日本の芸能ニュースを国際的に見ると?パンとサーカスを与えられた愚民たち

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Last Updated on 2019-07-22 by ラヴリー

イギリスに住んでいてたまに日本に帰ると、メディアでも日常生活でも芸能ニュースばかり話題になるのに驚きます。Yahooニュース一つとっても、イギリスやアメリカでは芸能ニュースはほんの一部で自国や外国の政治経済社会といった時事問題を扱うニュースが多いのに、日本では芸能人や有名人のゴシップ記事が多くを占めています。どうしてなのでしょうか。


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日本のニュース

普段イギリスに住んでいてたまに日本に帰るとメディアでは芸能人や有名人が結婚したとか誰とつきあっているとか、何か悪いことをしたとか、私にとってまったく関心のない話題ばかり目につきます。テレビなど面白くないのでほとんど観ませんが、たまに目に入るものもそういう話が多く、家族や知り合いもそういうことを日常的に話しているようです。

私は日本を離れて長いのでみんなが知っている「有名人」を知らないから特にそうなのかもと思っていましたが、どう考えても異常です。イギリス、アメリカ、日本の『Yahoo!』ニュースを比べて各国の『Yahoo!トップニュース』でどんなニュースが取り上げられているのか比較したデータがあったので紹介します。

日本 アメリカ イギリス
世界のニュース 17 % 24 % 22 %
自国のニュース 38 % 65 % 51 %
スポーツニュース 9 % 7 % 15 %
芸能ニュース 35 % 3 % 12 %
その他 1 % 1 % 0 %

これを見てもわかるように、『Yahoo!トップニュース』というメディア一つとっても日本の芸能ニュースの割合は極めて高いのがわかります。

世界中で様々な重要問題が起こっているのに、日本ではその2倍以上のスペースを費やして誰それが結婚したとか離婚しそうとかテレビで何か言ったとかということを伝えているのです。それが日本人が知りたいことだから?

芸能ニュースばかりの日本は異常

私はこれを見て、日本では思考停止して目先の娯楽ばかりを追いかける人ばかりになり、世の中の問題について知り、課題に対して自分なりの考えを持って判断し行動するといった人が少なくなってしまっているのではないかと思いました。

このことについて、ウーマンラッシュアワーの村本大輔のツイートもありました。

「パンとサーカス」とは古代ローマの教訓

私のツイートで「パンとサーカスって何?」って思われた人がいるかもしれませんが、これは古代ローマのお話です。

当時、都市国家だったローマは周辺諸国を征服し広大な領土と奴隷を得て、富を築きました。働かなくても安い農産物が得られるようになったので、独立自営農民だったローマ市民の中には農地を手放し無産市民(プロレタリアート)になるものが多くなりました。彼らはローマ市民としての選挙権を持っていて政治家は彼らを無視するわけにはいきませんでした。

ローマ帝国がこのようなローマ市民に穀物の無償配給を行うようになると、働かなくなった市民は暇になりました。それで政治家は円形競技場や競馬場などを建て、市民に競技や剣闘試合などの見世物を提供するようになったのです。「パン(=穀物)とサーカス(=娯楽)」を与え続けることによって日々の生活に不満がないように操り、政治への関心から市民を遠ざけようとする政策でもありました。

この結果「パンとサーカス」に没頭して働くことをやめた市民は労働意欲をなくした上に国政に関心を失い、自立心をなくし主権的に考えたり行動することをしなくなりました。エリートにとっては民衆のコントロールが容易な社会となったのです。このような政治形態は大衆迎合主義とか愚民政策とよばれることもあります。

ローマ国家がしだいに衰退していった背景にはこのような政治形態も一因になったとされ「パンとサーカス」はローマ帝国没落の一因、のちには社会的堕落や愚民政策の象徴として使われることが多くなりました。

日本人はパンとサーカスで満足するか

さて、芸能人ニュースにうつつを抜かす日本人はどうなのでしょうか。今の世の中、家計が苦しいという人はいるでしょうが、飢餓に至るほど食べるのに困るような人は少ないでしょう。そして暇つぶしの種にも事欠きません。「パンとサーカス」は与えられているのです。

テレビでも雑誌でもスマホでSNSやYouTube見ていても時間は流れていき、週末はショッピングモールに行ったりレジャー施設で刹那的な娯楽を楽しんだりおいしいものを食べてお酒を飲む。特別なイベントとしてディズニーランドへ行ったり、プチ旅行をしたり、好きなアーティストのコンサートに行ったりするかもしれません。

けれども、ふと気がついたらなんだか生活はあまりよくなっていかないし、つまらないことばかり。会社では長時間労働のうえに上司にどなられるし、世間では詐欺とか犯罪とかうっとうしい話ばかり。消費税は上がり続け、出ていくお金は多いのに収入は少ないまま。年金は足りないらしいし、このまま一生働き続けて消耗していくのかと思うとむなしいので、現実逃避のためテレビつけてエンタメ番組を見る。そんな毎日の繰り返し。

芸能ニュースより政治社会に目を向ける?

とりあえずのパンとサーカスがあったら人々は満足なのでしょうか。それは現実逃避、自ら考えることをやめるための手段なのでは?

社会で、世界で、何が起こっているのかを知り、それについての自分の考えや判断をもち、何か自分にできることをしようと考えないのでしょうか。

たとえば、最近コンビニで働く外国人をよく見かけるけどどうしてなのか、トランプ首相が訪日したけどそれについて日本ではどのように扱われたのか、台湾で同性婚ができるようになったそうだけど日本ではどうなのか、新天皇が即位したことについて海外ではどのような反応があったのか、東京五輪の不正疑惑って何かとか、ローラが沖縄の米軍基地について発言したけどどういう意味なのかとか。

自分には関係ないことだから関心がない?それよりはローラが誰とつきあっているか知りたい?

でも、こういう話題について知り、自分の考えを持つことで何か社会にできることがあるかもしれません。「自分には関係ないから」と思っていることは実は芸能人の誰それの結婚よりはずっと関係があることかもしれません。

香港の逃亡犯条例反対デモ

つい最近香港で犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案に反対するデモが起きました。ある日のデモには200万人が参加したと発表されました。これは子どもも含めた748万人の香港人口の1/4以上というすごい数です。

日本でも憲法改正とか沖縄の米軍基地反対のデモがありましたが、到底この規模にはおよびません。

香港でのデモのあと、香港政府は改正案を無制限延期とし、事実上廃案する考えを示しました。さらに社会の混乱を招いたことについて、「市民に心からおわびする」と謝罪しました。香港市民一人一人がこの問題に関心を持ち、自分ごととして考え行動した結果が政府を動かす結果となったのです。

ひとりひとりができること

自分が住む世の中を少しでも良くするために、身近なことからでも社会で起こっている問題や解決したい課題について知ろうとする、その上で自分はどう考えるのか判断する、自分でできることがあるのなら署名でもデモでも人の話を聞きに行ったり話したりといった行動をしてみる。そういうことは芸能ニュースよりも大切だとは思いませんか?

とはいえ、この記事をここまで読んでいる人にとっては、英語でいう ‘preach to the converted’ ということなのかなとも思います。これは「すでに改宗した人に説教する」とう意味で日本語で言う「釈迦に説法」と同じような意味です。

でもそういう人でもふと芸能人のゴシップに気がとられることもありますよね。私もそうです。それはそれとして、もっと社会や世界に目を向けて自分を含めるみんなが生きやすい世の中にするために自分ができることを少しずつでもやっていきたいと思います。私にとってはそれがこのブログを書くことなのかな。

(敬称略)

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