BrexitイギリスEU離脱期限間近:北アイルランドバックストップって?

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Brexit

イギリスがEU離脱をする日である2019年3月29日が近づいてきました。それなのにどのような形で離脱するのかさえ不透明な状況です。これからBrexit(ブレグジット)はどのような展開になるのかについて最新情報を簡単に紹介します。メイ首相の離脱案、合意なき離脱、再国民投票、EUに離脱期限延期を要請することなど、様々な可能性について考えてみます。Brexit問題をいっそう複雑にしている北アイルランド国境のバックストップ案についても何度も質問されるので簡単に説明します。

メイ首相の離脱協定案

メイ首相は2018年11月に離脱の条件を定めた離脱協定案についてEUと合意しました。双方が歩み寄ってやっとまとまった協定案でしたが、この案はEU強硬離脱派にも残留派にも受け入れられないとする議員が多く、議会で否決される結果となりました。与党側だけでも造反が118人も出たのです。その後、野党労働党が出した内閣不信任案は否決され、とりあえずメイ首相は引き続き続投することにはなりました。

今後、メイ首相はEUと再交渉を目指すとしていますが、EU側は離脱協定案の再交渉はしないと言い続けているのでどうなるのかは不透明です。

合意なき離脱(No Deal Brexit)

もしイギリスとEUが離脱案に合意しないままに期限の3月29日が来ると、No Deal Brexit、いわゆる合意のないEU離脱ということになります。とはいえ、イギリスがEUから合意なしで離脱するということは強硬離脱派以外ほとんどの人が反対しているので可能性は非常に低いと言えます。メイ首相をはじめとする与党保守党のほとんど、野党労働党もこれだけは避けたいというコンセンサスがあります。

合意なき離脱がどうして問題なのかと言うと、イギリスとEUの間に共通のルールがない状態になってしまうとイギリスと他のEU諸国間との物流が滞ったり金融サービスに支障が出たりして、社会経済に混乱が避けられないからです。そうなるとイギリスだけでなくイギリスと貿易や人の行き来があるEU諸国にも影響があるでしょう。

ビジネスや各分野では一応最悪の場合に向けて多少の準備や少なくともシミュレーションはしているところが多いようです。イギリスでは毎日のようにビジネスがどのようにこれに対する防御策を考えているかが報じられています。食料品の多くをヨーロッパからの輸入に頼っているイギリスでは、スーパーの棚がからっぽになり毎日の生活に混乱が起こるだろうと心配されており、倉庫は予備の商品でいっぱいだと言われています。

最新のニュースでは、No Deal Brexitで暴動が起きる可能性に備え、エリザベス女王をはじめとする王室メンバーをロンドンから避難させる計画が検討されているというものまであります。

国民投票を再び

2016年に行われた国民投票の段階では、今取りざたされているようなBrexitにかかわる複雑かつ困難を極める数々の問題については予想されていませんでした。正しい情報を与えられないままに行われた国民投票でわずかの差で決まってしまった結果によって、EU離脱と言う重大な決定をするのは国家の将来にとって得策ではない、もう一度国民投票をして民意をはかるべきだとする人はたくさんいます。ロンドンをはじめ、全国でそのための活動を続けている人も多く、そのためのデモも何度も行われています。その人たちの言い分としては、国民投票で離脱派が過半数を取ったと言ってもそもそも投票しなかった人も多いため、EUを離脱したいという人は実は国民の過半数ではないということです。

けれども、国民投票と言う民主的な方法ですでに決まった事柄についてもう一度投票を呼び掛けるということは、前回国民投票で多数を占めた離脱支持派の声を無視することになります。2016年に離脱を選び今でもその考えを変えていない人にとっては許しがたいことでしょうし、そのためのデモも何度も起こっています。そもそも、あの国民投票をやるのが正しかったかどうかは別にしても、国民投票の結果をないがしろにすることはイギリスがこれまで育んできた民主主義を否定することになるのであり、EU離脱だけの問題ではなくなってくるのです。

EU残留派で心情はもう一度国民投票をしてほしいとは思いつつも、イギリスの民主主義のためにはそれを退けるしかないとする人も多いでしょう。また、どちらにしても期限の3月末までに国民投票まで持っていく時間はもうありません。

期限延長

このまま膠着状態を続けて進捗がない場合、イギリスにもEUにも大きな混乱を招く合意なき離脱を避けるために、とりあえずは3月29日の離脱期限を延長するのが当面の最善策ではないかという意見が現実的になってきます。

EUにとっても合意なき離脱というシナリオだけは回避したいはずなので、イギリスが延期したいと言えば受け入れるでしょう。これまで何が何でも期限が来たら離脱する、合意がなくてもかまわない、としていた強硬離脱派もこの案を受け入れる姿勢が少しながら出てきているようです。

もちろん、その期間をどれくらいにするのかとか、そもそも期限を延長しても肝心の問題は解決されないではないかということにはなるわけですが、少なくとも合意なき離脱の混乱は回避できるし、時間稼ぎはでき、その間国会その他でさらに議論を続けることはできます。

イギリス人は「過激」を好まない国民性なので、合意なき離脱のリスクを避けてとりあえず期限延長して話し合いを続けようじゃないかという案が今のところ、一番妥当な気がします。

北アイルランド・バックストップ案

さて、EU離脱協定案をまとめるにあたって最大の難関となっているのが北アイルランドのバックストップの問題です。「バックストップ(backstop)」というのは野球のキャッチャーの後ろにある網のことでボールがキャッチャーから逃れたとしてもそれ以上後ろに飛んでいかないための防御策/セーフティネットのこと。これがBrexitに関してどういうことなのかを簡単に説明します。

イギリス領である北アイルランドとEU加盟国であるアイルランドとの地続きの国境をめぐっての問題は両国にとって歴史的にも重要かつセンシティブなもの。1960年代から続いた北アイルランド紛争では北アイルランドはもちろんイギリス本土でもテロ事件が相次いでその終わりはないようにさえ見えました。けれども、30年を経て平和が訪れ、北アイルランドとアイルランドの国境は開かれたのです。この紛争に終止符を打ったベルファスト合意が脅かされることはイギリス、アイルランド両国だけでなくEUも避けたいことでは一致しています。

このため、EU離脱に際しイギリスがEUと合意ができないために合意なき離脱(No Deal)になってしまうようなことになっても、セーフティネットとして、北アイルランドとアイルランドの国境に「ハードボーダー」と呼ばれる物理的な国境を復活させないという取り決めをしようというものです。

イギリスもEUもここに物理的な国境(ハード・ボーダー)を復活させないということでは意見が一致していますが、それをどうやって実現するかの具体策は見つかっていません。そのため、移行期間に対応策が見つからない場合のバックストップとしてEUは関税同盟に北アイルランドを残すことを提案しました。イギリスはEU案がイギリス連合国内に国境線を引くものだとして強く反対しており、暫定的にイギリス全体を関税同盟に残留させるという逆提案をしたのです。EUはイギリスが一方的に関税同盟を離脱できないという条件付きでこれを認めました。けれども、これにはイギリス国内の強硬離脱派が反対しているのです。

イギリスの強硬離脱派にとっては北アイルランドの問題のせいでイギリスのEU離脱条件において譲歩することが我慢なりません。また、北アイルランドとアイルランドの国境での関税、出入国検査、検疫など人と物の移動のチェックをするのは技術的な方法で対応できるとする意見もあります。

けれどもいかに「技術的」な問題が解決できたとしても、Brexit国民投票で残留派が過半数を占めた北アイルランドの人達の心情も無視できないのです。彼らにとっては長年続いた紛争にやっと終止符をうって平和な日常に戻ったというのに、イギリスがEU離脱を決めたばかりにまたハードボーダーが戻る可能性が出てくるというのは許せないでしょう。

奇しくも、1月19日には北アイルランドのデリー(ロンドンデリー)で自動車爆弾が爆発するという事件がありました。反抗表明で「新」IRAと名乗るグループはこの犯行はBrexitとは関係ないと言いましたが、同時に「私たちはどこにも行かない」と言っています。Brexitの影響で過激派組織の活動が活発になる可能性があるというのは多くがおそれている事態です。

これからの展開

メイ首相は2月13日をEUとの再交渉の期限としています。とはいえ、EU側は再交渉の余地はないと言っているのですから、交渉したとしても何の進展が見られない可能性も高いと言えます。そのままの状態で離脱期限日の3月29日までいって「合意なき離脱」になる可能性は低いとはいえゼロではありません。けれども、より可能性が高い展開としてはとりあえず離脱期限を延長することでしょう。

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