私はイギリスでフルタイムで仕事をしているときに妊娠して子供を産んだのですが、こちらのフレキシブルワーキングの制度のおかげで色々助かりました。これは何も出産する女性だけでなく、いろいろな理由で個々がその時々の自分の状況にあった働き方をするという制度や理解が進んでいるからです。
Contents
イギリスのフレキシブルワーキング
イギリス人は仕事中は(それなりに?)真面目に働きますが、家族や友人と楽しく過ごすプライベートな時間も大切にします。そのために働き方も自分の状況に応じて変えることが普通に行われますし、それを周りの人も理解してくれます。
イギリスではワークライフバランスを実現するためのフレキシブルワーキングが政府によっても推奨されています。これは単に育児や介護のためだけにはなく、全ての労働者(その雇用者のもとで26週間以上働いている人が条件)がフレキシブルな働き方をすることを雇用者にリクエストする法律上の権利があり、雇用者はそのリクエストを「リーズナブル」なやり方で検討する義務があるとしています。
フレキシブルワーキングの例としてはジョブシェア、在宅勤務、フレックスタイム、またそれぞれの労働者が働きたい時間や曜日、期間を選ぶ方法などがあります。要は与えられた仕事さえできるのなら、一人一人が自分にあった多様な働き方を選ぶことができるということです。
ジョブシェア
これは一つのフルタイムポストを2人がシェアすることで、通常は2日半ずつという方法になりますが、2日と3日というようにシェアすることもあります。息子が行っていた小学校のレセプション(幼稚園年長にあたる5才児クラス)の担任の先生がジョブシェアで、2日半ずつ受け持っていました。イギリスの小学校にはティーチングアシスタントと呼ばれる副担任のような先生がいて、その人がフルタイムだったこともあり、特に問題はなかったようです。
在宅勤務
私が働いていた職場では毎日在宅勤務という人はいませんでしたが、週に1日だけ家で働くという人はたくさんいました。私も産休のあと職場復帰するときに週に一度は家で働くという選択をしました。また、一人で集中してしなければならない仕事があるときだけ家でするということもよくありました。オフィスにいると電話は鳴るし同僚が話しかけたりしてなかなか集中できないこともあるし、通勤時間が長い人は時間もかなり自由になります。電話もeメールもあるので、在宅でも連絡がつかないということもありませんから、特に困ることもないです。職場では各人のスケジュールをコンピューターで共有していてそのスケジュールを見れば今日は誰が休みで誰が在宅勤務なのかということがわかります。そのため、いちいち本人に確認しなくてもその人のスケジュールを見てあいている時間にミーティングを入れることもできます。
フレックスタイム (Flex Time)
フレックスタイムというのは働く人が一定の時間内であれば何時から何時まで働いてもいいというシステムです。私の職場では7時から19時までだったので、私は普通7時から15時くらいまで働いていました。途中で引っ越したために通勤に車で1時間もかかっていて、朝はその時間帯でなければ交通渋滞に巻き込まれてもっと長くかかってしまっていたためです。逆に帰りも15時に出ればすいすいですが、16時半以降出ると渋滞したので、助かりました。
フレックスタイムでは1日少しずつ多めに働いてその過剰時間を貯金していき、それが1日分になったら1日有給休暇を取ることができるというようになっていました。これは通常の有給休暇に加えて毎月1日ほどずつ余分に休めるということなので、ホリデーや日本に帰るときなど1日休暇がプラスされて重宝しました。
コンプレストアワーズ (Compressed Hours)
これはフルタイムの時間を週5日たとえば7時間半ずつ働くのではなく、週4日だけ長い時間働くというものです。週の労働時間は35時間から38時間が普通なので1日9時間を4日働くと週36時間のフルタイム勤務になるというわけです。私の周りにはこの選択をする人はいませんでしたが、平日どうしても働けない曜日があるという人には便利な選択肢ですね。
タームタイムワーク (Term-time Work)
これは特に子供を持つ親のためのシステムで、学校の学期中だけ働くという選択です。学校が春休み、夏休み、冬休みの期間は子供と一緒に過ごし、子供が学校に行っている間だけ働くことができます。そのために1年を通しての勤務時間が短くなる場合はそれに相応して給料もパーセンテージで少なくなるということになります。共働きの場合、子供が長期休暇に入ると誰が面倒を見るかということが問題になるのでこれはそういう両親にとっては便利なシステムです。
一人一人に合った多様な働き方
ほかにもさまざまなフレキシブルワーキングの方法があり、各職場により多様な働き方をする人がいます。私の同僚には忙しい職場でばりばり働いたあと定年で退職したものの「ずっと家にいるのもつまらないので」パートタイムとして働くことになった男性がいました。職場としても専門的な知識や長年培われた経験をすでに持つ人材を比較的低コストで獲得することができたわけで、双方ともにメリットがあった事例です。大学で働く私の友人は「趣味のイタリア語とアートを楽しむため」フルタイムから週4日勤務に変えてもらうようにしたそうです。
以前は専業主婦にならざるを得なかった子育て中の女性でも、フレキシブルワークのシステムを利用することで働き続けることを選択する人が多くなりました。また、産休を終えて職場復帰する母親に変わって父親がフレキシブルワークを選ぶことによって交代で育児負担をするカップルもいます。上司や一緒に働く同僚がそういう個人個人の事情や状況に理解を示してくれるのも、プライベートライフや個人主義を尊ぶ英国人ならではのことでしょう。イギリスよりもっと先を行っている北欧諸国なども含め、ヨーロッパでは当たり前になりつつある自由な働き方という考え、日本の職場でも広がっていくといいですね。
関連記事
2017年ブラック企業大賞に9社がノミネート:あの大企業も!
日本とイギリスどっちがいい?消費者として労働者として
有給休暇消化率2年連続で世界最低の日本人は働きすぎ?
‘karoshi’ 電通社員の過労死 イギリスでの報道
日本人はどうして長時間働くのか:日本人の労働生産性考