大坂なおみ7枚のマスクでUSオープン優勝:日本と海外の反応

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Naomi Osaka

2020年全米オープンで大坂なおみが見事2度目の優勝を勝ち取りました。全米オープンの7試合で、人種差別への抗議の意を示すためのマスクを着用して現れた彼女への反応は米国では歓迎されましたが、日本では肯定的なものばかりではなかったようです。

Black Lives Matter運動


米国では黒人差別に抗議するBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動が盛り上がっています。この運動はこれまでも行われてきましたが、ウィスコンシン州で黒人男性が警官から銃撃される事件が起こったことで、大規模な抗議デモが行われ、バスケットの試合が抗議ボイコットにより中止になりました。

このような状況の中、テニス界でも全米前哨戦のウエスタン・アンド・サザン・オープンの試合で、大坂なおみが準決勝戦のボイコットを表明。彼女は黒人差別に抗議の意を発表し、試合を棄権すると語りました。

私はアスリートである前に一人の黒人女性です。

テニスのプレイより注目してもらいたい大切な問題があるのです。

これを受けて、大会側は「人種差別と社会的不平等に対し、結束して反対する」とその意見に賛同しました。そして、その意思を示すためにその日の試合をすべて中止し、翌日に延期することにしました。

大坂なおみの抗議の声を、今でも白人がその大きな部分を独占する米国テニス界を動かしたのです。彼女の勇気ある行動とそれを受け入れた大会運営に米国では賞賛の声が上がっていましたが、日本では「主義主張で試合をボイコットするというのはアスリートとしてどうかと違和感を持つ」というような意見も散見されました。

全米オープンの7枚の名前入りマスク

全米オープン大会が始まると、大坂なおみは黒人差別の被害者の名前を付けたマスクを着用してテニスコートに現れました。7人の名前を冠した7枚のマスクを決勝まで7回着用することで、BLM運動支持を表明したのです。

マスクに名前が記された人達についてはこちらのBBC記事に説明が載っているので読んでみてください。米国で黒人が社会や警察に理不尽な差別を受けている様子が紹介されています。

大坂なおみのマスク着用ジェスチャーに被害者の親が感謝の意を表す場面もありました。

大坂なおみBLM運動姿勢への反響:外国では

BLM運動は米国だけでなくほかの国にも広がり今や世界的なうねりを見せていて、一般民だけでなく政治家や有名人、企業やSNSプラットフォームまで賛同の意を表しています。このような背景で大坂なおみがテニス大会において黒人差別に抗議する表明をたった一人で行ったことは米国その他の国々では称賛され、敬意を集めていました。

彼女のスポンサーであるナイキも前々から人種差別運動に反対していることは知られています。数年前に人種差別に抗議し国歌斉唱中に起立しなかったキャパニック選手を広告に起用したことは記憶に新しいこと。この時、トランプ大統領をはじめとする「愛国者」をを敵に回しながらも、キャパニックを支持する人のおかげでナイキの売り上げが上がるという結果になりました。

黒人差別問題だから黒人だけ、米国だけの問題ではなく、白人も含め多くの人がこの運動に賛同しています。なぜならこれは単に「黒人差別」ではなく、どのような属性の人でも人間として、社会の一員として公平に扱われるべきだという人権問題として理解されているからです。

大坂なおみBLM運動姿勢への反響:日本では

大坂なおみは黒人差別問題についてTIMEのインタビューでこう語っていました。

私はイギリスから見ていて、大坂なおみが黒人差別に抗議することは素晴らしいことだという前提で認識していました。日本では様子が違うのかなと思ったら、毎日新聞の記事に下記のような日本のスポンサー企業関係者の声が紹介されていました。

 「上まで勝ち上がっている時にやらなくてもね。できればテニスのプレーでもっと目立ってほしいんですけど……」

「黒人代表としてリーダーシップをとって、人間的にも素晴らしい行為だとは思うが、それで企業のブランド価値が上がるかといえば別問題。特に影響があるわけではないが、手放しでは喜べない」

「人種差別の問題と本業のテニスを一緒にするのは違うのでは」

日本では彼女の人種問題支持に理解を示しつつも、テニスに集中してほしいという考えも多いようです。この記事だけでなく、TwitterなどSNS上でも「スポーツに政治を持ち込むな」「彼女は本当に日本人なのか?」などといった意見から「昔のかわいいなおみちゃんを応援していたのに」「日本人なら日本人らしくふるまってほしい」というような感想まで様々でした。

ちなみに毎日新聞はこの記事を英語版でも紹介していますが、この記事を英語で読んだ外国人たちは「Japan does not deserve Naomi Osaka」(大坂なおみは日本にはもったいない)と言うだろうなと思いました。

黒人として、日本人として


大坂なおみは母が日本人父がハイチ系米国人で日本生まれですが、米国で育ちました。

大坂なおみはハーフ母が日本人父がハイチ系米国人、国籍選択は?

彼女はEsquire寄稿記事で自分のアイデンティティーについて「日本人であり、米国人であり、ハイチ人であり、黒人であり、アジア人である」と定義し、こう語ります。

日本は均質的な国で、人種差別問題を取り上げるのは難しい。

少数だが私もネットやテレビで人種差別的なコメントを受けた。

けれども、大多数の人は応援してくれる。少数の無知が多くの人の進歩を妨げてはならない。

彼女は米国、特に白人が多数を占めるテニス界で黒人として差別され、日本でも日清CMのホワイトウォッシュ問題に代表されるような無理解からくる差別も受けて来ました。

大坂なおみ日清CM白い肌でホワイトウォッシュと批判を受け削除

そんな彼女だからこそ、肌の色や国籍といった属性で社会において理不尽な扱いを受ける人がいることに一石を投じたいのでしょう。それは米国および国際世界での黒人、広くは非白人の扱いもそうですが、日本における「非純粋日本人」への差別も含みます。

彼女は自分が人種差別解消に少しでも貢献できたらうれしいと言い、こうも語っています。

私がグランドスラムで優勝したとき、日本の教室にいるバイレイシャルの女の子が誇らしさで輝いている様子を想像することに喜びを感じる。

ロールモデルを持つことで彼女が自分自身に誇りを持ち、校庭が彼女にとってより楽しいところになることを心から願っている。そして大きな夢をもってほしい。

日本人選手としてテニスをしているのだから日本人らしく振舞えと言う人もいます。けれども彼女は黒人でもあり、それは日本人であるというアイデンティティーと両立するもので、それを誇りに思ってもいます。その上でそれを自分の問題だけで終わらせず、多様性が必要な日本社会で様々な属性の人たちが生きやすくなるようにしていきたいという姿勢はすばらしいことです。

日本ではBLM運動を遠い米国で起こっていることで、日本には関係ないと思っている人たちもいます。けれども、これは黒人だけの問題ではなく、どんな人でも平等に公平に扱われるべきという人権問題であり、日本社会にも確かに存在する様々な差別問題に通じるものです。

そしてアスリートも人間であり、社会的な存在である以上、不合理な社会問題を解消したいというのは人間として自然な感情であり、その使命感を持って勇気ある行動をする大坂なおみを尊敬こそすれ批判などするべき場合ではありません。

大坂なおみの成長

大坂なおみが全米オープンであこがれのセリーナ・ウィリアズスを破り初めて優勝を勝ち取った時、彼女は表彰式で泣いてしまいました。

大坂なおみ全米オープン優勝/セリーナ・ウィリアムズのペナルティと表彰式のブーイング

あの当時シャイな女の子だった彼女が、自分の声をひるむことなく世界にまっすぐ伝える強い女性に成長しました。数年前から彼女を見てきて、その素直でまっすぐな性格に立派な親御さんにのびのびと育てられたのだろうなと思っていましたが、今の彼女の強さは自分自身で勝ち取ったものでしょう。そのうえで偉ぶったところや作り物のかけらがなく、自然体での言動は昔のままで、世界中にファンが多いのもうなづけます。

優勝した後で彼女がつぶやいた言葉が力強く、これからも彼女はこうやってテニスを通じて世の中の不合理について発信を続けていく覚悟なのだとわかります。

若い女性がこのように「成長」することが気に入らない人たちが世の中には、そして特に日本には多いようです。それを認めたくない気持ちからか、彼女の言動を何かと批判したがるコメントも目にしますが、そのような外野の騒音は気にすることはありません。

これからも世界中の、そして日本の若い女の子に夢を与えてくれるロールモデルとして活躍してほしい。そして、国籍とか人種とか外見とかで人をカテゴライズしてよそ者として扱う人達の認識を変えるべく、日本でも声を上げ続けてほしい。

日本には大坂なおみが必要であり、日本という国が彼女にふさわしい多様性のある国になってほしいと願います。

(敬称略)

大坂なおみ全米オープンのブーイング理由【動画】海外メディアから

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