Last Updated on 2022-10-19 by ラヴリー
EU(欧州連合)と日本との間でEPA(経済連携協定)が成立し、2019年2月からEU諸国との貿易で関税が撤廃、引き下げになることが決まりました。日本の消費者にとってはヨーロッパからの輸入品にかかる関税がなくなったり低くなるわけですが、どんなものがいつから安くなるのでしょうか。気になるワイン、チーズ、また高級ブランド品などについて調べてみました。
Contents
EPAでEU輸入関税撤廃
EPAとは経済連携協定
EPAは英語のEconomic Partnership Agreementの略で、日本語では経済連携協定といいます。国際間の経済取引をスムーズにするために関税をなくして貿易を自由化したり、人や資金の移動、サービス、知的財産保護などについても連携を深めようというものです。
最近では環太平洋パートナーシップ(TPP)がすすめられていましたが、トランプ大統領が米国は離脱すると発表したため、2018年3月に米国以外の11ヶ国(日本、シンガポール、オーストラリア、カナダなど)で署名が行われました。最近では、EUを離脱することが決まっているイギリスもTPPへの参加を検討しています。
日本は多国間の自由貿易圏を拡大するためにTPP以外にもEPAを推進しています。その中でも、日本はEUと約8兆円の輸出入を行っているので、最大規模のEPAとなるのです。
日本EU間のEPA交渉は7月17日に署名され、2019年2月1日の発効が予定されています。発効後は日本EU双方がこれまでに輸入品にかけている関税がなくなったり、引き下げられたりし、世界の国内総生産の約3割、世界貿易の約4割を占める大きな自由貿易圏が誕生することになります。
日本側が約94%、EU側が約99%の関税を撤廃するということなので、ほとんどの輸入品の関税がなくなるのですが、これは一般の日本人にとって実際上どういう影響があるのでしょうか。
日本からEUへ輸出
まず、日本からEU諸国へ物品を輸出する企業にとってはEUでかかる関税がなくなったり減ったりするのでメリットがあります。
ヨーロッパの人が日本製品を買う場合に関税分だけ価格が安くなるわけなので、日本製品のヨーロッパでの競争力が増すのです。その分、ヨーロッパ諸国で同じような工業製品を作って売っている企業には不利になります。
EUから日本へ輸入
逆にEU諸国から日本へ輸入される物品の関税がなくなったり率が低くなることにより、競争相手の日本企業には不利になります。
たとえば、フランスから日本へ輸入されるカマンベールなどのソフトチーズには現在29.8%の関税がかかっています。1000円のチーズに約300円上乗せした価格となるわけです。
この関税がなくなるということは、日本でチーズを作っている酪農農家には痛手となり、反対意見も出ています。
双方の消費者にとっては
このように関税をなくすということは、国内のある特定の生産者に不利になるわけです。そのため、そのような業界を保護するために関税率を調整したり導入期間を設けたりといった交渉がなされていますが、国単位で考えると全体的にはお互いさまというわけ。
そして、双方の消費者にとっては、関税分だけ輸入品の価格が下がることで国内価格が下がる見込みがあります。なので、全体としてはより多くの人に有益であるということからEPAは進められているのですね。
それでは、EUから日本への輸入品の中で、どんな物品に影響があるのでしょうか。
さまざまなカテゴリーのうち、現在どれくらい関税がかかっていて、EPA発効後はそれがいつどのように変わるのかを見ていきましょう。
EUから日本への輸入:主な品目
品目 | 現在の関税率 | EPA実施後 | いつから? |
ソフトチーズ | 29.8% | 段階的に実施 | |
ハードチーズ | 29.8% | 0 | 16年目 |
ワイン | 15%か125円/ℓ | 0 | すぐ |
牛肉 | 38.5% | 9% | 16年目 |
パスタ | 30円/1㎏ | 0 | 11年目 |
チョコレート | 10% | 0 | 11年目 |
服(繊維製品) | 13.4% | 0 | すぐ |
革靴、革バッグ | 最高30% | 0 | 11年目か16年目 |
ワイン
気になるワインですが、現在の関税は1リットルあたり125円または15%のどちらか安いほうです。通常の750ml瓶の場合、1本あたりの関税は約93円より高くなることはありません。これは安物のワインでもヴィンテージの何万円、何10万円のワインでも同じことです。
この関税が0になるわけですが、そもそも93円ですから、高いワインの場合はあまり変わりがないということです。でも低価格帯のワインの場合は恩恵が大きいということになります。例えば単純に引き算してみると、500円のワインなら407円になり、1000円のワインなら907円になるというわけです。
イオンは欧州産ワイン約500種類を最大1割安くすることを発表しました。セブン&アイ(セブンイレブンやイトーヨーカドーなど)、ファミリーマート、成城石井などの小売店も値下げを発表。キリン(メルシャン)、サントリー、アサヒグループのエノテカ(PDF)などもヨーロッパ産のワインを11~20%値下げするとしています。
ワイン通販大手でもEPA発表後欧州ワインの値下げセールを行っています。重いワインは通販で買っておくと便利ですよね。突然の来客のおもてなしや、とっさのお呼ばれの時に持参できるワインが数本あると安心です。有名通販京橋ワインでも欧州ワインシャンパン入り9本セットが1万円ちょっととお得になっています。
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最近は世界中で人気が高いチリ産のワインですが、2007年に日本チリのEPAが発効して以来10年で輸入量が5倍にまで増えたそうです。同様に、今度はヨーロッパ産の低価格帯ワインの輸入が増えるかもしれません。
チーズ
ワインのお供となるチーズはどうでしょうか。国内の酪農農家を保護するために、現在チーズには29.8%という高い関税がかけられています。国内の酪農農家の反対もあり、チーズについては種類によって細かく関税率が変わったり、輸入枠が設けられたりと複雑になっています。
たとえばカマンベールやモッツアレラなどのソフトチーズや粉チーズ、プロセスチーズなどの場合、輸入枠を設けた上で関税率が徐々に引き下げられ16年目に関税が0になります。原材料として使われるハードチーズ(チェダーやゴーダなど)やクリームチーズの関税は16年目に撤廃となります。
現在フランス産のカマンベールチーズで1000円くらいの価格帯のものが800円程度になるのではないかと言われています。
小売業界ではスーパーの明治屋が渋谷の店舗でワインとチーズの売り場を広げ、フランスやイタリア産を中心に品ぞろえを増やしました。
その他の食料品
ワインやチーズ以外にも関税が撤廃となる食料品はいろいろあります。大体が6年目とか11年目とかいうように猶予期間がもうけられています。例えばチョコレート、キャンディ、ビスケット、塩、パスタなどは11年目に撤廃となります。
その他、牛肉、豚肉、鶏肉、サバやマグロなどの魚介類なども猶予期間のあと関税が撤廃になったり大幅に引き下げられたりします。
シャネルのバッグやルブタンのシューズ
ヨーロッパからの輸入品の関税といえば、エルメスやシャネル、ルイ・ヴィトンといった高級ブランドのバッグやお財布などの革製品のことが気になる人もいるでしょう。特に革靴は関税が30%と高いので大きいですよね。
革製品についても関税撤廃は決まっているのですが、残念ながらこれは11年後というかなり長い猶予期間がもうけられています。革製のバッグにかかる関税最大18%は発行から次第に下がり11年目になくなります。革靴については今30%または4300円という高い関税がかかっていますが、これは11年目に無税となります。
ルブタンのヒールを30%引きで買うことができるようになるまではまだ当分時間がかかることになります。
グッチやモンクレールの服
同じ高級ブランドの商品でも、皮革製品でなく衣類など繊維製品となると今まで13.4%かかっていた関税がすぐに0になります。
ということは、シャネルスーツやグッチのTシャツ、エルメスのスカーフ、モンクレールのダウン、マックスマーラのコートなどが関税分だけ安く買えることになるわけです。もちろん、高級ブランド品だけでなくEU諸国からの繊維製品すべてが対象になるので、ヨーロッパファッションが好きな人には朗報ですね。
デパートのそごう・西武はヨーロッパから輸入するコートやジャケットなどの服の価格引き下げを検討するとともに、取り扱う商品を増やすとしています。
日本からEUへの輸出:主な品目
品目 | 現在の関税率 | EPA実施後 | いつから? |
醤油、調味料 | 7.7% | 0 | すぐ |
緑茶 | 3.2% | 0 | すぐ |
植木、盆栽 | 6.5%、8.3% | 0 | すぐ |
酒類 | 7.7ユーロ/100ℓあたり | 0 | すぐ |
乗用車 | 10% | 段階的に実施 | 8年目に0 |
自動車部品 | 3~4.5% | 0 | すぐ |
カラーテレビ | 14% | 0 | 6年目 |
日本からEUへの輸出品の関税撤廃リストを見てみると、自動車や自動車部品、機械などの工業製品が主なものになっています。日本が主力とする自動車産業などにとって、5億人の大きなEU市場への輸出拡大のチャンスとなるわけです。
自動車関連では乗用車が現行税率10%から8年目にゼロになり、自動車部品ではエンジンやタイヤ、ECUなど貿易額ベースで9割超の製品で即時撤廃されます。家電・電気製品、産業用機械では、14%と高関税が課されていたカラーテレビが6年目に撤廃。産業用ロボット、ディーゼルエンジン、タービン、ベアリング、エアコンなどが即時撤廃となります。
EUから日本への輸入品のリストは主に食料品となっていますが、日本から輸出する醤油や緑茶、酒などの関税も撤廃されます。ヨーロッパでの日本食ブームに拍車をかけるかもしれません。
EPA発効によって関税が撤廃されるだけでなく、様々な規制が緩和されたり整備されたりといった利点もあります。たとえば、これまで日本で養殖されているクロマグロは衛生管理の規制が厳しいEU諸国には輸出ができませんでしたが、EPA発効により衛生基準をクリアし、輸出が可能になりました。日本からEUへの魚の関税22%も撤廃されるため、輸出拡大には追い風になりそうです。
日欧EPA署名、発効はいつから?
日本とEUのEPAは2018年7月17日に署名。準備期間を経て、2019年2月1日に発効されました。発効後すぐに関税が撤廃され商品価格が下がるものもあるというわけです。
日本とEUのEPAが発効されると、関税撤廃によりEUから輸入する農産物や高級ブランドの洋服などの価格が低くなることが予想されます。
消費者としてはフランスの美味しいワインやチーズ、ベルギーのチョコレート、グッチやシャネルの洋服などが安く買えるようになることはうれしいことでしょう。今から待ちきれないと思っている人もいるかもしれませんね。