ジェイミー・オリヴァーの取り組み その3:学校で料理を必修科目に

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Jamie Olive school cooking

イギリスの人気シェフ、ジェイミー・オリバーの食に関するキャンペーン2つ(学校給食改善砂糖税)について書いてきましたが、その3つ目は学校で子供に料理を教えようというものです。

学校給食改善のため、いろいろ努力してきたジェイミーですが、まともな食生活をしていない家庭で育った子供にヘルシーな食べ物を与えても受け付けないということがわかってきました。そういう子どもたちの親も、できあいのファストフードを温めるだけという食生活をしているのです。新鮮な食材を使って一から料理するということをしないだけでなく、そのやり方もわからないという親も少なくありません。そういう家庭で育つ子供に食べるものに関しての知識がないのも当然といえば当然です。

子供の食事に関する調査

2016年にイギリスで子供を持つ親を対象に行われた調査によると、新鮮な素材を使って料理している親は21%しかいなかったそうです。75%の親ができあいのレディーミールに(少なくとも時々は)頼っているということです。テイクアウトも1990年から2008年の間に45%増加したという別の調査があります。

43%の親が子供にヘルシーな食べ物を与えることに頭を悩ませているということなので、多くの人はその必要性は理解していても実行に移せずにいるというわけなのでしょう。その結果、子供に実際に何を食べさせているか、本音を話せないという親も18%いるそうです。

こういう実態を見てジェイミーは学校で子供に食事についての正しい知識とヘルシーな食べ物を料理することを教えることが大事だと考えるようになりました。ジェイミーだけでなく、ほかにもシェフ、料理研究家、スポーツ選手、医療や教育の専門家と言った人たちが同じような考えをいだき、当時のキャメロン首相に訴えたのです。

学校での料理の授業

イギリスではその頃日本の家庭科に当たる科目はありませんでした。Design and Technology (デザインと技術)という科目に食べ物についての学習や料理も含まれていましたが、必修ではなかったため、料理を学校で習うことはあまりなかったようです。

たとえばうちの息子が行った小学校でも授業で料理を習うことはありませんでした。一度放課後の課外クラブで「親と一緒にクッキングを楽しみましょう」というのがあって希望者が参加したことがあるだけです。

ジェイミー・オリバーらはイギリスの9歳以下の子供のうち1/3が太り過ぎであること、特に貧困家庭の子供にその傾向が多く、肥満児になる確率が4倍にもなることを指摘しています。そういう家庭では親も健康的な食事に対しての知識が乏しく、料理もできあいのものを温めるだけという食生活になりがちなため、ジャンクフードをたくさん食べて肥満に関連する様々な病気になる可能性が高いといえます。

だから、小学校で子供に正しい食育を与え、自分でヘルシーな食べ物を料理できるように教えることが大切になるというわけです。

この運動に参加した人たちは14歳以下のすべての子供に基礎的な調理実習と食育をナショナルカリキュラム(イギリス全国共通の学習基準)として教えるべきだと推奨。そうすることで子供が正しい食生活を送る必要性やその方法を学び、劣悪な食生活からおこる肥満などの健康上の問題を解決することができると主張しました。

料理が必修科目に

このような声を受けて、政府は2014年9月から料理と栄養学をナショナルカリキュラムに加え、小中学校の必修科目とすることにしました。

小1と2年生では健康的な献立について、また食品がどこから来るのかなどを学びます。

小3〜6年では健康的な献立の理解と応用、料理実習、食材がどこでどのようにいつ採れるか、栽培されるか、加工されるを学習します。

中学1〜3年では栄養と健康について理解、健康的で幅広い献立の料理のレパートリーを広げる、料理の技術(材料の選び方、料理器具の使い方、異なる料理法、調味料の使い方など)を学ぶ、幅広い食材についての理解を深めるということになっています。

さらなる課題

しかし、まだまだ問題は残ります。

たとえば現在イギリスの小学校でキッチンがあるのは25%しかないため、実際に調理実習を行うことが難しいのです。それで、包丁を使う練習だけさせたり、卓上電気コンロやホットプレートを使って料理を教えるしかありません。

また、はじめて料理を教えることになった教師に正しい指導やガイダンスを与えることも必要になってきます。

「うちの学校では料理を教えている」というところでも、まともな料理ではなくカップケーキのような簡単なお菓子を作っただけだったりするとジェイミーは憤慨しています。

せっかく必修科目となった料理をすべての学校で満足のいくレベルで教えるためには、もっと予算をつけ設備を充実させるとともに教師へ具体的な情報、アドバイスを与える必要がある、また実際に学校でどのように教えられているのか実態を調べて審査することが大切だとジェイミーは主張しています。

子供が学校を卒業するまでには、栄養のバランスの取れた料理を最低10種類作れるようにすることが理想だとしています。

日本では?

思えば、日本には給食があってみんな同じものを食べなければいけないですよね。私が子供の頃は給食はまずくて嫌いでしたが、その頃に比べると今の学校給食は献立を読んでも美味しそうで私も食べたくなるくらいです。栄養のバランスもばっちり取れているのは言うに及びません。

イギリスは普通給食のメニューが3、4種類から選べる(ヴェジタリアン家庭も少なくないので仕方ないところもありますが)ので好きものばかり食べるようになるし、メニューもワンパターンになりがちです。

また、日本は子供の時から大人と同じものを食べますが、イギリスでは子供にだけ「子供用の」食事を与える家庭も多いようです。「じゃないと食べないから」というのが理由だったりしますが、これではいつまでたってもワンパターンの食べ物から卒業できませんよね。

そして、日本では家庭科できちんと調理実習をするし、そのための家庭科室などの設備も整っています。料理とは関係ないですが、家庭科で基礎的な裁縫も学習するし、掃除の時間があって生徒全員で掃除もしますよね、こういうとこ日本の教育のいいところだと思います。男女全員が同じことを習うのに、大人になると何故か未だに家事は女性がすることが多いのがふしぎですが、これは余談でした。

日本人の食生活が豊かで、肥満や食生活の乱れから起こる健康上の問題が少ないのも、子供の時からバランスの取れた食事が習慣になっていて、頭からだけでなく体でヘルシーな食事を知らず知らずのうちに学んでいっているからでしょう。これからもハンバーガーやフレンチフライといった欧米風の食生活に流れることがありませんように。

そして、イギリスでもジェイミー・オリヴァーほかの試みが少しずつ実を結んでいくのを願います。

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