マンUマーカス・ラッシュフォードMBE「子供を空腹にさせないため」給食を無料に

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Marcus Rashford

イギリスでは貧困家庭の子供は学校給食が無料となりますが、学校が長期休暇になると昼食を満足に食べられない子供が出てきます。そんな子供をなくすために立ち上がったのがマンUの若手選手マーカス・ラッシュフォード。政府を相手に始めた運動が実を結び、MBE勲章を授与されることになりました。けれども彼の闘いは続きます。


イギリスの無償給食制度

イギリスでは貧困家庭の子供は「Free School Meal」の対象となり、学校給食が無料になります。けれども今年は新型コロナウィルスによるロックダウンで3月下旬から学校が休校となりました。

このロックダウン期間、通常なら無償で提供される昼食がなくなるため、満足に食事を得ることができない子供が出ることを考慮し、政府は無償給食の対象となる子供にランチバウチャーを配給する制度を導入しました。本来は学校給食がある期間を対象として始まったバウチャー制度なので学期末になり夏休み開始と共に終了する予定でした。

とはいえ、コロナによるロックダウンや経済破綻で職を失ったり家庭収入が激減した家庭もあります。もともと無償給食の対象となるような家庭では、育ち盛りの子供が満足に食事をとれないような場合もあり、フードバンクなどのチャリティに頼らざるを得ない家庭もあるのです。

マーカス・ラッシュフォードが立ち上がる

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「空腹を抱えたまま眠りにつく子供をなくしたい」と立ち上がったのはマンチェスター・ユナイテッドのFW、22歳のマーカス・ラッシュフォード選手です。

彼は子供の貧困問題解決のために自ら2000万ポンド(約27億円)もの寄付を集め、チャリティ団体FareShare と協力して貧困家庭へ300万食分の食事を提供しました。

さらに、政府のランチバウチャー制度を夏休み中も継続するように運動を始めたのです。

マーカス・ラッシュフォードはマンチェスター近郊のWythenshawe(ウィゼンショウ)という街で育ちました。ここは公営住宅に住む低所得者層が多く住む地域です。

彼の母はシングルマザーで、日に14時間働いてやっと3人の子供を育てていました。

パウンドショップ(イギリス版100円ショップ)で買った7個入りヨーグルトを家族で分けて、一日一個ずつしか食べられなかったと思い出を語るマーカスもやはり無料給食の恩恵にあずかっていました。

この写真はマーカス・ラッシュフォードとお母さんのメラニーが貧困家庭の子供たちに食事を提供する団体、FareShare のチャリティー活動を手伝っている様子です。

華やかなプレミアリーグ・フットボール選手の印象とは異なり、成功した今も自分たちが通ってきた道を忘れず、同じような境遇にある子供たちを救うために取り組んでいる様子にはイギリス中から称賛の声が上がっています。

ジョンソン首相を説得して政策返還

マーカスはロックダウンの休校で学期中だけとして導入された無償ランチ制度を夏休み中も続けるように政府に要望しました。彼はジョンソン首相に直接電話会談をして、説得するのに成功したのです。

政府は通常無償給食の対象となる約130万人の子供に夏休み中も1週間に15ポンド(約2,000円)分のランチバウチャーを配布すると約束しました。このコストは1億2000万ポンドになるということです。

この決断は低所得家庭に歓迎と安堵をもたらし、マーカスの行動はイギリス中で称賛されました。ジョンソン首相もマーカスとの電話会談についてコメントし「ラッシュフォード選手の子供の貧困問題に対する貢献に感謝する」と述べました。

ラッシュフォードの業績が称賛の的に

このような社会活動をするのは中年以上の中・上流層が多いものですが、若者に圧倒的に知名度があるプレミアリーグの若いフットボール選手が取り組んでいるということは画期的です。彼のような立場にいる人が声をあげることで、日頃社会問題に関心がないような人にまで運動の輪が広がったのにちがいありません。

マーカス・ラッシュフォードはこの業績により、マンチェスター大学から名誉博士号を授与されました。同大学がこれまで名誉博士号を与えた中で22歳という若さは歴代最年少です。

そして、さらに彼は10月に大英帝国勲章も授与され、MBEという称号までつくことになりました。食べ物に困っている子供たちを助けた業績を認められたのです。

彼は「ウィゼンショウ出身の黒人男性として、しかも22歳でMBEを受賞できるなんて考えてもみなかった。」と感動していました。

同時に「助けが必要な子供たちのために活動を続ける。空腹で眠りにつくような子供がいるのは終わりにしたい。今起こっていることはこれからも続く活動のためのスタートに過ぎない。」とコメント。

さらなる目標

マーカスはさらに目標を掲げて、政府への署名運動も始めました。

その要求は下記の通り

・無料給食の対象を広げ、生活支援金対象家庭の16歳以下の子供全員とする

・無料給食や活動を学校休暇中も提供する

・食事バウチャーの額を週£4.25(約580円)に増額する

英政府の否決

けれどもこの要求に対し、ジョンソン政権はこれ以上は支援を続けることはできないと決めました。学校給食による支援は学期中にだけ適用されるべきで、今年の夏休みにそれを延長したのはコロナによる緊急の例外措置だったとしたのです。

無料給食を休暇中も提供する案について10月21日に国会で行われた採決で、野党議員は賛成しましたが、与党保守党議員の大部分が反対。与党議員の5人は政権に造反して賛成したほか棄権する議員もいましたが、多数決により否決となりました。

政府には拒否されたが

政府が休暇中の無料給食案を否決したというニュースが流れるや否や、イギリス中で猛批判の声がわき上がりました。そして、その後1,2日のうちに「政府がやらないのなら私たちが」と子供に昼食を提供する申し出が始まりました。

まず、地方自治体で給食無料対象の子供に学校休暇中もランチ・ヴァウチャーを配布すると発表するところが続々と出てきました。保守党政権下、地方自治体への財政が削られ続け自治体の財政は厳しいのにもかかわらず、です。

さらに、イギリス中のスーパーや食料品店、テイクアウトや飲食店など民間企業やボランティア団体などが、学校休暇中に空腹の子供に食料や食事を提供すると申し出ています。

例えば全英フィッシュアンドチップス協会はフィッシュアンドチップスなどの昼食を子供に無料提供する店舗を募り、全国の参加店を紹介し始めました。

このようにイギリス中で自治体、ボランティア団体、飲食店などが次々と #EndChildFoodPoverty のハッシュタグをつけて無料ランチの申し出を発表しています。その多くが小さなカフェやテイクアウト店だったりして、コロナ禍で経営が厳しくなっているだろうにもかかわらず。そういうビジネスの経営者だからこそ困っている子供の気持ちがわかるのかもしれません。

マーカス・ラッシュフォードはこのような自治体や無料ランチ提供の申し出をする飲食店などのツイートをリツイートしていますが、その数があまりに多くて到底追いつかないほどになっています。

そして、数日後の10月23日にはこのような無料ランチ情報をまとめて地図から検索できるウエブサイトを誰かが立ち上げていました。すごいスピード感。

子供を食べさせるのは親の責任

かつてマーガレット・サッチャーはそれまで学校で無料提供されていた牛乳の配給を廃止して「Thatcher Milk Snatcher(牛乳泥棒)」と呼ばれました。当時、彼女は「学校は教育を提供するところだ。牛乳は家庭で親が子供に与えるべきものだ。」と言ったのです。

今回、マーカス・ラッシュフォードがシングルマザーのもとで育った子供時代の経験について語った時も「食べさせられないのに3人も子供を産むなんて無責任」と彼の母親を批判する人もいました。

格差の大きいイギリスで、中流以上の人にとって、食べるに困るような人がいるということは想像できないのかもしれません。チェシャーの邸宅に住むミドルクラスは近くのウィゼンショウには足を踏み入れたこともないでしょうから。

裕福な家庭に生まれ私立名門イートンを出たジョンソン首相などの政治家にとっても、たかだか数百円の昼食代を払えないような家庭の状況を想像することは難しいだろうし、お腹を空かせる子供がいるとしたら、それは親のお金の使い方が悪いのだという考えも浮かぶでしょう。

けれども、それぞれの家庭がどんな境遇だったとしても、子供には罪はありません。子供は親も境遇も選んで生まれるわけではないのです。

だから、今回の政府の決定に憤慨してイギリス中で「空腹の子供たちに昼食を」と申し出る声が後を絶たないのでしょう。その申し出はまだまだ続きそう。

こういうところがイギリス人のいいところだとつくづく思います。

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