イギリスでロシアの元スパイと娘、神経剤で殺人未遂事件:ほかの家族や関係者も暗殺被害者か

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Skripal

Last Updated on 2018-07-05 by ラヴリー

2018年3月4日イングランド南部のソールズベリー Salisbury のショッピングセンターでロシアの元スパイであるセルゲイ・スクリパリ(66)とその娘(33)が意識不明で発見されました。ロンドン警視庁は猛毒の神経剤が使用されたとし、殺人未遂事件として捜査。この元スパイの身辺には過去にも不審死が疑われる事件がとりまいています。どんな人物で、どうして狙われたのでしょうか。


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事件の発覚前後

セルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)は元大佐。娘はユリア(Yulia)33歳と2人がソールズベリーのショッピングセンターにあるベンチで倒れていたのを発見されました。

2人はその前にショッピングセンターの近くにあるパブ(Bishops’s Mill pub)とレストラン(Zizzi Restaurant)を訪れています。

2人が倒れる前にレストランで2人を見た人によると、スクリパリ氏は奇妙な言動をしており、娘は興奮していたように見えたそうです。

「男性のほうは正気を失っているようでした。

高い声を上げて叫んだあと、すぐに勘定をして早く立ち去ろうとしていたのです。」

2人が倒れている現場に最初に駆け付けた警官も、重体で病院にいます。

他にも現場にいた2人の警察官が目が痛くなったり息が苦しくなる症状を訴えていますが、重症ではないようです。

今現在、現場であるパブ、レストラン、ショッピングセンターをはじめ、スクリパリ氏が住んでいたソールズベリーの家などが立ち入り禁止になっていて捜査が行われています。

神経剤

2人に盛られた毒はロンドン警視庁の発表では神経剤(nerve agent)ということですが、その種類までは明らかにされていません。警視庁はその物質がどこで入手されたのかを調査しています。

神経剤は化学剤の中でも最も毒性が強く致死的なものです。そのうえ、製造が比較的簡単なことからテロリストにも使われる可能性があるのです。

最近では北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)が殺害された事件を思い出しますね。この場合はVXという猛毒性の神経剤が使われたということです。

日本でも1990年代にオウム真理教がサリンやVXなどの神経剤などを使用して事件になったことを思い出す人もいるでしょう。

神経剤にはいろいろ種類がありますが、一般的な特徴として普通は口や鼻から投入されますが、皮膚や目からも吸収されて毒性を発揮します。

現場にかけつけた警官まで重症だということなので、かなり強い毒性のある物質が使われたことが推察されます。

セルゲイ・スクリパリは2重スパイ

スクリパリ氏はロシア軍の情報機関に所属していた元大佐ですが、英対外情報機関(MI6)のスパイとして活動していました。

これがロシア側に発覚し、ヨーロッパで活動するロシア側スパイの情報をMI6に譲渡したとして2004年に国家反逆罪容疑でロシア当局に逮捕されました。2006年に懲役13年の判決。

その後2010年、ロシアとアメリカとの拘束スパイの交換で解放され、ウィーンの空港で身柄交換後はイギリスに移住していました。

その後は2011年にソールズベリーの家を購入し、妻、娘、息子の家族4人でひっそりと暮らしていたということ。ソールズベリーは犯罪率が低く安全な街だから住むのに選んだと言っていたと家族の友人は言っています。

スクリパリ氏の家族の謎の死

スクリパリ氏の妻、兄、息子は過去数年間のうちに亡くなっているのですが、関係者によるとその状況が疑わしいと言われています。

スクリパリ氏の兄は引退後、2年前に68歳のときロシアで亡くなっています。亡くなる前には体重が異様に減っていたという報告があり、死因が何であったのか疑わしいとされています。

スクリパリ氏の息子は昨年の7月43歳で亡くなりました。彼は家族と共にソールズベリーに住んでいましたが、ガールフレンドとサンクトペテルブルクに旅行中に亡死亡。病院に連れ込まれ、死因は肝機能の不全だと報告されていますが、関係者は発表された死因は疑わしいとしています。

スクリパリ氏の妻はソールズベリーで2012年にがんで亡くなったと報告されています。

スクリパリ氏の娘ユリアはモスクワから父親のスクリパリ氏を訪問中だったそうです。彼女は2010年から両親と兄と共にソールズベリーで暮らしていましたが数年後にモスクワに戻っていました。

彼女と兄はイギリスとロシア間を自由に行き来できたということ。兄の死後は1人になった父親をよく訪問していたということです。

2週間前スクリパリ氏は母親に電話して元気であることを告げました。けれどもロシア当局から目をつけられているため、いつも注意をしていると話していたそうです。

過去の類似事件

イギリスでは2006年にも元ロシア連邦保安庁(FSB)中佐のアレクサンドル・リトビネンコ氏(当時43歳)が猛毒の放射性物質ポロニウムを投与されて死亡した事件があります。

この事件についてイギリス側はロシアのプーチン大統領が承認した可能性が高いとしており、ロシア側の実行犯であることを特定していますが、ロシア政府は否定。この事件によって2007年以降、イギリスはロシア外交官追放などの制裁をしています。

ほかにも、イギリス在住の亡命ロシア人が何人も不審な死を遂げています。

2013年にはリトビネンコ氏とも交友関係にあったロシア富豪ベレゾフスキー氏が自宅で不審死。死因は不明となっています。

2008年にはベレゾフスキー氏のビジネスパートナーがロンドン南部で不審死。死因は心臓発作とされていますが、プーチン氏からにらまれていたことから殺害されたのではないかと疑われているのです。

2012年にはロシア人実業家のペレピリチニー氏がロンドンで死亡。検査で胃から毒素が検出されましたが、死因は確定されていません。

米情報当局によると「プーチン氏、またはその側近からの命令によって暗殺された」としています。

イギリス側の対応

今回の事件についてロイター通信が米情報関係者の話として「ロシアが裏切り者に対する報復として実行した」と報じていますが、ロシア側は関与を否定しています。

イギリスのボリス・ジョンソン外相は「我が国の領域内で罪のない人への犯罪を行うものには制裁や刑罰を科す。」と警告。

ロシアがこの事件に関わったのなら制裁を検討しなければならないと述べています。ロシアで今年開催される予定サッカーW杯への出場を見直すとの警告も。

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