サイトアイコン 【英国発】news from nowhere

コロナワクチン①日本の接種遅れの理由は政府の作戦?

Covid vaccine

edf

新型コロナウィルスワクチンの接種が世界中で進んできました。日本の接種状況は諸外国に比べ遅れていますが、その理由は何なのでしょうか。ワクチン接種に関する記事①で日本の状況、②でイギリスの状況を見ていきます。

Contents

各国のワクチン接種状況

 

上記はコロナウィルスワクチンを少なくとも1度接種した人の割合を示しています。これを見るとわかるように、イスラエル、米国、英国などでは早いペースで接種が進んでいます。

私が住むイギリスでは1日の接種は約60万回のペースで、これまで全国で3,400万人が最初の接種を、1,400万人が2度の接種を受けました。

イングランドではハイリスクグループと50歳以上へのコロナワクチンの1度目の接種が終わり、すでに国民の半分以上が1度目の接種を済ませています。今は40歳代への接種と、それに並行して優先グループへの2度目の接種が行われています。

イギリスのワクチン接種は優先別に10のグループに分けて行っており、当初の予定通り着実に進んでいます。

  1. 介護施設の高齢者とスタッフ
  2. 80歳以上の高齢者、医療・介護従事者
  3. 75歳以上医療従事者と高齢者
  4. 70歳以上とコロナ感染でリスクの高い基礎疾患がある成人
  5. 65歳以上
  6. 16~64歳で基礎疾患がある人
  7. 60歳以上
  8. 55歳以上
  9. 50歳以上
  10. その他の成人

ワクチン接種は、このまま順調にいくと7月末までに成人すべてに1度目の接種を終える見込みです。

日本のワクチン接種

上記のグラフを見てもわかるとおり、日本ではコロナワクチンの接種があまり進んでいません。

2021年4月28日時点で、国民のうち、少なくとも1度目のワクチン接種をした人が何%いるかの割合が次の通りです。

イスラエルや英国などワクチン接種先行国では一部の人にすでに2度目の接種を並行して行っているため、このペースは今は緩やかですが、それでは国民の半分以上が接種済です。

これに比べ、日本の接種率は1.8%とかなり低い割合です。

現在の接種ペースでいくと、集団免疫を達成できるとされる75%に接種がいきわたるまでにどれだけかかるかという予測を各国別にしたものがありました。

他の国は数か月から1年というところが多かったのですが、日本は10年以上という予測になっていました。
(これは4月初めの予測で、今はもう少しペースが進んでいるはずです。)

現在のペースでコロナワクチン接種が続くと、
全人口の75%がワクチン接種するまでにどれだけかかるか?

  • 米国 3か月
  • チリ 4か月
  • 英国 5か月
  • カナダ 10か月
  • ブラジル 10か月
  • EU 1年
  • 中国 1.1年
  • 全世界 1.8年
  • ロシア 1.9年
  • 日本 10年以上

日本でワクチン接種が進まない理由

どうして、日本でコロナワクチン接種が進んでいないかの理由は下記のようにいろいろ挙げられています。

自国でのワクチン開発ができなかった理由については、東大の石井教授が治験寸前までいっていたワクチン開発の予算が打ち切られことを語った記事がありました。

イギリスでは2020年1月の段階で政府がコロナワクチン開発について特別チームを作り、まだ実現の可能性もない段階から様々な大学・企業・研究所に膨大な予算をかけて後押ししてきました。もちろん、日頃から基礎的な学問や研究にも予算をつけている土台もあり、米国、ドイツ、中国やロシアなどでも同様です。

ワクチン開発のようなものはたかだか1年でできるものではなく、コロナワクチンにしてもそれまでに行われていた研究をコロナウィルス用に応用することでできたのです。基礎的な学問や研究に長期的視野で公的予算をつけたり、民間企業が後押しするといった環境が、いざというときの国の安全保障のためにも大切だということがわかります。

ロジスティックスの問題

自国でワクチンが生産できた国はごく少数で、ワクチン接種がいち早く進んでいるイスラエルをはじめ、他の多くの国は日本と同じく輸入に頼っています。

そのような諸外国、中には日本ほど経済的に発展していないような国に比べても、日本でワクチン接種が遅れているのはなぜなのでしょうか。

日本ですでに承認されているファイザーワクチンについては、日本政府はかなりの量を確保済ということなので、ワクチン供給量だけの問題ではないようです。

ファイザーのワクチンは2月中旬から医療従事者に、4月中旬からは高齢者への接種も始まりました。とはいえ、その接種ペースは全国で1日1000人レベルとあまり進んでいません。イギリスの60万人、米国の200万人に比べると大きな開きがあります。

優先的にワクチン接種が必要な医療従事者でさえ、日本では4月19日時点で1度目の接種を終えた人はわずか25%、必要となる2度の接種を終えた人は15%です。

日本では、ワクチンを都道府県に配布し、接種業務は各自治体に委ねる方法をとっています。そのうえで、政府は「接種が遅れている都道府県は頑張る原動力になる」とワクチン接種の回数を毎週都道府県別に発表すると語っています。

けれども、このようなワクチン接種プログラムをこれまでの経験もなしに突然任される自治体の中には戸惑っているところも多いでしょう。地域によっては接種の手続きに手間取ったり、接種受付の電話やオンラインサイトがパンクしたり、接種会場で余ったワクチンを捨てる羽目になったりと、さまざまな混乱や不手際が報告されています。

先日は東京都の医療従事者用ワクチン受付サイトがダウンしたという報告がありましたが、医療従事者まで病院を通してではなく、都のサイトで申請しなければならないというのにも驚きました。(イギリスではNHS国民医療サービスで一括して行っているので。)

政府や官僚が中央でしっかりした接種システムを構築し、オンラインでデータが集められるようにもして、接種におけるマニュアルをすべての都道府県や接種会場に配布するなどした方が接種をスムーズに進めることができるでしょう。

日本人は各自が自分で考えてやるよりも、きっちりしたガイダンスに従うやり方のほうが合っているだろうし、そうすることで全国各地の自治体でそれぞれ費やされる手間や業務が節約できるはずです。何百何千もある自治体の人的時間的資源がどれだけ無駄になるのかを考えると実にもったいないことです。

ところで余ったワクチンについてですが、イギリスではワクチン会場から地元の警察署に夕方時々「ワクチン余ってるので受けに来て」と電話があり、その時そこにいる警察官が老若関係なく受けに行くそうです。

日本人のワクチン嫌いを克服した意外な理由

コロナワクチン接種状況(日本と海外)と副作用についての記事では、日本人が他国人と比較してワクチンを嫌う傾向が高いということを書きました。

例えばイギリスではワクチン接種の誘いが来たらすぐにでも打ちたいという人がほとんどなのに、日本では「ワクチンはこわくて不安だ」とか「他の人が接種して安全らしいということを見届けてから打ちたい」という人が多いという調査結果が出ていたからです。

その理由としては以下のことがあるようです。

なるほど、日本人はかなりの人がワクチン全般、またコロナワクチンについて懐疑的なんだなと、イギリス人との違いを不思議に思っていました。

けれども、最近になって日本から出る声は「日本はどうしてワクチン接種が遅れているんだ?」「いつになったらワクチンが打てるのか」というように、ワクチン展開の遅れについての不満ばかりです。

日本人ってワクチン嫌いじゃなかったの?と最初はちょっとよくわからなくなりました。

イスラエルやイギリス、米国などでワクチン接種が進み、副作用も大したことなさそうで安全らしいし、何より効果が表れているようだということがわかるにつけ不安がなくなったのでしょうか。

また、世界各国のワクチン接種率を比較する統計を見て日本が先進国はおろか、アジアやアフリカの小国にも劣るような位置にいることで忸怩たる思いを抱いている人が多いのかもしれません。

自国でワクチンを開発できなかった、国のトップの交渉力不足で外国製のワクチンの早期確保ができていない、輸入したワクチンがあるものの、実際に接種できる準備に時間がかかっている、など様々な不平不満の声が上がっています。

どうも需要と供給のバランスが崩れて、これまでワクチンに執着していなかった人までワクチンを打ちたくなってきたようです。

国民のワクチン嫌いを克服するために政府がわざとワクチン展開を遅らせているのだとしたらなかなかやるなと思わせます。(いや、まさか。)

イギリスのワクチン接種状況

私の住むイギリスではコロナワクチンがどのように接種されているのか、その効果は見えてきているのかなどを次の記事でお話しします。

コロナワクチン②イギリスの接種状況と開発秘話

アストラゼネカワクチンで副作用?コロナ接種状況(日本と海外)

アストラゼネカワクチンは安全?副作用は?なぜ安い?

 

モバイルバージョンを終了