ノーベル文学賞2018発表見送り理由のセクハラ問題とは?

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去年カズオ・イシグロが受賞したノーベル文学賞の発表が今年は見送りになると決まりました。スウェーデンのノーベル財団はその理由としてスキャンダルで傷ついた選考団体スウェーデン・アカデミーの信頼の回復のためとしています。同アカデミーはセクハラや情報漏洩問題で渦中にあるのですが、どういうスキャンダルなのでしょうか。

ノーベル文学賞

ノーベル文学賞は例年10月に受賞者が発表され、12月10日に受賞式が開かれます。去年はカズオ・イシグロが受賞スピーチを行ったのがまだ記憶に新しいですね。

受賞者の選考はスウェーデン・アカデミーのメンバーが内密に行い、今年も選考作業は進んでいたそうなのですが、ノーベル財団は2018年のノーベル文学賞受賞者は先送りとし、2019年の受賞者発表と同時に行いたいと考えていると発表しています。

文学賞で受賞者が決まらないのは1949年以来、この時は翌年1950年に米作家ウィリアム・フォークナーと英批評家バートランド・ラッセルに2年分の受賞が同時発表されました。

けれども、今回の受賞者見送りはアカデミーの基盤が揺らぐスキャンダルがその理由となっている異常事態で、関係者に大きな衝撃をもたらしています。

ノーベル財団は「受賞者発表の前に、アカデミーの信頼回復が必要だ。それには時間がかかる。」と言っています。さらに、同財団は「今回の危機は文学賞以外の発表には影響しない。」としています。

アカデミーのオルソン暫定事務局長は、すでに進んでいた今年の選考作業は今後も継続するとしています。来年に先送りする受賞者発表までにアカデミー・メンバーを補充して、内部改革を行う決意であることを明らかにしています。

セクハラ問題と情報漏洩

ノーベル文学賞選考団体のスウェーデン・アカデミーのセクハラ疑惑は2017年11月、アカデミーの女性会員である詩人・作家のカタリーナ・フロステンソンの夫でフランス出身の芸術家ジャンクロード・アルノ―に対し女性18人が性犯罪被害などで告発したのに端を発しています。

暴行事件の中には、ストックホルムやパリにあるアカデミー施設の建物内でおきたものもあり、アカデミー会員の妻や娘、職員など少なくとも18人の女性に、過去30年にわたって性的暴行やセクハラを行ってきたとされています。

また、ほかにもアルノーが妻から得た受賞者名を事前に漏洩した疑惑も浮上しています。アカデミー受賞者はギャンブルの対象になっていることもあり、受賞者の漏洩は厳重に管理されており、アカデミーメンバーは家族と言えどもその情報を漏洩してはならないとされています。

なお、アルノーはすべての疑惑を否定しています。

この問題がさらに泥沼化したのは、スキャンダル発覚後のアカデミーの対応をめぐり、内部で対立が深刻化したことです。

サラ・ダニウスは初の女性事務局長として「開かれたアカデミー」を目指して改革に取り組んでいたのですが、スキャンダルを隠し通そうとする保守派メンバーと対立して信任投票の結果辞任に追い込まれてしまったのです。

ダニウス辞任後、そのほかの会員も相次ぎ辞任しています。その結果、18人が定員のアカデミー会員は11人まで減ってしまい、機能停止状態となっていました。新規会員を投票で迎え入れるためには12人が必要なのに、その人数が確保できていないのです。その上、残ったアカデミー会員はこれまで内部の醜聞を公にしないようにもみ消そうとしていたメンバーが多いとされています。

スウェーデン・アカデミーの会員は終身制で、現メンバーが死ぬまで会員の補充もされません。会員は厳密には自らの意思では辞任できないのですが、運営や議決への参加を拒否することはできます。残るメンバー11人のうちの1人ケルスティン・エクマンは英作家サルマン・ラシュディに対するイランの殺人命令について抗議するために1989年以来、活動を停止しているままなのです。

このままでは、アカデミーは事実上機能停止状態となっているため、アカデミーを後援するスウェーデンのカール16世グスタフ国王は会員の正式辞任を可能にするため、アカデミー規則を変更することを検討しています。

今後の展開は

今回の騒ぎはノーベル文学賞が1901年に創設されて以来、最大の醜聞となっています。

去年からハリウッドを中心に盛り上がっている#Me Too運動がスウェーデン・アカデミーにまで影響を及ぼしたということなのでしょう。

それにしても、スウェーデンという国、国民もノーベル賞という機関も、これまで世界中で尊敬されるべき対象として扱われてきたところがあります。中にはいわば神格化してしまって「あのノーベル賞」機関だから悪いことをするはずがないと批判さえはばかられたところがあったのかもしれません。

このたび、一連のスキャンダルが発覚して、ノーベル賞機関と言えどもクリーンな人たちばかりがいるわけではないということが分かり、文学賞選考のアカデミーにとどまらず、ノーベル賞全体の評判や信頼にまでひびが入る懸念もあります。

この混乱状態のままでは、アカデミー文学賞に選ばれても受賞者が賞を辞退してしまうことにもなりかねません。

こういう状態なので、ノーベル財団もこの度の受賞者先送りの決断となったのでしょう。一度失われた信頼を取り戻すには、時間も必要ですが、アカデミーの体質そのものにメスを入れる必要性がありそうです。

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