Last Updated on 2022-11-16 by ラヴリー
11月19日は「国際男性デー」、英語で「International Men’s Day」 です。3月8日の国際女性デーに比べると知名度が今一つですが、どういう意味があるのでしょうか。女性にとっては男性は一般的に女性よりも地位や力があり女性を差別する側であり、わざわざこのような特別な日を定めてその権利をさらに強めるようなことをしなくてもいいのではないかという声も上がってきそうですが、実際はどうなのでしょう。
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国際男性デーとは
3月8日に定められている国際女性デーは国連でも認められ世界中に盛大にイベントが行われる日ですが、国際男性デーの方はあまり知っている人がいないのではないでしょうか。
この日はカリブ海にあるトリニダード・トバゴで始まったイベントで、そののちオーストラリア、米国、欧州各国、アジア、アフリカ諸国など世界80ヶ国以上に広まっています。国際女性デーとまではいかずとも、少しずつ知名度が上がってて、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が協力しています。
国際男性デーは国際女性デーに対抗するものとしてではなく、男性が日々経験する問題に焦点をあてることを目的として作られました。主な取り組みは下記の通りです。
- 有名な男性だけでなく普通の男性のロールモデルを促進する。
- 社会やコミュニティ、家族、育児、環境に男性の貢献を称える。
- 男性の健康と幸福に焦点を当てる。
- 福利厚生や社会での、また法的な男性への偏見や差別を明らかにする。
- ジェンダー関係を改善しジェンダー差別を促進する。
- 人々の可能性を最大限に引き出して成長できる、よりよい安全な世界を作る。
男性が抱く問題とは
性差別や偏見というと、女性に対するもののことを指すことが多いですが、男性の方はどうでしょうか。何かというと男、女と性別によって役割や仕事を分けることを前提にした社会では男性もつらい思い、理不尽な扱いを受けることがあります。多くの男性はそれを当たり前に受け取ったり、男性であるが故の利点の方に重きをおいていますが、逆に悩みや葛藤を抱えている男性も少なくないでしょう。
私は女性なので日頃は女性が受けている偏見、差別について考えがちですが、今日は自省の念もこめて、男性の視点から男性が抱えている問題を考えてみたいと思います。
メディアのステレオタイプにおける男性像
メディアに出てくるステレオタイプの男性というと、背が高くてハンサムで仕事ができて高給取りのお金持ち。または、マッチョで筋肉隆々のスポーツマンで勇気があり、喧嘩に巻き込まれてもこわがりもせず超然として相手をやっつける。普通の男性がテレビや映画でこういうのを見ると現実的ではないと思うでしょう。
もちろん女性の方も、普通の生活でこういう男性を求めるのは現実的ではないとは思っているでしょう。それでも婚活する女性は未だに「3高」を望んだり「年収はせめて500万円はないと」と言いがち。
男性だってきれいな女性が好きだったり、メイクやヘアは完璧にしてほしいとか、体形や服装はこういうのが好みとかいう人も多いのでお互いさまと言えばその通りですが、メディアなどに出てくる特別な男性をお手本にして実生活の男性もそうあってほしいと願うのは現実的ではないことが多いでしょう。
メンタルヘルス
男性というものは愚痴や悩みを口にするものではないと言われがちです。女性なら家族や友人など親しい人に相談したり悩みをうちあけたりしますが、男性はなかなか心を開けないものです。仕事であれ家族問題であれ不平不満を言うと男らしくないといわれがち。悲しい時に泣くことも許されません。
男性は精神的にかなり大きな問題を抱えていても、周りに打ち明けることなく、カウンセリングや精神医などのプロフェッショナルの助けを借りることなく一人で悩んでいることも少なくないのです。最悪の場合は自ら死を選ぶ人もいます。実際、自殺率は女性より男性の方が2倍程度高いのが常です。
仕事のプレッシャー
日本ではいまだに男性が学校を卒業したら定年まで休みなくずっとフルタイムで働き続けるのが「普通」です。女性の場合は結婚や出産で仕事をやめたり、一時的に休職したり、子どもが小さい間は専業主婦になったりパートで働くなど、様々なオプションがありますが、男性にはそういった選択肢はありません。
ずっと働き続けたい女性にとって今の社会には様々な制約がありそれは大きな問題なのですが、一部の男性にとっては「家庭に入る」ことができる女性がうらやましいと思うこともあるでしょう。終わりのない家事育児、社会参加ができないことによる焦りや孤独感といった女性の悩みとは反対に、通勤地獄にも無縁で昼寝のできる主婦の生活の方が魅力的に見えるかもしれません。
ブラック企業での長時間労働で過労死寸前だったり、パワハラ上司の下で精神をすり減らし、部下にも馬鹿にされる毎日。それだけ働いても昔のようには稼げないし昇進の機会もやってこないのです。
妻には家族との時間を取ることを要請されるが、育休も取れないし保育園のお迎えに行く時間に帰宅するなど到底無理。それどころか理不尽な転勤命令が出て単身赴任するしかない状況に陥ってしまうこともあります。
「女性が働けない社会」と「男性が死ぬまで働かなければならない社会」は裏表なんですね。女が家庭に縛られることを強いるシステムは、男を仕事に閉じ込めることを前提にしているといっていいでしょう。
経済的プレッシャー
共働きの家族が増えてきているとはいえ、未だに男は大黒柱であり家族を養うべきとする見方が根強い日本。妻の稼ぎはパートで控除額以下に収まるようにするという家庭も多いでしょう。妻が出産で仕事を辞めたりすると家族全員の経費が男性の肩にのしかかってきます。不景気の折り、収入はなかなか増えないのに、年々増えていく子どもの教育費が重くのしかかります。
家計が火の車なので、自分が稼いだ給料なのに自分が使えるお小遣いはほんの少し。それなのに、妻や子供は稼いでいる一家の主を感謝も尊敬もしていないように見えます。
居場所がない
仕事が忙しいので、家事育児に参加する時間なんて到底とれないため、妻にしょっちゅう文句を言われます。家族のために働いているのに仕事のせいで家族と一緒に過ごす時間がないものだから、家に帰っても自分の居場所がないようになってきます。家族とのコミュニケーションもうまくいかず、関係がぎくしゃくしてきて、しまいには子供には嫌われるし、妻も「亭主、元気で留守がいい」と思っているよう。
最終的に結婚が破綻して離婚するとなると、子供は母親のところへ行く形になりがちです。親権は取れず、家も家族のために残して自分が家を出て、養育費だけは送り続けないとなりません。
独身男の孤独
それでもまだ結婚できた男性はいい方です。十分稼げないので結婚もできない男性もたくさんいるのですから。ロスジェネ世代などで親が無理して大学まで出してくれたのに就職できず非正規の仕事や無職のまま今に至っている人もたくさんいます。
そういう男性は今でも親の家に住み、母に炊事洗濯掃除など家事を全部してもらっています。女性と付き合いたいのはやまやまなのですが、経済力がないため、敬遠されるのです。このままでは、この先一生結婚もできず家庭も持てないまま一人で年老いていく姿が垣間見えます。
近頃は女性にもシングルは多いのですが、女性の場合は「独身貴族」と呼ばれ、女友達と外出したり旅行したりして自由を満喫しているように見えます。その反面、男性がシングルだとかわいそうな独り者とかオタクとか言われて肩身が狭い思いをしがちです。
女性の権利拡張の陰で
男女平等の掛け声で女性の権利は保護され、拡張されてきています。職場の女性は言いたいことを堂々と言うようになってきて、権利だけを振りかざし、お茶も入れてもらえません。また、職場や取引先でこれまでと変わらない言動をしていても、急にセクハラだと言われるようになってきてとまどうこともあります。
#MeTooという一声で女性が被害者になり、男性がすべていけないことになってしまうのです。男性の方は何がいけないのかよくわからないままに加害者とされ、理不尽ではないかと思うこともあるでしょう。
男もつらいよ
こうしてみてみると、男性もつらいんですよね。子どもの頃から 「男の子だから泣くな」とか「男のくせにヘビがこわいなんて」とか言われたり、大人になったら「家族を養う甲斐性」を求められ、結婚したらしたで妻からの「家事育児に参加して」の要望と会社の「父親が育休とるなんて」の板挟みとなってしまうのです。
#MeTooにしても、これまで女性が不本意に思ってもずっと我慢してきたことで、男性の方は自分が女性にする言動が悪いことだとは気が付いていない場合もあるでしょう。もちろん、泣き寝入りする女性を利用して確信犯でセクハラや性暴行を行う男性もいます。けれども、悪いことには違いないにせよ、女性の気持ちがわかっていないだけだった男性もいるわけで、そういう人たちには知識と教育が必要なのです。
男も女も幸せになれる社会とは?
このように男女の役割が別々にきっちりと固定された社会の根底にあるのは強い男性が優位に立ち、女性が陰でそれを支えるという社会システムです。性別役割分業を前提にした社会の仕組みは女性には社会や職場で活躍する機会を奪い、男性には生活者として家庭を大切にする生き方を否定しています。
男性差別も女性差別も明らかに異なる形で存在しているのですが、その原因は実は共通するものなのです。そしてそれは単なる慣例であり、変えることができます。
今のままでは生きづらいとか、女性ばかり得をして自分たちは割を食っていると感じる男性のみなさん、女性と一緒に今の社会を変えていこうと思いませんか?
(私も含めて)女性も男性の横暴、わがまま、身勝手さばかりを嘆くのではなく、男性と話し合って必要な知識を提供する努力をしてみませんか。
考えようによっては今はその絶好の機会だと思います。数十年前はまだ男性が外で働き女性が主婦という形が当たり前で、女性もそれを受け止めていました。それ以来、女性が社会や職場に進出したいと思うようになり、制度も少しずつ変わってきています。その上、政府も「女性の輝く社会」を目指しているし、働き方改革についても推進しています。
これを機会に、男性が育児休暇を取ったり、家事育児に参加するために勤務時間を短縮する要望を出すのは時代の趨勢にあっていると言えます。これまでがずっとそうだったからと我慢するのではなく、男性も女性も生きやすい社会にするために声を上げていくことが今こそ必要だと思います。
最後に、007のボンド役で有名なダニエル・クレイグが抱っこひもで赤ちゃんを抱えている写真でしめます。最高にクールだから。
Oh 007.. not you as well?!!! #papoose #emasculatedBond pic.twitter.com/cqWiCRCFt3
— Piers Morgan (@piersmorgan) 2018年10月15日