グレタ・トゥーンベリ、スウェーデンの環境運動家を支える家族

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Last Updated on 2021-10-19 by ラヴリー

スウェーデンの若い環境活動家グレタ・トゥーンベリがニューヨークの気候行動サミットで講演を行ったことで話題に。15歳のときから地球温暖化への対応のためにたった一人でスウェーデン議会の前に座り込むことから始まった活動が今は地球的な運動となっています。アスペルガーという障害があるからこそこういう運動ができたという彼女とそれを支えて来た家族はどういう人たちなのでしょうか。さらに気になる彼女に対する批判についても紹介します。

Contents

グレタ・トゥーンベリはどんな人?

 

グレタのプロフィール

名前 グレタ・トゥーンベリ・Greta Thunberg
生年月日 2003年1月3日
出身 スウェーデン ストックホルム
父親 スヴァンテ・トゥーンベリ(俳優・プロデューサー)
母親 マレーナ・エルンマン(オペラ歌手)
妹  ビアータ(グレタと3歳ちがい)

グレタの生い立ち

芸術的で比較的裕福な家庭に生まれたグレタは何の問題もない家庭で育ちました。

小さい頃、彼女は宇宙飛行士になりたいと思っていました。ほかにも俳優、歌手、科学者、農業、警官、政治家、医者などいろいろな未来に興味を持つ、好奇心旺盛な子供だったのですが、ある日彼女の人生はがらっと変わったのです。

8歳の時、グレタは気候変動や地球温暖化について知りました。気になっていろいろ調べみるうち、地球には暗い未来が待っていることがわかり、ショックを受けて摂食障害になるほどでした。

グレタはその頃からずっとこの問題について悩み続けているというのに、ほかのみんなが変わらず普通に生活しているのが理解できないままでした。

彼女は11歳の時にはとうとう、うつ状態になり、笑うことも忘れ、誰とも話さなくなりました。食べることもままならず、成長が止まり、2ヶ月で10キロやせるほどだったのです。

グレタの障害(アスペルガー)

うつ状態になったグレタを心配した両親が医者に診てもらったところ、彼女はアスペルガー症候群であり、強迫性障害を持つと診断されました。

「アスペルガー症候群」というのは自閉症の一種ですが、知的障害を伴わず、対人コミュニケーションが苦手で興味の対象が限定的になるのが主な症状です。

グレタはアスペルガー症候群であることに誇りを持っていて自ら公表しています。彼女にとってアスペルガーは病気ではありません。両親は彼女のアスペルガーは「障害」ではなく「才能」であると教えたからです。

アスペルガーである彼女は人と違うからこそ違った視点で世界を見ることができます。彼女たちはすべてのことを白黒で見る傾向があり、嘘をつけないのです。

グレタにとって地球温暖化についても白と黒の問題であり、中間はありません。彼女はアスペルガーであることはスーパーパワーにもなり得ると断言しています。

グレタをサポートする家族

グレタの家族ははじめ、アスペルガー症候群の彼女でも普通の子供らしい子供に育ってくれるのではないかといろいろ努力しました。気候変動に興味を持つことに否定はしないけど、だからといってそこまで自分を追い詰めたり、学校を休むなんて行き過ぎだと思っていたのです。

でもどうやっても彼女を変えることは無理らしいということがわかりました。それで、彼女を無理やり「普通の」子供にしようとするのではなく、彼女らしい方法で生きることをサポー卜することに決めました。

それで、グレタが気候変動についていたたまれなくなって何か自分でできることをしたいと言ったとき、彼女の活動を全面的にサポートすることにしたのです。

両親が彼女の活動について指示したわけではありません。グレタがこうしたいと思ったことを認め、彼女の意見を受け入れたのです。

まず、両親はグレタに説得されて肉食をやめました。オペラ歌手のお母さんは国内外で活躍していたのですが、環境に良くない飛行機での移動を避けるために海外での公演活動をやめました。彼女は環境のために完全菜食主義(ヴィーガン)であり、飛行機を使わない主義で、家族にもこれを主張しています。

そして2018年の8月、学校が始まった時に彼女が毎週金曜日に学校を休んで国会の前で座り込み運動をしたいと言ったとき、両親はそれを全面的に支持しました。

はじめのうちは彼女の行動を批判する人も多くいました。学校に行くべきだ、勉強して気候学者になって気候危機を解決したらいいという人もいたそうです。でも彼女は気候学者にならずとも、すべての事実と解決策はすでに揃っていて、行動をすることこそが必要なのだと考えます。

そのうちに家族のほかにも、彼女の学校や友人をはじめ、グレタの行動に賛同して支持してくれる人がだんだん増えて行きました。

環境団体や環境メディアの事業家なども彼女と一緒に活動するようになりました。その中には、彼女の知名度を利用しようとする人もいたため、彼女は現在どの団体にも属さず、完全に独立して行動をおこなっています。

グレタはスポンサーや金銭の寄付提供をすべて断っています(移動のためにヨットに乗せてもらうことは別として)。そしてすべての行動を無償で行い、受賞したお金もすべて寄付しています。

まだ16歳の年で彼女がニューヨークでの国連気候変動サミットに参加するためにヨットでアメリカにわたることに決めたとき、父親はグレタにつきそって同行することにしました。家では母親が妹と待っているのですが、家族がばらばらに過ごさざるを得ないという、精神的な負担をも引き受ける覚悟をするのも大変なことだったことでしょう。

グレタのおもな実績

2018年8月 毎週金曜日に学校を休んでスウェーデン議事堂の前で座り込みをする活動を始める

この活動は「Fridays for Future」という抗議活動として世界中に広がっていくことになる。

2018年10月 英エクスティンクション・リベリオン(Extinction Rebellion)が行った環境抗議運動に家族と一緒に参加

2018年11月 TEDxStockholmで講演

2018年12月 第24回気候変動枠組条約締約国会議で講演

2019年1月 ダボスの世界経済フォーラムに参加

2019年2月 EU経済社会評議会で講演

2019年3月〜「未来のための世界気候ストライキ」を実施

2019年6月 書籍「No One is Too Small」出版

2019年9月 国連気候行動サミットで講演

2019年12月 マドリードで行われる国連気候変動会議に参加

グレタの主な受賞歴

2018年12月 タイム「世界で影響力のある未成年25人」に選ばれる

2019年 タイム「世界で最も影響力のある100人」に選ばれる

2019年 「スウェーデンで最も重要な女性」に選ばれる

2019年 ノーベル平和賞にノミネート

2019年12月 米タイム紙「2019年の人」に選ばれる

NY気候行動サミットでの演説

スイスのダボスで世界経済フォーラムに参加する際、他の多くの参加者がプライベートジェットで来ていたのに対し、グレタはストックホルムから32時間の鉄道旅行で到着しました。

彼女はニューヨークで開かれる温暖化対策サミットに招待されたのですが、飛行機に乗らない主義なので、はじめは出席を諦めかけていました。それを聞いたCO2排出量ゼロのスピードヨットの持ち主がグレタをイギリスからニューヨークまで送り届けるという申し出をしたのです。

それでグレタはヨットで15日間かけて大西洋を横断しニューヨークに無事到着。彼女の航海の様子は各国のメディアで紹介されていました。

グレタは9月23日、国連気候行動サミットで講演を行いました。


グレタのスピーチは驚くほど感情がこもったもので、これまで取材や講演で話す際、冷静で落ち着いた言動をしていたのを聞いていた私には意外でした。

これまで気候変動について世界中の仲間たちと言葉を尽くして訴え続けているのに、各国政府をはじめとする大人たちが耳を貸そうとしないことに業を煮やしたのでしょうか。

それとも、彼女が表舞台にたち始めたことで、いわれのない批判やバッシングが耳に入り始めてきたことも関係あるのでしょうか。

その中にはトランプ大統領も含まれているのにはちがいありません。

気候行動サミットに少しだけ顔を出したトランプにグレタが厳しい視線を送った様子もメディアに流れていました。

気候変動について無視を決め込んでいるトランプ大統領についての彼女の考えがどんなものかは想像にかたくありません。

グレタへの批判

グレタの国連でのスピーチについては、日本人からも批判じみたコメントが多く上がっていました。

こういう批判をしている人たちにはグレタのスピーチを初めて聞き、彼女がまだ子供の頃から環境問題について思い悩み、幼い自分ができることは何があるだろうかと模索して金曜日の座り込みから始めた運動、それに対してなんの効果も感じられない虚しさと焦りと言ったものを知らないのかもしれません。

また、彼女が取り組む問題について自分では深くを知ろうともせず、ただ自分の目に見えた側面だけで彼女を批判する立場にいるのだろうかと想像します。自分には知識も関心もないのに、この問題に対して真剣に考えている彼女の揚げ足取りをして批判することに何の意味があるのでしょうか。

グレタが「あやつられている」という人もいますが、これまで彼女の活動を見てきた私は彼女の言葉はすべて自分で考え語っていることだとわかります。

あの年でこれだけのことができるということが信じられないだけか、大人の自分にできないことを若者がやっていることへの嫉妬なのではないかと察します。

それとも「不都合な真実」について本当はうすうすわかってはいるけれど、グレタの指摘に向き合うことを避けていたいのかもしれません。何も行動をおこしたくはないから。これは「地球温暖化陰謀説」を唱える人にも通じるところがあります。

グレタをはじめ彼女の仲間たちが学校を休んでこのような活動をすることについて、若者だけでなくその親や学校をも批判する日本人もいました。

日本人の親だったら彼女のような子供に何とか「普通に」してほしい、学校に言ってほしいと願うでしょう。また、金曜日に学校を休んで国会に座った時点で学校や社会から批判されて、つぶされていたのではないかと想像します。

けれども私は、彼女にも彼女のような若者をここまで国際的なヒーローにした社会にも敬意をはらいます。

地球の環境問題:私たちに何ができるのか

私は彼女より何10年も長く生きているオトナなのに、地球の環境問題について彼女ほど知識がないばかりか、わかっていることでもそれを解決するための行動をあまり実行にうつせていません。悪いことと思いながらも、飛行機にも乗るし、自動車も運転するし、ヴィーガンにもなっていないのです。

それでも、少しずつでもこの問題について科学的な事実を知り、自分でできることから問題解決に向かう取り組みをしていきたいと思っています。たとえば飛行機に乗るのは最小限にして使えるときは鉄道を使う、自動車はハイブリッド車にする、なるべく牛肉を食べない、冷暖房をむやみに使わず節電するなど。

誰でも今すぐに飛行機や自家用車はやめて、菜食主義になって、原始人のような生活に戻れと言ってもおいそれとはできませんが、少しずつ行動を変えていくことはできます。一人ひとりがそうすることで、私達の子や孫に安心して居住できる環境を残すことに貢献できるはずです。

地球温暖化による海面上昇や氷河の消失で天候が変わり、暴風雨や洪水などの自然災害が起こることは多くの科学者が指摘しています。

温暖化の影響による被害は日本でもすでに起こっています。日本で近年猛暑や豪雨などの被害が増えているのは、ただの異常気象でかたづけられるものではなく、それが地球温暖化によってかさ上げされており、その頻度はこれからも増え続けると環境専門家は言っています。

おりしも同じサミットで小泉環境相は日本の石炭火力について「減らす」と言ったものの「どうやって」と追求され返事ができませんでした。日本はG7の中で唯一、石炭火力を推進する国であるばかりか、国外向けにも石炭への融資をしていると批判を受けています。

日本の温室効果ガスの排出量はまだまだ高く、努力すべきことはたくさんあります。その一方で、日本の省エネ技術は世界に冠たるものでもあり、さらなる技術革新によって自国での環境活動だけでなく他国へ技術貢献できることもあるはずです。

最近は国連のSDGs目標などの啓蒙活動にも触発されて、日本でも環境問題や気候正義といった分野に関心が深まってきているようです。まずは、これまで考えることが少なかった環境問題に目を向けて正しい情報を知ることから始めることでしょう。

グレタのTEDスピーチ動画

日本人の中にはグレタの国連でのスピーチで彼女を知った人が多いかもしれません。けれども、彼女はこれまでもスピーチや取材で自分の意見を語って来ています。

TEDで行ったスピーチで彼女はこう言っています。

2078年に私は75歳になります。

その時私に子供がいたら、私に皆さんのことを聞くかもしれません。

「2018年頃に生きていた人たちは、まだ行動を起こせる時間があったのになぜ何もしなかったのか」と。

大人は希望を語りますが、私はもう希望を語りません。それよりも必要なのは行動です。

行動を始めることで希望は現れます。希望を探すのでなく行動を求めるのです。

 

(敬称略)

    

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