6月28日にイギリスBBCテレビで放送された伊藤詩織のレイプ疑惑事件を題材にした「日本の秘められた恥」(英題:Japan’s Secret Shame)番組の紹介とイギリスでの反響の記事を書きました。この番組は日本では放送されなかったのに、意外にも日本人の間で大きな反響があり、意見が分かれツイッターなどで炎上していました。今回はその様子をご紹介します。
(敬称はすべて略しています。)
Contents
BBC番組「Japan’s Secret Shame」
BBCニュース – <動画> 男性警官のみを前に人形相手に再現させられ……伊藤詩織さん #japanssecretshame https://t.co/IfCn7IBS33 pic.twitter.com/r5HP3xN7Jn
— BBC News Japan (@bbcnewsjapan) 2018年6月29日
— BBC News Japan (@bbcnewsjapan) 2018年6月29日
BBCニュース – <動画> この痛みを我慢して沈黙しても役に立たない……伊藤詩織さん #JapansSecretShame https://t.co/cGN6dg9IPM pic.twitter.com/K0AN3hnslq
— BBC News Japan (@bbcnewsjapan) 2018年6月29日
「日本の秘められた恥」はイギリス時間で6月28日木曜日、夜9時から1時間BBC2テレビで放送されました。制作会社「True Vision」が数ヶ月にわたり密着取材したドキュメンタリー番組です。
伊藤詩織のレイプ疑惑事件についての番組ですが、当事件についてはもとより、その背景となる日本社会や慣習、司法や制度の仕組み、政治の在り方などに鋭く切り込んだ番組となっていました。
こちらの番組の紹介とイギリスでの反響は前記事伊藤詩織BBC「日本の秘められた恥」レイプ疑惑報道と反応’Japan’s Secret Shame’動画をご参照ください。そちらに動画のリンクも載せてありますので、視聴することができるかもしれません。
この番組はイギリスBBCで放送されたもので日本では公式には放送されていません。イギリスBBCで放送された1,2日後に誰かがYouTubeに番組をアップしましたが、数日後には削除されていました。その後、日本語字幕を付けた者が前半、後半に分けてYouTubeにアップされましたが、これも数日後には削除されました。
BBCが公式な放映権利を持っている番組なのでこれは仕方がないことでしょう。今は英語版のみ数か所でアップされていますが、それも観ることができなくなるかもしれず、前記事では一応複数のサイトのリンクを紹介しています。
このような状況なので、この番組を視聴することができる日本人は限られ、あまり話題にならないだろうと思っていました。けれども驚いたことにい結構な数の人が見たようで、様々な反響がありました。前記事ではイギリスでの反応を紹介しましたが、今回は日本での感想をまとめてみました。
日本での感想
イギリスでの感想は伊藤詩織の経験談や訴えに肯定的なもので、日本の性風俗、性暴力にあった女性への対応や法律、制度の在り方などに対する否定的なコメントがほとんどでした。
一方、日本人の感想は二つに分かれ、一方が他方の感想を非難し、それにまた反論が出るというふうで、ツイッターなどで炎上していました。
番組に肯定的な感想
番組を見て、伊藤詩織の行動や勇気に感銘し、彼女を応援したいという感想は多くありました。同時に、日本での性暴力についての対応や法律や制度の在り方、被害者を非難し貶める風潮、性風俗が蔓延する社会、政権に近い容疑者をかばうことについての非難についてのコメントもたくさんあります。
英語でのコメントを読んだり私の前記事も含め、その日本語訳を読んでイギリス人が番組について語っているのを知り、残念に思っている人も少なくありません。
また、このような番組を外国のBBCが制作し放送したのに、日本のメディアは取り上げなかったことに対する批判や準強姦容疑が不起訴となったことに疑問を持つ意見も。
#JapansSecretShame 詩織さん、なんて強い女性だろう。ここまでの能力と勇気のある人なら日本なんてとっくに見捨てて世界で活躍できるだろうに、日本の問題に向き合って変えようとしている。Solidarity for Shiori! https://t.co/YVUawUAGOy
— elkelk (@aiaielk) 2018年6月28日
BBCの放送は観られないけどこの記事がけっこう詳しくてお勧め。詩織さんの勇気は素晴らしいし、彼女に勇気づけられた人もたくさんいるはず。それにしても日本の司法とか警察とか支援センターの不備っぷりとか全てがヒド過ぎて先進国とは言えないよね。#JapansSecretShamehttps://t.co/mB2fDpODnG
— らくーん🏳️🌈 (@chasingraccoon) 2018年6月29日
”Japan’s Secret Shame”
「日本の隠された恥」とは、政権に近い加害者を庇い、被害者を叩く日本社会のこと。英国BBC、本日放映。一次被害のまともな裁きもなく被害者がこれだけ二次被害を受ける国、日本。変えるべき最大課題の一つでしょうhttps://t.co/DwfEUHQUA8— 渡邉葉 (@YoWatShiinaEsq) 2018年6月28日
BBCの #JapansSecretShame は、伊藤さんの事件自体の問題告発とともに、(彼女の告発自体がそうだったように)日本社会が法も制度も文化も教育もいかに性犯罪に許容的で助長的なのか、その異様さをえぐり出す良いドキュメンタリーになっている。「合意」が軽視されがちな点は他の問題にも当てはまる。
— Hideyuki Hirakawa (@hirakawah) 2018年7月2日
BBCの伊藤詩織さんについてのドキュメントの一コマ。性に寛容な日本社会を説明するシーンに映るのは「萌え絵」だ。先進国は女性の人権を無視した性的表現の象徴として萌え絵を、そしてそれが街中に氾濫していることを問題視している。
表現の自由戦士たちは少しグローバルな視点を持った方がいい。 pic.twitter.com/IZW9JMtyxv— さば (@saba430) 2018年7月2日
「日本は性犯罪が少ない」はやはり嘘だった。内閣府の最新データで7.8%の女性がレイプ被害に遭ったと回答。約13人に1人という異常過ぎる数字。3年前より1.3%増だが、おそらく件数の増加よりも、被害だと認識できた女性が増えたと思われる。「嫌よ嫌よも好きのうち」がまかり通る国。暗数は更に多いはず pic.twitter.com/Cs30op5SM1
— 勝部元気 Genki Katsube (@KTB_genki) 2018年3月27日
英BBCでは、山口氏が安倍首相と近いジャーナリストであることを伝えると同時、裁判所の判断についても詳しく報じている。海外メディアは、ここまで山口氏の準強姦疑惑と日本社会の問題の深層に切り込んでいる。今、この国にあるのは「恥」だけなのだ。国内メディアも、見て見ぬ振りはもうできない。
— ゆみ (@yumidesu_4649) 2018年7月1日
望月記者「BBCが伊藤詩織さんの準強姦事件について、検証報道をしている。日本の捜査手法が指摘されている。性犯罪捜査と保護について政府として、推進や改善は?」
ポンコツ「警察庁に聞け」
これは、酷い。
酷すぎる。
おまえらが、山口敬之の逮捕状の執行を止めさせてたんだよな、菅義偉。 pic.twitter.com/L3K7u2Ponh— umekichi (@umekichkun) 2018年7月3日
BBCのような番組を、日本のメディアが自分で作ろうとしない・作れないことに、日本の女性蔑視の根深さを感じる。Sexual Assaultの定義自体ができていないし、番組内で@jakeadelstein さんが言ってたように、「え?それもアソルトですか?」と女性自身が驚くほど、性暴力が蔓延・日常化している。
— TrinityNYC (@TrinityNYC) 2018年7月1日
イギリス国営BBCテレビは、詩織さんレイプ事件に関する報道特集「日本の隠された恥」を6月28日に放映する。同局のホームページには「加害者は安倍首相の人物伝の著者である」と実名と共に記されている。日本ではNHKはもちろん、民放でもここまで踏み込んだ報道はできまい。https://t.co/ZnZtxLWJ1N
— Thoton Akimoto (@Thoton) 2018年6月24日
日本のメディア、特にテレビ各局が詩織さんの件を無視し続けるのは、同様の悪事をしている人間が各局の上層部にいるからではないか、という疑念を抱いている。加害者の薬物の使い方が手慣れていると感じるし、その入手ルートがテレビ局内の人脈なら、下部職員は触れられない。https://t.co/mIh65m3HqN
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) 2018年6月29日
時期が最悪でした。あのサッカーワールドカップの日本×ポーランド戦と同じくしての報道でしたよ。天も八百万の神々も日本の不正と卑怯を暴き立てていくのです。天運と天罰は実在すると実感したここ数日でした。#BBC https://t.co/GaHXHXM1dO
— ねこたまみずき (@nekotamamizuki) 2018年6月30日
#JapansSecretShame #MeToo
被害者が証拠もビデオも証人もいるのに「性被害は無かった、不起訴」という判決を下す国。
被害捜査機関はの女性割合は8%、性被害支援センターは635か所設置が必要なのに対し41か所、国会議員の女性割合は193か国中163位。
不起訴…になるでしょうね。女性、圧倒的不利。 https://t.co/yaQM0M4Z19— ファルコン@保活4回の幼稚園ワーママ (@WMnosakebi) 2018年6月30日
伊藤詩織記者を嘘つきと決めつける方へ。私は25年間、事件を報道してきた。警察の性犯罪被害者に対する対応が厳しい。良心のある刑事もいる。容疑者は安倍総理の親友。準強姦容疑で現場の刑事が虱潰しに捜査し令状を取ったところ、安倍総理の官僚友人中村刑事部長が☎一本で取り消した。それは正義か?
— Jake Adelstein/中本哲史 (@jakeadelstein) 2018年6月30日
杉田水脈議員についてのコメント
特に目についたのが、杉田水脈議員についての否定的なコメントで、これはイギリス人が持った感想に似たものでした。
杉田水脈が恥知らずな言い訳を重ねれば重ねるだけ、この下劣な国会議員の談話を取りに行ったBBCの選択眼が素晴らしかったとしか言いようのない結果になっている。 / “杉田 水脈(すぎた みお) 公式ブログ : 【BBCが放送した伊藤…” https://t.co/wn5gVNdUAk
— 瀬川深 Segawa Shin (@segawashin) 2018年6月30日
杉田水脈議員が詩織さんの件に落ち度云々とコメントしていますが、仮に財布がズボンのポケットからはみ出て気をつけてないうちにスられたとしても、窃盗は窃盗です。また不起訴の事実があっても、TBSの幹部として職を求めにきた人と性的行為をしようとしただけで職務上の倫理違反に問われる件です。
— 三浦瑠麗 Lully MIURA (@lullymiura) 2018年6月30日
番組の中でレイプされることを女性の落ち度と発言し「あなたはセクハラ受けた事ないんですか」とBBC側に問われ「あるけどそういうものですから(受入れる)」と答えた自民党議員杉田水脈について、イギリス人も「最悪な議員」と怒りのコメントをしている。観ていて彼女の醜悪な歪んだ顔に吐き気がした https://t.co/PfPR8MXAQN
— Nonnyノニ (@anoniiiiimous) 2018年6月29日
レイプ被害者の何割が
警察に届けると思う?
(あたしも届けてない)その届けた何割が
警察に捜査して貰えて
容疑者逮捕に至ると思う?そしてその内の何割が
起訴され、裁判にかけられ
『有罪』になると思う?日本国内のレイピストの
ほとんどが普通に暮らしてんだよ、
今も。— YOKO🌏🏳️🌈(Support野党!) (@granamoryoko18) 2018年7月1日
日本で視聴できないことについて
この番組が日本で視聴できないこと、このような番組を日本のメディアが取り扱わないことについて、不満を述べている人も少なくありません。
BBCは主要な番組はネットで見せてくれるからいいね。NHKも自民党と結託して視聴者から受信料を巻き上げることばかり考えずに、番組のアーカイブとしての価値をしっかり自覚しろ。サーバを充実させて、少なくとも受信料を払ってる視聴者には自由に番組を見られるようにしろ。 https://t.co/btoYxd4x9l https://t.co/0yhhoqpyS4
— 森森森【Mr.ごまめの歯ぎしり】 (@morimori_naha) 2018年6月29日
日本でもというか日本でこそ放送されるべき。日本メディアがこういうものを作れなかったこと自体本当に残念で重大な問題と思う。TV局へ放送リクエスト多かったら無視できない と思いたいけど無理なのかな? 早く日本でも放送されてほしい https://t.co/9V487Oh05B
— 弁護士 太田啓子 (@katepanda2) 2018年7月1日
BBCが良いドキュメンタリー番組を作ってくれたことは嬉しいです。でも、まだ終わりではありません。次の課題は、日本のテレビ局で放映してもらうことです。昔、TBSで「CBSドキュメント」という硬派な番組がありました(Pバラカン司会)。でも打ち切りになりました。日本では無理かもしれません https://t.co/SMa3VFOfTY
— Thoton Akimoto (@Thoton) 2018年6月29日
NHKは共同制作や番組売買などでBBCと連携していますよね。ここは同じ公共放送としての矜持を示して放映しなさいよ。沈黙を打ち破るのはNHKをおいて他ないよ。#がんばれNHK社会部https://t.co/23BmlsPZ1b
— Hiroshi Takahashi (@SeroriHitomi) 2018年7月5日
否定的な感想
一方、この番組についての否定的な感想も数多くありました。
番組内で紹介されている日本の状況が誇張されている、事件はすでに不起訴となってるのに伊藤詩織側の主張だけを取り上げるのは不公平だ、BBCは自国の犯罪は棚に上げて日本がいかにひどい国かと罵っている日本嫌いだ、はてには韓国慰安婦問題を例に出して、愛国心のない「パヨク」がこの事件を英語で拡散し、自国の恥をさらしているというようなものです。
また番組に対する肯定的な感想に対して否定的な声を上げるコメントも見受けられます。中には、英語で日本語がわからない外国人に向かって意見を述べているものも。
【コメント数が200を超えました】 ひどくアンフェアなBBCドキュメンタリー「Japan’s Secret Shame(日本の秘められた恥)」〜本件は現在法廷で争われている最中、真実はいまだ確定していない (木走正水(きばしりまさみず)) https://t.co/gsRKYs2inw
[メディア] #セクハラ #blogos— BLOGOS編集部 (@ld_blogos) 2018年7月4日
Anti-British exists in the UK, Japan also has Anti-Japan. The program of Miss Shiori BBC is a documentary handshake between Anti-British and Anti-Japan.#BBC #MeToo pic.twitter.com/mW6Bm171eZ
— はすみ としこ (@hasumi29430098) 2018年6月30日
本当に失礼な女だ!うちの娘めはそんな目にあった事はないぞ!だいたい田舎にで満員電車もないところでそんな事は起きない!一部の都会だけが日本であるような発言がそもそも頭が悪いんだよ、伊藤詩織の周りだけが日本ではない!嘘つき女めお前が日本の恥だ! https://t.co/SbAFtV1NhD
— 駆け出し猟師 (@rw8PaPKQD3tWEaW) 2018年7月3日
まとめ
この番組はBBCによるイギリスでの放送ということであったにもかかわらず、日本での反響がかなりあったのには驚きました。ビデオが YouTube ほかのサイトにアップされたのを観た人が削除される前にすかさず観たようです。
番組の中にもあったように伊藤詩織がレイプ告発をしたあと、彼女は批判と中傷、バッシングの対象になり、日本を去ることになりました。その時と同じような批判が今回もまた蒸し返されているようです。
特に、今回はBBCが英語で放送したということで、日本の恥を世界にさらしたという感想を持つ人たちがかなり炎上していました。そういう人にとって、この番組、また伊藤詩織を支持する人は非国民であるということのようです。まさか、このような番組が右翼、左翼の議論に発展するとは思ってもみませんでした。
まあ、どちらの側もこの問題が日本国内で真剣に取り上げられないまま、イギリスで放送されたということに関しては忸怩たる思いがあるのではないでしょうか。英語に 「wash dirty laundry in public」(汚いものを公共の場で洗う)ということわざがありますが、まさに「身内の恥を人前でさらす」ことですよね。
BBCの番組は伊藤詩織レイプ疑惑事件の真偽だけを云々しているものではなく、その背景の問題を扱っています。これを機会に、私たち日本人が自国の性犯罪に対する対応や法律・制度、女性の人権を軽く見る社会構造、性風俗に寛容的な社会や慣習などを見直し、改善していくように努力していくべきでしょう。この問題についてのご意見や感想などありましたら、ぜひお聞きしたいと思っています。
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伊藤詩織さん事件 New York Times 記事翻訳 「彼女はレイプについて日本の沈黙を破った」