ゴーン日産会長逮捕の真相は陰謀か?仏ルノーと海外メディアの反応

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11月19日に日産代表取締役会長のカルロス・ゴーンが金融商品取引法逮捕の疑いで逮捕され、日産会長の解任が発表されました。逮捕理由や背景はどういうものなのでしょうか。日産、三菱だけでなくフランスルノーのトップも兼任しているゴーンに対し、ルノーやフランス政府の対応はどういうものなのか、陰謀論も渦巻く海外メディアの報道や反応と合わせてご紹介します。


カルロス・ゴーン逮捕

11月19日に東京地検特捜部が日産自動車代表取締役会長のカルロス・ゴーン(64)と代表取締役のグレゴリー・ケリー(62)を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕しました。

逮捕の理由としては、ゴーン会長が日産自動車の有価証券報告書に自身の役員報酬を過少申告した疑いがあるということです。ゴーンは過去5年間に実際は100億円を報酬として受け取っていたのに50億円しか受け取っていないと記載して報告書を提出しているそうです。この過少申告については、ケリー代表取締役と共謀して行ったという疑いがあります。

具体的には、2011年6月から2015年6月での期間にゴーンの報酬は合計約99億9800万円だったのに、約49億8700万円だったと有価証券報告書に記載をしているとのことです。どうしてそうしたのか理由は明らかにされていませんが、日本でもフランスでも企業トップが受け取る高額の報酬が問題にされるので、それを隠す目的があったのかもしれません。

当局はゴーンのスケジュールを把握していたと見え、社有機で羽田空港に到着したゴーンを機内で確保したとのことです。ゴーンは来日のたびに通っていたという焼き鳥屋に20日の予約を入れていたということで、焼き鳥屋店長も突然の逮捕に衝撃を隠せないようでした。

カルロス・ゴーンとは?

カルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)はレバノン人の両親を持ちブラジルに生まれ育ち、ブラジル、フランス、レバノンと多国籍を持っています。中等教育はレバノンで、その後パリ国陸高等鉱業学校に進みました。英語、スペイン語、フランス語はもちろん、アラビア語、ポルトガル語も話すマルチリンガルと言われています。

1978年にタイヤ会社のミシュランに入社。85年には31歳の若さでミシュラン・ブラジルの最高執行責任者就任という出世を果たしました。96年にはルノーへスカウトされ、当時経営不振だったルノーを経費圧縮で合理化することで黒字転換し「コスト・カッター」という異名を得ました。

1999年にはルノー傘下の日産の最高執行責任者に就任し、ここでも「コスト・カッター」の名の通りの徹底的な合理化を実施。当時財政危機に瀕していた日産の経営立て直しを果たし2兆円の有利子負債を返還。日産を救った男として名を馳せました。

2016年には日産が三菱の34%の投資買収をしたことで、ゴーンは現在ルノー・日産、および三菱自動車工業の代表取締役会長となっています。

日産のコメントと逮捕の背景

日産の発表によると、カルロス・ゴーンが長年にわたり実際の報酬額よりも少ない額を報告書に記載していたことが判明したことと共に、会社の資金を私的に支出するなどの複数の不正行為も認められたとしています。これについては不正行為について数か月にわたって内部調査を行ってきたと言っています。

結果として、日産自動車ではゴーンの日産会長と代表取締役の解任を22日の取締役会で決めました。これに続き三菱自動車工業も26日、臨時の取締役会を開き、カルロス・ゴーンの会長と代表取締役の職を解くことを決議しました。

日産の西川(さいかわ)社長兼最高経営責任者(CEO)は19日の記者会見でゴーンに経営の権限が集中していたことについて弊害があったと語り「負の遺産」であったと言及しました。

逮捕については内部からの通報があり、社内調査の結果複数の不正が確認されたため、検察当局に報告し、捜査に協力してきたということです。逮捕内容や不正の詳細、通報の状況など具体的なことは現時点では話せないとしています。

カリスマ経営者と言われたゴーンは日産の経営立て直しに成功した業績は買われているものの、日産社名には慈悲無き合理化についての反感も多く残っているそうです。

フランス、ルノー社の対応

ゴーンの逮捕報道を受けて、日産だけでなくフランス自動車大手ルノーの株価が急落するなどの影響が出ています。そのルノーの株15%を所有する筆頭株主はフランス政府なので、お膝元のフランスでもこのニュースに関しては大きな話題になっています。

ゴーン逮捕について、ルノーの出方が注目されていましたが、同社はゴーンを現状通り代表取締役に据え置き、代役として臨時的にトップを置くと発表しました。よほどの悪事を働いていない限り、政界や財界の大物はフランスでは守られており、これは想像通りと言えば想像通りの結果でしょう。

フランス政府はかねてからルノー主導による日産との経営統合を求めていましたが、当初ゴーンは反対していました。けれども、ゴーンは最近になってフランス政府と手を握り、ルノー主導による日産、三菱自動車との再編を狙っていたのではないかとも言われているので、それに対して日産が警戒心を持っていたとも考えられます。これについては海外メディアの報道が裏付けをしています。

海外メディアの報道

BBCはゴーンの逮捕と解任が「綿密に計算された攻撃」であるという見方を紹介しています。ルノー・日産・三菱同盟関係の勢力バランスを白紙に戻すために「暴君」となったゴーンを日産幹部が攻撃したというのです。

ゴーンに対する容疑は日産社内の従業員の告発によって進められ、そのために利用されたのは告発者に対して刑事責任を定める、導入されたばかりの司法制度であることを指摘しています。

フィナンシャルタイムズでは日産・ルノーの合併推進を目指していたカルロス・ゴーンを日産の取締役会が逮捕によって解任し、合併を阻止するために利用したと報道しています。日産自動車取締役と関係がある4人から聞いた話として、役員のうち何人かが日産・ルノーの合併が数か月以内に実現する可能性があるとみていたということです。

よって、この逮捕は経営をめぐる日産内部闘争の結果といえるとしています。ゴーンが推進していた日産とルノーのの経営統合が原因で、日本側ではこれを受け入れることをよしとしなかったということです。

日産はルノーより60%大きい会社であるにもかかわらず、日産の株の43%を所有するルノーは日産に対し経営幹部の任命権などの支配力を持っています。逆にルノーの株式を15%持つ日産はルノーの経営に口を出せず、それに反発する声がかねてよりあったのです。

日産の西川(さいかわ)社長兼最高経営責任者(CEO)はゴーン解任後、経済産業省と結びつきを強める見解を示しています。経産省は日産がルノーの子会社になることにかねてから警戒視していたので、ゴーン逮捕は政府にとって都合のいい流れと言えるでしょう。この事件は日産対ルノーというよりも日本対フランスという構図に発展しまうのではないかとも思われます。

11月24日付けのガーディアンでは、日産の事件はカルロス・ゴーン個人の犯罪ではなく、日本企業全体のコーポレートガバナンスの欠如の問題であると指摘。これは日産に限らず、日本企業の多くに共通する体質であると問題視しています。例としてオリンパスの不正で英国人CEOが解雇された事件や神戸製鋼、KYBのデータ改竄などにも言及。 解決方法としてビジネスコンサルタントの言葉を借り、女性の途用など日本企業の取締役会をもっと多様的にすべきであると語っています。

陰謀説

ゴーンの逮捕についてはルノーのお膝元であるフランスでは「日本人が仕掛けたクーデターだ」とする見方が強く、陰謀論が渦巻いているようです。ゴーンの逮捕内容が報酬の過小評価という一見個人の経済犯罪に見えること、日産が不正内容の情報を公開していないこと、ゴーン自身の主張が全く報じられないことなどで逮捕に対して疑問視する声も上がっています。

仏フィガロ紙は「ゴーンがベルサイユ宮殿で豪華な結婚式を挙げたことが日本では非難の的になる」と記して「これだから日本は才能あふれる外国人から敬遠されてしまう」という意見を紹介しています。

まとめ

カルロス・ゴーン逮捕容疑についてはまだ不透明なことが多く、これからの捜査結果情報の公開が待たれます。この件はゴーン個人の逮捕結果や今後の進退だけでなく、日産、ルノー、三菱の同盟関係がこれからどうなっていくのかにも大きく影響してくるでしょう。ひいては日本とフランスとの関係、世界の自動車業界のシェアにまで発展しそうです。

そういえば、先日行われた第一次世界大戦記念行事でフランスのマクロン大統領は「アメリカ・ファースト」を提唱するトランプ大統領を皮肉って「自国の利益だけを追うナショナリズムは大切な価値観を損なう」というスピーチをし、両国の関係は冷え切っている状態です。米国が対中国、EUに対しても厳しい貿易戦争を繰り広げている中で日本が米国と友好関係を続けたいとすると、ゴーン逮捕でフランスを敵に回してもその損害は最小限に抑えられるということかもしれません。

(敬称略)

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