「SPA!」ヤレる女子大生ランキングへの海外の反応が厳しい

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Last Updated on 2022-03-14 by ラヴリー

男性誌「週刊SPA!」が昨年12月25日号で女子大などをランク付けした記事が問題になりました。女性蔑視であるという批判が相次ぎ、記事撤回や謝罪を求める署名活動が広まり、大学当局も出版社である扶桑社に対して抗議。同社は今年になってから女性の尊厳に対する配慮を欠いた記事を掲載したことを謝罪しました。日本のふざけた男性誌がまた馬鹿なことをしたという「事件」でしたが、これが海外の数多くのメディアに取り上げられ、世界中で厳しい批判にあう結果となっています。ここで各国メディアの記事を紹介します。


Contents

「週刊SPA!」の「ヤレる女子大学生RANKING」

男性向け大衆週刊誌「SPA!」の2018年12月25日号では特集記事で「ヤレる女子大学生RANKING」というランキング表を掲載しました。同誌はどの大学の女子学生なら簡単に性関係に持ち込むことができるかを服装や外観に基づいて判断する方法を紹介しています。そして、そういう女子学生が多い大学を実名入りでランキング表にしたのです。

週刊誌「SPA!」がこのような女性蔑視的な記事を掲載したのはこれがはじめてではありません。これまでも同じように女性を性の対象物として扱う視点の記事を掲載しています。たとえば「簡単にヤレる!? お持ち帰りしやすい女の子とは?」。

こういう記事を掲載することが男性読者に期待されているからの編集方針なのでしょう。このような大衆雑誌があること、それがこれまで特に大きな問題にならず許容されていることじたい、日本社会に女性蔑視的傾向がまかり通っていることやジャーナリズムの倫理観念のなさといった背景がうかがえるといえます。

記事に対する国内の批判

「SPA!」の「ヤレる女子大学生RANKING」記事が発売されるとまもなく、この記事が「女性蔑視」「女性差別」だと批判の的になりました。ランキングに挙げられた大学やその学生だけでなく、世間一般の批判がSNSなどに相次いだようです。

そして、署名運動プラットホームであるChange.orgで国際基督教大学の学生である山本和奈が記事撤回や謝罪を求める署名活動を始めました。

「女性を軽視した出版を取り下げて謝って下さい」という署名は大きな反応を呼び、その署名は1月13日時点で49,300人を超し目標の50,000人を突破しそうな勢いです。

年が明け2019年1月9日、「週刊SPA!」記事にランク付けされた5大学は情報を共有し協力のもとに、同誌の編集社である扶桑社に記事についての抗議文を送りました。また、大学の公式サイトでも抗議声明を発表。大学の実名を出されたことと共に、女性蔑視の企画自体を問題視する内容でした。

大学側は抗議文を発表するだけでなく、大学として抗議を行ったことを大学内でも説明し、学生の精神面での影響にも考慮したということです。名前を出された大学の女子学生の中にはショックを受けた人たちもいたでしょうし、その保護者も同様でしょう。この記事が出たことによる実害の可能性もないわけではなく、大学側の処置は適切であったと言えます。

週刊SPA!は謝罪

抗議を受けた「週刊SPA!」犬飼孝司編集長は「読者に訴求したいがために煽情的な表現を行ってしまった。」と釈明しています。そして、「週刊SPA!」は9日夜、犬飼孝司編集長の名前で謝罪文を発表しました。

週刊SPA!の特集記事において、女性の尊厳に対する配慮を欠いた稚拙な記事を掲載し、多くの女性を傷つけてしまったことを深くお詫びいたします。また、購読者の皆様に不快な思いをさせてしまったこと、大学関係者の皆様にご迷惑をおかけしまったことを重ねてお詫び申し上げます。

今回頂戴いたしました多種多様なご意見については、改めて真摯に受け止めるとともに、女性の尊厳に対する配慮を含めて今後の編集方針や誌面づくりに反映させてまいりたいと思っております。」

一応謝罪文を発表していますが、「購読者に不快な思いをさせた」と言うなど、問題の本質を理解しているのかが分からない内容です。騒ぎをおさめるためにとりあえず謝罪しているようにも聞こえます。

このような記事のおかげで女子学生への実害がないとは言い切れず、女子学生やその保護者の懸念、実際の被害の危険性についても触れるべきだったのではないでしょうか。大学側の抗議文ではこの記事が女性の安全を脅かすことをも指摘していました。

海外の反応

「週刊SPA!」の記事については国内の大衆雑誌の問題であり、海外からの関心があるとは思われませんでしたが、この記事はあっという間に世界中に拡散され、各国のメディアが取り上げることになりました。昔はこういう比較的小さなニュースは国内だけに留まっていたものですが、最近は「また日本が馬鹿げたことを」という文脈で広まることが多いようです。

BBCは「日本の週刊誌、女子大生の『セックスランキング』で謝罪」として、英語版、日本語版共にこの記事について取り上げました。一連の騒動を説明したあと、日本は男女平等ランキングで国際的に後れを取っていること、#MeToo 運動も日本ではあまり広まっていないことなどを東京医科大学などの入試における女性差別と共に紹介しています。

英インデペンデント紙でも「SPA!」記事について掲載。 世界中でセクハラや性暴力に反する#MeToo 運動が高まる中、日本社会は男女平等において大幅に遅れをとっていることと同時に、女性の政治ビジネス進出割合がG7諸国中、最下位である背景を指摘しています。

英ミラー紙でもこの件について紹介し、その背景として日本が世界でも女性差別のひどい国であり、144ヶ国中110位であることを指摘しています。また、複数の医大で女性に対し入学差別を行なっていたことも併せて取り上げて、女性の扱いがいかにひどいかという例としています。

米国でもこの件は複数のメディアで報道されており、CNN社ではこの雑誌の記事内容や出版社が発表した謝罪について掲載。こちらでも東京医大入試における女性差別の件や日本がジェンダー平等において先進国のあいだでは「最下位」であることも記事に載せています。

New York Postでもこの記事について、また出版社が行った「謝罪」についても報じています。「ギャラ飲み」パーティーにおいて女性の同意を無視して性関係に持ち込もうとする記事内容が問題であるにも関わらず「読者に不快な思いをさせた」という謝罪についての批判と共に出版社に謝罪をと求める署名活動についても紹介しています。

Time誌 では「日本タブロイド紙『女性を性関係に持ち込みやすい』大学ランキング記事で謝罪」としてこの件を紹介。背景として日本において女性が未だに低い位置に置かれていてジェンダー指数が144ヶ国中110位であることにも触れています。

「週刊SPA!」の記事について掲載されているメディアは欧米諸国だけにとどまらず、中国やアジアのメディアにも扱われています。パキスタンの英字紙であるThe Nation では「ヤレる女子大学生RANKING」記事の内容だけでなく、日本の女性差別がいかにひどいかということを、自民党議員の「女は子供を3人産むべき。未婚女性は社会の荷物」発言 、相撲で救急に駆けつけた女性を土俵から排除した事件、9つの医大が入試で女性差別をしたことなど様々な例を挙げて紹介しています。

これを見てもわかるように、「週刊SPA!」記事はある国の一つのメディアでたまたま取り上げられたということではなく、世界中の国で日本と言う国がどんなに女性差別がひどいかということを表す一つの例として掲載されているのです。

これまでも日本の女性差別・女性蔑視の傾向や行き過ぎたセックス・カルチャーについてはBBCの「日本の秘められた恥」BBCのセックスロボットなどの番組で扱われてきました。実際に起こった性暴力事件や大学入試における女性差別に比べれば「週刊SPA!」記事は実害があると証明されたわけではなく、大衆週刊誌のたわいない記事に過ぎないと軽視する観点もあるようです。けれども海外諸国でも、この記事は広く日本社会において女性が尊重されず、性の対象として値踏みされ、扱われている風潮を象徴する出来事として紹介されているのです。

新潮45の記事

まだ記憶に新しいことですが、2018年の9月に月刊誌「新潮45」が「LGBTは生産性がない」とする杉田水脈議員を擁護する記事を掲載したことで批判された上、休刊に追い込まれるという出来事がありました。

新潮45の事件では、当初は小さかった批判の声が拡散し抗議活動が繰り広げられ、当の雑誌だけでなく新潮社自体のボイコットとか、作家の寄稿拒否、販売店の自粛など新潮社全体に影響を及ぼす事態となったのです。結果的には新潮社が「新潮45」の休刊を発表したことで騒ぎが収まったのですが、それでよかったのかという声も上がっていました。

謝罪をしたり記事を取り下げたり出版を封じ込めたらそれで終わりというプロセスでは、本来の問題に対する議論がなされず、根本にある問題だけはいつまでも解決されないまま別の形をとって継承されていくということになりがちです。

SPA!編集部との話し合い

「SPA!」記事の件でChange.orgで署名活動を行ってきた国際基督教大学の学生、山本和奈は「謝罪はされたものの、騒動を収めるための表面上の謝罪にすぎなかった。根本的な問題を解決するため、対話の場を持ちたい」と1月9日に編集社に対談を申し込んでいます。

この署名はもともと記事を取り下げ謝罪を要求するものだったのですが、それでは真の問題は解決しないということがわかったのでしょう。彼女はChange.orgの署名サイトで週刊SPA編集部に送ったという対話を望むメールを紹介し、その中でこう語っています。

当該企画がどういう過程で決定したのか、なぜこの記事を出版することになったのか、誰が承認したのかなど背景・起こった要因を徹底的に分析し、そこに潜む構造的な問題を見つけ出す必要があると思います。そうでなければ、今回と同じようなことがまたどこかで起こり、女性を始めとする大勢の方々の尊厳を傷つけるこのような行為が繰り返されるのでは無いかと危惧しております。

今回のような記事が一つなくなれば女性蔑視の問題が解決するということではありません。社会全体がこの問題について意識をし、みんなでより良い方向に向かっていく必要があると考えます。そして御社には、女性蔑視の文化を助長してきた責任があるのではないでしょうか。

私達は、お互いを批判し合うだけの非建設的な争いを望んではいません。
多種多様な背景と様々な考え方を持つ方々とダイアログ<会話>をし、お互いをよりよく理解して共存していける健全な環境を目指したいと考えています。

何か「不祥事」が起きた時、記者会見を行い頭を深く下げて「謝罪」することでその罪が償われるような終わり方をするのが日本社会の特徴と言えますが、それで本当にその問題は解決されるのでしょうか。その問題が起きた根本的な要因をさぐり、その要因によって同じような問題が起きないようにするために話し合うことは建設的な方法と言えるでしょう。

日本では異なる背景や意見を持つ人同士の「対話」が難しい側面があります。けれども、「SPA!」記事で浮上してきた問題の背景には日本社会に蔓延し、それを許容する風潮があり、表面的に「謝罪」することによってよしとする問題ではありません。この対話が実現するのか、それによってどのような展開がなされるのかが注目されます。

追記:SPA!編集部との話し合い

2019年1月14日に週刊SPA!編集部で署名活動を行った国際基督教大学生ら4人と話し合いが行われました。この会談の内容は有識者のコメント共に週刊SPA!1月29日号にも掲載されました。

会談には署名をはじめた山本和奈ほか国際基督教大学生3人とNPO「ヒューマニティー」スタッフと週刊SPA!編集長などのスタッフ4人が参加して、社会の中でのメディアの役割について率直な話し合いが行われました。

週刊SPA!は問題になった記事を掲載した理由として「世間の耳目を退きたいためにより煽情的なものを求めていた」と語っています。性犯罪を助長するような意図はなかったにしろ、誌面を作る過程で感覚がマヒしてしまったとも。この記事についてはSPA!女性編集者の中からも「ひどい」と言う声もあったにもかかわらず、それを吸い上げる仕組みになっていなかったことも認めました。

このような事が再発することがないように、この話し合いについて編集部員にフィードバックする、編集方針について編集部内で討議する、編集方針を決めてステイトメントを出すと述べました。

山本和奈からは性的合意についてきちんと取り上げてほしいと要望があり、SPA!はそれを実現すると約束しました。また、日本ではセックスの話題がタブーになりすぎるが合意の上でのセックスは間違っていないという意見も出され、セクシュアルな記事についてのアイディアを大学生側から提案されるという展開になりました。

署名当初の「出版を取りやめ謝罪を求める」という目的からそれでは何も解決しない、話し合いで解決策を探りたいという願いはSPA!編集部の率直で誠実な態度もあり実を結んだようです。同誌がこれからどういう編集方針に変わるのか見守っていきたいとともに、他のメディアでもこういう視点から編集内容を見直してほしいと願います。

(敬称略)

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