Last Updated on 2019-07-21 by ラヴリー
ローマ時代の円形劇場、セルシウス図書館など見どころがたくさんあることで有名なエフェソス遺跡は2015年に世界遺産に登録されました。それまで世界遺産でなかったことが不思議なくらい見どころの多い遺跡を見に行ってきました。実際に見学した経験から見どころ、アクセス、所要時間、近郊の関連観光ポイントなど観光に役立つ情報やヒントをまとめてみました。(2019年夏現在:1TL トルコリラ=約19円)
Contents
エフェソス(エフェス)Efes
2015年に世界遺産に登録されたエフェソスは旧約聖書にも登場する古代都市で「トルコのポンペイ」とも呼ばれます。エーゲ海の入り江に発展した古代の港湾都市で昔は海に面していましたが、メンデレス川の堆積した土砂により海岸線が後退し今は内陸に位置しています。
この地域には古くから原住民が住み、紀元前2500年から1200年にはエーゲ文明の影響下で発展しました。紀元前1000年ごろギリシア本土からギリシア人が移住して、ヘレニズムの都市が生まれました。その後も異なる民族や文化の人々が住み、紀元前2世紀にローマの支配下に入ってからは、パックス・ロマーナと呼ばれるローマ帝国黄金期を迎えて壮大な建築物が立ち並びました。
現在エフェソスで見ることができる遺跡はヘレニズム時代などのものもありますが、その多くが紀元1~2世紀ごろのローマ時代のものです。
世界遺産エフェソス遺跡
エフェソス遺跡入場情報
オープン時間:8時から19時まで(4月から10月)8時から17時まで(11月から3月)
入場料:72 TL(トルコリラ)
入口にはチケットオフィスがあり入場券を購入してから自動改札ゲートを通ります。荷物検査をする機械がありましたが、私たちが入場した時は検査はなしでした。
音声ガイドのブースがあり、借りて遺跡を回るつもりだったのですが、私たちが行った時は利用できませんでした。
アクセス、見学ルート、所要時間
見どころがたくさんある遺跡で、駆け足で見ても1時間、じっくり見ると3時間はかかるでしょう。夏の日差しは強く日陰もあまりないので、朝早くの見学をおすすめします。
入り口は2か所ありますが、私たちは坂の上の入り口(音楽堂がある方)でタクシーを降り、遺跡内を下りながら見学した後、もう一つの出口(円形劇場がある方)でタクシーに迎えに来てもらいました。同じ出入り口を使う場合はどちらでもいいですが、片道の場合は上るよりは下りをおすすめします。
入口近くにトイレやショップがありますが、入ってからはトイレなどがありません。途中セルシウス図書館の近くに飲み物を買うキオスクがあるくらいです。遺跡内は日影があまりなく夏の日中はかなり日差しが強いので、水などを持参することをおすすめします。
坂の上の入り口から入って下るルート順で特に印象に残ったポイントを下記に紹介します。
オデオン(音楽堂)
1500~2000人収容のオデオン(音楽堂)は小劇場形式の建物で市議会の集まりや音楽会に利用されていました。
中に入ることができるので劇場のシートに実際に座ってみることもできます。
クレテス通り
オデオンを出たところから延びているメインストリートはクレテス通りと呼ばれます。ヘラクレスの門を通ってセルシウス図書館へと延びる150メートルの長さです。なだらかに下りる通りの一番上から見るとセルシウス図書館やその背後に広がる自然風景をはるかに眺めることができて見晴らし抜群です。
クレテス通りの途中には浴場(テルマエ)、トラヤヌスの泉、ハドリアヌス神殿(2世紀に建てられたコリント様式の神殿)、ラトリネ(公衆トイレ)、テラスハウスなど見どころがたくさん並んでいます。その中でも特に面白かったポイントを紹介します。
ラトリネ(トイレ)
2000年前の水洗公衆トイレは屋根付きの部屋で中央に大理石が置かれブロンズ像と円柱で囲まれていました。床にはモザイクが敷かれ、壁は大理石で覆われた豪華なトイレだったということです。大理石でできた便座の下を水が流れていて、足元の水路ではお尻をふくための柄付き海面を洗うことができました。͡
この公衆トイレには個々の区切りなどなく、利用者が仲良く並んでリラックスして用を足していたそうです。コの字型に配されたベンチ型便器の中央では音楽が奏でられていて、ローマ人の憩いの場であったのです。
テラスハウス(The Terrace Houses)
テラスハウスがあるエリアは、現在大きな屋根で覆われ、当時の華麗な住宅を復元すべく発掘中です。この屋内展示をみるためには、別途入場料金( 37TL)を払う必要がありますが、入ってよかったと思えるものでした。エアコンの効いた快適な環境で特別な展示物を見ることができるのもうれしいボーナスです。
テラスハウスは紀元前1世紀以降に都市開発がすすめられた地区で、身分の高い祭司や富裕層が住んでいました。オープンな中庭を囲んで広々とした部屋がならんでいて、それぞれの建物はすべて手の込んだ豪華なものでした。
発掘中のテラスハウスは土やがれきに埋もれた内装が次々に姿を見せていて、床や柱、アーチや壁などの建築様式が2層、3層に建てられている様子を特別に作られたデッキから見学できるようになっています。さらに、床のモザイクや大理石でできた壁、フレスコ画で華麗に装飾された壁やアーチなども見ることができます。
セルシウス図書館
セルシウス図書館は紀元117年に建てられた2階建ての壮麗な建物です。260年に火災に遭い、今ではファサードだけが残っています。とはいえ、残存するファサードの繊細なレリーフ模様や優雅な彫像を見るだけでもその建築美を堪能できます。幅21m、高さ16mの建物にはかつてはパピルスや羊皮紙からできた蔵書が並んでいました。
セルシウス図書館と劇場を結ぶ道はマーブル(大理石)通りと呼ばれます。円柱が並ぶ通りの下には下水道設備が完備していたということです。隣接するアゴラ(市場)は紀元前1世紀につくられた大きな野外市場でさまざまな物資が取引されていました。
円形劇場
紀元前3世紀につくられ、ローマ時代に拡張された巨大な円形劇場はかつては25,000人を収容できる大劇場で、エーゲ海岸地方で最大規模を誇りました。斜面を利用し観客席が扇形に広がる形にデザインされていて、音響効果が素晴らしい劇場だということです。音楽や演劇のほかにも、格闘技や政治的なイベント、儀式にも使われていました。
劇場を出ると長さ600m、幅11mのアルカディアン(港の大通り)が見えます。アルカディウス帝にちなんで名づけられた広い道はかつて西方にあったエフェソスの港へ続いていました。シーザーとクレオパトラも歩いたとされる通りです。
エフェソス博物館(Ephesus Museum)
エフェソス博物館入館情報
オープン時間:8時半から17時まで
入場料:18TL(トルコリラ)
エフェソス博物館はエフェソス遺跡があるセルチェクという街の中心にあります。
博物館はエアコン完備で、中にはカフェ、トイレ、無料ロッカー、ショップがあるので、ゆっくりできます。午前中にエフェソス遺跡を見た後ランチを食べてから訪れてもいいでしょう。
エフェソス博物館展示物
エフェソス博物館にはエフェソス遺跡の説明を映像で見せてくれるディスプレイがあり、遺跡見学をより理解するためにとても参考になるものでした。エフェソス遺跡を見るだけではただの巨大な石の塊にしか見えなかった遺跡内の各ポイントを、わかりやすい映像によってかつての完全な姿を再現。それぞれの建築物の全容やそれらがどのように使われていたのかを生き生きと見せてくれるため、遺跡として見た建物が生きた街の一部としてよみがえるようです。
エフェソス遺跡を見た後でこの映像を観ると、もう一度遺跡を見直したくなることまちがいなしです。こちらを見てから遺跡見学をした方がよかったかもとも思いましたが、あとの祭りです。
エフェソス博物館収蔵品
この博物館にはエフェソス遺跡から出土した彫刻品が並んでいますが、特に有名な収蔵品はアルテミス像2体です。
アルテミス像は「豊穣」を象徴する女神ですが、2体ともよく保存された彫刻です。部屋の両側に向かい合うように置かれていて、それぞれ妖艶な美しさをたたえています。
アルテミス像がある部屋の隣には、近くにある「世界七不思議」のアルテミス神殿の模型も展示されていました。
エフェソス近隣の見どころ:アルテミス神殿と聖母マリアの家
クシャダスからエフェソスまでは30分ほどの距離ですが、レンタカーを借りたり、タクシーで回る場合は近隣の見どころに立ち寄るのもいいでしょう。エフェソス遺跡とエフェソス博物館の途中には世界七不思議のひとつと言われるアルテミス神殿跡があります。この神殿の模型が上記のエフェソス博物館に展示されていますが、当時の規模と華麗さは息をまくものです。しかしながら現在残っているのは石柱1本だけとなっています。
また、エフェソス遺跡から3キロのところには聖母マリアの家もあります。イエスが処刑された後、聖母マリアが迫害を逃れて晩年を過ごしたとされる礼拝堂で、ヴァチカンの歴代教皇が参拝するところであり、カトリック教徒にとっては重要な聖地となっています。
シリンス Şirince
エフェソスにタクシーや自動車で行くのならぜひ訪れてほしい村がシリンス。エフェソス博物館があるセルチェクの街から丘を上り詰めた高台にある小さな村です。遠くから見ると丘の上に白い壁とオレンジ色の屋根が連なる光景が映えてギリシャのアルカディア地方で見た田舎の景色を思わせます。
それもそのはず、エーゲ海岸から近い丘の上にあるシリンス村にはかつてギリシャ人が住んでいたのです。けれども、ギリシャとトルコの戦争後1923年に住民交換が行われた結果、村民はギリシャに移住し、村はもぬけの殻になってしまいました。長い間朽ち果てるにまかされていた小さな村の家々は少しずつ修復され、今ではおしゃれなブティックホテルやトルコの富裕層の別荘となっています。
ここはワインの産地としても有名なエリアで、小さな村の中心部にはカフェやレストラン、ワインショップにお土産物屋が立ち並び、観光客でにぎわいます。村の中心部は土産物屋でいっぱいで趣味の悪い日本の温泉街を思わせるようなところもなきにしもあらず。
ギリシャのアルカディア地方で見た村々は落ち着いた雰囲気で絵はがきから出てきたようでしたが、あれは不適切な開発を規制する努力のたまものなのでしょう。それに比べるとここは商売根性あふれるビジネスマンのするがままにまかせているところがいかにもトルコという感じがします。けれども、少し中心街を離れると未だに修復されていないままの古い家があったり、昔の石畳の坂道が続いていたりしてのどかな風景を見ることができます。エフェソス観光のあとを静かな村で過ごしたい人はこの村にあるブティックホテルに宿泊するのもいいかもしれません。日中は観光客が多くても朝晩は静かだろうから。
私たちは午前中エフェソスの遺跡を見てこの村のレストランでおいしいランチを食べ、村を少し散策したあとにエフェソスの博物館に行きました。テーブルの下にペットのヤギがのんびり寝そべるのどかなレストランのランチはとてもおいしく値段も良心的でした。
まとめ
トルコは世界遺産をはじめ、国中に観光スポットが盛りだくさんの国ですが、その中でもエフェソスは必見の場所です。遺跡の素晴らしさもさることながら、周辺の落ち着いた自然風景やギリシャ文化の残る村落、典型的なトルコの田舎町をながめつつ美しいエーゲ海岸からアクセスできるロケーションと魅力がいっぱいの地域でもあります。
私たちはクシャダスに滞在してタクシーで訪問しましたが、クシャダスからはエフェソス遺跡、また近隣の観光スポットを組み合わせた様々なツアーが用意されています。トルコを駆け足で観光したい人には遠くイスタンブールからのツアーを利用することもできます。時間のある人はゆゆっくり、ない人も半日だけでもぜひ訪れてほしいところです。