福島原発汚染処理水を海外放出?放射性物質問題と対策【海外の反応】

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Fukushima Tank

福島原発にたまり続けている放射性物質を含む水について原田前環境相が「海洋放出しかない」とコメントし、国内外から注目を集めています。処理済みの汚染水であり問題はないという意見もあり、大阪市長は大阪湾での放出に協力する姿勢を発表しました。しかし、海洋放出には根強い反対意見が多く、原田前環境相のコメントは海外でも大きく報道されています。この「汚染水」は海洋放出しても本当に問題がないものなのなのでしょうか。


福島原発汚染水処理問題

2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故からの汚染水は放射能除去処理の後、発電所内の約977基のタンクに保管されています。

これまで100万トンを超える水が保管されており、その量は過去8年間増え続けています。

現在も毎日約200トンの水が原子炉の建屋からポンプでくみ出されているのです。

処理水の海洋放出の可能性については現在、経済産業省の検討が続いていて、いまだに結論は出ていません。

原田環境相の「汚染水海洋放出コメント」

2019年9月の内閣改造でポストを退く直前の9月10日に原田義昭は環境相兼原子力防災担当相として「爆弾」発言をしました。

「タンクにたまり続けている放射性物質を含む水は太平洋に放出して希釈するしかない」と語ったのです。

その理由として2022年夏には量が135万トンとなり、貯蔵スペースが満杯となることをあげました。

タンクにたまり続けている汚染水をどうするかという問題はかねてから議論が続いています。安全性にも賛否両論があり、福島の漁業関係者を中心に風評被害を理由に根強い反対意見がある中、この問題は先送りされ、その議論はあまり公にはなってきませんでした。とはいえ、問題はなくならないわけではなく、いつかは決断を迫られる時が来ます。

原田前環境相はのちに「誰かが言わなければならない、自分はその捨て石になってもいい」と思ったという心境を語っています。

小泉新環境相の謝罪

内閣改造で新しく環境相となった小泉進次郎は就任早々、前任者の発言を覆す言動をしました。

9月12日に福島県の漁業関係者を訪問し、原発処理水海洋放出に関する前任者の発言は国の方針ではないと謝罪したのです。

小泉大臣は「原田前大臣の発言によって傷ついた方、県民の皆さんに対して申し訳なく思う」と語りました。

国際原子力機関(IAEA)で韓国からの批判

9月16日にウィーンで行われた国際原子力機関(IAEA)総会で韓国は日本の原発汚染水海洋放出問題を提起し、日本政府を厳しく批判。

「今も解決されていない問題であり、世界中に恐怖や不安を増大させている」と語りました。

これに対し竹本科学技術担当相は韓国の意見は科学的根拠に基づかず、復興に水を差すと主張しました。

大阪が海洋放出協力

大阪市の松井市長は9月17日に福島原発処理水について「環境への影響がないことが科学的に確認できれば、大阪湾への放出に協力する」という考えを示しました。

松井市長は「持ってきてもらって流すのであれば協力する余地はある。環境被害のないものは国全体で処理すべき問題」と述べました。これには、吉村洋文大阪府知事も同様の見解を示しています。

けれども、大阪府漁業協同組合連合会はこの発言撤回を求める緊急抗議文を提出しています。

「大阪のみならず兵庫も含めた大阪湾、瀬戸内海での漁業の将来に与える影響は計り知れない。仮定の上での見解だとしても決して許されるものではない」というものです。

海洋放出しても安全なのか

様々な意見が飛び交う中、そもそも海外放出が検討されている「水」とはどういうものなのかを考えてみましょう。

汚染水か処理水か

まず言葉からですが、福島原発で処理された排水をメディアなどが「汚染水」と呼んでいるため、一般国民や海外から危険なものであるという印象を与え風評被害を受けてしまうという意見があります。この水は「処理水」と呼ぶべきであるという考えです。

福島原発のタンクに貯蔵されている水は貯蔵用に処理された水ですが、環境へ放出する目的で処理されたものではありません。環境放出の場合は、現在貯蔵されている処理水の8割程度はさらに厳しい基準を満たさなければならなのです。東電は、海洋放出となると貯蔵水にさらに浄化処理を行うことにより放射性物質の量を可能な限り除去してから行う方針であるとしています。

汚染水の成分は:トリチウムなど

現在貯蔵されている処理水は、トリチウムを除く大部分の放射性核種を取り除いた状態でタンクに貯蔵してるとされています。

自然界にも存在するトリチウムが放つエネルギーは非常に低く、放射線セシウムの1/1000くらいです。トリチウムの半減期は12.3年で、50年間保管すれば放射能は6%にまで減衰し、希釈することなく放出ができる濃度になる計算です。ただ、長期間保管するのには莫大な費用がかかります。

トリチウムによる体内被曝のリスクは皆無ではないにせよ、人体に与える影響は小さいと言われています。

さらに問題になっているのは、トリチウム以外の放射性物質です。

これまで貯蔵タンクにある処理水はトリチウム以外は除去してあるとされていたのですが、2018年9月に他の放射性物質も残っていることが明らかになりました。トリチウム以外は除去できるはずだったALPS施設で処理した放射能汚染水の80%にストロンチウム90やヨウ素129などが残っていて、それが基準値を超える量だったのです。

ヨウ素129の半減期は1,570万年です。ストロンチウムは歯や骨に蓄積され、すい臓がんや白血病の原因になると言われています。

2018年12月に開かれた公聴会では処理水が基準値以上の放射性物質を含んでいること、それを東電がオープンにしてこなかったことが問題視されました。

海外の反応

9月10日の原田環境相の「福島汚染水海洋放出」コメントは海外メディアでも広く取り上げられました。

BBCは事実関係を説明した後、この問題について福島の漁業関係者や韓国からの反対は根強いが、多くの科学者は汚染水が人間や海洋生物に及ぼす危険性は小さいと判断していると報道しています。

ガーディアンは去年、Tepco (東電)がタンクに貯蔵されている水にトリチウム以外の放射性物質が含まれてる事を認めたことについて報道しています。さらに、福島第1原子力発電所廃炉検討委員会の宮野廣委員長の「処理水が海洋放出されてから放射性物質が安全な基準に希釈されるまでに17年はかかるだろう」という見解を紹介しています。同記事は最後に、東京五輪招致の際、安倍首相が「福島の状況はアンダーコントロールされている」と言った言葉で結んでいます。

テレグラフは日本のメディアや関係者からの情報に海外の専門家の分析を交えた詳細な記事を掲載。

日本政府がトリチウム以外の放射性物質を微量まで除去したと約束したにも関わらず、日立が開発したALPS除去設備はヨウ素、ルテニウム、ロジウム、アンチモン、テルル、コバルト、ストロンチウムなどの放射性物質の除去に失敗してきたことを報じています。

同紙は’Kahoko Shinpo’(多分『河北新報』のこと)の記事を紹介し、2017年に行われた調査で84サンプルのうち45サンプルで、甲状腺がんの原因にもなるヨウ素129や有毒なルテニウム106が基準値を超えていたことが判明したことを伝えています。

2018年の9月には東電が80%の汚染水が基準値を超える放射性物質を含んでいることを認めたと言及。さらに、ALPSで処理されたはずの水には基準値の100倍を超えるストロンチウム90があったこと、それは政府が定めた貯蔵基準値の2万倍であったことを東電が認めたことも伝えています。

同紙は日立や日本政府に何度もコメントを求めたにも関わらず、返答がないと語っています。

この記事では米国などの専門家の意見を紹介し、汚染水の海洋放出によるリスク判断には貯蔵水に存在するトリチウム以外の放射性物質の内訳についての詳細な情報が必要だと語ります。

たとえば、小魚の骨に付着したストロンチウムを人を食べることによってストロンチウム90が歯や骨に蓄積され、それががんや白血病の原因になり得るという専門家の見解を紹介しています。

ほかにもこの件についてはロイターCNNFuturismなど、各国メディアが報道しており関心の高さをうかがわせますが、日本政府がこの件についてどうすべきかというようなオピニオン性の強い記事はないようです。

環境保護団体グリーンピースは汚染水海洋放出について厳しく批判するコメントを出しており、日本は汚染水を適切に処理するコストを節約するために短絡的な海洋放出と言う手段を使おうとしているとしています。

汚染処理水をどうするのか

原田前環境相の発言についてはいささか唐突だった感がありますが、これまで取り組んできた重要課題の一つを内閣改造によって後任に任せざるを得ないタイミングで言っておきたいという気持ちがあったのでしょう。ただ、その背景など詳しい情報が説明しきれなかったこともあり、国内外で否定的な意見を呼んだといえます。

さらに韓国や環境保護団体が厳しい批判を寄せたこともあわせて、この件が急に問題視されることになったと言えます。新しく就任した小泉環境相が前任者の「個人的見解」を否定する発言をしたことで、政府内にも意見の一致がないことを伺わせました。

処理水についての情報を調べてみれば、海洋放出の前に二次的な処理をほどこしストロンチウムやヨウ素などトリチウム以外の放射性物質を取り除くことで、科学的には大きな問題がないという見解があります。この意見に基づけば、海洋放出の前にトリチウム以外の放射性物質を除去するなどの条件を付け、透明性のある情報公開のもとで海洋放出をとり行う選択もあり得ます。

けれども、いくら科学的に問題がないと言われても、海洋放出によって起こる風評被害を懸念するのは地元民としては自然のことでしょう。さらに、万が一のリスクまで考えるのなら、汚染水を陸上に保管し続けて、適切な処理技術の開発を待つという方法もないわけではありません。

さらに、これまでの一連の政府や東電をはじめとする関係者の情報公開の経歴を考えると、公に報道される情報、データがどれだけ信頼できるのかと言う懸念が消し去れないという意見があるのも否定できません。

汚染処理水をどうするかについては引き続き国内外の意見を尊重しつつ、時間をかけて検討、議論すべきでしょう。そのためには、東電や政府が国内外に透明性のある、事実に基づいた情報を公開し、説明を続けることが必要になります。

まとめ

福島原発の貯蔵水海洋放棄についてのニュースには賛否両論さまざまな意見があり、それも極端なものが多いため、正直言って私は何を信じていいのかわからなくなってしまいました。専門家でもないし、科学的な知識も人並みしかないし、福島原発事故についてもこれまであまり深くを追ってきたわけでもないのです。

けれども、さまざまな意見が出る中、なるべく広く情報を集め、自分なりに理解しようとしたのがこの記事です。というのも、日本では両極に分かれた極端な意見が目立ち、異なる意見を持つ人を頭から批判したり揶揄するようなものが目に付くからです。

さらにこの問題が外国でどのように報道されているのかも紹介して、日本語の情報しか読まない人にも第三者からの視点がどういうものかを知ってもらいたいと思いました。

ということなので、この記事は素人が聞きかじった情報のまとめであるとして、この問題に関心を持つ人は自分で情報を調べてみることをおすすめします。

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