Last Updated on 2019-10-27 by ラヴリー
EUが2017年12月に、タックス・ヘイヴンとして17カ国のブラックリストを発表しました。タックス・ヘイヴン「税金の天国」ってどんな意味?そして、どんな国がリストに上がっているのでしょうか。
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そもそもタックスヘイヴンって何?
タックス・ヘイヴンというのは Tax Haven、つまり税金の天国ということです。主に法人税ほかの税金がゼロ、または低率という税制優遇措置を取っている国や地域のことを指し、租税回避地とも言われます。自国の資源や経済に恵まれない発展途上国や小国が優遇税制を使い、外国企業を誘致することによって税収をあげようとすることから始まっています。
グローバルに活躍する多国籍企業、またヘッジ・ファンドなどは、こういうタックスへイヴンを利用して税金を低く抑えるのに利用しています。たとえば、アマゾン社がイギリスでの課税を逃れるために付加価値税率の低いルクセンブルクに欧州本社を置いたり、グーグル社がアイルランドに支社をおき、バミューダ諸島を通して支払いをするといった会計操作が問題視されています。
また、タックスヘイヴンは犯罪組織のマネーロンダリングやテロ資金の運用などに悪用されているケースもあり、2000年に経済協力開発機構(OECD)をはじめとする各団体が該当国の税制の見直しを求め、金融規制や税制改革を促しています。
EUのタックス・ヘイヴンリスト発表
EU(欧州連合)がタックス・ヘイヴンとして国の名前を上げるのは始めてです。中でも悪質とされる17カ国が名指しで上げられ、さらに47カ国がグレイリストとして上げられています。
ブラックリスト17カ国
非EU加盟国を対象として、国際的に不公平な税制を採用し、さらに税金に関する情報提供に非協力的な国・地域が選ばれています。リストを作成する前にEUは各国と話し合いを持ちましたが、リストに載った国はその話し合いでEUが満足する回答を得られなかったということです。たとえば、韓国は不公平な優遇税制について指摘されたにもかかわらず、それについて是正を約束しなかったことが問題視されました。
リストに上げられているのは下記の17カ国・地域です。
アメリカ
- Panama パナマ
- Grenada グレナダ
- Trinidad and Tobago トリニダード・トバゴ
- St Lucia セントルシア
- Barbados バルバドス
アフリカ中東
- Bahrain バーレーン
- Nambia ナミビア
- Tunisia チュニジア
- UAE アラブ首長国連邦
アジア・太平洋
- Guam グアム
- Palau パラオ
- Samoa サモア
- American Samoa 米領サモア
- Macau マカオ
- South Korea 韓国
- Mongolia モンゴル
- Marshall Islands マーシャル諸島
グレイリスト47カ国
17カ国のブラックリストに続いて、グレイリストとして、トルコやスイス、香港など47の国・地域も上げられています。これらは現時点では国際的に公平な税制を採用していないが、EUとの話し合いにおいて税制を改善すると約束した国々です。グレイリストに上げられた国は2018年末まで、そのうち発展途上国は2019年末までに約束した改善案を実行しなければ、ブラックリストに載せられます。
対策は?
ブラックリストに上がった国・地域についての具体的な対策については触れられていませんが、EUによる支援停止などの制裁が検討されているとのことです。その理由について「EU加盟国はすべて税情報の共有をして協力しあっているのに、非加盟国が協力しないのは不公平である」としています。
EUとしては各国が税制改善に向けて自主的に努力をすることを望んでいますが、フランスなど一部の加盟国はブラックリストに上げられた国に何らかの制裁を科すべきだと主張しています。
EU加盟国も同罪?
国際的に活動しているNGO機関 Oxfam (オックスファム)は、EUが採用した基準を加盟国に当てはめるとEUの4カ国もリストに入ると主張しています。
たとえば、ルクセンブルクやアイルランドなどEU加盟国の中でも優遇税制を設けて企業を誘致している加盟国もあるとの指摘です。
EU ‘grey list’ should not let tax havens off the hook
オックスファムのブラックリスト
オックスファムは昨年12月に独自の基準で選んだ法人税のタックスヘイヴン・リストを発表しています。(Four EU countries among world’s worst corporate tax havens, new report reveals)
そのリストは下記の通りで、EU加盟国のオランダ、スイス、アイルランド、ルクセンブルクも含まれています。
- (1) Bermuda 英領バミューダ諸島
- (2) the Cayman Islands 英領ケイマン諸島
- (3) the Netherlands オランダ
- (4) Switzerland スイス
- (5) Singapore シンガポール
- (6) Ireland アイルランド
- (7) Luxembourg ルクセンブルク
- (8) Curaçao オランダ領キュラソー島
- (9) Hong Kong 香港
- (10) Cyprus キプロス
- (11) Bahamas バハマ
- (12) Jersey 英領ジャージー
- (13) Barbados バルバドス
- (14) Mauritius モーリシャス
- (15) the British Virgin Islands 英領バージン諸島
オックスファムによると、世界最大規模の会社の利益は1980年の2兆ドルから2013年には7.2兆ドルに増えたにもかかわらず、法人税収入はこれに比例して増えていません。なぜなら、こうした企業のうち、少なくとも1割はタックスヘイヴンを利用して法人税を低く抑えているからです。
経済のグローバル化によって、世界中で外資系企業を誘致するため法人税などの引き下げをする国・地域があり、これらの企業はこのような税制の恩恵を受けているのです。25年前、G20諸国の平均法人税率は40%でしたが、今ではそれが30%以下になっています。そして、法人税を下げる代償として、政府は公共支出を減らしたり消費税などの税金を高くして収支バランスをとろうとし、結果的にその国の底辺層にしわ寄せがいくことになります。
オックスファムはEUをはじめとする政府や国際社会がタックスヘイヴンをはじめとする不公平な税制を改正し、世界的にみて公平で公正な仕組みを作っていくように努力を続けるべきだとしています。
まとめと感想
これまで、グローバル企業がタックスヘイヴンを利用して税金を節約していると聞いても、自分には直接関係ないという気がしていました。でもよく考えてみれば、そうして大企業が節約している税収は、まわりまわって誰かが負担しているというわけなのですね。タックスヘイヴンとなっている国は法人税率を下げる代わりに、その国の住民が支払わなければならない消費税を高くするかもしれないし、福祉支出を減らすことでバランスを取ろうとするかもしれません。
また、タックスヘイブンの恩恵を受けるためにペーパーカンパニーである支社を作って納税先を移した企業が本来属していた国はその企業から入っていた税収を失うわけなので、政府はどうにかしてそのロスを埋めなければなりません。それが、緊縮財政となり教育費や医療費、福祉などの公共支出の制限につながっていくのだとしたら、自分たちは関係ないと言い切れない問題だと思い直しました。