イギリス人の性格の変化:Stiff upper lip (スティフ・アッパー・リップ) と Dianafication (ダイアナフィケーション)

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Last Updated on 2019-03-30 by ラヴリー

イギリス人は欧米の中でも感情を表に出さない国民として知られています。もちろん個人差はありますが、ラテン系のイタリア人、スペイン人などに比べると、嬉しかったり、悲しかったり、腹が立ったりしていても、それをそのまま表現するということは少ないようです。こういうイギリス人の気質を表すのに ‘stiff upper lip’ (スティフ アッパー リップ) という言い方をすることがありますが、どういう意味なのでしょうか。

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Stiff Upper Lipとは

イギリス人の気質を表すのに使われる ‘stiff upper lip’ (スティフ アッパー リップ) という表現は直訳すると「硬い上唇」ということですが、口元をゆるめずにきっと結んだ表情のことを指します。と言っても笑いをかみころすというよりは、悲しかったりつらかったりするときにも冷静さを失わないといったときに使われます。たとえば、戦時中に家族を亡くしたり戦地で苦しい目にあっても冷静さを失わず淡々としていたというような状況に使われるフレーズ。

唇を硬くして感情をあらわさないと自他ともに認める英国人ですが、国をあげてそのステレオタイプをくつがえすことになった事象がありました。1997年8月31日にダイアナ妃が交通事故で亡くなったときです。

 ダイアナ妃の死

その頃すでにチャールズ皇太子と離婚して王室を離れていたダイアナの死をエリザベス女王は最初は実に冷淡に扱っているかのように見えました。王室の一員ではないからと民間葬をのぞみ、ダイアナ妃を追悼する声明も出さず、何事もなかったかのようにその時滞在していたバルモラル城からロンドンに戻ろうともしませんでした。さすが、英国民を代表する女王、いかにも ‘stiff upper lip’ (スティフ・アッパー・リップ)の典型です。

 しかしそれとは対象的に英国の多くの一般国民はそれまでになく感情を露わにしてダイアナの死を嘆き悲しみました。宮殿の前は花束やメッセージで埋め尽くされ、公の場で号泣しながらダイアナの死を悲しむ人がたくさんいました。
当時首相になって間もなかったトニー・ブレアもダイアナ妃死亡のニュースを聞いたあとすぐに追悼スピーチをしました。彼女が「いかに温かく美しい心の持ち主だった」かを語り、「ダイアナ妃は ‘people’s princess’ (人々のプリンセス)だった、そして英国だけでなく世界中の人々にとって彼女は永遠に ‘people’s princess’ であり続けるでしょう。」と言ったのです。テレビやラジオでこのスピーチを聞いた人が共感し「私たちのプリンセス」の早すぎる死を嘆き悲しむ声が全国で沸き起こりました。バッキンガム宮殿やケンジントン宮殿に人々が次々と集まり、宮殿のゲートの前は100万以上の花束で埋め尽くされました。

Dianafication とは

この現象には ‘dianafication’ (ダイアナフィケーション)という新語が生まれたほどです。これはダイアナ妃の死以来、英国民が公の場で感情を露わにするようになったという現象を指します。記憶に新しいのは今年ロンドンやマンチェスターでテロリスト事件があったとき、それについてテレビカメラを向けられても躊躇することなく泣きながらショックや悲しみを表現していた人たちです。

この ‘dianafication’ (ダイアナフィケーション)という言葉は否定的にも使われます。英国民の冷静で「大人」なイメージを損ねる、ティーンエージャーの女の子じゃあるまいし、というわけです。けれども、英国といえども、世の中は確実に ‘stiff upper lip’ (スティフ・アッパー・リップ)から ‘dianafication’ (ダイアナフィケーション)に変わりつつあったんですね。

エリザベス女王とイギリス王室の変化

最初、この現象を距離をおいて見ていた王室でしたが、時間がたつにつれてエスカレートしていく国民の反応ぶり、マスコミの王室に対しての批判記事、ブレア首相をはじめ側近のアドバイスもあり、すこしずつ態度を変えていきます。女王はバルモラル城からロンドンのバッキンガム宮殿に戻り、ダイアナ妃を追悼する声明を発表。ダイアナ妃の葬儀についてもはじめは反対していた準国葬をウェス卜ミンスター寺院で行うことに合意しました。バッキンガム宮殿のユニオンジャックは半旗にされ、葬列を見学した女王はダイアナの棺の前で頭を下げて弔意を示しました。

イギリス社会の ‘stiff upper lip’ (スティフ・アッパー・リップ)から ‘dianafication’ (ダイアナフィケーション)への変化は英国王室を変えるまでの影響を持っていたのです。

思えば生前のダイアナ妃も、形式的で頑なな王室の伝統を破り、テレビインタビューでチャールズ皇太子との結婚生活破綻や自らの摂食障害、自傷行為について率直に語るなど、およそ貴族出身のプリンセスとはかけ離れた言動をする人ではありました。性格的にも感情に左右されやすい面を持っていたと言われますが、ああいう立場にあってもあれだけ赤裸々にそういう言動をする人であったことが、死後20年たった今でもイギリス、また世界中のファンから忘れられない「人々のプリンセス」である理由なのかもしれません。

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