日本学術会議会員候補任命拒否について海外からも懸念の意

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Royal Society

日本学術会議の会員候補6人を菅首相が任命しなかった件について、日本では疑問や批判の声が上がっていますが、この件については欧米でも報道されており「政治と学問の自由についての関係」に懸念の声が報じられています。

日本学術会議とは


日本学術会議は行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、昭和24年(1949年)1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。

人文・社会科学、生命科学、理学・工学の全分野の約87万人の科学者を内外に代表する機関であり、210人の会員と約2000人の連携会員によって職務が担われています。

日本学術会議の役割は、主に以下の4つです。

  • 政府に対する政策提言
  • 国際的な活動
  • 科学者間ネットワークの構築
  • 科学の役割についての世論啓発

日本学術会議についてはほかでも詳細な説明があるのでここでは略し、今回の件についての海外の報道についてご紹介します。

日本学術会議は英語で何と言う?

まず、そもそも「日本学術会議」は英語で何というのでしょうか?公式サイトの英語表記を見ると「Science Council of Japan (SCJ)」となっています。

「サイエンス」というと「科学」ということになりますが、西洋では「science」はもっと広く「知識」とか広義の「学問」という意味でも使われます。「日本学術会議」は自然科学だけでなく人文科学や社会科学など広い分野にわたるので、後者の意味で使われているのでしょう。

日本学術会議任命拒否を報じる海外報道

今回の日本学術会議候補者任命拒否について海外の英語メディアで取り上げられているものには、下記のものがあります。

ロイター(Reuters)

ロイターは10月5日に「日本の菅、学術会議への学者任命拒否を批判され釈明する」という記事を報じています。

この記事では任命を拒否された6人のうちには過去に安倍政権の政策を批判したものもいると伝えています。批判された政策の例として自衛隊を海外派遣するための平和憲法再解釈や2013年の特定機密保護法をあげています。

ロイターはさらに野党やSNSでの批判意見、10万人以上の名前が集まった反対署名運動、任命を拒否された6人のうちの一人、早稲田大学の岡田正則教授のインタビューを紹介しています。

その上で、菅首相がメディアに「この決断は合法であり、学問の自由を脅かすものでは決してない」と説明をしたことを報じています。

米科学誌サイエンス(Science)

米科学誌『サイエンス』は「日本の新首相が学術会議に闘いを挑む」というタイトルで、この件について紹介しています。

日本学術会議はノーベル賞受賞者梶田隆章を新会長とし、すべての学問分野における学者80万人以上を代表する機関であり、政策提案、科学の発展や国際協力を促進すると説明。

これまで、会員候補を首相がそのまま任命するのが慣習だったのに、今年になって105人の候補者リストの中から6人が拒否され、菅首相はその理由を説明しないと報じています。

そして「政治が学問の自由を脅かす問題だ」とする毎日新聞の見解や、官邸前で抗議する人たちの存在についても紹介。

英科学誌ネイチャー (Nature)


英科学誌ネイチャーでは、「我々が今政治を報じる必要がある理由」という社説で、米国の大統領選やブラジルのボルソナロ大統領、インドのモディ首相とならべて日本の学術会議の件を問題だとして紹介しています。

新型コロナウィルスが蔓延する時代において政治と科学の関係が重要になっていて、この二つには密接な関係があり切り離して考えることはできない、『ネイチャー』は科学誌であるがこれからは政治についても積極的に報じていくとかなり強い口調で決意表明しています。

この社説では、米国トランプ大統領、ブラジルのボルソナロ大統領、インドのモディ首相などが科学を軽視し、異なる意見を持つ専門家の意見を無視したり、弾劾したりする姿勢を批判すると同時に、日本の学術会議任命問題についても言及。

日本学術会議は科学者の声を代表する独立した組織であり、2004年に首相が指名を承認するようになってからこれまでは候補者がそのまま任命されてきたのに、6人が任命されなかったのは初めての出来事だと説明しています。そして、この6人が過去に日本政府の政策を批判したことがあるとも報じました。

『ネイチャー』は学問の自由が政府によって脅かされることはあってはならないことだとし、世界中の政治家に対し、学問の精神と独立性、多様な観点や国際協力を尊重するべきだと強調しています。

学術会議に相当する英機関は?

Newton

日本学術会議に相当するような機関はイギリスにもあるのでしょうか?

イギリスで、日本の学術会議に近いものとして「王立協会」があげられます。

イギリスの「王立協会」The Royal Societyは1660年に設立された歴史ある学術機関です。

18世紀初めニュートンが会長を務め、その後もアインシュタイン、ワトソンなど歴史に名を残す科学者が会員になっており、現在の会員数約1200人。

会員候補は現会員による推薦、委員会での選考を経て会員となり、その任期は終身制となっています。

会員には報酬があるわけではなく名誉職といえます。

王立協会会員はそれぞれの専門家の立場からイギリス政府や国民一般へ科学的なアドバイスを行ったり、外国の学術団体と国際協力して共同研究をしたり、奨学金などを通して教育面での支援を行うといった活動をしています。

王立協会はイギリス政府が直接関与しているわけではなく、独立した機関です。とはいえ、下記にあるように「税金が投入されていない」ということでもありません。

王立協会は私的な寄付のほかに、英政府からも補助を受けており、その予算についてホームページで詳細を公表しています。

この情報によると、英政府は王立協会に2011年から2016年まで2億3600万ポンド、年間にして約4700万ポンド(約65億円)ずつの助成金を支給しています。

王立協会の本部はロンドンのトラファルガー広場の近くにあります。非会員には一般公開はされていないのですが、私はここを2年前に訪れたことがあります。

古い書籍がずらりと並ぶ図書館、ニュートンなど歴代の有名な科学者たちの肖像画や銅像、委員会が行われるという会議室など「知」の歴史と結集を感じさせるところです。

大きな窓から差し込む光が明るいキャンティーン(食堂)に飾られた、モダンな画風からなるホーキング博士の肖像も印象的でした。

まとめ

イギリスだけではなく、米国の科学アカデミーなど、諸外国には様々な学術者を代表する学術機関が存在します。

その多くは英王立協会のように、政府から支援金を受けていますが、あくまで独立した機関として運営されています。

いくら政府から金銭的な補助を受けているとはいえ、これらの学術団体は政府の「御用機関」ではなく、専門家としての独立性を主張します。

日本学術会議も内閣総理大臣の所轄ではあるものの独立した機関であり、個々の学者の研究内容いかんでその任命を政治的理由により拒否されるべきではありません。もし、そういう理由で任命を拒否しているのではないのなら、本当の理由を日本学術会議、候補者、さらに一般国民に納得できるように説明するべきでしょう。

今、まさにその点に国内外の関心が集まっています。

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