プラスチック汚染対策のプラスチック憲章G7で日本署名せず

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Last Updated on 2018-08-11 by ラヴリー

カナダで開催されたG7主要7か国首脳会議でプラスチック汚染問題が協議され、合意文書のプラスチック憲章を取りまとめましたが、日本とアメリカは署名しませんでした。プラスチック憲章というのはどういうものなのでしょうか。また「プラごみ」が問題となっている日本はどうして署名を見送ったのでしょうか。


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G7でのプラスチック憲章への署名

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G7主要7か国首脳会議先進国は今年はカナダで開催され、カナダ、米国、日本、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスの7か国首脳が集まり、様々な課題について話し合いました。今年のG7は貿易面で米国トランプ大統領の保護主義的な政策を受けて話し合いが難航しましたが、貿易面では大筋において合意しました。

そのほか、7か国はプラスチック汚染についての問題を協議しました。
「プラスチックごみの問題は世界全体の課題として対処する必要がある」という認識から協議が進みました。

その結果、海洋の保護と持続可能な漁業の実現、沿岸部のコミュニティへの支援などを促す「プラスチック憲章」(Plastic Charter)が提唱されました。

しかし、日本とアメリカ合衆国だけがこの憲章への署名を見送り、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスの5か国が署名しました。

プラスチック汚染とは

プラスチック汚染は近年、世界の緊急事態だともいわれており、世界中で取り組まなければならない重要課題とされています。
今年6月の世界環境デー(World Environment Day)でのメインテーマもプラスチック汚染でした。

プラスチック汚染問題は国連のSustainable Development Goals の一つとなっており、国連では去年Clean Seasキャンペーンをを行い、マイクロプラスチックやリサイクル不可能なプラスチックの使用を減らそうとしています。

国連の調査では、世界で生産されているプラスチックは年間4億トンにのぼり、その大半は使い捨てのパッケージ用品や容器です。海に投棄されているプラスチックの大半は使い捨てのプラスチックの使用によるもの。世界全体でプラスチックの79%がリサイクルされないまま廃棄されています。

この結果、年間8000万トンもの「プラごみ」(プラスチックのごみ)が海洋に投棄されており、プラごみが広範囲にわたって海面を覆いつくしているのです。世界中の海には1キロ平方あたり13,000のプラスチックごみがあると推定されています。

国連環境計画(UNEP)によるとプラスチックごみの廃棄量は年々増加傾向になり2015年には3億トンに及んだと発表しています。この調査では2014年の人口1人当たりの使い捨てプラスチック製品の廃棄量のトップ3は米国、日本、欧州連合(EU)としています。

プラスチックが自然に分解するのには数10年から100年単位の時間がかかるので、なん10年分ものプラごみが日に日に増えていくという結果となっています。

このプラスチック汚染は地球の7割を占める海の生態系に大きな影響を及ぼし、800種類もの海洋生物に影響。プラごみを食べたり、海洋投棄されたプラスチックの網などに絡まって死んでしまう野生動物は後を絶ちません。また、世界の漁業活動にも影響を与えています。

タイに打ち上げられたクジラからは80枚余りのプラスチックバッグなど、8キロ余りのプラスチックごみが見つかりました。南アフリカで見つかったクジラの胃はヨーグルトパッケージ、クリングフィルムなどのプラスチック製品でいっぱいでした。

Plastic Pollution

National Geographic JORDI CHIAS

ほかにも、鳥や、亀などの野生動物もプラスチック汚染の影響を受けています。毎年100,000匹の海洋哺乳類やカメがプラごみにより命を落としているのです。

また、マイクロプラスチックと呼ばれる小さい粒子状となったプラスチックの問題も大きくなるばかりです。海洋生物がマイクロプラスチックやそれに付着した有害物質を摂取、それが人間の健康にも影響すると懸念されているのです。

このようなプラスチック問題を早急に解決するために、環境保護団体は法律の枠組みが必要だと訴えています。

2010年の調べによると、プラスチックごみを多く投棄している国は中国、インドネシア、フィリピン、ヴェトナムなどのアジア諸国が主です。

プラスチック汚染に対する取り組み

プラスチック汚染に対する取り組みとしてはどのようなものがあるのでしょうか。

これまでに60か国以上がビニール袋の廃止や課金、プラスチックストロー使用廃止などを行ったり計画したりしています。

前述の6月5日の世界環境デーにはプラスチック汚染をなくすための取り組みが約束され、インド政府がタージマハルなど100の歴史遺産をゴミや汚染から守り海洋保全の国際キャンペーンに参加すると発表しました。

欧州連合(EU)は2030年までにすべてのプラスチック包装をリサイクル、または再利用できるものにすると発表しました。また、ストローや食器類などのプラスチック製品を制限する規制案を発表。2025年までにペットボトルの90%回収を目標としています。

そして、プラスチック生産者はプラスチックの回収や清掃についてのコストを負担する責任を負うとしています。

イギリスでは2042年までにプラスチック廃棄物を可能な限りなくす長期環境計画を発表しました。スーパーマーケットなどで使用するビニール袋はすでに課金されるようになっています。また、使い捨てのプラスチックストローや綿棒などのプラスチック製品の使用を禁止すると発表。

先進国だけではありません。ケニヤやルワンダなどアフリカ大陸の25か国がビニール袋を禁止しています。コスタリカでは2021年までにリサイクル不可能なプラスチック製品を禁止すると発表。

民間企業でも自主的にプラスチック問題に取り組んでいるところがあります。コカ・コーラやユニリーバーなどが使い捨てプラスチックの削減、リサイクル可能なプラスチックの使用などの目標を導入しました。

日本はゴミ分別、プラスチックリサイクルではかなり進んでいるものの、過剰包装など不必要なプラスチック使用がいまだに多く、この面での取り組みが必要でしょう。

海洋国である日本の国際的な取り組みとしては、隣国と共同で行っている海洋環境保全活動があります。国連環境計画の北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)が日本、韓国、中国、ロシアの4か国共同で海洋・沿岸環境の管理保全活動をしているのです。参加国で協力し、プラスチックを含めた海洋ごみ全般を減らす活動を続けています。

プラスチック憲章とは

G7で提唱された「プラスチック憲章」(Plastic Charter)とはどういうものなのでしょうか。

この憲章はカナダのトルドー首相が提唱し、G7の前に参加各国に事前に報告していた提案。
プラスチック汚染問題に取り組むために、2030年までにプラスチックをリサイクルしようと参加国に促すものです。

気候変動抑制についての国際的な合意であるパリ協定のような役目をするものとされています。

2015年のG7ではドイツが海洋ごみに取り組むアクション・プランを開始、2016年日本、2017年にイタリアのG7で議論が重ねられましたが、その延長線にあるものと言えます。

このプラスチック憲章の主旨に多くの国は賛同しましたが、日本と米国は憲章への署名を見送りました。

米国は環境問題については以前から消極的です。京都議定書も批准しておらず、自国の経済利益のみを追求していると国内外から非難を浴びています。

プラスチック問題にしても同様で、グランドキャニオンなどの国立公園でプラスチックボトルが禁止されていたのをトランプ大統領が2017年に再導入したという例もあります。

それでは日本政府はどうしてプラスチック憲章に署名しなかったのでしょうか。その理由として、上がったのは下記の通り。

「プラスチックごみを減らしていく趣旨には当然、賛成しているが、国内法が整備されておらず、社会にどの程度影響を与えるか現段階でわからないので署名ができなかった」

とはいえ、ほかの5か国も国内法が整備されていないのは同様です。そもそも、こういう憲章というものは各国の法整備を促進するためにできているのですから、署名してから国内法を整備するという順番が普通です。

日本は領土を海で囲まれた海洋国家であり、環境やリサイクルの問題にも日本なりに取り組んできました。こういう分野でこそ、世界をリードする役割を担ってほしいものだし、日本にはその技術も国民の理解もあるのではないでしょうか。

自然環境保護分野については、捕鯨やイルカ問題などで海外から非難されているというのに、これでは日本は国際社会の信用をさらに落とし、余計に孤立してしまいそうです。米国とともに孤立するからいいというものではないでしょう。

まとめ

日本はごみの分割、廃棄物処理の政策や技術などが進んでおり、国民の環境に対する意識も高いと言えるでしょう。

けれども、プラスチック汚染は大なり小なりすべての国が要因となっている世界共通の問題です。プラスチックの海洋汚染には国境はありません。

海洋生物や世界中の人の健康や生活をプラスチック汚染から守るためのリーダーシップが求められている中、アジアの先進国である日本が貢献する意味は大きいといえます。
日本国民のごみや環境汚染、海洋保護に対する高い意識やリサイクル、廃棄物処理の進んだ技術を、発展途上国に伝えていくことができる,格好の機会です。

安全保障をはじめとする他の様々な分野で、自国や他国の政治・世論などの制約に縛られ先頭を切って導いていくことが難しいのなら、せめてこういう分野で日本がリーダーシップをとって貢献し、世界各国から認められるようにしてほしいものです。

 
 

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