最近は日本でも「タトゥー」と英語で呼んで、ファッション感覚で入れている人もいるようですが、まだまだ「入れ墨」というと抵抗がありますね。海外ではデイヴィッド・ベッカムやアンジェリーナ・ジョリーなど多くの著名人がしていたりしてかなり浸透してきているタトゥーですが、一般の人にはどう思われているのでしょうか。
Contents
英米でタトゥーをしている人の割合
イギリスに長く暮らしていて感じるのですが、タトゥーをしている人がだんだん増えているなという印象です。特に若い人の間で。目に見えるところにあるタトゥーだけでなく、見えないところにあるものを含めたらもっと多いのではないかなと、調べてみました。
イギリスでタトゥーをしているのは?
2015年に行われた調査では成人イギリス人の1/5がタトゥーをしているということです。40歳以下で、その割合は高くなっています。18~24歳で13%、25~39歳で30%の人がタトゥーをしています。性別でみると、男性が15%女性が22%で、女性のほうが多いんですね。
米国でタトゥーをしているのは?
アメリカでは、もっと多くの人がタトゥーをしていて、特に18から29歳といった若い人たちの間では半数近くとなっています。
タトゥーをしている人に対しての印象
イギリスで、タトゥーをしている人に対する印象を調べた調査もあります。
「大きなタトゥーをしている人に対して(タトゥーをしていない人に比べて)よくない印象を持ちますか。」という質問に対して、全体でみると「印象は特に変わらない。」と答えた人が44%、印象がよくなると答えた人が3%。悪くなると答えた人が36%となっています。
この質問にYESと答えた人の比率は年齢に応じて上がっていきます。
18~24歳で17%、25~39歳で24%、40~59歳で36%、60歳以上で56%
60歳以上の人はあまりいい印象を持っていないんですね。
きのうは、「キャサリン妃がタトゥーを入れた!」という記事が掲載されイギリス人は驚いていたようでした。よく読むと、タトゥーといっても、すぐ消えるヘナ・タトゥーということで「ご心配なく。」というニュアンスです。若いとはいえ、やはりイギリス王室メンバーがタトゥーを入れるのはタブーなのでしょう。
一般的に言ってもタトゥーをしている人は労働者階級に多く、上流階級の人には珍しいという階級の差も歴然としてあります。
タトゥーをしていると就職に不利なのか
タトゥーをしている人で、若い時に気軽に入れたものの、職探しをするときに心配になる人もいるようです。欧米では実際に就職で不利になったりするのでしょうか。
イギリスでは法律では特にタトゥーについて定められていません。なので、タトゥーをしている人を雇うか雇わないかは雇用主が自由に決めていいわけです。例外としては、雇用をするときに人種や宗教において差別をしてはいけないということから、宗教上の意味合いのあるマークは認めるべきだとしています。(たとえば、ヒンドゥー教徒の女性が額につけるマークとかですね。)
業種にもよりますが、一般的には就職には不利になることが多いようです。
職業によっては、タトゥーを禁止している業界があります。例えば、スチュワーデスなどがそうです。また、小学校の教師も目に見えるタトゥーをしてはいけないことになっています。
ロンドン警視庁もつい最近まで「市民に悪い印象を与えるため」警察官に目に見えるタトゥーを禁止しており、すでにタトゥーをしている人はその旨報告しなければならなかったのです。でも、2018年9月にタトゥーが許可されることになりました。
Employers must try to overcome their aversion to tattoos. This form of body art will increasingly enter the world of work. https://t.co/mGl0iLTkE2
— The Conversation (@ConversationUK) 2018年10月3日
イギリスでは今でも雇用主によっては、特に「禁止」と声高に言わないところでも、タトゥーをしている人を雇うのをためらう人も多いようです。タトゥーが理由で仕事の面接に落ちることもあるし、隠れていたタトゥーが見えてしまったことで仕事をクビになったというケースも聞きます。
これは業界や雇用主の見解にもよりますが、タトゥーを施した場所やその種類にもよります。たとえば、手や顔にあるものはだめだけれども服で隠れるものなら許されるということが多いようです。
日本の入れ墨とタトゥーの違いは
日本では、タトゥーについてはイギリスやアメリカよりも抵抗がある人が多いと思います。入れ墨のイメージがあるからですね。
ちなみに日本の入れ墨とタトゥーは同じものなのか、違うものなのかという疑問がありますが、どうなんでしょうか。調べてみると、肌に針を刺して染料を入れるということでは同じことのようです。絵柄が和風か洋風かで違う言い方をする場合もあるようですが。
肌にさす針の入れ方が違うという説明もありました。入れ墨は針を深く刺すのに対し、タトゥーは浅く刺すというものです。そのため、タトゥーを入れた皮膚は平たいけれども、入れ墨を入れた皮膚は盛り上がるということです。
また、手によって行うのか機械で行うのかとか、染料の種類が違うとかといった手法の違いもあるようです。
どちらにしても、入れ墨もタトゥーも入れるときに痛みを伴うこと、一度入れてしまったら簡単に消すことができないという点では同じようです。
タトゥーをした外国人が日本に来たら?
私は個人的には誰が何をしようが自由だと思うので、タトゥーをしている人を見ても悪いとは思いません。(ただ、タトゥーをするのは痛そうなので、それを連想するといい気持ちはしないだけです。)
最近日本を訪問する外国人が多くなってきましたが、タトゥーをしている人たちが温泉やプールに行きたくなったら困るんじゃないかと他人事ながら心配です。
2019年ラグビーワールドカップや2020年東京オリンピックもあり、外国人観光客が日本を訪れることがさらに増えるでしょう。温泉などでは「入れ墨・タトゥーお断り」となっているところが多いですが、外国人だけタトゥーを許すというわけにもいかないでしょうね。
タトゥーシールで隠せばいいというところもあると聞きますが、シールで隠せないほど大きなタトゥーを入れている人も多いし。
日本の公衆浴場でタトゥーは禁止されているのか
日本で温泉や銭湯に行くと「入れ墨・タトゥーお断り」のポスターを見ることがよくありますが、法律で禁止されているのでしょうか。
全国の銭湯が集まってできている公衆浴場の組合では、入浴時に入れ墨・タトゥーを規制する法律はなく、そういう人たちの入浴を断るような誘導をする指導もしていません。
また、旅館ホテルの組合も入浴の制限はしておらず、それぞれの宿泊施設の判断に任せているということです。なので入浴禁止はあくまでそれぞれの施設自身の規制で、法的根拠はないのです。とはいえ、実際には半数以上の施設がタトゥー・入れ墨がある人の入浴を禁止しています。
2015年に官公庁が全国の宿泊施設3800に対して実施した調査では56%の施設が入れ墨・タトゥーがある客の入浴を拒否していました。許可しているのが31%、シールで隠すなどの条件付きで許可しているところが13%です。
タトゥーを入れているエド・シーランはお忍びでフィアンセと日本に旅行に行ったそうですが、温泉には行かなかったのでしょうか?家族風呂に仲良く入ったのかな。27歳にして大富豪となった彼なので、温泉を借り切ったのかもしれません。デヴィッド・ベッカムも息子と日本に来ていますが、まあ、一般客が入るような温泉には入らないでしょうね。
ラグビーワールドカップ2019
2019年秋日本開催のラグビーワールドカップ。この期間中たくさんのラグビー選手や関係者ファンの来日が予想されます。この中にはタトゥーをしている人がかなりいると思われますが、ラグビーの国際統括団体「ワールドラグビー」は先日タトゥーをしている人に異例のアドバイスをしました。
ワールドカップ日本大会で来日する際、公共のプールやジムではタトゥーを隠すように呼び掛けているのです。上半身のタトゥーを覆うシャツを着用したり、プールではラッシュガードなど専用の衣類をつけるようにアドバイスしています。その理由として、日本ではタトゥーがヤクザなど暴力団を連想させるため抵抗感を持つ人がいると解説しています。ラグビー発祥の地、イギリスでも新聞やBBCなどでこのアドバイスと共に、その背景となるタトゥー、入れ墨、ヤクザについての説明をしていました。
ラグビー関係者はおおむね、日本の文化や社会における慣習を尊重するため、アドバイスに従うと言っていますが、中には疑問を感じる選手やファンもいるようです。ファッションタトゥーがこれだけ全盛になっている中、日本にだけ特殊な「抵抗感」は外国人には理解が難しいのでしょう。ラグビー選手の中にも腕や足などユニフォームを着ても見える部分にタトゥーを入れている人が多いので簡単に隠すわけにはいきません。
このことについては、日本側でも日本固有の固定観念に固執しないで、広く海外の文化も尊重すべきではないかという意見もあるようです。
タトゥーを容認する動き
こうした中、タトゥーがあっても温泉やサウナ、ジムなどに入れるようにしようという動きが各地で見られるようになってきました。
有名なところでは総合リゾートを運営する星野リゾートが全国で展開する温泉付き宿泊施設でタトゥー・入れ墨のある客をシールでカバーすることを条件に入浴可能としました。
ほかにも全国の宿泊施設や温泉、銭湯、プール、ジムなどで許可する施設が増えています。こういう施設を紹介する情報もかなり出回っていて、たとえばタトゥースポットというサイトではタトゥーや入れ墨がある人でも入ることができる施設を紹介しています。地図付きで目的地に応じて検索することができる便利なサイトです。
タトゥーOKが売り物の温泉街
中には、タトゥーOKを売り物にして外国人観光客を誘致しようとする温泉街も出てきました。
温泉で全国的に有名な大分県の別府市ではこの機会に別府を国際的な観光都市にしようと市を挙げてタトゥーOKの温泉を広めることに取り組んでいます。別府市にはラグビーワールドカップ2019でニュージーランド、オーストラリア、ウェールズなどがキャンプを行うため、大会期間中は選手だけでなく関係者やファンなど外国人観光客が多く訪れると予想されているのです。
別府市では市の入浴施設にタトゥーを許可するように呼び掛けたところ、現在ではおよそ65%の施設で入浴できることが分かりました。この数字は全国平均をかなり上回っています。
それで、タトゥーがあっても温泉に入ることができるということを外国人観光客に認知してもらうため、タトゥーOKの温泉施設を示すマップを作成し英語ホームページで公開しています。
まとめ
日本での調査によると、入れ墨やタトゥーをしている人は2014年は1.6%でしたが、2018年には2.3%とその数が少しずつ増えていっています。
とはいえ欧米諸国に比べるとまだ数が少ないし、歴史的な経緯もあって日本ではまだまだ抵抗感を持つ人が多いようです。
タトゥーは外国ではだんだんと市民権を得てきているので、訪日観光客がますます増える中、日本でもタトゥーを容認する動きが広まってくるでしょう。
いつかベッカムやエド・シーランと温泉で裸の付き合いができる時が来るかも(?)