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英EU離脱国民投票フェイスブック情報に影響されたと告発者が証言

Vote Leave

ケンブリッジ・アナリティカがフェイスブックのデータを使用して選挙キャンペーンをしていたことについて、クリストファー・ワイリーが告発した記事を書いた後、次々に事実が明るみに出ました。そんな中、英国会特別委員会でワイリーは「EU離脱の国民投票で、不正な選挙操作により、結果が逆になった。」と証言し、それを裏付ける証言をするもう一人の告発者が現れました。

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ケンブリッジ・アナリティカの告発者ワイリー

詳しくはこちらを読んでいただければいいのですが、ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)とはイギリスのデータ分析コンサルタント会社。クリストファー・ワイリー(Christopher Wylie)は2014年まで同社のデータを分析する仕事をしていたデータ・サイエンティストです。

彼は同社での仕事を辞めた後、英オブザーバー/ガーディアン紙の取材に応じ、ケンブリッジ・アナリティカがフェイスブックメンバーのデータを入手し、2006年米大統領選やイギリスのEU離脱国民投票キャンペーンなどに利用したとの告発をしました。Facebookメンバー5,000万人の個人情報が第三者の手に渡り、2016年の米大統領選ではトランプ共和党が有利になるように利用されたというのです。

3月17日に彼のインタビュー記事が発表されたのち、様々なメディアで次々に事実が明るみに出て、フェイスブックへの信頼はゆらいでいます。(フェイスブックへの影響についてはこちらの記事を参照)

この問題について英米の議会で真相を審議する必要があるとされ、3月27日クリストファー・ワイリーはイギリス国会の特別委員会で証言しました。この委員会でワイリーは4時間にわたってケンブリッジ・アナリティカ、フェイスブック、イギリスEU離脱国民投票、それ以外のトピックについても証言。

その中には、彼の前任者であるダン・マーセン(Dan Muresan)がインドやケニアで仕事をしていて、何らかの理由でそれがうまくいかず、2012年にケニヤのホテルで謎の死を遂げていたことも含まれていました。

ケンブリッジ・アナリティカの子会社にあたるAIQ (Aggregate IQ)が2015年のナイジェリアの大統領選に関係し不正をはたらいたことやインドでの選挙についても証言していますが、ここでは主にイギリスのEU離脱国民投票について彼が語ったことを書きます。

イギリスのEU離脱キャンペーン

2016年6月23日に行われたイギリスEU離脱国民投票では、僅差でEU離脱派がEU残留派を上回りました。その差は1,269,501票。

離脱派のキャンペーングループ選挙費用

国民投票が行われる前、イギリスのEU離脱キャンペーンでは異なるグループがそれぞれ独立して活動していました。離脱派の中でも複数のキャンペーングループが活動していましたが、その中に大手の「Vote Leave」、学生を対象にしていた「BeLeave」、「Veterans for Britain」、北アイルランドのDUP (Democratic Unionist Party)という4つのグループがありました。そして、この4つのキャンペーングループがいずれもAIQ (Aggregate IQ)という、カナダにある無名の会社にデジタルマーケティングを依頼していました。

ワイリーは「この4つの独立した別々のグループがどうして遠く離れたカナダの無名の会社を見つけたのでしょうか?」と聞きます。その会社は当時ウエブサイトすらなかったのですから。

彼はこの4つのグループが合同で同じ目的のためにキャンペーンを行っていたと確信していますが、各グループはこれを否定しています。それには理由があるのです。

イギリスの選挙キャンペーンでは、各キャンペーングループが使える費用の上限が700,000ポンド(約1億465万円)までと定められています。もし複数のグループが「合同で」キャンペーンを行う場合には1グループとして扱われ、その資金の上限も1グループ分となります。

「Vote Leave」は公式には選挙キャンペーンに677,000ポンド使ったことになっているので、上限を少し下回る額となっています。けれどもワイリーによると「Vote Leave」は「BeLeave」に625,000ポンドの資金を支払い、それはAIQのデジタルキャンペーン費用に使われたといいます。この「BeLeave」への625,000ポンドをプラスすると、キャンペーン票上限の700,000ポンドを超え、明らかに選挙法律違反となるのです。

ワイリーは上記の4つの離脱派キャンペーングループのほかにも、UKIP(イギリス独立党)がケンブリッジ・アナリティカを使っていたとの証言もしています。

AIQのオンラインマーケティング

クリストファー・ワイリーはAIQという会社が実際はケンブリッジ・アナリティカのフランチャイズ会社のようなものだと説明します。2013年ワイリーがケンブリッジ・アナリティカで働いていた時に、AIQをカナダに設立する仕事を手伝うように依頼されたのだそうです。この会社は親会社と同じく法律を無視してフェイスブックなどから不正に収集した情報を使用することに何のためらいも見せない企業だとワイリーは言います。

AIQはターゲットを狭く絞って、そのターゲット層に響くメッセージを繰り返し送ったり、表示させることで意識的、また無意識のうちに人々の思想や行動に影響を与えるマーケティングキャンペーンを行いました。そのためにAIQはケンブリッジ・アナリティカのフェイスブックなどの情報を使いました。

たとえば、一口にEU離脱派といってもその内訳は様々です。とにかく移民に反対している人もいれば、移民は歓迎するけれどEUの将来に期待が持てないという人もいるでしょう。どちらかというとEU残留派といわれる若者の中にも離脱派がいるわけですが、その人たちは「移民が押し寄せてくる」というメッセージより「EU拡大による経済格差のためにEU財政が将来破綻する」というメッセージのほうに敏感であるかもしれません。AIQはそういったセグメントに分けた効果的なデジタルマーケティングを巧みに使って、EU離脱キャンペーンを助けていたのです。

ちなみに、AIQはケンブリッジ・アナリティカとの関係を否定しています。

国民投票の結果に影響を与えたか

この不正が国民投票の結果に影響を与えたと思うかという質問に、ワイリーはまず「結果がどうかとは関係なく不正は許されない。」と言及したあとで「このような不正がなかったら国民投票の結果は反対だっただろう。」と語りました。

オンラインマーケティングを依頼し、キャンペーン費用の40%という大金を支払ったVoteLeaveのカミングス自身が国民投票のあとで、AIQなしでは選挙に勝てなかったと感謝したというのです。AIQが行ったオンラインキャンペーンはとても効果的で、通常は1~2%であるコンバージョン率は5~7%に上ったそうです。

ワイリーはどうして告発したのか

ワイリーはどうしてケンブリッジ・アナリティカやAIQなどの関係者を告発することにしたのでしょうか。私ははじめ、ワイリーがEU残留派だと思っていました。何せ頭をピンクに染めて鼻にピアスをしているデータサイエンティストですから。

彼は自分でも「外見はピンクヘアだけど」と前置きをして、外観に反して自分自身はEU離脱派なのだと言っています。それは彼がカナダ人であるにもかかわらず、民主主義国家イギリス国の主権は大事だと思っているからで、イギリスはEUから独立して主権を取り戻すべきだと言っています。しかし自分の政治信条が何であれ、そういうイギリス国家の民主主義の法律は守られなければならないとも。いくら政治的に自分の望む結果になったとしてもそれが民主主義に基づいてのものでなく不正を行った結果ならそれを自分は望まないと語りました。

ではどうして選挙中は協力したのに今頃になって告発したのでしょうか。ワイリーははじめは自分たちのような弱小データ会社が行うキャンペーンがこんなに功を奏すとは思わなかったそうです。単なるオンライン・マーケティングの一環としてやっていたのですが、いざアメリカの大統領選がトランプ勝利という結果に終わったのを見て、自分たちがしていることが単に商品を売るのとは違って、政治的に大きな影響を及ぼす可能性があるということに気づき、どうにかしなければならないと思い始めました。

それで、ワイリーはケンブリッジ・アナリティカを辞め、1年前から英ガーディアン紙、米ニューヨーク・タイムズ、英テレビ局チャンネル4とこの告発の案を練っていたということです。その間、ワイリーや各メディアはケンブリッジ・アナリティカ関係者やフェイスブックから法に訴えると脅しをかけられたりもしていると語りました。

もう一つ、彼が告発の決心をした理由に2人の若者が関係しています。ワイリーはこの2人の若者を守るためにも自分からすすんで証言をすることを選んだといいます。このうちの1人が第2の告発者となるのですが、話が長くなるので彼については次の記事で紹介します。

(注)下記に委員会での様子を映す映像リンクを参考までに載せておきます。けれども3時間半あるので覚悟してくださいね。

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