デルタ(インド)変異株で感染再拡大中のイギリスから日本が学ぶべきこと

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Last Updated on 2022-01-31 by ラヴリー

イギリスではアルファ(イギリスB1.1.7)変異株によるコロナ第2波が収まり、ワクチン接種普及と共にコロナ感染も死者数も急減していましたが、ここに来てデルタ(インドB.1.617.2)変異株による感染拡大が急増中です。日本もイギリスの後を追っている状況なので、イギリスの事例から学べることがあります。

Contents

新型コロナウィルス、イギリスの状況


しばらく前にもイギリスでのコロナ状況については数回お伝えしました。

まず、2020年の春、最初の波が来た時のロックダウンの様子とか、休業要請のために英政府が従業員の給与や自営業者の通常収入の8割を負担したこと、学校は閉鎖になったものの、医療・介護従事者などエッセンシャルワーカーの子供や特別ニーズがある子供はずっと学校に行けたことなど。

ロックダウンは厳しいながらも、感染状況がひどかったこと、一定の収入が保証されたこともあり、ステイホームの行動制限はおおむね遵守され、夏までには感染がおさまりました。けれども、夏の間に緩和をゆるめ、秋に学校を再開した後、また感染が広がりました。

11月になるとロックダウンをしてもその波が止まらず、それが感染力の強いB.1.1.7英国(ケント)変異株(今はアルファと呼ばれている)によるものだということがわかりました。そのため、クリスマス前にまたロックダウンとなったのですが、時すでに遅しで、12月~1月の第2波で感染者数、重症者数、死者数など、春の第1波よりもひどい被害になってしまいました。

コロナワクチン接種状況

その間、いちるの希望が12月に始まったコロナワクチン接種でした。

ロックダウン導入、PPEや検査キットの供給、水際対策などで遅れを取ってきたイギリス政府の政策で、唯一順調に行ったともいえるのがワクチン開発と接種プログラムです。

これについてイギリスは2020年1月から手をつけ、2020年3月には専門のワクチン・タスクフォースを設立して、開発だけでなく、生産、供給、ロジスティクス、接種態勢や人員まで、必要な法律改正まで行って準備していました。そのおかげで、昨年末ワクチン認可の後すぐに一般接種をスムーズに軌道にのせることができたのです。

コロナワクチン②イギリスの接種状況と開発秘話

イギリスでのコロナワクチン接種プログラムは高齢者など優先グループを筆頭に10段階に分けて、予定通りのスケジュールで順調に進んできました。

現在では1度目の接種は成人の76%、2度目の接種も半分以上に達しています。私も3月末に1度目、5月末に2度目のワクチン接種を終えました。

検査の拡充

去年の春の第一波の時、イギリスは急に襲ってきたコロナに対して何の準備もできていませんでした。ロックダウンが遅れたり、PPEが不足したり、PCR検査も十分にできない状況でした。その結果、感染流行はなかなか収束せず、多大な被害者が出ることになりました。

そのようなコロナ禍の中、このパンデミックに対する研究も進み、対応策も少しずつ分かってきました。早い段階からのワクチン研究・開発への大規模投資と並行して、実際の感染状況の把握、効果的な治療方法の確立、PPEや検査キットなどの拡充も進みました。

イギリスでは当初、症状のある人を中心に検査をしていましたが、無症状者も感染の原因となっていることがわかってからは、検査数を大幅に増やしました。医療・介護従事者などに定期的にPCR検査を行うほか、3月の学校再開と共に学校でも検査を導入しました。

自分で検査ができる中高生は週2回、迅速自己検査キットで抗原検査を行い、陽性者は学校に行かずPCR検査を受けます。抗原検査はPCR検査と異なり、どこでも自分ででき、すぐに検査結果がわかるので、その場でスクリーニングができて効果的です。

これを週2回行うことで無症状の陽性者をかなりの確率で発見することができるということで、この抗原検査はその後一般市民にも拡大されました。今では誰でも希望すれば無料で抗原検査キットをもらうことができます。

さらにイギリスでは実験的なイヴェントとして、屋内外のコンサート、スポーツイヴェント、ビジネスミーティングなどの一連の行事がマスクなし、ソーシャルディスタンスなしで行われました。

この実験イヴェントにおいて、直前の抗原検査で陰性の人だけ参加を条件にしたところ、クラスター発生することなく大規模集会を行えることもわかりました。この実験結果はその後、段階的に行動制限を緩和する際の安心材料となりました。

コロナ感染者数日本がイギリスを超えた日:感染激減の理由は

ロックダウン解除

ワクチン接種と並行して、検査で無症状者を洗い出し陽性者に自己隔離してもらうことにより、イギリスでは感染者数、入院患者数、死者数とも徐々に減っていきました。

それと並行してイングランドでは3月8日から4段階のロックダウン解除ロードマップに添って行動制限が緩和されてきています。

第1段階では学校再開と少数の戸外での集会、第2段階では飲食店以外の店舗開店や屋外での飲食許可、小グループでの集会許可。

第3段階の今はパブやレストランなど室内の飲食やジムなども許可されています。感染状況が悪化しない限り、6月21日には全面解除の予定で、ナイトクラブや大規模集会なども再開が許されるとされていました。

その日もだんだん近づいてきて、ホリデーの予定を立てたり、サマーフェスティヴァルに行くのを心待ちにする人も出てきました。

デルタ変異株の到来

けれども、ここ数週間で、ロックダウン解除ロードマップが予定通りいくのかどうか不安要素が出てきました。

悪いニュースの発端は4月に見られた、インドでのコロナ感染爆発でした。遠いイギリスからインドの惨状を知って、イギリス人は心配したり同情したりしていました。国民の関心も高まり、イギリス政府もインドに酸素吸入器や人工呼吸器を送るなどの援助も開始しました。

その頃、インド訪問を予定していたジョンソン首相はインドでの感染拡大を理由に訪問を直前に取りやめました。それと同時にインドは渡航レッドリストに名を連ねました。

でもその時はすでに遅かったようです。それからすぐ、イギリス国内でインド変異株(デルタ株、B.1617.2)が確認されるようになりました。

はじめはイングランド北西部など局地的に見つかっていたのが、だんだんあちこちで確認されるようになりました。渡航歴のない人の間にも感染が広まり、すでに市中感染が蔓延していることが明らかになったのです。

デルタ株が多く確認される地域では感染が急増していたため、住民全員を対象に検査を徹底したり、ワクチン接種を優先しました。けれども、地域的な感染は止まらず、去年の秋、ケント(アルファ)株が突如現れてあれよあれよと増えていった状況を思い出させます。

6月3日にイギリスの公衆衛生庁(Public Health England)が出した変異株についての報告書によると:

・デルタ株はすでにアルファ株を凌駕していて、5/17時点でイギリス全土の61%(今は8割くらい)
・デルタ株はアルファ株より感染力が50~60%強い(アルファ株じたい、従来株より70%感染力が強い)ためR値が全国で増加中
・重症化率も高く、入院が必要になる確率がアルファ株の2.5倍
・小中学校でのクラスター発生が多い(97事例、250校に1校の割合)
・デルタ株での入院患者94人の多くはワクチン未接種だが、完全接種者も6%
・デルタ株での死者17人のうちワクチン1度接種済が3人、2度接種済が2人

このような状況を受けて、6月21日に行動制限の最後の解除をする予定は4週間遅らせることに決まりました。

これまでも専門家による厳しい制限導入を政治的判断で遅らせてきたジョンソン政権は、そのたびに感染者と死者急増という被害をまねいています。今度ばかりは慎重な判断が迫られているのです。

デルタ変異株の症状


デルタ変異株については、感染した人の症状についても、これまでのコロナ症状とは違うという報告もあります。

これまでコロナウィルス感染者が経験する症状で主なものは咳、発熱、嗅覚や味覚がなくなるといったことでした。けれども、デルタ変異株に感染した人はそれとは少しちがうというのです。

発熱を訴える人は今でも多いのですが、味覚や嗅覚の以上を上げる人が減ったということです。

代わりに上がってきている典型的な症状は風邪をひいたときのものと似ていて、頭痛、喉の痛み、鼻水などだということです。そのほか、寒気を感じたり、食欲がなくなったり、筋肉痛を上げる人もいます。

ただの風邪だと思い込んで普通の生活を続けているうちに他の人にうつしてしまうこともあるので、イギリスではすぐに検査を受けるように推奨されています。

イギリスから学ぶこと

このようなイギリスの状況を日本の人に伝えるのは、このような経験から学ぶことがあると思うからです。イギリスも去年の春にイタリアの状況から学ぶことがあったのに、前代未聞のパンデミックに立往生してロックダウン導入が遅れてしまい、それによって被害が大きくなりました。

デルタ変異株はイギリスだけでなく、ヨーロッパ諸国やアメリカなどにも広がりつつあります。カナダの病院で感染が確認されたり、フィンランドの医療機関でも100人近くのクラスターが発生して17人が死亡したというニュースもあります。デルタ株はこれから世界中に広まるだろうと言われているのです。

今となってはインドで4月にコロナ感染があれだけ急拡大したのはこの変異株による影響だったのだとわかりますが、当時はまだよくわかっていませんでした。インドに限らず、先進国でも、コロナ感染の詳細かつ最新データは手に入りにくい、または公開されていないことが多いのです。

イギリスでは無症状者も含むコロナ検査と、ウィルスのゲノム解析を多く行っているので、変異株などのデータが迅速に把握できています。たとえば、6月1日の時点で米国は英国の5倍以上の感染者が確認されていますが、outbreak.info という公開サイトに記録されている解析数は米国の246例に比べ、英国では2,020です。

イギリスでは流行の範囲、感染者数や重症者数、死者数とその属性(年齢層やワクチン接種済みかどうかなど)などのデータもすぐに記録され、イングランド公衆衛生庁(Public Health England)などのサイトで誰もが見られるように公開されているので、日本にいてもその生きた情報にアクセスすることができます。しかも(当たり前ですが)英語なので、専門家でなくても一般の人にも理解できます。

日本は他の多くのアジア諸国と同様、去年は欧米諸国に比べると感染者も死者も抑えてきましたが、第4波ではイギリスのアルファ変異株による感染流行で関西を中心に感染者が増え、医療状況も逼迫するという状況に陥りました。病院に入院できないため、自宅で療養を余儀なくされる人が数万人単位で出るという記事を見るにつけ心を痛めていました。

今、ようやくその波を超えようかという状況に落ち着いてきましたが、これで安心するわけにはいきません。なぜなら、日本でもデルタ変異株が確認されつつあるからです。

5月下旬には東京でデルタ株によるクラスターも発生しているということで、これから徐々にデルタ株への置き換わりが起こってくることが想定されます。今はまだ数が少ないとはいえ、イギリスでは9日間で2倍になるペースで進む感染力の強いものなので、予断は許されません。

もし、このまま感染が広がると、いったん収まった流行が東京五輪が開催される夏に広がってしまうことにもなりかねません。京都大学の西浦教授の試算では、日本でも7月末にはデルタ変異株はコロナ感染者の8割に達するということです。

なので、イギリスで一歩先に起こっているコロナ状況をチェックしておくことは、のちに自国で起きるかもしれない予兆をキャッチし、予防または準備に役立つはずです。

ワクチン効果

デルタ株はアルファ株よりも感染力が強いだけでなく、重症化率も強いとされています。それでも今のところイギリスでデルタ株による死者が比較的少ないのは、高齢者の多くがワクチンを2度接種済だからということが大きいようです。

コロナワクチン接種が進んでいるイギリスでは1度目の接種は成人の76%、2度目の接種も半分以上に達しています。

それに比べて日本では、65歳以上に限っても、1度接済が18.5%、2度接種済が1.7%です(2021年6月3日時点)。

一般接種が開始されてから猛ピッチで接種が進んでいるので、これからは急速に増えていくでしょうが、それが感染流行のスピードに追い付くかどうかがカギとなるでしょう。

デルタ株に関してはファイザーワクチンを2度接種すると発症予防率が88%となりますが、1度だけでは33%しかないと言われています。2度接種しないと安心はできないし、2度接種済でも少ない確率で感染、発症、重症化することもあるので気をつけないに越したことはありません。

高齢者や基礎疾患のある人、医療介護従事者など、リスクグループに属する人々にいかに早くワクチンの2度接種を終えることができるかどうかがカギになりそうです。そのためには、若者や健康な人々よりも、高齢者や介護施設入居者とそのスタッフにいちはやくワクチン接種を済ませるのが最優先事項です。

まとめ

デルタ株に関してはまだ不明な点が多く、イギリスでも新しいデータや調査結果が出る都度新しい情報が更新されて行っている状況です。

Twitterで英語での最新情報を日本語にしたものを随時追加していっていますので、気になる人は参考にしてください。

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