男性に夜間外出禁止令を:ロンドンの女性殺人事件後に

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Reclaim the night

Last Updated on 2022-03-07 by ラヴリー

ロンドンで女性の遺体が発見され、ロンドン警視庁の警官が誘拐と殺人の疑いで逮捕されたことで、イギリス中がショックを受けています。「危ないから女性は夜一人歩きしないで」という声が上がる中、女性国会議員は国会で「男性全員に夜6時以降の外出禁止令を」と提案して話題になっています。

Contents

サラ・エヴァラード事件


3月3日の夜9時、33歳のサラ・エヴァラードはロンドン南部のクラパムの友人を訪問したのち、一人でクラパム・コモンを通り、ブリクストンにある自宅まで歩いて帰ろうとしていました。けれども、夜の9時半にクラパムの防犯カメラに姿が撮影されていたのを最後に、行方が分からなくなりました。

その後、彼女の捜索が続いていましたが、3月10日にケント州で遺体が発見され、サラ・エヴァラードのものだと確認されました。その間、ロンドン警視庁の48歳の現職警官が誘拐と殺人の疑いで逮捕されています。彼は2018年に警官となり、ロンドン市内で首相官邸や外国の公館などを警備していましたが、事件が起こったときは職務中ではなかったそうです。

ヨークシャー・リッパー事件

今回の事件に関連して40年以上前の「ヨークシャー・リッパー」事件について語る人がいました。

これは1970年代後半にヨークシャーで女性が次々に襲われた事件で、犯人は「ヨークシャー・リッパー」と呼ばれました。5年間で13人の女性を殺した男性は大掛かりな捜査の後に逮捕されたのですが、捕まるまで地元民の恐怖はかなり大きかったろうと想像します。

その当時、地元では女性に「夜の一人歩きは危ないから外出しないように」ということを繰り返し注意していたそうです。もちろん女性たちの身の安全を思ってこその警告なのですが、それに抗議する女性たちがヨークシャーのリーズでデモを行いました。

彼女たちは「私たちは被害者なのに、理不尽な我慢を強いられている。」「男性こそ、夜間外出禁止令を強制されるべきだ」と主張したのです。

これには苦笑する人が多く「ほとんどの男性は無害であるのだから、たった一人の男性加害者のために全員が夜間外出禁止なんてことはばかげている」と一笑に付されました。

そして今回のサラ・エヴァラード事件があった後、この写真を掲げて「44年後にイギリスでは同じことが起こっている。」という女性がいたのです。

「女性は夜一人歩きするな」

サラ・エヴァラードが行方不明になり捜索されていた時も、「女性の夜の一人歩きは危険だ」という声が上がっていました。ロンドンは人口が多く道を歩いても全く一人になるようなことは少ないのですが、今はロックダウン中で外出する人が減っているので、ことさらそういわれるのかもしれません。

ロンドンは東京と違って公園や広場、公共の緑地などがあちこちにあり、彼女が一人で歩いたとされるクラパム・コモンもそういう緑地のひとつです。

このような公共空間は日中は緑あふれる自然環境でも、夜になると街灯も少なく、人通りもめっきり少なくなります。ロンドンでは道路や町中にCCTVカメラがあちこちに設置されていて、彼女の姿も防犯カメラに撮影されていたのですが、すべての道にカメラを置くわけにはいきません。

リーズでのデモから44年たった今再び「危ないから女性は夜、一人歩きはするな」との警告が上がるのも自然なことかもしれません。

けれどもこういう声に抗議して、イギリス議会でグリーン党の上院議員であるジェニー・ジョーンズ議員は「女性を守るために、男性全員を対象として夜6時以降の外出禁止令を出すことを提案する」と語りました。

これには44年前と同じく「何をばかげたことを」と語る男性が多い中、女性にとっては笑ってすますわけにはいかない話です。女性なら誰でも心当たりがあるからです。

夜道を一人で歩けないことで不便な思いをしたり、思いがけず誰もいない道端で男性一人または複数とすれ違う時にどきどきしたり、後ろから誰かがつけているような気がして心配になったりということはよくあることではありませんか?私もあります。女性なら誰もが「サラ・エヴァラードは私だったかもしれない。」と思うから、この事件は他人ごとではないのです。

外出禁止令のことを英語で「curfew(カーフュー)」と言いますが、ハッシュタグ #curfewformen がトレンドに上がるほど、この提案は多くの女性の(一部の男性も)賛同を得たようです。

どうして被害者が我慢するのか

女性は自らの身を守るために「夜道を歩くな」「ミニスカートや胸のあいた服を着るな」「セクシーな下着をつけるのは性行為に同意をあらわすことだ」と言われ続けています。

もちろん、個々の女性は自分の身を守るためにありとあらゆることをしています。でもどうして被害者のほうがここまで我慢したり、努力をしたり、行動を制限されなければならないのでしょうか。

被害者または被害者になる可能性のあるものに理不尽な我慢や行動制限を強いるのではなく、加害者になるかもしれないものに必要な教育を施したり、社会がそういう加害者をうまないような文化、環境、システムを作り上げることこそが必要なのではないかということが叫ばれているのです。

Reclaim These Streets


この事件とその後の出来事を受けてイギリスでは、「#ReclaimTheseStreets(道を取り戻そう)」という呼びかけが起こっています。これはサラ・エヴァラードの死を悼み、女性が安全に道を歩けるような社会にすることを願う女性たちが作ったグループ。

「女性がどんな服装をしようと、どこに住もうと、どんな時間であろうと、だれもが安全に歩ける道であるべきだ。」と主張しています。

そしてこのグループが、サラ・エヴァラードの死を悼むために、彼女があの夜歩いたクラパム・コモンをはじめ、全国各地で3月13日の夜、みなで集まって祈りをささげようと呼びかけたところ、たくさんの女性・男性が賛同し、イギリス各地でイベントが計画されました。

けれども、コロナによるロックダウン中だということでこの計画は警察からの反対にあい、グループはクラパム・コモンでの集まりは中止し、追悼の祈りは公の場ではなく、それぞれが自宅で行うようにと発表しました。

それにもかかわらず、当日の夜クラパム・コモンには「自発的に」集まった女性が多かったようです。

世界中で同様の問題が存在する

この問題はもちろんイギリスに限ったことではありません。「フェミサイド」と名前もついているように、女性に対する暴力は世界中で問題になっています。

見知らぬ他人による暴力もですが、家庭内や知りあいの男性から受ける暴力も深刻です。今は、ロックダウンにより逃げ場がないと感じる女性も増えています。

日本は殺人やレイプなどの凶悪事件は比較的少ない国ですが、痴漢やセクハラといった被害は日常茶飯事だといいます。そしてそういったケースこそ、女性は「それくらい」と我慢や泣き寝入りさせられていることが多いのも事実でしょう。

そして加害者をなくしたり、厳しく罰するといった対策をする代わりに「女性は痴漢にあわないように気を付けて」と警告する声ばかり聞こえるのも常ではないでしょうか。

男性には何ができる?

今回の事件を受けて、この問題を男性として真面目に受け止める人たちもいました。自分はもちろんそういう加害者になることはないにせよ、同じ男性として女性を守るためにどうしたらいいのかと考え、女性に意見を求める人たちです。(もちろん、男性といっても自らが被害者になることもあるわけですが)。

上記はこの事件を受けて、ある男性が「道行く女性が不安にならないように男性ができることはあるだろうか?」と聞くツイートです。

これに、たくさんの女性が「こうしてほしい」「こうしたら」とレスを返し、それを読むほかの男性が「今まで気が付かなかった」「とても役に立つアドバイスだ」と言っています。

体が大きな男性など、自分の存在じたいが見知らぬ女性にとって潜在的な恐怖になっているなんて想像もできないかもしれません。でも、女性が誰もいない道を歩いている時に、すぐ後ろを大きな体をした男性がついてきたりしたら、落ち着かない気がするということは、よくあるものです。

女性が一人で歩いていたら、男性は間をあけて歩くようにしてください。 必要なら道路を横切って反対側の歩道を歩くのもいいでしょう。

フードをかぶって顔を見えなくしたり、サングラスをかけたまま歩く男性とすれ違うのも女性にとっては不安に感じることがあります。

それから、じろじろ女性をながめたりしないでください。

それから、彼女がほかの男性に声をかけられたり、嫌な思いをさせられたりしないように遠くから見守ってあげてください。

女性にばかり我慢を強いるのではなく、みんなで誰もが安全安心に毎日を送ることのできる社会を作っていきましょう。

 

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コメント

  1. 日本人 より:

    日本で同じように警察官が犯人の事件が起きたら、表沙汰にならないように迷宮入りしてしまいそうな気がする。東京では公立高校の入試でも男女不平等(女子の入学基準点は男子よりも高く設定されている)が堂々と続く。

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