐的な役割ではなく、男性と同じように権限をまかされて活躍している様子が伺えます。
けれども、一般視聴者にはわからないところではまだまだ男女格差が存在していたということがわかりました。
これを機会にBBCでは男女格差についてより問題解決に踏み込んでいくでしょう。BBC以外の機関や企業でもこれをお手本にしてこの問題に取り組んでいってほしいものです。
とはいえ、日本では賃金格差どころか、そもそも女性が職場で活躍する機会さえなかなか与えられない現状だと思いますが。
今回のBBC中国編集長キャリー・グレイシーの辞任にあたっては「彼女のような経験と才能がある人物を無駄にするのはばかげている。」ということがBBC内外で指摘されています。
イギリスでも日本でもどこでも、男女を問わず、実績や能力がある人材をむだにしないような社会になって欲しいものだとつくづく思います。
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