小泉環境相のNY報道日本はステーキ、海外では「セクシーな」環境問題

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る
Koizumi

Last Updated on 2019-10-04 by ラヴリー

米ニューヨークで開かれてくる国連気候行動サミットに関連し、スウェーデンの若い運動家グレタ・トゥーンベリがヨットでNY入りしてサミットに参加したり、世界各地で温暖化対策への抗議デモが行われた様子が報道されています。けれども日本での報道はなぜか「小泉環境相ステーキが食べたい」でした。かたや小泉進次郎の「セクシー」発言を紹介した英語紙では日本政府の環境対策について苦言を呈しています。


Contents

国連気候変動サミット

ニューヨークでは国連気候行動サミット(UN Climate Action Summit 2019)が行われています。

スウェーデンの若い運動家グレタ・トゥーンベリは温室効果ガスを排出しないヨットで大西洋を横断して渡米してサミットに参加。

また、このサミットに合わせて世界各地で温暖化対策への抗議行動が行われ、数百万人が行進した様子が報道されてもいます。

日本メディアは小泉環境相のステーキ報道

そんな中、日本メディアの報道は何故か小泉環境相がニューヨークでステーキを食べに行ったというものでした。

小泉進次郎環境大臣が国連気候行動サミット出席のため、ニューヨークに到着。

「ステーキが食べたい」と話した小泉大臣は、現地21日夜にステーキ店を早速訪れた。

この報道について興味深く見た人もいるのかもしれませんが、様々な批判もあがっていました。

「こんなのニュースでも何でもない、もっと大事なニュースがあるはず」

「千葉で台風被害が出ているのに大臣がステーキ食うために外遊しているニュースを流すとはなんていうことだ」

肉食と気候変動の関係

小泉首相の「ステーキ食べたい」が問題なのは、何もこのことに大したニュースヴァリューがないということだけではありません。

環境問題について少しでも知識のある人にとって牛肉を食べるという行為がどんなにネガティヴに聞こえるのかということを、環境大臣である彼がどうも知らなかったようなことです。知っていたら、個人的にステーキが食べたいと思っても、取材陣の目の前でそれを宣伝する形でステーキハウスに行くことはありえないでしょう。

畜産由来の温室効果ガス排出量は、農業由来の温室効果ガス排出量の多くを占めています。動物が放出するガスが約39%、その上に飼料の製造・加工過程で45%にもなるのです。家畜から放出されるメタンガスの量は石油約1億4400万トンに匹敵し、これは南アフリカ全体に電力を供給するのに十分な量に相当します。

その上、畜産は放牧地を確保するための伐採によって森林破壊を進めるし、畜産産業によって大量の水が必要となります。

オックスフォード大学の研究では環境対策のために欧米諸国で肉の消費量を90%減らす必要性が示唆されています。一般市民が環境改善に貢献できる方法の一つとして肉の消費を減らすことが呼びかけられていて、畜産が環境にとってよくないことは欧米諸国では常識です。このためにヴェジタリアンやヴェーガンになる人も少なくないのです。

こういうわけなので、先進国の環境相が気候対策のためのサミットに行って、最初にやったことがステーキを食べに行くことだったということは欧米諸国では考えられないことなのです。

幸い英紙が取り上げた小泉環境大臣についての記事にはそのことには触れていませんでしたが、もっと辛辣な批判が述べられていました。

小泉環境相についての英紙の記事

小泉環境相については9月22日に英紙インデペンデントが取り上げていますが、その内容は「ステーキ食べたい」とは程遠く、日本の環境対策について詳しく述べ、批判する記事になっています。

外国にとっては、これまで日本は温室効果ガス排出量削減などの気候変動対策に遅れをみせてきたものの、環境大臣が変わったことによって新しい政策方向が示されるかもしれないと期待していた人もいるのではないかと思われます。

けれどもこの記事では小泉環境相が語ったこととしては「気候変動のような大問題は楽しく、クールで、セクシーであるべき」と語ったということや「日本は脱炭素化に全力を注いでおり、気候変動対策についてもっと主体的に行動していく」と語ったと伝えていますが、そのあとは「具体的な政策は何も示さなかった」で結ばれています。

小泉環境相は言うことが「ポエム」のようで、具体的に何を言っているのかわからないという評判もあるようですが、それは日本では何とか通じても外国では「は?」としか受け止められなく、記者も彼が何を言っているのかよくわからず、扱いに困ったことでしょう。

この記事はそのあと、日本がいかに気候変動問題について何もしてこなかったのかという事実を具体的に紹介することにつやされています。

サブタイトル文も「日本は気候変動に関してほとんど何もしていない、石炭を使い続け、他の国の石炭使用をも支援していることで批判の的になっている」です。

さらに「日本政府はサミットでスピーチの予定はないのに、小泉環境相はグリーンハウスガス排出権交渉について学んだり、クリーン・テクノロジー企業や学生に会うためにニューヨークに来た」と伝えています。

その上で、国連のグテーレス事務総長のこの問題に真剣に取り組む気がないのなら気候行動サミットに来るなと言う言葉を紹介しています。

上っ面のセリフより具体策を

上記の記事で小泉環境相はこう語っています。

「日本はこれまで環境問題において行動やリーダーシップを発揮してこなかったが、今日からはもっとやっていく。」

こういう言葉って日本ではそれらしく聞こえるかもしれません。

けれどもこういう上っ面のセリフは外国の記者には「しかし、彼は具体策を何も語らなかった。」と一刀両断されて終わりです。

これは環境対策に限ったことではありません。

日本の政治家やそれ以外の有名人も、理想を掲げた聞こえのいい約束をしたり、何かまずいことがあったらとにかく頭を下げて謝罪するだけで何とか社会に顔向けができ、庶民もそれを受け入れるところがあります。

けれども、外国ではそうはいきません。

  • 約束するのなら何が問題なのかを明示し、具体策を示し、それに対する行動とタイムスケールを公開した上で、それにしたがって着実にやっていく。
  • 反省するのなら何が問題だったのかを示し、二度と同じことが起こらないように解決策を練り、その解決策を具体的に実行していく。

そして、その経過を常に国民がチェックし続けなければならないのです。

セクシー発言より問題にすべきことは

インデペンデント紙の記事が出たあと、日本での報道で小泉環境相の「セクシー」発言が隣席の女性の言葉を引用したものであるということと共に「セクシー」という言葉は米国では普通に使われる言葉なので問題ではないと擁護する人も出てきました。(ちなみにイギリスではこのような言葉は俗語としては使われますが、国際会議のような席で使うことはありません。)

けれども、それよりも上記の動画を見ると、もっとびっくりすることがあります。

環境大臣ともあろう人が「石炭火力発電についてどうするつもりですか」と聞かれて「減らす」としか返事ができず、その返事への当たり前すぎる「どうやって?」という質問に答えられないということに。

「大臣になってまだ間もないので」と言うのは言い訳にはなりません。サミットで日本側にこういう質問が出るだろうということは私でも予想できます。もし、環境について深くを知らなかったとしてもせめてサミットに参加する前に事前準備をして基礎知識を身につけた上でのぞむのが普通でしょう。

このあと、テレビ番組のコメンテーターが「隣の年上の女性が小泉大臣を助けていたのが心強い」とフォローしていますが、何を言いたかったのでしょうか。日本の大臣は学校の生徒のようなものなので先生の助けが必要だとでも?日本以外の一般常識からいうと、三輪弁護士の意見が一番まともです。

思えば、日本の政治家やトップリーダーがだらしないのは、メディア陣がまともな質問をしていないのにも原因があります。のらりくらりと適当なことを言っても追求されないのでこのまま来ているのでしょうが、外国ではそうはいきません。

BBC番組などでイギリスの政治家が受けている質問には辛辣なものもありますが、そのおかげで私たちは真実を知ることができるし、政治家も勉強をおろそかにできず、事実関係を踏まえて自分の意見を語る能力が磨かれます。

まとめ

小泉大臣は人柄がよく、国際舞台でもものおじせずに堂々としているところは評価されるところです。また、通訳をまじえずに英語で会話ができるというのは強みです。

河野元外相も英語ができていたので、各国の要人と直接話ができていました。これからの政治家にはそういうコミュニケーション能力が大切になるでしょう。

とはいえ、いくら言葉が喋れてもその中身がからっぽなら英語力などなんの武器にもならないどころか、無知さ加減が露呈して逆効果になってしまいます。

小泉大臣も環境相として国連の気候行動サミットに参加するのなら、それなりの勉強と事前準備をしてからのぞんでほしかったと思います。

彼は自分でも認めているようにまだ就任間もないので、これからの猛勉強と活躍を期待しています。

グレタ・トゥーンベリ、スウェーデンの16歳環境運動家を支える家族

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

Adsense




イギリスおすすめ格安SIMカード:giffgaffは月6ポンドから(£5クレジット付)

Get a free giffgaff Sim

コメントを残す

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください