日本人はどうして長時間働くのか:日本人の労働生産性考

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Japanese salarymen

Last Updated on 2020-02-21 by ラヴリー

イギリス人のうち、日本人を比較的知っている人によく聞かれる質問がこれです。「日本人はどうしてそんなに働くのか?」イギリス人の働き方って日本人と比べてどうなのでしょうか。日本人は世界的に見てもよく働く国民ですが、労働生産性という観点からみるとどうなっているのでしょうか。

Contents

日本人の働き方

私もイギリスで長く働いてきて、たまに日本に帰って周りの人の働き方を見ていると、本当に感心します。私には到底できません。

最近では過労死 に至るような極端な例は取り上げられるようになりましたが、そこまでいかないくても長時間働いている人は多いようです。

日本で会う家族や友人の例をみていても、毎日のように残業し、週末も出勤することがあったり、たまの休みにはぐったり疲れ切っている。思えば帰宅が10時頃と遅いため、子供の顔を見るのは寝顔だけ。有給休暇はあるけれど、上司も同僚も使っていないので周りが気になって使えない。といったところが一般的なようです。

では、イギリスでの一般的な働き方ってどうなんでしょうか。

イギリスの労働時間

イギリスをはじめヨーロッパ諸国では労働時間は週に35〜38時間程度と短いです。残業や休日出勤などほとんどありません。

そもそも、決められた時間内に業務が終わらないのはその内容ややり方に問題があるので、そちらのほうが検討されます。たとえば、新しい業務が追加されたのでそれに要する時間が必要になったのなら、新しく人員をやとう、または以前やっていた仕事の中で必要なものを外注する、またはやり方を見直してもっと短い時間でできるように修正するなど。

たまに、何かの特別な理由があってどうしてもある時期にある人が長い時間働かなければならないことがあればフレキシブルワーク制度を使って調整するようになります。あるときに長時間働いたとして、その余剰労働時間をプールしておいて、あとで休んだりするんです。

イギリスの有給休暇

イギリスでは有給休暇の消化率が100%という人がほとんどです。ホリデーとなると、まとまった休暇を夏に3週間、冬に2週間という具合に取ります。有給休暇が年に20日〜30日というのが普通なので、土日を入れると合計で4〜6週間はとれるわけです。

私がイギリスの役所で働いていたときは、年度末に有給休暇が消化(100%使い切る)できないと上司や人事部から注意されていました。人事部のほうですべての職員の有給休暇が年度末までに消化されるように配慮されていたのです。けれども、有給休暇の年度が4月1日から3月31日までと会計年度と重なっていたため、これには支障が生じました。年度末には必ず終わらせなければならない仕事があるのでその時期に職員が余った年次休暇を消化するために一斉に休んでしまっては困るからです。また、誰でも数日くらいは何かの急用で必要になるかもしれないため年次休暇をすべて使わずにプールしておくものです。それで、合計5日間までなら特別に申請すれば3月31日を越して翌年5月まで持ち越してもいいという制度がありました。それも結構面倒だということで、例年年度末になると何人かは休んでいましたね、それで年次休暇の年度を個人の誕生日から1年としようと検討されつつありました。

この有給休暇というのはもちろん病欠とか出産育児休暇とは別です。病気や怪我をした人は医師の診断書があれば病欠を取ります。イギリスでは病欠の場合、法律で28週間までは有給でとることができます。その間は給料も支払われ、会社によっては給料の100%が支払われるところもあり、最低でも政府によって週に約90ポンド(12,800円くらい)の有給が保証されています。

成果に価値

どうして日本人が長時間働くかというと、「日本人は勤勉な国民であるからである。」といえば話は早いのですが、どうも最近それだけでもないのかもと思っています。イギリス人も一部の人をのぞけば一般的には勤勉であると言っていいでしょう。労働条件を守る権利さえ保証されていれば。

日本では仕事の結果よりもそのプロセスに価値を置くところがあるように思います。仕事に限らずですが結果はどうでも「一生懸命がんばる」ことを認める文化です。欧米では、そうではなくていかに成果が上がったかを大切にするため、その成果に到達する時間が長かろうと短かろうと関係がないのです。逆に、同じ結果を出すのならいかに短い時間と労力で能率的に功績を上げるかが大事とされます。

本人は一生懸命働いているつもりでも、それは「忙しそうに働く姿」を他に見せているだけであるということもあるでしょう。横並び意識の強い日本では働いている人自身もこれが普通だと思い、国際的に見て日本人の働き方が異常なのか麻痺してしまっているところもあると思います。

そもそも、日本人は本当にそんなに長時間働く必要があるのでしょうか。もっと業務を効率化したりすることでもっと短い時間で同じ業績を上げることはできないのでしょうか。

OECDの労働生産性調査

OECDの調査 ‘GDP per hour worked’ によると、2016年の労働生産性は日本は41.4ドルと主要先進国の中では最下位、1位ルクセンブルグの83.6ドルの半分以下となっています。このあと、2位 アイルランド 79.7ドル、3位 ノルウェー 79.1ドル、4位 デンマーク、 5位 オランダ、 6位 フランス、 7位 ドイツ、 8位 スウェーデン、9位 オーストリア、10位 オーストラリア、11位 フィンランド、12位 カナダ、13位 英国 (47.5ドル)と続きます。この労働生産性というのはGDPを全労働時間で割ったもので 、単純に労働1時間あたりの生産性を算出しています。

もちろん、どんな労働をしているのかとは関係なく計算しているのでこれが一概に各国の労働者の生産性を表しているとは言い難いですが、指標にはなりますね。これによると日本人はルクセンブルグ人やアイルランド人の2倍働いてやっと同じということになるわけです。この調査は1970年から続いていて、日本はずっと下の方で横ばい状態です。

ということは、日本人というものは欧米人の2倍長い時間働いてやっと同じGDPを生み出している労働生産性の悪い国民だということになってしまっているわけです。国際的に比較してはっきりした結果が出ていて、日本人はほかの諸外国のようにもっと短い労働時間で生産性を上げる必要があります。

パーキンソンの法則

英国に Parkinson’s Law パーキンソンの法則というのがあります。もともとは大英帝国の官僚制について観察したものなんですが、彼いわく「仕事というものは時間があればあるだけ膨張してく」というものです。なぜなら組織というものは仕事の量とは無関係に肥大化、複雑化していくからです。

この説によると「最後の1分まで待つがいい、そうしたらその1分で仕事は全部すませてしまえるから。」ということで、何だか私の小学校の夏休みの宿題のことを言っているんじゃないかと思いましたね。

そして、このことが当てはまるのが日本の銀行や役所の手続きだなと思います。簡単な手続きのはずなのに「どうしてこれが必要なんだろう」と思われるようなあまりにも無駄な書類や手続きがあってややこしく、時間がかかるにあきれます。そういう書類を延々と書かされ、それを係の人が時間をかけてチェックし、ちょっと字がはみ出ているとか言って上司に指導を仰ぎ、やはり書き直してくださいとか言われたり。

少し前に小切手の現金化のために日本に地方銀行で苦労した記事を書きましたが、私がたまたま接している日本の職場代表が銀行だったり市役所だったりするわけなので、私はそういうところしか直接見聞きしていないだけなんですね。そして、実は日本全体がこういう無駄な慣習的な作業を正確にこなすために長時間労働になっているんだろうなと推察します。そして、私たちはそういう職員をキープするために、銀行にせっせとお金を預けて利子を提供し、お役所に税金を払っているんですね。

会社への忠誠心

今や有名企業でもリストラ、または会社自体が倒産ということもありうる時代で、伝統的な終身雇用に頼ってはいられないというのに、終身雇用時代に培われた会社への忠誠心という価値観だけが残っているのは変でしょう。

「最近の若者は」ということで残業を早めに引き上げたり、飲み会を断ったり、周りの迷惑も顧みず休暇をとったり、はたまたは会社の旧体制になじめず、すぐやめてしまう新入社員を批判する向きもありますが、そういう若者こそまっとうな価値観を持っているのではないかとも思えます。欧米人が日本の会社に入ったらみんなそうしますね。

そういう若者に期待したいものですが、少し気概がある人達は自分たちで新しい会社を作ってしまうかもしれません。伊勢丹などの老舗デパートが1日6時間労働を提唱するZOZOTOWNに追い越されてしまう時代ですから。若い人には古い体制に埋もれてしまうことなく、自らの価値観で行き方、働き方を見つけて行ってほしい、そして日本の未来はそこにかかっていると思います。

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