Last Updated on 2022-08-25 by ラヴリー
JRが訪日外国人向けに販売しているジャパン・レール・パス(JR パス)はこれまで海外在住日本人も使用できましたが、2017年3月31日限りで使えなくなるということになりました。
【追記】この決定は2023年末まで延期されることになりました。ただし、条件があります。詳細は本記事をご覧ください。
Contents
JRパスとは?
Japan Rail Pass (JR パス)は短期滞在の外国人訪日客をターゲットとした鉄道周遊券です。東海道・山陽新幹線の「のぞみ」九州新幹線の「みずほ」には使えませんが、その他のすべてのJR線(新幹線を含む)に使用できます。7日間有効の普通車パスが33,610円なので東京と新大阪間を新幹線で1往復するだけでほぼ元がとれるという、日本人なら誰でもうらやましがるお得パスです。
JRパスは7日間、14日間、21日と期間があり、普通車とグリーン車からも選べます。子供料金は半額で、座席を必要としない6歳未満の幼児は大人同伴に限り無料となります。
【追記】
これまでJRパスは日本へ到着する前に引換証を購入する必要がありましたが、2020年6月1日からオンラインで購入できるようになるという発表がありました。
なお、新しい料金料も決まっていて、普通車用7日間大人料金は33,610円になります。
まだ案内サイトは出来上がっていませんが、下記の予定です。
案内サイトサービス名称及びサイトURL
「JAPAN RAIL PASS Reservation」
(https://www.japanrailpass-reservation.net)
JRパスの使用資格
JRパスは原則として日本国籍を持たない外国人が対象ですが、日本国籍を持つ人でも「日本国外に居住する外国人と結婚している場合」や「居住国に永住権を持っている場合」はJRパスを利用できるとしていました。
JRパスは日本に来る前に外国で購入しなければなりませんが、外国の旅行代理店などで購入する場合、日本人は居住国に永住権を持っている証明などを提示して購入が可能でした。私もロンドンのHISでパスポートと永住権の証明を持参して購入していました。
海外在住日本人の使用禁止
JRは2016年11月にJRパスの販売について、突如「外国に住んでいても、日本国籍を持つものには2017年4月1日からはJRパスを売らない」と発表しました。突然の発表で「寝耳に水」とはこのことです。当初多くの人は気が付かなかったと思いますが、そのうち、友人知人の間でニュースが伝わり、JRパスを利用していた、またはこれから利用する予定のある海外在住日本人の間で波紋が広がっていったのです。特に理由も説明もない突然の発表だったので、JRに販売廃止の理由を問い、再考を求めるペティションまではじまりました。
それらの意見に対するJRの回答は以下のとおりです。
これまで「ジャパン・レール・パス」の海外在住の日本人の方への発売に際してはご利用資格を認証してまいりました。しかしながら、永住権等の資格を証明するための書類については国際的に定型的な書類が存在せず、また国により資格取得の条件が異なっている他、永住権制度の有無等による不平等が生じるなど、海外在住の日本人のご利用資格が限定されていることに対しまして様々なご意見をいただいております。これらの状況を鑑みまして海外に在住されている日本人の方への発売は終了することになりました。
なお、このたび発表させていただいたご利用資格変更についまして、再度変更する計画はございません。ご要望に添えず大変申し訳ございませんが、なにとぞご理解賜りますようお願い申し上げます。
要するに、海外在住日本人の中で永住権が証明されないためにJRパスが使えない人にとって不公平なので、いっそ全員が使えないことにします、これなら公平でしょ、ということのようです。
海外在住日本人の反対
わたしは change.org というペティションサービスを利用して呼びかけていた、『海外在住 日本人 JR(ジェイアール)海外在住者「ジャパン・レール・パス」利用資格の変更の見直しを求めます。』という ペティションに署名しましたが、ほかにもジャパン・レール・パスを考える在外邦人の会など、様々な団体やグループが世界中でJRに見直しを求めたようです。
特に、大きな怒りを示したのは、古くから多数の日本人移民が住んでいるブラジルの日系社会からだったと聞きました。明治時代から移民が渡っているブラジルでは日系移民から「日本政府が観光振興に力を入れる中、JRは我々を切り捨てるのか」という悲痛な声があがりました。JRグループや国土交通省に見直しを求める嘆願書を提出された上、事態を重く見た中佐藤悟駐ブラジル日本国大使も帰国した際に、石井啓一国土交通相に直接、ブラジル日系社会の強い要望を伝え、JRによる翻意を促したということです。
日本人が使えないのは当たり前?
この記事を読む多くの人は日本に住む普通の日本人で、高いなと思いつつも新幹線代を払っている人達でしょうから、海外在住日本人どころか、外国人だってそんなお得な周遊券など使えるなんてけしからん、不公平だと思うかもしれません。
日本に来る旅行者を増やすために、外国人観光客にだけならJRパスを売ってもいいけど、日本人が使えないのは当たり前だと思いますか?
私は関西空港駅など外国人が多い駅のみどりの窓口に外国人観光客の長蛇の列ができているのを何度も目にしました。外国人観光客は日本の切符自動販売機で切符を買うのは難しいし、みどりの窓口に行ってもJR職員の多くは外国語が話せず時間がかかってしまいます。外国人が間違った切符を買って改札口を出られなくなったものの、駅職員とコミュニケーションができないため他の乗客も困惑するシーンもよくあります。
JRパスのような周遊券は個々の切符を買う必要が無いため、外国人旅行者にも、JRにも、はたまたみどりの窓口や切符販売機で並ぶ他の鉄道利用者にとっても利益があるのです。
海外在住日本人が今回のJRの決定に反対するのは、既得権利が無くなるのを不満に思うということもあるのですが、ほかにも理由があります。
外国に住む日本人がJRパスを使うのは外国人である家族や友人と一緒に日本を訪問する場合が多く、自分1人だけいちいち切符を買わなければならないことになると実に不便です。その不便さとコストを考えると外国人である他の家族はJRパスを購入できるのにもかかわらず、全員が旅行自体をあきらめる、あるいは日本に行くのをやめるといったことにもなりかねないのです。
外国人の訪日客が増えていく中、ラグビーワールドカップや東京五輪も計画されており、ガイド役として外国人の家族、友人知人を日本に案内しようとする在外邦人も多いでしょう。そういう日本人が身近にいるからという理由で日本に行こうと考える外国人もいます。日本という国はやはり外国人にとってはまだまだ「未知の国」で「行きたいが、言葉などで不安な」国であるのです。
他の国では?外国人向けの鉄道パスの扱い
外国人訪問者向けの鉄道周遊パスは多くの国で販売されています。他の国ではどのような取り扱いなのでしょうか。
例えばヨーロッパへの訪問者が使えるものに「ユーレイルパス」があります。私もむか~し、日本からバックパッキングでヨーロッパ旅行をした時に使いました。このパスの購入条件は「欧州各国及び、トルコ、ロシア連邦の居住者以外」とされていて、居住しているかどうかが問題とされるのであって、国籍は関係ありません。
国別のパス、たとえば「スイスパス」はスイスの非居住者なら誰でも買えるので、スイス人でも外国に住んでいれば使えます。イギリスにも「ブリットレイル・パス」Britrail Passがありますが、使用資格はやはり「英国非居住者」であり、国籍は関係ありません。逆にイギリスに在住している人は、外国人であってもこのパスは使えないということになります。
ヨーロッパだけでなく、韓国にも「コレールパス」という周遊券があり、この場合も韓国籍でも海外在住者は購入可能ということになっています。
これをみてもJRの海外在住日本人の扱い、それもこれまで許可していたものを突如中止するというのは異様な決定であるといえます。
最終日にJRは突如方向転換
ともあれ、さまざまな反対意見にもかかわらず、JR側からはなんの譲歩もなく2017年3月になり、事態はこのまま絶望的になっていきました。
2017年3月末から4月にかけて家族3人で帰国する予定があった私たちは「家族で日本中を旅行できるのはこれが最後のチャンスかも」と思い、初めて家族3人分JRパスを購入しました。子供が中学生になったため普通に大人料金3人分の切符を買ってあちこち旅行するのはコスト的に難しくなってきているのです。
さて、最後のチャンスと思ってJRパスを購入したあとで私たちに届いたのは2017年3月31日ギリギリにJRが発表した知らせ。何でも突然なのがJRなのですが、この発表によると「在留期間が10年以上の在外邦人には2017年6月1日からJRパスの販売を再開する。ただし、東京五輪が行われる2020年末まで。」ということなのです。
これまで「ご利用資格変更についまして、再度変更する計画はございません。」と突っぱねていたJRが突然、それを撤回したのはなぜなのか、理由などは説明されていません。あちこちからのペティション、陳情などが効果的だったのでしょうか。ぎりぎりになって発表したのは、私のように「これで最後だから」という思いで、駆け込みでJRパスを買う人を最大限にしたかったからなのかどうかもわかりません。
*今現在、海外在住の日本人で利用資格を満たす人はJRパスを下記の期間まで利用できることになっています。それ以降どうなるのかはまだわかりません。
発売期間と引換期間
・日本国外での引換証の発売期間 2017年6月1日~2023年12月31日
・日本国内での引換期間 2017年6月1日~2024年3月30日
※上記以降の発売につきましては、改めて、お知らせいたします。
「2017年6月1日以降の引換証発売からの新たなご利用資格」
新型コロナウイルス流行による水際対策で外国人も海外在住日本人も日本への入国が厳しくなった数年間でした。国際的な渡航が少しずつ回復する中、日本への入国も少しずつ増えてきています。JRパスについても、海外在住日本人が2023年の年末までは購入できるということなので、それまでに使える機会があったらいいなと思っています。
在留10年以上を証明する書類を揃える方法については下記の記事をごらんください。
JRパスを使った感想
2017年に家族3人で1週間JRパスを使ってみましたが、とても便利でした。「のぞみ」や「みずほ」に乗れないので、例えば東京から広島に直通ということはできませんが、それ以外は問題ありません。南は鹿児島から北は金沢まで新幹線や特急列車を利用して旅行しました。一部全席指定席の新幹線もありましたが、殆どは自由席で移動しました。
JRパスを持って旅行している外国人旅行客も見かけましたが、「ひかり」や「こだま」は乗客が少なく、もっと外国人旅行客に利用してもらったほうがいいのではないかと思いました。格安航空券も増えてきて、新幹線もだんだんと競争が激しくなってきているのかもしれませんね。
日本には家族で毎年帰国しますが、普通は実家に滞在して母や姉家族と近場の温泉などに行くくらいです。今回ははじめて日本中を旅行して、イギリス生まれイギリス育ちのハーフの子供にも日本のさまざまな場所を見せることができて、彼にはいい経験になったようです。日本にはまだまだ行ったことのない場所、行きたいところがたくさんあるのでこれからもJRパスを利用して家族旅行ができればいいなと思います。
追記:新しい署名キャンペーン
上記で述べた change.org というペティションサービスを利用した『海外在住 日本人 JR(ジェイアール)海外在住者「ジャパン・レール・パス」利用資格の変更の見直しを求めます。』という グループが2019年2月に、新しい署名キャンペーン「ジャパン・レールパス(JRパス)・海外在住邦人の購入資格変更」の再考をJRグループに強く求めます!!」 を始めました。現在の条件の是正を求めると共に、2021年以降も引き続き在外邦人への販売を継続することを求めるものです。私も早速署名しました。賛同するかたはこちらのリンクから詳細を読み、署名することができます。
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