性暴力の定義:セクハラ,痴漢,レイプ,強姦,準強姦,わいせつとは

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伊藤詩織のBBC番組やセクハラについてなど、性暴力についての記事を書いていくうちに、様々な用語の定義があいまいになっていることがあるのに気が付きました。法律用語、または一般用語としての違いもあるし、出典によって少しずつ違う意味で使われていることもあります。英語を日本語に訳すときもどの言葉を使うのかあやふやなため、話が食い違ってしまうこともあります。そこで、性暴力関係の言葉の定義をまとめてみました。


(敬称はすべて略しています。)

性暴力を表す言葉

性暴力の話をするとき、ストレートに言いにくいこともあり、ついひとまとめにして「性暴力」と言ったり、強姦/レイプのことを「暴行」とか「乱暴」とか他の言葉で置き換えてぼかしてしまうことがあります。これはやはり、性に関するトピックがタブー視されているので、直接的な表現を避けてしまうのでしょう。

また、被害者と話す場合は特に、「強姦」とか「わいせつ」という言葉は強すぎて、使うことがためらわれるのではないでしょうか。当事者にとってはつらい経験なので、あいまいな表現をしたい気持ちはよくわかるし、そうでなかったら被害を告白する人も少なくなるかもしれません。

けれども、先日伊藤詩織についてのBBC番組「日本の秘められた恥」についてイギリス人と日本人の感想を記事にするとき、人によって言葉の定義が違っていることに気が付きました。

たとえば、英語で「Sexual violence」のことを話しているのに、それを「性暴力」という日本語に置き換えると日本人の中には「強姦」「暴力によるレイプ」のことだととる人が少なくないようなのです。

伊藤詩織は番組の中で「日本では誰もが日常的に性暴力に遭っているんです。」と言っていますが、私はこれはレイプや暴力を伴う性行為だけでなく、痴漢や露出などの行為のことを指していると理解しました。それについても少し言い過ぎかもしれないとは思いましたが、毎日都会の満員電車に乗る女性に限っては痴漢行為というものは日常的なのでしょう。

日本でこの番組を視聴した人がこのコメントについて疑問を呈していて「これでは日本では日常的にレイプが起きているようだ。世界中に嘘をまき散らしている。」との批判が出ていました。これは「性暴力」という言葉の理解が食い違っていることによる感想だと思います。

また「性暴力の被害に遭ったことがある」かどうかのインタビューをとったり、統計を調べたりという事もありましたが、これにしても質問する人は別としても回答する人にとって「性暴力」が何を指すのかがわからないのでは単純に結果を比べるわけにはいきません。

それで、ここで性暴力に関するさまざまな言葉について私なりにまとめてみようと思います。

言葉の定義

実は言葉の定義をいろいろ調べてみたのですが、出典によって少しずつ違っていました。「レイプ」または「強姦」という言葉一つにしても日本とイギリスでは法律が違うので若干定義が違ってきます。とはいえ、厳密に考えていると拉致があかないので、できる範囲で、さまざまな出典からの言葉の定義を日本語・英語の併記と共に私なりにまとめてみました。

性暴力とは、本人の望まないすべての性的行為で、具体的には下記のようなものがある。

  • レイプ・Rape(同意/consentのない性行為、日本でいう「強姦」と同じ行為だが、イギリスなどでは暴行・強制がなくても成立する)
    • 強姦(暴行・強制によって性行為をする)
    • 準強姦(寝ていたり、気を失っていたり、抵抗ができない状態に乗じて性行為をする)
  • DV ・Domestic Violence(ドメスティック・バイオレンス、家庭内での暴力)
  • ストーカー行為・Stoker
  • 子どもへの性的虐待・Child abuse
  • セクシャル・ハラスメント・Sexual harassment(性的ないやがらせ、相手の意に反する性的な言動、またそれによって不利益を受けたり労働環境などが害されること)
  • わいせつ・Sexual assault(暴行・強制によって性的に羞恥心を与える行為で、以下のようにさまざまな形態がある)
    • 痴漢・Groping(相手の意に反して体を触る)
    • 露出・Sexual exposure(一方的に裸や性器を露出して見せる)
    • 性的興奮を刺激するような発言を繰り返す
    • 本人の意に反して衣服を脱がせる
    • 本人の意に反して陰部を触らせる
    • 本人の意に反して抱きついたりキスをしたりする
    • 無理やり裸の写真を見せたり、裸の写真を撮る

参考:コトバンク
特定非営利活動法人しあわせなみだ
WHO 世界保健機関

Sexual consent 合意とは

日本で「強姦」は「暴行や強制による性行為」という定義です。ということは、被害者が性行為において、暴行や強制があったということを証明しなければなりません。単に同意がなかったというだけでは十分でないのです。

「準強姦」の場合は、被害者が意識不明の時、例えば寝ていたり、泥酔していたり、気を失っているときに行われる性行為なので、被害者は抵抗のできる状態でも、同意の意思表示をすることもないということになります。伊藤詩織の事件は準強姦ケースとして扱われ不起訴処分となりました。

イギリスをはじめとする欧米諸国ではたとえ加害者が知人でも、合意のない性行為自体がレイプ(強姦)であるということが常識となっています。なので、その性行為をするにあたって、暴行や強制があったということを被害者が証明する必要はありません。

イギリスでは学校やコミュニティーで性教育が早くから提供され、性行為は2者間の相互の愛情に基づくものであるということを前提として行われています。若者が無料でコンドームを入手できるプログラムがあるほか、合意のない性行為はレイプであるということを明確に伝えています。「合意」について、警察が子供にもわかりやすいように作ったビデオがあるので日本語字幕付きのものを紹介します。

これを見てもわかるように、たとえ暴力や強制がなかったにしても、一方の同意を得られない性行為はレイプになるとして、教えています。

この「合意」という観念が日本ではあいまいなようです。BBCの番組でも取り上げられていましたが、日本ではキスをするだけで合意をしたという意味になると理解する大学生が半数以上いるのです。もう大人といってもいいような大学生でさえ性行為に対して正しい知識がないのは、性教育が十分に行われていないということでしょう。

性教育をすると「行き過ぎ」とか「不必要に若者の性行為を助長する」といった批判も出てきますが、昔と違い今は性に関する情報はほっておいても社会やネット上にあふれています。セックスが相互の愛に基いたものだとして正しく伝えない前に、子供は社会に氾濫する性風俗やネットのポルノ情報などに触れ、歪んだ性のかたちを自然だと思い込んでしまう可能性があります。その中には、正しい知識がないために自分でも気が付かないうちに性暴力の加害者や被害者になってしまうものも出てくるかもしれません。

年齢に応じた配慮は必要ですが、はやいうちから性教育を人権教育の一環として行うことが大切です。それには、犯罪としての性暴力に対する正しい知識やそういう行為を許容しない価値観と共に避妊の方法や被害に遭ったときのためのサポートに関する情報も与えるべきです。

性暴力は人権の侵害

強姦のような重罪になり得る行為も、見逃されがちな軽いセクハラも、いうなれば人権の侵害です。セクハラが人権の侵害なんて大げさなと思う?それなら弱いものいじめと言ってもいいでしょう。

すべての性暴力に共通するのはより強いものが自分より弱い者を貶める行為。だから、権力があるものがないものに対してセクハラを行い、被害者は泣き寝入りすることが多いのです。だって、声をあげると職を失ったり、中傷されたり、非難されたりするから。そして、それがわかっているから権力があるものは平気で性暴力を行う。男性が上司である女性にセクハラを行うことはないでしょう。

まとめ

アメリカで始まった#MeToo運動のうねりで世界中の女性、男性が性被害について声を上げ始めています。日本ではなかなか火が付かなかった#MeTooが伊藤詩織らの勇気ある行動や多くの地道な努力によってやっと話題に上るようになりました。

話しにくいことだからとタブー視していては、正しい議論もできません。さまざまな相反する意見もありますが、まずは言葉の意味を正しく理解してその上で人間の自然の営みである性について、率直に話し合える場を作ることが必要です。

その上で、性暴力の被害者への十分な対応とサポートが用意され、法律や制度の整備も進められ、被害に遭った人たちが安心して声を上げることができるような社会にしたいものです。

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