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NHKとBBC 公共放送 テレビ 受信料 支払い義務 国際比較

TV Licensing

テレビを購入したが、NHKの番組を見ないものでも受信料を支払う義務があるのかどうかという問題で、2017年11月6日、最高裁がNHK受信契約義務を「合憲」と判断しました。最近は「NHKから国民を守る党」という政党も活動を広げ、NHKについての話題は後をたちません。海外での公共放送ははどのようになっているのでしょうか。国際比較としてイギリスでのBBCの状況を紹介します。

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世界の公共放送比較

イギリスでも公共放送であるBBCは広告収入はなく、受信料だけで賄われています。このように受信料だけを財源としている公共放送がある国はスウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェイなどの北欧諸国があります。

一方、ドイツ、フランス、イタリアなどの国の公共放送は受信料だけでなく広告料も収入源になっています。アメリカ、オーストラリア、カナダのように民法と同じく広告料のみが財源になっているところもあります。

イギリスのBBCは日本のNHKと受信料制度が似ています。イギリスの受信料はいくらで、どのように徴収しているのでしょうか。その仕組みなどをご紹介します。

イギリスBBCの受信料制度

イギリスの公共放送の受信料制度は テレビ・ライセンス (TV Licensing)と呼ばれます。

イギリスのテレビ受信料

2019年現在、受信料は年間、下記のとおりとなっています。

カラーテレビ:154.50ポンド(約20,900円)

白黒テレビ:52ポンド(約7,040円)

一家に複数のテレビがある場合でも(最大15台まで)同一料金です。

今のところ、75歳以上の人はすべて無料、盲目の人には割引があります。

しかし、2020年から75歳以上でも、低所得者層でない限りは受信料を徴収しようという案が出ていて、もめているところです。

受信料支払い義務

受信料を払う義務があるのは、BBC, 民放含めすべてのテレビ番組を生でまたは録画して視聴する場合、また、iPlayer でBBC番組を視聴する場合です。

視聴デバイスはテレビだけでなく、コンピューター、スマホ、タブレット、ゲームコンソール、DVDレコーダーなどすべて含まれます。

家にテレビがあってもテレビ番組を見なければ(たとえば、ゲームをするのにだけ使用)原則として、受信料を支払う義務はありません。

そう簡単にもいかないのですが、その理由は後述します。

受信料金徴収方法

受信料金徴収には様々な方法が用意されていて、銀行から自動引き落としで払う他、クレジット/デビットカード、小切手、銀行振込などが可能です。

テレビ・ライセンス・ペイメント・カードというのもあり、分割支払い方法を毎月、毎週、隔週のように選ぶことができ、支払いも最寄りの郵便局をはじめ様々なところで支払いができます。

とにかく誰にでも簡単に支払いができるように、かゆいところに手が届くくらいの方法を網羅しているといえます。そのおかげか、受信料の支払い率は100%に近いといわれています。

なお、受信料なしでテレビを視聴したのが見つかった場合は1000ポンド(約14万円)までの罰金が課されます。

新しいテレビを買ったとき

大抵の人はすでにテレビを持っていて家にテレビ・ライセンスがあるので、受信料を払い続ければいいわけです。新しいテレビを買った場合もすでに持っているテレビ・ライセンスの受信番号を記入すればすみます。

けれども、これまでテレビ・ライセンスを支払ったことがない場合は、新しいテレビを購入するときに購入店舗で住所氏名を知らせ、その後テレビ・ライセンス局から受信料を請求する手紙が来るしくみになっています。

このあたりの具体的なシステム/方法は購入店舗によって、またその時々によっても変わることがありますが、とにかくイギリスでテレビ・ライセンス支払いを免れるのは大変なのです。

受信料不払い

最近はYou Tube やネット配信放送もあるし、テレビは見ないという人も増えてきていると思います。

けれども、10〜20年くらい前はほとんどの家にテレビがあり、誰でも(多かれ少なかれ)テレビを見ていたので、イギリスのテレビ・ライセンス局はすべての家にテレビ・ライセンスがあるのを前提として、受信料を支払っていない家庭には執拗に受信料請求をしてきます。

テレビ・ライセンスがない家庭というのはデータベースでわかっているので、その家に手紙が来ます。それには受信料を支払うか、支払う義務がない場合は、その旨を申告しなければならないとあります。申告とは「私はいかなる手段においてもテレビを視聴しないので支払い義務がありません。」という文面に実名で署名して、送り返すのです。

そうすると、その家庭は受信料不払い家庭としてデータベースに残り、定期的(1年に一度くらい)手紙が来て、また同じ質問が繰り返されます。私はイギリスでテレビを見ないし、家にテレビもないのでずっと受信料を支払っていません。それでも、テレビ・ライセンス局からこういう手紙が定期的にきます。

受信料不払い家庭の審査

過去には一度だけですが、自宅に前触れなしにテレビ・ライセンスの審査員が来て、本当にテレビがないかどうかを調べられたこともあります。

家に入るのを拒否しても良かったのかもしれませんが、うちには本当にテレビがなかったので、どうぞどうぞと中に入って調べてもらいました。その人は家にテレビがないなんて考えられないという口ぶりでしたが、外国人であったために英語がわからないからテレビを見ないのかもと思ってもらえたかもしれません。

また、随分前ですが、「TV Licensing」看板のついたテレビ電波検出車というのを見かけることがありました。「テレビを見ないので受信料を支払いません」という家庭の外でその車が機械を使ってテレビ電波が受信されているかどうかを調査すると言われていました。

けれども、あとであれは脅しのための見せかけだけで、実はそんな機械はなかったと言われていて、実際のところはどうだったのかわかりません。

もちろん、イギリス人の中にもテレビ・ライセンスを払うことに反対する人もいるし、BBCが嫌いだからとかBBCは見ないから払いたくないという人もいます。

けれども、イギリスのテレビ・ライセンス局はこのようにあの手この手を使って受信料を払わせようとしているので、受信料不払いはまれです。受信料はイギリスの全家庭の95%くらいが支払っていて、不払いは5%前後で推移しているということです。

これからの公共放送

NHKやBBCをはじめとする公共放送は、広告に頼らず、公平で質の高い番組を提供するという使命があります。スポンサーの意向を無視できない民法と違い、独立した視点で報道できるという点では重要なメディアとなります。

けれども、昔と違って今はインターネットを通して無料または低価格で多くの情報の中から自分が希望するものだけ、希望する時間帯に見られるご時世です。

個人個人の趣味や好み、生活スタイルが様々である中、テレビ放送という万人向けのメディアがどこまで国民に支持され続けるかというのが、今後、受信料問題の根本的な議論になるといえるでしょう。

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