イギリス映画労働者の闘争「パレードへようこそ」「リトルダンサー」「ブラス」「フル・モンティ」

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映画 ‘Pride’ 「パレードへようこそ」 を観て、 ‘Billy Elliot’ 「リトルダンサー」や ‘Brassed Off’  「ブラス」 を思い出しました。どれも1980年代のイギリスのマイナーズ(炭坑夫)ストライキが背景です。そして、マイナーズストライキのお話ではないのですが、 ‘The Full Monty’  「フルモンティ」 も共通のテーマがあったなーと思い出します。

イギリス労働者階級の映画

イギリスの伝統的な製造業で働く労働者階級の人たちが変わりゆく産業構造のはざまで失業したり、追いやられたりして仕事だけでなく、家庭やコミュニティまで破壊されそうになる、そんな中でもがき苦しむ労働者/失業者のお話。

どの映画も大げさに悲劇をよそおいメランコリックに走る事なく、適当にユーモアを取り入れ軽いタッチで描いてあるのですが、にやっと笑わせた後で考えさせられるストーリー展開となっています。

‘Pride’ 「パレードへようこそ」


「プライド」というのは毎年6月にロンドンで行われるゲイとレズビアンのパレードのことです。1984年にサッチャー首相が閉鎖しようとした炭坑労働者のストライキをゲイ・レズビアングループが支援するために募金活動を行ったお話です。

今ではイギリスでも結婚できるほど認められるようになりましたが、その頃のゲイ・レズビアンというのはかなり偏見の目でみられていました。だから彼らが応援しようとした炭坑労働組合や炭坑夫にさえ「ヘンタイ」と見られ、支援を断れる始末。

それでもウエールズのど田舎の小さな炭坑の町に受け入れられ(そこでも反対する人は多かったのだけど)一見相容れないような友情が芽生えていったということです。この映画はサッチャーが首相だった時代のマイナーズ(炭坑夫)ストライキという背景とその当時のイギリス国民の世論への理解がないとよくわからないかもしれません。

サッチャーは日本では偉大な女性首相として語られる事もありますが、この頃のイギリス国民の多くの人、とりわけ労働者階級の人にとっては「にっくき敵」でした。子供に無償で与えていた学校給食のミルクを廃止したことから 「ミルクスナッチャ-」(牛乳泥棒)と呼ばれたりしていました。

サッチャーはイギリスの経済を立て直し産業構造を新しくするために国営事業の民営化、緊縮財政、金融規制緩和などの政策を行い、採算が取れなくなった炭鉱を閉鎖し合理化を図りました。炭坑組合のストライキの扱いも厳しさを極め、家族手当を停止させたりして炭坑夫とその家族は苦しい生活を余儀なくされました。

炭鉱が閉鎖になるということは、街そのものがなくなりコミュニティがばらばらになるということです。職を失った人々は街を離れざるを得なくなり、長く住んだ家を離れ、かつての仲間や友人をなくして故郷をあとにせざるを得なかったのです。ストライキをすることは仕事のためだけでなく、コミュニティ存続のためでもあったのです。

そんな炭鉱夫のストライキには同情する人が多く、イギリスでは炭坑には関係のない人々までストライキを支援する人がいました。

 ‘Billy Elliot’ 「リトル・ダンサー」


「リトル・ダンサー」という映画も炭坑夫のストライキが背景でした。こちらはイギリス北部のダーラムのお話でしたが、サッチャー首相の政策に対抗して全国20カ所の炭坑地で同じような事がおこっていたのです。

この映画でもビリー・エリオットのお父さんやお兄さんがマイナーズストライキに参加することで貧しい生活を余儀なくされ、寒い冬にお母さんの形見のピアノを暖炉の薪にして暖をとる様子が描かれていました。

そんな生活の中、オーディションを受けに行ったロンドンのバレエ学校はダーラムの炭鉱町から来た親子には馴染みのない世界でした。それでも、バレエ学校の先生が炭坑夫であるビリーのお父さんに同情的だったのが印象に残っています。

この映画では炭鉱ストライキやイギリス北部の工業都市衰退の問題だけでなく、マッチョな社会で「男の子は男らしく」とボクシングを習わせたい父親のもとでバレエに目覚めた男の子の間の葛藤など、ジェンダーや親子の問題も取り扱っていました。イギリス現代社会の様々な問題の縮図を描いた深みのある作品です。

 ‘Brassed Off’  「ブラス」


「ブラス」 もイギリス北部のヨークシャーの炭鉱町の実話に基づいたお話。こちらは炭鉱町でブラスバンドをしていたグループが炭鉱閉鎖の間際にブラスバンドコンクールに出場するというストーリーで、やはり暗く厳しい背景の中で明るく響き渡るブラスの音が胸を打つ映画でした。

ブラスバンドコンクールの優勝を勝ち取ったスピーチでバンドリーダーが政府の批判をしてトロフィーを拒否したのが印象的でした。「サッチャリズムによって、炭鉱が破壊されただけではなく、働くものの意欲やプライド、家庭やコミュニティーまで破壊された」と言って。

 ‘The Full Monty’ 「フルモンティ」 


「フル・モンティ」は1997年鉄鋼業で栄えたシェフィールドの労働者が鉄工所を解雇されたことで失業してしまった様子を描いた映画です。失業保険で食いつないでいた男性6人がストリップショーに出てお金をもうけようとする話でした。

そろって失業保険をもらうための行列に並びながらストリップショーのダンスステップの練習に余念がない6人をユーモアたっぷりに描くなど、笑いの後に泣けてくる作品に仕上がっています。

一人一人のダンサーの人生を描くことで失業だけでなく、夫婦関係、親子、ジェンダー、LGBT、メンタルヘルス、人種問題などさまざまな側面を取り上げた、深みのあるストーリーが印象的です。

まとめ

大きく強く勝ち目がないもの(この場合はサッチャーが象徴するイギリス政府)に立ち向かうマイノリティーである炭坑夫。そしてやはり、同じように弱者である少数派としてのゲイコミュニティが一見相容れないようでありながら団結して勝ち目のない戦いに向かう姿に心うたれるのはなぜでしょうか。

弱いものに味方したくなる日本人的な判官贔屓の発想でしょうか。それとも一致団結して大きな強いものに立ち向かう仲間愛、同士愛に惹かれるのでしょうか。うーん、それとも違うなと思います。たぶん、私もイギリスという国に住むマイノリティーであるからかなのかもしれません。

    

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